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【2章】断食魔女、神殿で華やかな生活を謳歌する(?)

23.王族は思いの外キラキラしておりません(2)

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(ふーーん、これが王族かぁ)


 三十代ぐらいの男性と女性が国王と王妃で、十代の若者が今夜マリアと引き合わせようとしている王太子――――未来の夫(予定)だ。

 王太子については確かに神官様に似てなくもないけど、見た感じ普通……というか、他と比べてさして派手ではない。容姿も普通に美男美女っていうか。そこだけ無駄にキラキラしているかっていうと、そういうわけでもなく。


(どちらかというと、神官様にはじめて会ったときのほうがすごかったなぁ)


 直視に耐えないぐらい神々しいし。胸やけがして、しばらくご飯が食べれなかったぐらいだし。
 まあ、わたしの場合は前世があるから、テレビや雑誌で目が肥えてるっていう事情もあるかもしれないけど。


 高位貴族のものらしい挨拶の列を尻目に、神官様が秘書っぽい人に直接声をかける。


「聖女・マリア様をお連れしました」


 なんといっても今夜の主役はマリア。
 秘書官は心得顔で国王夫妻に耳打ちをした。

 神官様が礼をするのにあわせて、わたしとマリアも事前に教えてもらった通りの礼をする。この体勢、膝がプルプル震えて地味に辛い。わたしに堅苦しいのは性に合わないんだなぁってことを思い知った。


「聖女マリアと、その養母ジャンヌ――――だったね」


 どうやら顔を上げて良いようだ。
 わたしはマリアに寄り添いながら、ゆっくりと顔を上げた。


「はじめまして、マリアです。これから聖女としてがんばります。よろしくお願いいたします」


 マリアはスカートの両端をつまみ、いと愛らしい挨拶をした。周囲の貴族たちまで、ほぅと感嘆の息を呑む。


(よしよし、掴みは上々って感じ)


 マリアに自由に生きていく道がないなら、せめてその道は平坦で穏やかなものの方が良い。わたしと違って素直な子だし、貴族を含め、皆から愛されると良いなぁと心から願う。

 と、国王やら神官様の視線がわたしの方に集まっている。挨拶をしろってことらしい。面倒だけど、これもマリアのためだ。


「マリアの養母、ジャンヌでございます。マリアのこと、よろしくお願いいたします」


 言外に『わたしはよろしくするつもりがない』ことを伝えつつ、わたしはしっかりと頭を下げる。マリアのときと同様のほぅという声が聞こえて、わたしは思わず顔をしかめた。


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