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20.一目惚れも、ここまでくれば

10.(END)

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(異母姉さま……)


 どれだけ辛辣な言葉を浴びせられても、妾の子と蔑まれても、わたしは異母姉さまを嫌いではなかった。いつか仲良くなりたいと思っていた。けれど、恐らく今後、わたしの願いが叶うことは無い。


「アイザック殿下――――わたしはやはり、あなたと一緒には……」


 わたしが居ると周りが不幸になる。復讐の一駒であったわたしが、幸せを望むことがそもそも間違っていた。わたしが居なければ、それらは全て異母姉さまのものになっていたのに。


「多分だけど――――もしもローラが生まれていなかったとして、僕がイザベラを選ぶことは無かったと思うよ」


 アイザック殿下は言葉を選びつつ、そんなことを口にした。


「だから、悪いのは全部ローラじゃなくて僕だ。君が抱えている罪悪感は、丸ごと僕に擦り付けて良い。ローラが傷つく必要はないんだ」


 殿下はわたしの気持ちを察して、優しく包み込んでくれる。
 だけど、残った問題は異母姉さまのことだけではない。


「けれどアイザック殿下! わたしはどうやったってあの母親の娘です。怖いとは思いませんか? いつか、わたしがあなたを刺し殺すんじゃないかって、恐ろしくは――――――」

「殺されるのがローラなら、寧ろ本望だよ」


 やっぱりわたしは間違っていなかった。
 殿下は馬鹿だ。大馬鹿者だ。わたしみたいな女に惚れて、身を滅ぼしても良いだなんて、本当に馬鹿げている。


 けれど、そんな彼のことをどうしようもない程愛しく思ってしまう自分が居る。


「大丈夫。もう母親の待つあの家に帰る必要はない。王宮に君の部屋を用意したんだ。この夜会を終えたら、今後はそこが君の帰る場所になる。
それでもいつか、君が僕のことを殺したくなったら、その時はそれで構わない。そうならないよう、全力でローラを幸せにする。君だけを想い続けるよ」


 アイザック殿下を見上げつつ、わたしは思わず唇を綻ばせる。


「どう? 一目惚れも、ここまでくれば立派だろう?」


 いつもとは違う不敵な笑みを浮かべるアイザック殿下に、わたしは今度こそ、お腹を抱えて笑うのだった。
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