まじかる⭐︎ふれぐらんす -魔法少女と3LDK-

むくみん

文字の大きさ
11 / 13
第二章「傷だらけの汐苑」

04

しおりを挟む
その頃、紗南は由希と共に市立図書館の隣にある森林公園にいた。
紗南は尊敬する由希からお勧めの本を教えてもらったりして、共に楽しい時間を過ごした。
よく晴れた日だったので、二人は木陰のベンチで一緒に本を読んでいた。鮮やかな緑色の葉桜が爽やかに揺れ、頁の上に滑らかな光と影の模様を走らせる。
春と夏のいいところ取りのような心地いい陽気だ。

 「今日はいっぱい借りちゃいました。返却期限まで全部読めるかな」
と言いつつも、紗南はすでに借りた本の内の一冊を読み切っていた。
 「ふふ。紗南ちゃんなら多分読みきれると思うよ。ああ、いい天気だなあ。莉愛ちゃんも来れば良かったのに」
 「莉愛ちゃん、あんまり本は・・・・。!! 由希さん、伏せて!!」

紗南はいきなり由希に強くぶつかり、地面に押し倒した。
その刹那、二人の横をビームがよぎる。
二人が座っていたベンチは跡形もなく吹き飛んでしまった。

 「な、何!?」
突然の出来事に由希は狼狽する。
すると、病院着の汐苑が手に纏った大剣を持ちながら、ゆっくりと空から降りてきた。
薄手の病院着に大剣というギャップが不気味に見える。

 「やあ。穂積」
 「え・・・ 汐苑!? なんで・・・」
いつも隣の席で見る爽やかな笑顔の汐苑とは違い、目を血走らせている。
わずかに口角を上げ、不適な笑みを浮かべた。

その瞬間、汐苑の絵画を見た時の違和感が紗南にはわかった気がした。
表向きの感情に抑圧された、闇の感情・・・。

 「よくビーム、躱せたな」
 「くっ・・・ 由希さん、逃げてください!」
紗南はすかさず指を鳴らすと、手首につけ、戦闘モードに変身した。
その姿を見て、汐苑の顔に動揺が走る。
 「まさかお前も妙な力を持っているとはな・・・ 尚更お前を殺さなければいけないということが分かったぞ。クラスメートのよしみだ。楽に死なせてやる」

汐苑は大剣の先を紗南に向けると、そこからまたも青白い光線が勢いよく放出された。
紗南はそれを交わしきれず直撃してしまい、ビームに押される。
 「うわあっ!」
が、かろうじて態勢を立て直し、地面に踏ん張って立ち尽くした。 

 「しぶといやつだ」
汐苑は一瞬で紗南の目の前に移り、大剣を紗南に振りかざした。
 「ううっ・・・」
素早くバリアでガードし、汐苑の攻撃を受け止め続ける。
剣とバリアの摩擦で発せられるエネルギーはすざましく、遠くで見守っていた由希は吹き飛ばされそうになってしまう。

今までの戦いで経験したことがないほどに剣は強い威力を持っており、紗南は防御だけで精一杯だ。
 「どうだ! 世界で僕が一番強いんだ!」
 「わ、私が何をしたっていうの・・・」
 「今まで僕は何をやっても一番だったんだ。徒競争だって、テストだって。それをお前ごときに越えさせてたまるかっ!」
 (汐苑って、あまり話したことなかったけど、こんなに器が小さくてプライドだけが大きい男だったなんて・・・)

とうとうバリアの力が弱まってしまう。
 (そ、そんな。バリアが・・・)
 「食らえっ!」
汐苑の放った渾身の一撃でバリアは砕け散り、紗南は吹き飛んだ。
魔法のステッキもその衝撃で折れてしまった。
 (あっ、ステッキが・・・)

 「紗南ちゃん!」
傍で見ていた由希は思わず叫ぶ。
紗南は着地に失敗して、地面に思い切り体を打ち付けてしまった。
並の人間ならばとっくに死んでもおかしく無い。

 「すんごお~い・・・・・!!」
遠くの物陰で、フードの男は戦いの様子を眺めていた。
汐苑の攻撃力が想像以上であったので、思わず感嘆の声を漏らしてしまうほどだ。

紗南はゆっくりと起き上がって、汐苑を見つめる。
汐苑は剣にエネルギーをを溜め、紗南の首元に剣先を当てた。
 「止めだ。最後に祈れ」
 「汐苑、ちょっとごめんね」
 「え」
紗南はふと汐苑の胸元に人差し指を当て、軽く押す動作をした。

 「ぐわっ!!」
すると突然、汐苑は遠くまで吹き飛ばされた。
まるで見えない大型ダンプに激突されたかのような勢いだ。

そしてそのまま土手に激突した後、立ち上がるも地面に崩れ落ちた。

 「確かあれって・・・」
一部始終を見ていた由希は思い出した。
数日前、紗南についてアルメルスと話し合った時だった。

・・・・・

・・・・・

・・・・・

 「まあ、あいつは優しすぎるところあるからな。シーッ。攻撃魔法との相性は悪いんだわ。その分、回復魔法だとか自然魔法が向いてるわけ」
 「じゃ、じゃあもし紗南ちゃんだけの時に敵の襲撃にあったら・・・」
 「大丈夫だあ。そのあたりはちゃんと対策してあっから。シーッ」

 「・・・あいつは敵から食らったダメージを、攻撃力に変換することができんだあ。それなりに負担がかかるから、一回使ったらしばらくは使えないけどな。シーッ。あ、やっと取れたで」

・・・・・

・・・・・

・・・・・

汐苑は100%の力を込めて紗南に攻撃を当て続けていた。
そのダメージに加え、紗南が渾身の一撃で吹き飛んだ際に地面に体を打ち付けた衝撃も全て攻撃力に変換されている。
例え強化人間になった汐苑でも、こればかりは耐えられない。

だが、やはり体に大きな負担がかかり、紗南は倒れ込んでしまった。
身体中に力が入らず、手を握ることすらもままならない。
目の前の光景が歪み始める。
 「ゆ、由希さん・・・ 逃げて・・・」
 「グハァ・・・ッ まだだ! 僕はまだ戦える!」

傷だらけの汐苑は、腕を押さえながら紗南に向かう。
体がすでに限界を迎えているので、一歩一歩がとても重い。
思うように動かない腕で剣を拾い、ゆっくりと紗南に振りかざした。

 (もうダメだ・・・ みんな、ごめんなさい。私、ここまでかもしれない)
紗南は人生最後になるかもしれない光景を見届けた後、ゆっくりと目を閉じて運命を受け入れる態勢になった。
頬を一条の涙が伝う。



 「ちょっとあんた! 紗南に何してんの!」


 「ポゲッ!!」

汐苑は叫び声をあげ、再び吹き飛ばされた。

紗南が目を開けると、ゆっくりと魔法少女姿の莉愛が空中から降りてきた。
 「やれやれ。間に合ったね」
 「り、莉愛ちゃん。ありがとう・・・」
 「かなりエネルギーを使ったみたいだね。アルちゃん、お願い」
 「お安いこった」
莉愛のポシェットの中に入っていたアルメルスが、紗南の腕に手を触れた。
すると、真っ青だった紗南の顔にみるみる生気が戻ってくる。
 「あと、これも折れちゃって・・・」
と、紗南は魔法のステッキを差し出した。
 「心配すんでね。このくらいすぐに治せるで」
アルメルスがエネルギーを送ると、たちまちステッキは元どおりに復元された。
 
 「由希姉も怪我はない?」
 「う、うん。それよりもあの子は・・・」

 「こいつ! よくも紗南を!」
莉愛は目を回している汐苑の頭をポカポカと殴る。
 「莉愛ちゃん。・・・もういいよ」と紗南。
 「へ? 紗南、何言ってんの。早くいつもみたいにとっ捕まえて田之上さんに引き渡さないと」
 「いいんだ。私、その人のこと許してあげることにした。アルちゃん。アパートまでワープしてもらってもいい?」
 「お、おう。おめーがそれでいいのなら・・・」
 「由希さんも。一緒に帰りましょう」
 「う、うん」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

処理中です...