ダークナイト・ヴァンパイア ~宵闇の王子~

哀楽

文字の大きさ
17 / 38
第三章:蘇る過去

第三話:番(つがい)

しおりを挟む
 この室内庭園を含め、俺の城の中は人が自由に歩けるよう護衛兵に命令してある。
 王宮や王弟一家の敷地内への進入は許されないが、その分この場内ではくつろげるようにと、配慮しているつもりだ。
 だからこうして人が来るのも珍しくはないのだが、タイミングが悪かった。
「おい貴様! 今この庭は我々の会談の場だぞ! 誰が入っていいとーー!」
「従兄様、落ち着いて下さい」
 今にも抜剣しそうな従兄をなだめ、俺は少年に駆け寄った。
 彼は、よく俺のもとへ会いに来る子供だった。
 驚いて体を縮こまらせた少年は、俺を見るとわずかに笑みを浮かべた。
「すみません、お話中だったのに・・・・・・」
「今終わったところだ。どうした?」
「また読めない文字があったので、教えていただこうかと・・・・・・」
 少年はちらっとエルヴィスを伺い、消え入りそうな声でそう言った。
「あの、お忙しいならまた改めますけど・・・・・・」
「大丈夫だよ。先に私の部屋へ行っていなさい」
 頭を撫でてやると、少年は満面の笑みを浮かべ、庭から急いで出て行った。
 その後ろ姿を見送っていると、横にエルヴィスが立った。
「おい、今の子供・・・・・・」
「ああ。彼は人狼だよ」
「やっぱりな。さっきお前に差し出した子供も白髪に碧眼だったが、人狼じゃなかった」
「碧眼は生まれつきだけど、髪はいくらでも染められるからね」
 子供をヴァンパイアから守るため、親が子供の髪の毛を白く染める事は、人間にはよくあることだ。
 だが、目だけはごまかせないから、すぐに分かる。
 先ほどの男児のように、運良く碧眼で生まれてきても、匂いで人間だと分かってしまう。
「今の子供は正真正銘、人狼だよ。もう十年になるかな・・・・・・焼けた村に一人取り残されていたから、連れてきたんだ」
「人狼まで育てるとは、物好きにもほどがある。人狼は敵対者だぞ」
「でも、今の彼は子供だよ。ちょっと困った事もあるけどね」
「なんだ?」
「ーー彼は、いつか俺の眷属になりたいんだって」
 人狼がヴァンパイアになる可能性はゼロだ。
 少年もそれは理解しているが、彼の意志は強かった。
 古い文献を読みあさっては、眷属になる方法を探っている。
 分からないことや、少しでも可能性がある文献を見つけるたび、俺の所へ頻繁に訊ねてくるのだ。
「俺を親のように慕い、眷属として側にいたいと思ってくれるのは嬉しい。でも・・・・・・」
 俺が言葉を続けようとすると、エルヴィスの腕が俺の体に回り、背後から抱きしめられた。
 俺の肩に鼻先を埋め、もがくことを許さないように、きつく締めてくる。
「従兄さん?」
「ーーお前はあいつの親である前に、俺の番(つがい)だ。忘れないでくれ」
「・・・・・・でも、俺はまだ従兄さんをそういう目で見れない」
「お前が生まれたときから番になることは決められていた。俺はずっと、お前をそういう目で見ているんだぞ」
 王族は血を守るため、血族内での番が決められていた。 異性同士の番がくめない場合もあるが、雌雄同体である王族には、性別はさして関係がない。
 同姓の番の場合は、相手に合わせて雌雄どちらかの器官が発達し、交配は可能となる。
 俺とエルヴィスの場合、エルヴィスが雄、俺は雌の器官が発達していた。
 そうして何千年と種を守ってきたのだが、幼い頃から実の兄同然に慕ってきた従兄を番として見るのは、そう簡単ではなかった。
「俺は、従兄さんのことをまだ・・・・・・」
「本当に焦らすのが好きだな、お前」
 体の方向を変えられ、エルヴィスと向き合う形になる。
 血への欲求ではなく、情欲によって熱された眼差しが、俺の体を貫く。
 冷たいはずの手が熱を持ったように汗ばんだ。
 頬を両手で包まれ、エルヴィスの顔が俺へ近づく。
「に、従兄さん・・・・・・待って」
「いつまで待てばいい。お前はもうすぐ成人して王位を継ぎ、世継ぎを作らないといけないんだぞ」
「それまでには、心の整理をつけるよ。だからーー」
 従兄の顔がまともに見られない。
 赤面してうつむくと、エルヴィスは俺の顎をつまみ、上に上げた。
 炎のように燃え立つ瞳と視線が交差したと思えば、唇が重なっていた。
 かすめる程度の軽い口づけだったが、俺は驚いて両目を大きく見開く。それをからかうように、従兄は微笑していた。
「急かしてすまなかった。ーーお前はまだ若い。大人になるまで待つよ」
「・・・・・・ありがとう、従兄さん」
 生まれてから何百年という年月を生きてきたが、いつのひもエルヴィスの腕の中は、心地がいい。
 スポットライトのように空から差し込む日光の中、俺とエルヴィスはしばらく抱き合っていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―

たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。 以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。 ​「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」 トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。 ​しかし、千秋はまだ知らない。 レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

処理中です...