クラス転移で一人だけ地味スキル【回避】が無能だと判断され理不尽にも追放された男の復讐劇

Leiren Storathijs

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第2章 エリクシア

第56話 渾身

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 アルカーナ大迷宮制覇まであと20階。エリクシアの製法入手まで後もう少し。
 地下に降りて行けばいくほど現れる魔物が強くてなってくることは分かっていたが、それでも僕はこの時点で窮地と言っても良いほどの状況に立たさられていた。

 ガルムラルクのリーダーであるレオンは気絶、テツはすぐに復帰できない程に重症、レイも気絶し、コールは魔力切れで戦闘離脱。残るは僕とジンとレイクの3人になってしまった。

 そんなところで何故僕がいつまで経っても攻撃を仕掛けないのかは理由がある。
 だって勝てる見込み無くないかな? 僕の回避能力は攻撃を避けることが前提で、その際に発動したスローモーション中に引き出した物理エネルギーは数倍に跳ね上がるというもの。
 だがしかし、例え避けられたとしよう。コールの全魔力をリアクターブレードの変換器に全力投入した、レオンの大剣+必殺技でもあのアロイと呼ばれる骸骨はノーガードで弾いてしまったんだ。

 あの攻撃より高い威力をどうやって作り出せば良いと言うんだ。そんな力を引き出せるのなら僕はそろそろチート呼ばわりされるだろう。
 『回避能力を使って一撃必殺の異世界無双譚!!』なんて……僕は面白くないね。
 まぁ、面白く無いとか面白いとか言ってもそうなるとは限らないんだけどね。

 さて、今の時点で一番信頼できる仲間はジン何だが……レイクに関しては精神攻撃専門みたいなものだから悪く言えば役に立たない。
 もう僕には勝てることを祈ることしか出来ないのだろうか?

「最後は俺か……」

 本人も今の状況を理解しているようで……。

「弱点は見出した……あとは斬るのみ」

  刀に魔力を帯びさせて突進するのであった。

 ジンが見出したアロイの弱点とは言うと、体は金属でも、排熱のために僅かに空けている関節部の隙間。その中の肩にかけて浮き上がった鎖骨と首の間を狙って刀を振り下ろした。
 確かに体が金属でも、本来の人間にある首の頚椎けいついなら簡単に切断できるかもしれない。
 だがしかし、ジンの読みは少しだけ間違っていた。

 本当にそこが弱点だったのか、ジンの刀か隙間の空いた頚椎の部分に入った瞬間、アロイの目が突然黄色く光り、口があんぐりと開いた。

「ア"ア"ア"アアァァァ!!!」

 耳を劈く雄叫び。耳を塞いでも脳が揺れ、全身を痺れさせるような、簡単に気絶してしまいそうな叫び声を上げた。
 その次の瞬間、アロイは全身の全ての関節部から勢いよく蒸気を発すると、どれだけ熱かったのかジンが刀をアロイの首に減り込ませた状態で吹き飛ばされる。

「……! レイク、ハク、避けろ!!」

 普段から冷静沈着なジンが珍しく僕に大声で叫ぶ。その異常さから僕はこの直後に何が来ることを察する。ただ察したところで僕には何も出来ない。きっと固有能力の【回避】か教えてくれるだろう。

 するとアロイの足元、地面が一気に真っ赤に光りだし、ドロっとした液体に変わった。
 え? 溶けたのか? 本当にどれだけ熱いんだ?

 アロイは全身からバチバチと電流を走らせると、僕の驚きに休みを与えないまま、次は僕の視界を真っ白な眩しすぎる光で遮った。

 時が遅くなる。あぁ、この感覚。一体いつぶりだろうか。アルカーナ大迷宮が予想以上に広すぎて、且つガルムラルクの皆が有能過ぎて、最後に発動した日を懐かしく感じてしまう。

 さて、今ここで普通に避けても戦況は決して変わらないだろう。だから今ここで何かしらの反撃をしなくては勝つ可能性は0%と断言出来る。
 なにか、なにか決定的な一撃を与えることが出来るものが無いだろうか?

 刻一刻と眩い光が僕に迫ってくる。地面をドロドロに溶かす程の高熱から放たれる攻撃だ。当りでもしたら僕の体は一片も残らないだろう。
 ただ避けるだけでは駄目だ。普通なら無謀としか言えないが、ここではカウンターを狙うしかない。

 アロイは首筋に刀を入れられたことで突然こんな技を発動したんだ。だからそこが弱点だと言うことは確かなんだけど……。あ……。

 僕はアロイの首筋をよく見て気が付いた。いや多分ジンが吹き飛ばされた時点で確かに見てはいたんだろうけど、それが決め手になるとは思っていなかったたんだ。
 アロイの首筋にはジンの刀がまだ紫色の魔力が帯びた状態で減り込んでいた。あれを使えばもしかしたら……。

 僕はアロイが発動した極太の光線をスレスレで避けるように突進し、真っ直ぐジンの刀に手を伸ばす。

 その時、ゆっくりだがアロイにはないはずの眼球がこちらを向いた気がした。スローモーション中は現実では目で追えない程で動いているはずだが、アロイは僕の姿を確実に捉えているようだった。
 流石だよ君は。

 そうして僕はジンの刀の柄を掴むと、思いっきりそれを更に押し込んでアロイを切断しようとする。僕一番の筋力をフルに活用して。

「こんのおおおおおぉ!!」

 時は動き出す。すると、僕の掴んでいるジンの刀は急激にアロイの首を切断しようと急速に減り込み始めた。
 同時にアロイの腕も僕を振払おうと掴もうとしていた。ここで掴まれたら僕は確実に死ぬだろう。
 あと一歩の所で殺されるのはすこし嫌な殺され方かな。

 だから僕は腰を下ろして両足を地面に付けると、溶けた地面の熱が足に伝わるのをぐっと我慢して、絶対に首を刎ねてやると、全体重を足にかけて踏み込む。
 さらに刀は首筋を通り過ぎて、一番硬いであろう鋼の胴体に突入する。
 ここからは硬いから無理だとか言っている暇はない。スローモーションによって跳ね上がった威力が消えないように、完全に切断に至るまで力を入れ続けなくてはならない。
 そう、あとは勢いだけが勝負だ。

  そんなあと少しという時に後ろから腕を掴まれた。が、それはアロイの手ではなくジンの手だった。逆にアロイはというと、激しい火花を散らしながら必死に抵抗しようとするも、あまりの衝撃に僕を掴もうとする姿勢から動けずにいた。
 しかしこの状況も保って数秒だろう。

「斬れ!!」

 僕の腕を掴むジンは僕の後ろから叫ぶ。
 僕はジンの声は聞こえても反応することなく、さらに力を込める。

 実際の時間はものの数秒だろうが、僕にはかなり長い時間だと感じた。
 僕の力と回避能力の恩恵とジン力が合わさり、遂にアロイの体を真っ二つに斬り裂いた。

 切断されたアロイの断面から見えるのは恐らく熱源だったであろう、真っ白に光る球体。
 切断した勢いで一瞬だけ静止する僕の視界にてその球体に亀裂が走る。

 時が遅く感じた。これは能力ではなく、人間が死ぬ間際で感じる走馬灯によるスローモーションだとすぐに分かった。

 人間が感じる天然のスローモーションでは咄嗟に体を大きく動かすなど絶対に不可能。
 だから僕はそれを受け止めるしか無かった。

 アロイが死に際に起こしたのは、超高熱の熱源が急激に空気に触れたことによる大自爆であった。

 たったその瞬間で僕の意識は一瞬で途絶えた。若しくは二度目の死を味わったのだろう。それほどの頭では決して理解出来ない程の激痛が、途絶える意識の直前に伝わった。
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