8 / 13
第二章「傷だらけの汐苑」
01
しおりを挟む
「・・・あ~っ 怖かった・・・」
ヨーロッパのホラー映画はハリウッドにはない独特の不気味さがあるので、由希は好きだった。
今回見た映画は、薄幸の美少年が周囲の人間を殺めていく内容のサイコスリラーだ。
(やっぱりホラーは心霊物よりもサイコ系の方が精神的にくるな・・・)
午後11時、由希はテレビの電源を切り、洗面所に向かった。
ホラー映画を見た後なので、鏡を見るのも怖く、部屋中の電気を全部つけて壁に背をつけながら歯を磨いた。
そして恐る恐る寝室のベッドに向かい、布団の中に入った。
(眠れない・・・ まあ私、もう社畜じゃないし別にいいんだけどさ・・・)
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
それから一時間ほどが経った頃、突然玄関のチャイムが鳴った。
「ひっ・・・!!」
折角眠りにつきかけていた由希は起き上がった。
「誰・・・?こんな夜中に」
冴えた目で恐る恐る玄関に向かい、ドアスコープを覗いた。
「ぎゃあああああああああああああああああ!!」
思わず由希は叫び、尻餅をついてしまった。
「なしたんだ由希ちゃん!強盗でも来たのか!」
アルメルスが由希の叫び声を聞きつけ、書庫からトコトコと走ってきた。
「お、お化けが・・・」
「お化け!? どら、見せてみ」
由希はアルメルスをドアスコープまで持ち上げた。
「・・・はんかくせ者(※「馬鹿」の意味) よく見てみ。紗南でねえか」
「へ? 紗南ちゃん?」
由希はもう一度ドアスコープを覗いた。
色白の肌に長い髪で、俯いた姿はどこか幽霊にも見えたが、よくみてみると確かに紗南だ。
水色のパジャマを着た紗南は愛用の枕を抱きしめている。急いでドアを開けて中に入れてあげた。
「さ、紗南ちゃん。どうしたの、こんな時間に・・・」
紗南は由希を見つめると、突然涙ぐんで
「う、うう。ごめんなさい。怖くてどうしても・・・」
話を聞いてみると、それなりの事情があった。
紗南の母親である結衣は、どうしても外せない出張で留守にしているという。
「本当に一人でいいの?」と心配する結衣に対し、
「うん。私ももう3年生だし。一人でも大丈夫だよ」
と紗南は胸を張って言ったという。
しかし、夜中突然目が覚めてしまい、初めて過ごす一人の夜に耐えきれずに由希の部屋に来たという。
「そういうことなら仕方がないね。じゃあ泊まってもいいよ」
「は、はい。お邪魔します。なんかさっき、叫び声が聞こえましたけど・・・」
「うーん? 気のせいじゃない? ね、アルちゃん」と由希は嘯く。
「んだ。オラは何にも聞いてね」
(幽霊と間違ったなんて、とても言えないよ・・・)
ベッドに入るや否や、紗南は安心したのかすぐに眠ってしまった。
(この前のお風呂もそうだけど、これって法的には大丈夫なんだろうか)
由希はそんなことを考えながら目を閉じて、再び夢の中にへと戻って行った。
ヨーロッパのホラー映画はハリウッドにはない独特の不気味さがあるので、由希は好きだった。
今回見た映画は、薄幸の美少年が周囲の人間を殺めていく内容のサイコスリラーだ。
(やっぱりホラーは心霊物よりもサイコ系の方が精神的にくるな・・・)
午後11時、由希はテレビの電源を切り、洗面所に向かった。
ホラー映画を見た後なので、鏡を見るのも怖く、部屋中の電気を全部つけて壁に背をつけながら歯を磨いた。
そして恐る恐る寝室のベッドに向かい、布団の中に入った。
(眠れない・・・ まあ私、もう社畜じゃないし別にいいんだけどさ・・・)
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
それから一時間ほどが経った頃、突然玄関のチャイムが鳴った。
「ひっ・・・!!」
折角眠りにつきかけていた由希は起き上がった。
「誰・・・?こんな夜中に」
冴えた目で恐る恐る玄関に向かい、ドアスコープを覗いた。
「ぎゃあああああああああああああああああ!!」
思わず由希は叫び、尻餅をついてしまった。
「なしたんだ由希ちゃん!強盗でも来たのか!」
アルメルスが由希の叫び声を聞きつけ、書庫からトコトコと走ってきた。
「お、お化けが・・・」
「お化け!? どら、見せてみ」
由希はアルメルスをドアスコープまで持ち上げた。
「・・・はんかくせ者(※「馬鹿」の意味) よく見てみ。紗南でねえか」
「へ? 紗南ちゃん?」
由希はもう一度ドアスコープを覗いた。
色白の肌に長い髪で、俯いた姿はどこか幽霊にも見えたが、よくみてみると確かに紗南だ。
水色のパジャマを着た紗南は愛用の枕を抱きしめている。急いでドアを開けて中に入れてあげた。
「さ、紗南ちゃん。どうしたの、こんな時間に・・・」
紗南は由希を見つめると、突然涙ぐんで
「う、うう。ごめんなさい。怖くてどうしても・・・」
話を聞いてみると、それなりの事情があった。
紗南の母親である結衣は、どうしても外せない出張で留守にしているという。
「本当に一人でいいの?」と心配する結衣に対し、
「うん。私ももう3年生だし。一人でも大丈夫だよ」
と紗南は胸を張って言ったという。
しかし、夜中突然目が覚めてしまい、初めて過ごす一人の夜に耐えきれずに由希の部屋に来たという。
「そういうことなら仕方がないね。じゃあ泊まってもいいよ」
「は、はい。お邪魔します。なんかさっき、叫び声が聞こえましたけど・・・」
「うーん? 気のせいじゃない? ね、アルちゃん」と由希は嘯く。
「んだ。オラは何にも聞いてね」
(幽霊と間違ったなんて、とても言えないよ・・・)
ベッドに入るや否や、紗南は安心したのかすぐに眠ってしまった。
(この前のお風呂もそうだけど、これって法的には大丈夫なんだろうか)
由希はそんなことを考えながら目を閉じて、再び夢の中にへと戻って行った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる