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【1章】断食魔女、森で隠遁生活を送る

17.神官様にこれまでのわたしを否定されました(1)

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(疲れた…………もう一歩も動きたくない)


 お昼の鐘が鳴り響く。
 わたしはベッドに身体を投げ出し、唸り声を上げていた。


「大丈夫、ジャンヌさん?」

「ダメ。無理。もうヤダ。家に帰りたい」


 これじゃどっちが子どもなのか、全くわからない。
 だけど、都合三時間、普段使わない足やら表情筋を酷使したんだもの。疲れるのは当然だと思う。


「だけど、ジャンヌさんすごかったよ! お客さんみんな喜んでた! 嬉しそうだったもん」

「あぁ…………さいですか」


 別に、誰かが喜んだところでわたしには関係ないし。
 こちとら、前世の学生時代のバイトを思い出しながら、時間が過ぎ去るのを待っていただけだもん。スマイルゼロ円。オペレーションしないでいい分、こっちの方が多少は楽だったし。隠遁生活を送っていた現世と前世じゃ体力が段違いだから、へばったってだけでさ。


「いやぁ、先程はお疲れさまでした、ジャンヌ殿」

「――――出たな、諸悪の根源」


 上機嫌な声音を頭上で聞きつつ、わたしは思い切り悪態を吐く。


「諸悪の根源だなんて、心外だなぁ。皆さんとっても喜んでいたし、ジャンヌ殿だって活き活きしていたじゃありませんか?」

「貴方の目は節穴なの? 洞穴なの? わたしのどこが活き活きしていたって言うのよ」


 神官様は、わたしの返事にふふ、と笑うと、ベッドサイドに腰掛ける。最早文句を言う気力もなくて、わたしは小さくため息を吐いた。


「疲れたでしょう? 昼食はこの部屋で一緒にとりましょうね?」


 神官様がわたしを撫でる。まるで猫でも愛でるみたいに、よしよし、って何度も。
 やめて――――そう言いたいのに、聖力でも流し込まれているんだろうか。疲れた心と体に不思議と染み込んで、振り払うことができない。


「いらない。食欲ない。疲れたし、もう眠りたい」


 かろうじてそう言い返す。
 だけど、悲しいかな。目はランランと冴えている。身体も心もヘトヘトなのに、不思議なことだ。


「食べなきゃダメですよ。食べることは生きること。人間の三大欲求の一つです。
それに、労働のあとの食事は、一層美味しく感じられるものですから」

「そうだよ、ジャンヌさん。お昼ごはん、とっても美味しいんだよ。一緒にご飯食べよ!
あっ、そうだ! あたし、今日のご飯はなにか見てくるね! ジャンヌさんの好物かもしれないし!」


 パタパタとマリアの足音が聞こえる。わたしは静かに目を瞑った。


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