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第二章:動き出す終末の歯車
第七話:予感
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「ーーお加減はいかがですか、エルヴィス様」
もう何度目かも分からないデズモンドの問いに、エルヴィスは鉛のように重い瞼を持ち上げた。
「いいとは言えないな・・・・・・」
「王族の血を召し上がっていない上に、温存していた能力を使用されたからでしょう」
ぐったりとソファに沈み込んでいるエルヴィスに近づき、デズモンドは静かに片膝を付いた。
いつも超然としていたエルヴィスが、一人では立ち上がることすらままならなくなってしまうほど弱っている。それが彼の眷属達ーー特にデズモンドは不安で仕方なかった。
「エルヴィス様・・・・・・能力を使ってまで、あの人間を守りたかったのですか?」
「私も驚いている。自分の身を犠牲にして守るべきなのは、我が眷属達だというのに」
デズモンドの頬を撫でながら、エルヴィスは微笑した。
「心配ない。王族は弱っても死にはしない」
「そういう事ではありません!」
エルヴィスの手を握り、デズモンドは表情を歪めた。
「あなた様には、いつも穏やかに過ごしていただきたいのに・・・・・・」
「これは自業自得と言うものだ。お前達が気に病むことでは・・・・・・」
不意に、エルヴィスの頭がふらりと傾いだ。
ソファから崩れ落ちそうになった彼を、デズモンドが慌てて支える。
「エルヴィス様!」
「平気だ」
そうは言うが、エルヴィスの体は震えていた。
デズモンドは自分の着衣の胸元を広げると、自らの爪で、首筋の皮を薄く切った。真っ赤な血が盛り上がるようにあふれ出し、デズモンドの胸部まで流れていく。
それを見たエルヴィスの瞳孔が猫のように細まった。
「・・・・・・何をしている」
「眷属たるもの、主が健やかである為なら全てを捧げる覚悟です」
「よせ、仲間の血は吸いたくない」
エルヴィスは顔を背けたが、血のにおいはまとわりついて離れない。
甘美な香りが食欲をそそり、ヴァンパイアとしての本能をじょじょに呼び覚ましていく。
喉を押さえて食欲に耐えるエルヴィスの前に、デズモンドは身を乗り出した。
両腕で主の体を抱きしめ、ふさがりつつある傷口に、唇を誘う。
目の前で溢れる鮮血から目が離せないエルヴィスを抱きしめ、デズモンドは穏やかに微笑んだ。
「今だけご無礼をお許し下さい。そしてどうぞ、心行くまでお飲み下さい」
「ーーっ」
欲求を押さえ込もうと懸命に戦っていたエルヴィスだが、ついにデズモンドの肩を掴み、溢れた血を舐めとる。
そして、ふさがったばかりの傷口に牙を突き立てた。
どろりとした、甘く芳醇な液体が胃へ嚥下されるたび、エルヴィスの体に力がわき上がる。
王族の血ほど満足感と回復力はないが、能力を使用して疲弊していた体にはこの上ない活力源だった。
デズモンドの体に支障をきたさない程度に血を飲み終え、エルヴィスはゆっくり体を離した。
「・・・・・・すまない、もう大丈夫だ」
顎に伝った血を拭い、エルヴィスは微笑した。
先ほどまで重かった体が、少し軽くなった気がする。
全快するには、やはり王族の血が飲みたいところだが、それはもう叶わない。
王族を増やそうと思っても、つがいとなる王族ヴァンパイアがいない。本当に、エルヴィスだけが最後に取り残された王族だ。
「お前のおかげで体調もよくなった。ありがとう」
体が楽になって、ようやく周囲に気を向ける余裕ができた。
眷属達の声、地上の喧噪、そして愛しい兎の様子ーー。
「・・・・・・ん?」
「どうかされましたか」
「・・・・・・危ない」
「は?」
首を傾げるデズモンドの横を通り過ぎ、エルヴィスは上着を手に取る。
「エルヴィス様、どちらに行かれるのですか! まだお体がーー!」
「ここの事は任せた。少し私用で出てくる」
「無理をしてはいけません! お待ち下さい・・・・・・エルヴィス様!」
制止するデズモンドを振り切り、エルヴィスは地下を駆けだした。
もう何度目かも分からないデズモンドの問いに、エルヴィスは鉛のように重い瞼を持ち上げた。
「いいとは言えないな・・・・・・」
「王族の血を召し上がっていない上に、温存していた能力を使用されたからでしょう」
ぐったりとソファに沈み込んでいるエルヴィスに近づき、デズモンドは静かに片膝を付いた。
いつも超然としていたエルヴィスが、一人では立ち上がることすらままならなくなってしまうほど弱っている。それが彼の眷属達ーー特にデズモンドは不安で仕方なかった。
「エルヴィス様・・・・・・能力を使ってまで、あの人間を守りたかったのですか?」
「私も驚いている。自分の身を犠牲にして守るべきなのは、我が眷属達だというのに」
デズモンドの頬を撫でながら、エルヴィスは微笑した。
「心配ない。王族は弱っても死にはしない」
「そういう事ではありません!」
エルヴィスの手を握り、デズモンドは表情を歪めた。
「あなた様には、いつも穏やかに過ごしていただきたいのに・・・・・・」
「これは自業自得と言うものだ。お前達が気に病むことでは・・・・・・」
不意に、エルヴィスの頭がふらりと傾いだ。
ソファから崩れ落ちそうになった彼を、デズモンドが慌てて支える。
「エルヴィス様!」
「平気だ」
そうは言うが、エルヴィスの体は震えていた。
デズモンドは自分の着衣の胸元を広げると、自らの爪で、首筋の皮を薄く切った。真っ赤な血が盛り上がるようにあふれ出し、デズモンドの胸部まで流れていく。
それを見たエルヴィスの瞳孔が猫のように細まった。
「・・・・・・何をしている」
「眷属たるもの、主が健やかである為なら全てを捧げる覚悟です」
「よせ、仲間の血は吸いたくない」
エルヴィスは顔を背けたが、血のにおいはまとわりついて離れない。
甘美な香りが食欲をそそり、ヴァンパイアとしての本能をじょじょに呼び覚ましていく。
喉を押さえて食欲に耐えるエルヴィスの前に、デズモンドは身を乗り出した。
両腕で主の体を抱きしめ、ふさがりつつある傷口に、唇を誘う。
目の前で溢れる鮮血から目が離せないエルヴィスを抱きしめ、デズモンドは穏やかに微笑んだ。
「今だけご無礼をお許し下さい。そしてどうぞ、心行くまでお飲み下さい」
「ーーっ」
欲求を押さえ込もうと懸命に戦っていたエルヴィスだが、ついにデズモンドの肩を掴み、溢れた血を舐めとる。
そして、ふさがったばかりの傷口に牙を突き立てた。
どろりとした、甘く芳醇な液体が胃へ嚥下されるたび、エルヴィスの体に力がわき上がる。
王族の血ほど満足感と回復力はないが、能力を使用して疲弊していた体にはこの上ない活力源だった。
デズモンドの体に支障をきたさない程度に血を飲み終え、エルヴィスはゆっくり体を離した。
「・・・・・・すまない、もう大丈夫だ」
顎に伝った血を拭い、エルヴィスは微笑した。
先ほどまで重かった体が、少し軽くなった気がする。
全快するには、やはり王族の血が飲みたいところだが、それはもう叶わない。
王族を増やそうと思っても、つがいとなる王族ヴァンパイアがいない。本当に、エルヴィスだけが最後に取り残された王族だ。
「お前のおかげで体調もよくなった。ありがとう」
体が楽になって、ようやく周囲に気を向ける余裕ができた。
眷属達の声、地上の喧噪、そして愛しい兎の様子ーー。
「・・・・・・ん?」
「どうかされましたか」
「・・・・・・危ない」
「は?」
首を傾げるデズモンドの横を通り過ぎ、エルヴィスは上着を手に取る。
「エルヴィス様、どちらに行かれるのですか! まだお体がーー!」
「ここの事は任せた。少し私用で出てくる」
「無理をしてはいけません! お待ち下さい・・・・・・エルヴィス様!」
制止するデズモンドを振り切り、エルヴィスは地下を駆けだした。
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