ダークナイト・ヴァンパイア ~宵闇の王子~

哀楽

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第二章:動き出す終末の歯車

第三話:俺を好きになってくれ

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 古代遺跡を思わせるような石造りの島は、白くざらついた岩で道を舗装してある。
 ところどころでこぼこしていて、俺は何度か転びそうになった。
「あいつ、どこに行ったんだよ・・・・・・」
 任務を放り出すような奴ではないのに、急にいなくなるなんて。
 電話をしても繋がらず、このままでは島中を回ることになる。
「・・・・・・もしかして、何か事件に巻き込まれてないだろうな」
 嫌な考えが頭をよぎる。
 でも、今は昼間だ。俺たちの敵であるヴァンパイアは、エルヴィスを除いて昼間は動けない。
 奴らが太陽光をものともせず、這い上がってきていれば別だが。
 もう一度周辺を見て回ろうとした時、見覚えのある白髪が、力なく歩いてくるのが見えた。
「・・・・・・ローガン!」
 地面を見つめて歩いていたローガンは、俺の声が聞こえたのか、顔を上げた。
「ああ・・・・・・ライアンか」
「どこに行ってたんだよ。心配で探してたんだぞ」
 ローガンのもとへ駆け寄ると、彼は今にも泣きそうな顔で、不器用そうに笑った。
「悪い。ちょっと、知った顔を見かけた気がして、つい追っちゃってさ・・・・・・」
「なんだ、この島に知り合いでもいたのか?」
 俺が訊ねると、ローガンは小さく頷いた。
「ーー俺の妹を殺したヴァンパイアを見かけた気がしてさ」
「え・・・・・・」
 たしかローガンが十歳の時、家へ押し入ってきたヴァンパイアに、妹が惨殺された。
 奴らは人狼の血を好んでは飲まないが、長年の宿敵という理由で、無抵抗の人狼を殺すことはよくある。
 当時両親が不在だった為、幼い兄妹ではヴァンパイアに太刀打ちできなかったそうだ。
 ローガンも大けがを負い、今も背中に古い裂傷の痕が残っているのを、風呂で見たことがあった。
「悪い、昼間に王族でもないヴァンパイアがいるわけないのに、任務放り出して・・・・・・」
「いいよ。団長も怒ってなかったし、戻ろう」
 ひとまず団長にローガンを見つけた事をメールで伝え、俺はローガンの腕を掴んで歩きだそうとした。
 その時、握った腕を強く後ろに引かれ、俺は後ろからローガンに抱きしめられた。
 俺は慌ててローガンの腕を引きはがそうとしたが、びくともしない。こんなところを誰かに見られたら羞恥で死んでしまうが、幸い周囲に人は居なかった。
「ちょ、ローガン? どうしーー」
「お前は、怒ってるだろ? この前、キスしたこと」
 耳元でささやかれ、俺の体が自然と震える。
「俺、本当はあんな事するつもりじゃなかった。でも・・・・・・」
「もういいよ。怒ってないから、今まで通り相棒として仲良くやろう」
 本心だった。
 これで、ローガンと元通りになれると信じていた。
 安心して体の力を抜くと、ローガンはすがってくるように俺の体を強く抱きしめ返した。
「ごめん。俺、もう相棒は嫌だ」
「なんでだよ・・・・・・!?」
「お前が信頼してくれるのは嬉しい。でも、俺はそんなものが欲しい訳じゃない!」
 突然体を回転させられ、俺はローガンと向き合う形になった。
 背後にいて見えなかったが、ローガンの目は潤んでいた。頬が赤く紅潮し、熱に侵されているように見える。
 俺は、自分の体が震えているのにようやく気づいた。
「ローガン・・・・・・?」
「ライアン。俺は、お前に惚れてる」
「ーー!」
 真正面から抱きしめられ、俺はローガンの肩に顔をうずめる形になった。
「お前、正気か? 俺は男だぞ・・・・・・」
「男だから好きになっちゃだめなのか?」
「そうじゃなくて・・・・・・」
 言いよどむ俺を静かに見下ろし、ローガンは急に顔を近づけてきた。
 後頭部を手で押さえられ、俺は顔を反らせなくなった。
 ローガンの息づかいが間近に感じられる。
 見慣れているはずの相棒の顔が、まるで別人のように凛々しく感じられた。
「そうじゃなくて、なんだ?」
「お、お前は俺にとってかけがえのない相棒であって、恋愛対象には入らない・・・・・・」
「ーーそうか」
 ローガンは寂しそうに笑いーー表情を消し去った。
「お前を困らせたくないから我慢してた。でも、もうキスしちまったから・・・・・・我慢しない」
「待っーーローガン!」
「俺を恋愛対象として見てくれ。そのためなら、俺は何でもする・・・・・・!」
 強引に後頭部を引き寄せられ、ローガンは噛みつくように唇を合わせてきた。
「ふ、やめ・・・・・・っ」
 必死に顔を背けようとしても、ローガンの大きな手ががっちりと俺の頭を押さえて離さない。
 何度も角度を変えて唇を貪られ、酸素がうまく吸えなかった。
 一瞬唇が離れた時、大きく息を吸い込む。すると、それを待っていたかのように、ローガンの舌が口内に滑り込んできた。
 ぬるりとした、まるで生き物のような舌が俺の口内を蹂躙する。
 舌を押し返して抵抗を試みるが、それすらうまくからめ取られ、舌を根から引き抜かんばかりに吸われた。
「あ、ああ・・・・・・」
 悲しくもないのに涙が溢れ、下肢から力が抜けていく。
 耐えきれずローガンの腕に体重を預けると、彼は俺の体をきつく抱きしめ、ようやく唇を離した。
 ようやく頭を解放され、俺は嗚咽を漏らしながら俯いた。
「ふざけるな・・・・・・! こんな事されたら、もうお前を相棒と思えなくなる・・・・・・!」
「かまわない。むしろ、その方がいい」
「お前が相棒じゃなかったら、俺は誰に背中を預ければいいんだよ!」
 勝手な言い分ばかり押しつけられ、もうローガンが何を考えているか分からない。必死に彼との関係を修復しようとしていたのに、彼はそれを簡単にはねのけた。
「俺の相棒はお前だけなんだ。だから、相棒のままでいてくれよ・・・・・・!」
「ライアン・・・・・・ごめん、俺・・・・・・」
 ローガンが初めて悲しそうに表情をゆがめた。
 俺の涙を指先で拭い、何か言おうと口を開く。
 その時、
「発情期の人狼は、場所も選ばず盛るのですね」
 涼やかで凛とした声が、間近で聞こえた。
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