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第1章 解放
第28話 調合師マスター
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◆◇◆◇帝国冒険者ギルド◆◇◆◇
僕は帝国調合師の依頼を受けてナンシー森林にてデトクス草の採取から帰ってきた。生憎薬草自体に僕が詳しくないせいで、それらしき植物を片っ端から採取してきたところだ。本当にこんな現物をギルドに持ってきて良かったのだろうかと思いながら僕はギルドの受付にて取ってきた薬草を渡す。
「えーっと、これなんだけど……」
「あ、そちらは依頼者の方へ直接お願いします」
バッグに手を入れ、ドロドロとした体液を垂らす薬草を受付の人にチラ見せさせた瞬間に断られた。うん。分かってたさ。分かっていても触りたく無いよねこんなもの。
受付は僕に依頼者の住所が書かれた紙を渡される。どうやら帝国調合師と名乗っている依頼者は、店を開いているのではなく、帝国専属の調合師として個人でやっているらしい。
「じゃあ行こうかグレイブ」
『あぁ』
冒険者ギルドを出て、帝国騎士団本部を通り過ぎて、王城前。王城から向かって真正面にその家はあった。特に他の民家と変わった様子は無く、外見は普通に小綺麗な建物だった。
僕は木の扉をノックする。
「あのー、冒険者で調合師さんの依頼を受けたんだけどー」
「むむっ! 入れ」
扉の奥から高めのお爺さんの声が聞こえた。僕は言われるとおりに家の中へ入った。
中に入ると最初に感じたのは鼻をひん曲げるような激臭だった。
「くっっさ!」
『これは……恐らく薬の臭いだろう。ただこれはなかなか耐え難い臭さだね』
まぁ、いい匂いの薬なんてなかなか無いからね。ここは我慢しよう。さて、さっきのお爺さんはどこに居るのだろうか。
僕はなんとなくより臭いが強い方を目指し、家の中を探す。そうすると簡単に見つけることが出来た。
臭いはともかく視覚的にもヤバさが伝わってくる部屋だったからだ。
家の中もフローリングの床と白い壁紙が貼られた廊下と部屋がいくつかあったのにも拘らず、問題の部屋だけ木の扉が腐りかけ、ヤバそうな緑色の液体が隙間から漏れ出し、扉の前が何故か焦げたように黒ずんでいた。
僕はその扉に手を掛けた。そうすると、勢いよく軋む音が響き直後、パタリと扉が外れ壊れてしまった。
「んぎょえええぇえ!? 何しとるんじゃお前ら!!」
「あ、ごめん」
「ごめんって……はあああぁぁ。まぁええわ。既に壊れかけておったしのぉ。それで例のブツは持ってきたんじゃろうなぁ?」
「うん。葉っぱ、持ってきたよ。でもどれがデトクス草か分かんないから色々持ってきたよ。見てくれるかな?」
僕は再度バッグに腕を突っ込み、ドロドロとした紫色の体液を垂らす変異した植物を取り出した。
幸い毒ガスなどは溢れておらず、ただ変わらない激臭だけを放ち、なんだかビチビチと跳ねている植物もある。気色悪い。
「ほほぉ……これは確かに色々持ってきたのぉ。だがデトクス草10個は無い。でも、色々な種類を持ってきたことに免じて許してやろう。
どれどれ? デトクス草にポルジーの花、ヴォミットの葉、コロードの種。ほっほーナンシー森林のぉ。どんだけ汚染しとるんじゃ……どれも劇薬と変わらん薬草ばっかりじゃ無いか。
ほほう! これはなんとトゥーマーの心臓では無いか! お前らが倒したという変異植物からしか取れない貴重な薬草じゃ」
「へぇー。じゃあ、報酬貰おうかな」
「む。ちょっとは関心くらい持ってくれても良かろうに。じゃあ報酬は本来なら30万オロと解毒剤10個だが、デトクス草10個取って来られんかったからのぉ。とりあえずお前らが持って来た薬草を全て薬に変えてやるわい。
それとじゃ! お前に調合師の調合リストを皆伝してやろう!」
「うん。お金は嬉しいけど調合師の資格は要らないかな」
「いいや受け取れぃ! 儂はそろそろ歳じゃ! 誰も儂の職業に興味を沸いてくれる若者がいない! だからお前に託す! 拒否権は無あああぁい!」
なんて無責任な! でも調合師か。さっきはあっさり断ったが、なにかメリットでもあるのだろうか。
「仕方が無いなぁ。調合師ってなんかメリットあるの?」
「よくぞ聞いた! 調合師とは文字通り薬草を調合し、薬を作り出す職業じゃ。雑貨屋で回復薬を買うより自分で薬草を採取し、その場で薬が作れるから実質タダで回復薬が手に入る。
しかも、調合師はただ単に薬草を調合するだけでなく完成品に入れても無意味でも調合段階では薬の改造も可能じゃからの。より効果の高い薬を作れる!
そしてさらに、薬の調合とはまだまだ未知点が多くあっての、研究によると効果の強さと多種多様な用途が魔式を超えるかもしれないと言われておるのじゃ!」
なるほど。調合師になれば回復薬も罠でも自由に作れるという訳か。確かに固有能力【回避】の特性以外戦闘方法がない僕にとっては、生存率を高めると共に戦闘の幅を広げられるかもしれない。
「そしてそして、そんな世界の調合師が最も喉から手が出る程に欲しがり、最早世界中の人類が最後の夢として語る幻の薬があるのじゃ。その名も『エリクシア』。
どんな傷もどんな怪我も、たとえ死んだ者でさえもエリクシアを一滴垂らせば全快し、健康の者が一升飲み干せば不老不死の力を獲得し、以降決して傷も病気にも侵されない身体になると言われておる。
しかしそれは夢のまた夢。かれこれ四大国が存在したという1万年前から研究されておるが、エリクシアの真理に辿り着いた者はおろか、一歩でも近づいた者さえおらぬ」
それは凄い薬だ。それさえあればもう死の恐怖からも解放されるんだろうなぁ。
「これが調合師という職業じゃ。調合師になる気はあるかの?」
僕は帝国調合師の依頼を受けてナンシー森林にてデトクス草の採取から帰ってきた。生憎薬草自体に僕が詳しくないせいで、それらしき植物を片っ端から採取してきたところだ。本当にこんな現物をギルドに持ってきて良かったのだろうかと思いながら僕はギルドの受付にて取ってきた薬草を渡す。
「えーっと、これなんだけど……」
「あ、そちらは依頼者の方へ直接お願いします」
バッグに手を入れ、ドロドロとした体液を垂らす薬草を受付の人にチラ見せさせた瞬間に断られた。うん。分かってたさ。分かっていても触りたく無いよねこんなもの。
受付は僕に依頼者の住所が書かれた紙を渡される。どうやら帝国調合師と名乗っている依頼者は、店を開いているのではなく、帝国専属の調合師として個人でやっているらしい。
「じゃあ行こうかグレイブ」
『あぁ』
冒険者ギルドを出て、帝国騎士団本部を通り過ぎて、王城前。王城から向かって真正面にその家はあった。特に他の民家と変わった様子は無く、外見は普通に小綺麗な建物だった。
僕は木の扉をノックする。
「あのー、冒険者で調合師さんの依頼を受けたんだけどー」
「むむっ! 入れ」
扉の奥から高めのお爺さんの声が聞こえた。僕は言われるとおりに家の中へ入った。
中に入ると最初に感じたのは鼻をひん曲げるような激臭だった。
「くっっさ!」
『これは……恐らく薬の臭いだろう。ただこれはなかなか耐え難い臭さだね』
まぁ、いい匂いの薬なんてなかなか無いからね。ここは我慢しよう。さて、さっきのお爺さんはどこに居るのだろうか。
僕はなんとなくより臭いが強い方を目指し、家の中を探す。そうすると簡単に見つけることが出来た。
臭いはともかく視覚的にもヤバさが伝わってくる部屋だったからだ。
家の中もフローリングの床と白い壁紙が貼られた廊下と部屋がいくつかあったのにも拘らず、問題の部屋だけ木の扉が腐りかけ、ヤバそうな緑色の液体が隙間から漏れ出し、扉の前が何故か焦げたように黒ずんでいた。
僕はその扉に手を掛けた。そうすると、勢いよく軋む音が響き直後、パタリと扉が外れ壊れてしまった。
「んぎょえええぇえ!? 何しとるんじゃお前ら!!」
「あ、ごめん」
「ごめんって……はあああぁぁ。まぁええわ。既に壊れかけておったしのぉ。それで例のブツは持ってきたんじゃろうなぁ?」
「うん。葉っぱ、持ってきたよ。でもどれがデトクス草か分かんないから色々持ってきたよ。見てくれるかな?」
僕は再度バッグに腕を突っ込み、ドロドロとした紫色の体液を垂らす変異した植物を取り出した。
幸い毒ガスなどは溢れておらず、ただ変わらない激臭だけを放ち、なんだかビチビチと跳ねている植物もある。気色悪い。
「ほほぉ……これは確かに色々持ってきたのぉ。だがデトクス草10個は無い。でも、色々な種類を持ってきたことに免じて許してやろう。
どれどれ? デトクス草にポルジーの花、ヴォミットの葉、コロードの種。ほっほーナンシー森林のぉ。どんだけ汚染しとるんじゃ……どれも劇薬と変わらん薬草ばっかりじゃ無いか。
ほほう! これはなんとトゥーマーの心臓では無いか! お前らが倒したという変異植物からしか取れない貴重な薬草じゃ」
「へぇー。じゃあ、報酬貰おうかな」
「む。ちょっとは関心くらい持ってくれても良かろうに。じゃあ報酬は本来なら30万オロと解毒剤10個だが、デトクス草10個取って来られんかったからのぉ。とりあえずお前らが持って来た薬草を全て薬に変えてやるわい。
それとじゃ! お前に調合師の調合リストを皆伝してやろう!」
「うん。お金は嬉しいけど調合師の資格は要らないかな」
「いいや受け取れぃ! 儂はそろそろ歳じゃ! 誰も儂の職業に興味を沸いてくれる若者がいない! だからお前に託す! 拒否権は無あああぁい!」
なんて無責任な! でも調合師か。さっきはあっさり断ったが、なにかメリットでもあるのだろうか。
「仕方が無いなぁ。調合師ってなんかメリットあるの?」
「よくぞ聞いた! 調合師とは文字通り薬草を調合し、薬を作り出す職業じゃ。雑貨屋で回復薬を買うより自分で薬草を採取し、その場で薬が作れるから実質タダで回復薬が手に入る。
しかも、調合師はただ単に薬草を調合するだけでなく完成品に入れても無意味でも調合段階では薬の改造も可能じゃからの。より効果の高い薬を作れる!
そしてさらに、薬の調合とはまだまだ未知点が多くあっての、研究によると効果の強さと多種多様な用途が魔式を超えるかもしれないと言われておるのじゃ!」
なるほど。調合師になれば回復薬も罠でも自由に作れるという訳か。確かに固有能力【回避】の特性以外戦闘方法がない僕にとっては、生存率を高めると共に戦闘の幅を広げられるかもしれない。
「そしてそして、そんな世界の調合師が最も喉から手が出る程に欲しがり、最早世界中の人類が最後の夢として語る幻の薬があるのじゃ。その名も『エリクシア』。
どんな傷もどんな怪我も、たとえ死んだ者でさえもエリクシアを一滴垂らせば全快し、健康の者が一升飲み干せば不老不死の力を獲得し、以降決して傷も病気にも侵されない身体になると言われておる。
しかしそれは夢のまた夢。かれこれ四大国が存在したという1万年前から研究されておるが、エリクシアの真理に辿り着いた者はおろか、一歩でも近づいた者さえおらぬ」
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