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【2章】断食魔女、神殿で華やかな生活を謳歌する(?)

18.聖女様は王子様に興味が有る年頃です(1)

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 神殿で暮らし始めて一週間が過ぎた。


「――――今日こそ休む! 寝る! 何なら家に帰りたい!」

「そこをなんとか! 今日は休日で、普段より参拝者が多いんですから!」

「だから嫌なんですよ!」


 わたしは毎日、なんやかんや言いながら、神官の真似事を続けている。

 森に住んでいた頃は昼過ぎまで眠っていたのになぁ。侍女やら神官様に起こされるもんだから、随分早起きになってしまった。


 おまけに、一度朝食を作ってやったのが運の尽き。翌日以降も毎日厨房に立つ羽目になっている。


(だって、神殿の料理って本当に脂っこいんだもん)


 聖職者って精進料理を食べるもんじゃないの? なんて思うのはわたしが転生者だから。
 或いは日本と西洋の違いなのかな。
 肉も魚もめちゃくちゃ食べるし。何なら食べ過ぎじゃない? って思うぐらい、献立に組み込まれている。


(きっとお布施が多すぎるんだ)


 そのせいで、食費に振り分けられる予算が無駄に多くなっているし、予算は余らせちゃいけない精神が働いているに違いない。
 あの握手会は絶対回数を減らすべきだと思う、マジで。


「――――夜会?」

「ええ」


 朝食の席。
 神官様がわたしの問いかけに頷いた。

 彼は相変わらずわたしとマリアの部屋に入り浸り、一緒に朝食をとっている。
 わたしが作る朝食なんて、ご飯と味噌汁レベルの粗食だけど、彼はそれが気に入ったらしい。毎日「美味しい、美味しい」って言いながら、わたし達と食事をしている――――まぁ、嘘を吐いているだけかもしれないけど。


「何でまたそんな俗なイベントを神殿で?」

「そりゃあ当然、マリア様が神殿を出られないからですよ」


 サラリとそんな事を言われ、わたしは思わず顔をしかめた。


「なにそれ。全くもって当然じゃありませんけど。子供に夜ふかしさせる必要なんてないし、そもそも、どうしてマリアを夜会に出す必要が?」


 夜会ってのはつまり、シンデレラでいう舞踏会みたいなものでしょう? 貴族の社交の場ってやつでしょう? 子供なんてお呼びでない。大人が楽しむためのものでしょうに。


「ふふ、これはトップシークレットなのですがね――――実は、陛下がマリア様と王太子殿下を引き合わせたい、と思し召しなんですよ」

「――――はぁ?」


 わたしは思わず目を瞠る。

 神官様め、なぁにがトップシークレットだ。
 声を潜めるどころか、侍女たちにまでバッチリ聞こえるように言ってるじゃない。神殿勤めのくせにミーハーなのか、一気に色めき立っているし。


「引き合わせたいってのはつまり、将来の配偶者にってこと? マリアを王太子殿下の妃に?」

「そういうこと。さすが、話が早いですね。護国の聖女が妃になれば、国は安泰。そういう風潮が有るんですよ」

「はぁ……さいですか」


 一応相槌は打ったものの、前世が純正日本人のわたしには到底理解できない世界だ。

 だって、わたしが生まれたときには、天皇は象徴になって久しかったし。結婚相手は(表向き)自由に選べるみたいだし。
 福沢諭吉だって『天は人の上に人を造らず』なぁんて教えを説いていたし。
 子供の頃から結婚相手を決めておくなんて、本人の意志はお構いなしってことでしょう?


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