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【1章】断食魔女、森で隠遁生活を送る
8.神殿に連れてこられました(3)
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「わぁっ! すごい、すごい! 本当にジャンヌさんがいる!」
少し舌足らずのあどけない声音が聞こえ、思わず振り返る。
「ジャンヌさん!」
「マリア……」
そこには聖女に選ばれたわたしの養女、マリアが居た。
腰のあたりをギュッと強く抱き締められ、すりすりと顔を擦りつけられる。ふわりと香る幼子の匂い。何故かは分からないけど、鼻の奥がツンと痛む。
「会いたかったぁ!」
マリアが言う。久方ぶりに見る無邪気な笑顔だ。
こういう時、普通の人なら『わたしも』って返すんだと思う。
だって相手は子どもだし。無償の愛情を約束されている存在なんだし。そういう言葉が自然に口を衝いて然るべき何だと思う。
だけどわたしは、マリアに何も言えなかった。抱き返すことも出来ず、ただ呆然と佇むだけ。
それなのに、マリアは未だ、嬉しそうにわたしのことを見つめている。この子は本当にわたしに会いたかったんだろうって、そう思わされる。
(馬鹿マリア)
折角聖女に選ばれて、良い生活が出来るようになったんでしょう? わたしのことなんて忘れてしまえば良いのに。
世話も碌にしなかった上、人並みの愛情も与えられなかったわたしに、この子は何を求めているんだろう?
少し舌足らずのあどけない声音が聞こえ、思わず振り返る。
「ジャンヌさん!」
「マリア……」
そこには聖女に選ばれたわたしの養女、マリアが居た。
腰のあたりをギュッと強く抱き締められ、すりすりと顔を擦りつけられる。ふわりと香る幼子の匂い。何故かは分からないけど、鼻の奥がツンと痛む。
「会いたかったぁ!」
マリアが言う。久方ぶりに見る無邪気な笑顔だ。
こういう時、普通の人なら『わたしも』って返すんだと思う。
だって相手は子どもだし。無償の愛情を約束されている存在なんだし。そういう言葉が自然に口を衝いて然るべき何だと思う。
だけどわたしは、マリアに何も言えなかった。抱き返すことも出来ず、ただ呆然と佇むだけ。
それなのに、マリアは未だ、嬉しそうにわたしのことを見つめている。この子は本当にわたしに会いたかったんだろうって、そう思わされる。
(馬鹿マリア)
折角聖女に選ばれて、良い生活が出来るようになったんでしょう? わたしのことなんて忘れてしまえば良いのに。
世話も碌にしなかった上、人並みの愛情も与えられなかったわたしに、この子は何を求めているんだろう?
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