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第三章:蘇る過去
第十話:運命の日
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「ーーよく似合っていますよ、殿下」
鏡越しに微笑むイザーク。
裾の長い、真っ白な式典用の衣装に身を包んだ俺は、笑みすら浮かべず、黙って一つ頷いた。
全身を包み込むけだるさは、思いの他重量のある衣装のせいか、貧血だからか、それともーー。
もう、どうでもいいことだ。
俺の体など、無駄に寿命の長い入れ物にすぎないのだから。
わずかに嘆息を漏らすと、俺の髪を編んで結い上げていたイザークが、表情を曇らせた。
「式典が終われば、血をご用意いたします。もうしばし、ご辛抱ください」
「・・・・・・別に、血が飲みたい訳じゃない」
「さ、左様でございますか」
そう。血への欲求は失せた。
今あるのは、成就し得ないであろう、父への殺意。
そして、マースを救えなかった自分への怒りだ。
本当なら暴れ周り、マースの仇をとってやりたいが、臆病者の俺にはできなかった。
ただ親の言葉に従う、扱いやすい子供。
父は、そんないい子な俺だけを愛していたに違いない。
現に、先ほどの成人式でも、一切祝われなかった。
仕上げが、戴冠式だ。
父とエルヴィスとともに民衆へ笑顔を振りまき、父の記憶を継ぐ。
記憶を継いだら、俺も父と同じように人狼を虐げるのだろうか。
俺という人格が、なくなってしまうのだろうか。
「・・・・・・殿下、そろそろご準備を」
「ああ、分かった」
イザークの手を借り、俺は椅子から立ち上がった。
衣装の重みがずっしりとのし掛かり、今すぐにでも脱いでしまいたい。
式典会場である中庭に向かおうと足を踏み出すと、ちょうど父とエルヴィスが入ってきた。
「準備はできているか」
「はい、父上」
「ぐずぐずするな。さっさと会場に行くぞ」
永眠を控えた父は、喪服を着用していた。
服の裾を翻して出て行く父を見送り、控えていたエルヴィスが前に進み出る。
従兄は真っ白なスーツを着こなしていた。窓から差し込む月光が髪を照らし、光をまとう従兄は本当に美しかった。
「体は大丈夫か?」
「うん。あとで記憶を引き継ぐために、父さんの血を飲めるし」
「飲み干してやれ」
王に従順な従兄にしては珍しく、父に対する皮肉をこぼした。
俺はそれが意外でーー嬉しくて、今日初めて微笑んだ。
「行こう、従兄さん」
「では、お手をどうぞ、殿下」
わざとらしく、恭しく手を差し出す従兄。
俺は静かに手を重ね、部屋から出た。
中庭に面した部屋にいたため、眷属達の歓声がすでに聞こえる。
先に退位演説を行っている父の声も、よく聞こえた。
長く引きずる羽織の裾をイザークに持ってもらい、俺とエルヴィスも中庭に出た。
すると、今まで以上の歓声が響きわたり、俺たちを包み込んだ。
壇上にいる父の元へ歩み寄り、俺とエルヴィスも眷属達に手を振った。
「今日は、新しい我らが王の誕生する日だ。古き王は去り、新たな王をはじめとするーー諸君らの時代がくるのである!」
拳を点へ高く突き上げ、父が声高らかに言った。
中庭を埋め尽くす眷属達も、同じように拳を突き上げ、雄叫びを上げる。
俺はエルヴィスに手を引かれて前へ出ると、見上げてくる眷属達に向かって微笑んだ。
「私はまだ幼く、未熟な王族です。しかし、誰もが幸せに暮らせる世界を必ず作り上げると、ここに誓います。そのためにも、皆の力を貸してください」
拍手、声援ーー俺を賛美する声が中庭を埋め尽くす。
父は兵士から王冠を受け取ると、俺の横に立った。
この王冠をかぶった時、俺は真に王となる。
「では、王位を王子へ譲ろう」
俺は少し身を屈めた。
その時、背中の毛が逆立つような咆哮が轟いた。
同時に、城の一部が爆発する。
白煙が舞い上がり、その煙を突き抜けて、何かが飛び出した。
「なんだ・・・・・・!?」
白煙が邪魔で影しか見えないが、四足歩行の生き物が、こちらへ向かってきている。
集まっていた眷属達をなぎ倒し、時に噛みついて投げ飛ばす。
そうして近寄ってきた生き物は、四足歩行から、じょじょに二足歩行へと変わっていった。
「あれは・・・・・・」
「殿下、お下がりください」
イザークが俺を後ろへ追いやるが、俺の意識は謎の乱入者にのみ注がれていた。
白煙をまとい、ゆっくり歩いてくる屈強な体。
凛とした表情。
間違いない。あれはーー!
「マース・・・・・・!」
紛れもない、マースだ。
体に傷は一つもない。
投獄される以前の、美しい姿の彼がいた。
だが、目だけは空色ではなく、赤紫色に変化していた。
まるで、ヴァンパイアと人狼が混ざったように、赤と青が溶け合っていた。
「マース、生きていたんだな!」
嬉しくて駆け寄ろうとしたが、エルヴィスが後ろ手に俺を制止した。
「待て、王子。あいつは何かおかしい」
「おかしいってーー」
その瞬間、俺とエルヴィスの横を鋭い風が通りすぎた。
風を追って振り返ると、
「ーーち、父上・・・・・・?」
父は、両目を大きく見開いていた。
その喉にはマースが食らいついていて、牙が根本まで突き刺さっている。
俺たちの胴体視力は眷属たちよりも上のはずなのに、マースの動きが全く見えなかった。
護衛兵は呆然と立ち尽くし、目の前の光景を飲み込めていない。
エルヴィスが誰よりも先に駆けだし、マースに剣を振り上げた。
だが、剣はマースの首に触れる直前で制止していた。
それは従兄が斬撃を止めたからではない。
ヴァンパイア最強と謳われるエルヴィスの剣を、マースは人差し指と親指で剣腹をつまみ、止めていたのだ。
「なーー!」
動揺するエルヴィスを見下ろし、マースは口角をつり上げる。
剣腹を摘んだまま、空いていた左手をエルヴィスに突き出した。
「ぐ・・・・・・っ」
鋭く伸びた爪がエルヴィスの胸を貫いた。
マースが勢いよく手を引き抜くと、従兄の胸から血が吹き出す。
「がはーーっ」
「従兄さん!」
崩れ落ちる従兄。
マースは父を噛んだまま高く跳躍し、離れた場所に着地する。
もがく父を地面に何度も叩きつけ、血を吸い続けていた。
頭を割られた父は、糸の切れた人形のように動かない。
マースは父の体が干上がるまで血を吸い、最後に頭を叩き潰した。
「王陛下・・・・・・!」
エルヴィスが呻く。
俺が呆然と見つめる中、父の体はただの血だまりとなり、蒸発していった。永眠以外で、初めて王族が死んだ。
「ウオオオアアアアア!」
マースは、空を大きく仰ぎ、大声で雄叫びを上げる。
我に返った護衛兵たちは怒号を上げ、一斉にマースへ襲いかかった。
護衛兵たちは果敢に武器を振るうが、マースの腕が無造作に一閃されただけで、首が次々とはね飛ばされる。
返り血で真っ赤に濡れたマースは、俺を見つめると、優しく笑った。
「殿下、再びお会いできましたね」
そう言って笑う様子は、記憶にあるマースのままなのに、彼の体から沸き上がる得体の知れない何かに、俺はおののいた。
「マース、貴様・・・・・・!」
負傷した胸を押さえながら、従兄が立ち上がる。
再び剣を構えたが、立っているのがやっとの状態だった。
「貴様、死んだのではなかったのか!」
「一度死にましたよ。ですが、陛下と殿下のどちらかの血が、私を生き返らせてくれたのです。きっと、殿下でしょうね」
己の手を見つめ、マースは目を閉じる。
その隙を狙い、エルヴィスが剣を突き出した。
寸分の狂いもなく、心臓に向けて。
だが、俺はとっさに走り出し、両腕を広げてマースの前に飛び出した。
「やめて、従兄さん!」
「!?」
エルヴィスは慌てて剣の軌道を反らし、動きを止める。
切っ先は俺の頬をかすめた。
「王子、なぜマースをかばった!? そいつは王を殺し、私を刺したーー正真正銘の反逆者だぞ!」
「だ、だって・・・・・・」
俺自身、この数分で繰り広げられた惨劇を見ていたから、マースの所行が許されないことなのは理解している。
本来であれば討伐するべき対象なのにーー。
「・・・・・・俺にはできない。だってマースはーー!」
直後、俺の首筋に激痛が走った。
何かが突き刺さり、血管を破る。
「な、に・・・・・・?」
ゆっくり振り返ると、マースが俺の首を噛んでいた。
俺の血を貪っていた。
最近血を摂取していなかった俺の体から、残り少ない血がどんどん失われていく。
「王子!」
エルヴィスが俺を助けようと、マースに飛びかかる。
マースは俺を抱きしめると、軽やかに後ろへ飛びすさった。
「や、あ・・・・・・」
全身の血が失われそうになったとき、マースの牙が抜けた。
体が言うことをきかず、手足がだらりと垂れ下がる。
顔を上げようとしても、自力で上げられなかった。
「マ・・・・・・ス、なんで・・・・・・」
「お許しください、殿下。あなたを守るためなんです」
そう言って、俺の体を優しく地面へ横たえる。
霞む視界にマースの顔が映り、俺は必死に右手を持ち上げた。
彼がこれから何をしようとしているのか分からないが、嫌な予感が胸を締める。
「やめろ・・・・・・頼むから」
「ご安心下さい。あなたと二人で暮らせる世界を作って差し上げますから」
マースの体から殺気が立ち上る。
周囲に群がる護衛兵に、まるで餌を見るような恍惚とした眼差しを向けた。
「ははははは! 死にさらせえええ!」
ほぼ同時に、マースと護衛兵たちは駆けだした。
銀製の武器が体に刺さろうと、マースは倒れない。
傷つけられた分だけ、兵士を葬っていく。
「マース・・・・・・」
お願いだ。これ以上兵士を殺さないで。
お前が傷つくところも見たくない。
俺が願ったのは、こんな惨状の中で高笑いするお前の姿じゃない。
「はははは! 死ね、死ね死ね死ね! 俺を苦しめたヴァンパイアどもは、この世からいなくなれ!」
兵士が死ぬ。
共闘するエルヴィスも傷が増えていく。血を失いすぎたせいで、先ほど受けた胸の傷はほとんど回復していない。 このままでは従兄の身も危ない。
マース、頼むから止まってくれ。正気を取り戻してくれ。
ーーこれ以上、俺の大切な物を殺さないでくれ。
「ぐ・・・・・・っ」
止めなくては。あの子のためにも、ヴァンパイアのためにも。
なのに・・・・・・どうして俺の足は動いてくれない?
地面に座り込んだまま、マースが引き起こす惨劇を見ていることしかできない?
血が少ないなんて、大した問題ではないのに。
ーー分かり切っている。この光景を目にしても、俺はマースに武器を向ける覚悟ができないのだ。
「殿下、ご無事ですか!?」
土を強く握りしめて葛藤しているところへ、イザークが駆け寄ってきた。
「イザーク・・・・・・」
「急ぎこの場を離れましょう。どこか安全な場所へお連れします」
俺を抱き上げ、その場を離れようとする。
俺は激しく首を横に振り、イザークにしがみついた。
「殿下?」
「マースを止めなくては・・・・・・」
立ちふさがる兵士の体を引き裂き、はらわたを踏みつぶしーー。マースの駆け抜けた後に残るのは、肉片だけ。
誰も止めることができず、銀狼は咆哮を上げる。
鼓膜を破らんばかりの声量だ。
それに応えるように、遠くから狼の遠吠えが聞こえてきた。
近い。
耳を澄ませば、大勢が押し寄せる足音も聞こえる。
マースが出てきた場所から、捕らえられていた人狼も這い出てきて、戴冠式を見物しに来ていたヴァンパイアを襲った。
「イザーク、降ろしてくれ。マースを止める・・・・・・!」
「そのようなお体で何をおっしゃいますか! 陛下が亡くなられた今、あなたまで死なせるわけにはいきません!」
そうだ、父さん・・・・・・。
和解もしないまま死んでしまった。
記憶も引き継げなかった。
俺はどうすればいい? 不完全なまま、王となるのか?
「父上・・・・・・」
「とにかく、移動しましょう。それから対策をーー」
口早にそう話していたイザークだが、突然息をのんだ。
俺を抱く腕から震えが伝わってくる。
重い瞼を上げると、俺たちの前にマースが立ちふさがっていた。
片手に内蔵らしきものを握り、にたりと笑った。
「俺の殿下をどこに連れて行くおつもりですか、イザークさん」
「殿下、失礼!」
イザークは俺の体を後方に投げ、剣をひるがえす。
彼も俺の側近を努めるほどだから、戦闘力は折り紙付きだ。
だが、イザークの剣が空を裂くより早く、マースの腕が横なぎに振るわれる。
そのたった一動作で、イザークの胴体が袈裟がけに斬られた。
「あ・・・・・・っ」
イザークの体が傾斜する。
俺のすぐ側に、倒れ込む。
骨が見えるほど深い傷を負わされ、イザークは呆然と目を見開いていた。
「イザーク!」
俺は必死にもがき、イザークの側へ這い寄る。
同じように、マースも俺に歩み寄った。
無様に地面を這いずる俺の側にしゃがみ込み、微笑した。
「殿下、もう少しですからお待ち下さい。ここが片づけば、広い外の世界へお連れできるんです」
「俺はそんなの望んでない! ただお前や従兄さん達と、一緒にいたかっただけだ・・・・・・!」
「・・・・・・ああ、なるほど。エルヴィス殿下ですか」
マースの目が、ギロリと横を向いた。
彼が睨む先には、侵入してきた人狼を相手に奮闘しているエルヴィスの姿がある。
「私がエルヴィス殿下を殺せば、殿下の憂いはなくなると言うことですね?」
「違う、そうじゃない!」
「ご安心下さい。ここにいるヴァンパイアを全て排除しますから」
マースは地面を蹴った。
姿が掻き消えるほど素早く地面を疾走し、エルヴィスを襲う。ヴァンパイア最強であるはずの従兄を翻弄し、剣を弾き飛ばす。
そして、塞がりつつあった従兄の胸を、マースは再度貫いた。
「従兄さん!」
マースが腕を振るうと、エルヴィスの体は地面に放り出される。
狂気に満ちた笑みを浮かべ、マースは俺を見据えた。
「殿下、私たち二人が幸せに暮らせる世界を作りましょう。ヴァンパイアどもを駆逐し、あなたと笑って暮らせる世界を!」
マースはエルヴィスを踏みつける。
従兄の口から血が吐き出される。
やめろ。
やめろ。やめろ。
やめろやめろやめろ!
「ーーやめろおおお!」
俺の体から膨大な炎がわき上がり、中庭を包み込んだ。
地面を這うように広がり、城に火の手が燃え移る。
夜空が血のように赤く色づいた。
俺は立ち上がる。
体が軽い。
貧血で揺れていた頭も、嘘のように冴えている。
手近に転がっていた剣を拾うと、俺は一歩踏み出した。
軽く踏み出したつもりだったが、一瞬でマースの眼前に移動していた。
驚愕するマースを体当たりで弾き飛ばす。
周辺にいる人狼には炎をしかけ、蹴散らした。
「王子、お前能力を・・・・・・!」
「従兄さん、立って。イザークをお願いします」
「早く力を押さえろ! そんな弱った体で全力を出したら、死ぬぞ!」
従兄は俺の足首をつかみ、必死の形相でそう言った。
「早く力をーー!」
「マースの目的は俺です。俺が奴らを引きつけるから、従兄さんはイザークを連れて逃げて」
「お前一人で相手にできる数じゃない!」
「今の兄さんよりは戦えるよ。それに、マースのことは俺が片を付けなきゃ」
祖父の代から始まった実験の被害者であるマース達。
彼らのためにも、止めなくては。
「お願い従兄さん、逃げて。もう、誰も死なせたくない」
俺が強く見据えると、エルヴィスは言葉を飲み込み、立ち上がった。
「・・・・・・馬鹿野郎」
エルヴィスは唇を噛み、翼を広げてイザークの元まで滑しけた。
彼に人狼たちが近づかないよう炎で牽制していると、エルヴィスに抱えられながら、イザークが叫んでいた。
「嫌です、殿下! 殿下あああああ!」
少し、泣きそうになった。
この敵の群を前にして、俺はどのくらい持つだろう。
まるで走馬燈のように、今日までの思い出が脳裏を通り過ぎていく。
それを振り払うようにイザークの方を振り返り、俺は微笑んだ。
「ーー生きろ、イザーク」
炎が通路のように天へ伸びていく。
エルヴィスは高く舞い上がり、残ったのはイザークの悲しい絶叫だけ。
遠くへ消えていく二人を見つめていると、瓦礫の中からマースが立ち上がった。
「殿下・・・・・・なぜです。なぜあいつらを・・・・・・!」
「なあマース。覚えてるか? 俺たちが最初に出会った時のこと」
あの時も、周囲は火に包まれていた。
片腕で抱き上げられるほど、マースは小さかったっけ。
「あれはきっと、今日という火を予言していたんだ。お前に出会ったことが、始まりだったんだよ」
「ええ。私たちが幸せになるための世界の幕開けだったんですね」
「いいや。ーー二人で死ぬ事だ」
俺は剣を構え、優しさなど見る影もなくなったマースの元へ駆けだした。
父やエルヴィスを圧倒したマースを相手に、どこまで戦えるか分からない。だが、今戦うべきは俺だ。
正確に心臓を狙い、剣を突き出す。
だが、マースの顔を見たとたん、戦意が揺れた。
俺の剣は心臓を外れ、マースの左肩に突き刺さる。
互いを見つめ合い、俺は柄(つか)から手を離した。
マースの体に腕を回し、そっと抱きしめる。
炎がとぐろを巻き、俺たちを包み込んだ。
俺の体が、ところどころ塵のようにほころび始めている。
「一緒に逝こう、マース」
このまま炎に焼かれ、一緒に果てよう。
それが俺にできる、お前へのつぐないだ。
俺は、腕の中でおとなしく目を閉じているマースを抱き寄せ、目を閉じたーー。
「ーーああ、そうだった」
ふと瞼を上げ、俺はつぶやく。
長い長い夢から現実に戻ってきた。
埋もれていた記憶は幻のようだったが、三百年前たしかに経験したことだ。
すべて真実。
「思い出した・・・・・・俺は・・・・・・」
灯りの乏しい部屋で、天井を見上げた。
「俺は、あの時マースと・・・・・・」
「そうです」
「!」
得体の知れない部屋の暗がりから、団長ーーマースが進み出た。
「思い出してしまわれたのですね、殿下」
そう言い、マースは俺に手を伸ばした。
鏡越しに微笑むイザーク。
裾の長い、真っ白な式典用の衣装に身を包んだ俺は、笑みすら浮かべず、黙って一つ頷いた。
全身を包み込むけだるさは、思いの他重量のある衣装のせいか、貧血だからか、それともーー。
もう、どうでもいいことだ。
俺の体など、無駄に寿命の長い入れ物にすぎないのだから。
わずかに嘆息を漏らすと、俺の髪を編んで結い上げていたイザークが、表情を曇らせた。
「式典が終われば、血をご用意いたします。もうしばし、ご辛抱ください」
「・・・・・・別に、血が飲みたい訳じゃない」
「さ、左様でございますか」
そう。血への欲求は失せた。
今あるのは、成就し得ないであろう、父への殺意。
そして、マースを救えなかった自分への怒りだ。
本当なら暴れ周り、マースの仇をとってやりたいが、臆病者の俺にはできなかった。
ただ親の言葉に従う、扱いやすい子供。
父は、そんないい子な俺だけを愛していたに違いない。
現に、先ほどの成人式でも、一切祝われなかった。
仕上げが、戴冠式だ。
父とエルヴィスとともに民衆へ笑顔を振りまき、父の記憶を継ぐ。
記憶を継いだら、俺も父と同じように人狼を虐げるのだろうか。
俺という人格が、なくなってしまうのだろうか。
「・・・・・・殿下、そろそろご準備を」
「ああ、分かった」
イザークの手を借り、俺は椅子から立ち上がった。
衣装の重みがずっしりとのし掛かり、今すぐにでも脱いでしまいたい。
式典会場である中庭に向かおうと足を踏み出すと、ちょうど父とエルヴィスが入ってきた。
「準備はできているか」
「はい、父上」
「ぐずぐずするな。さっさと会場に行くぞ」
永眠を控えた父は、喪服を着用していた。
服の裾を翻して出て行く父を見送り、控えていたエルヴィスが前に進み出る。
従兄は真っ白なスーツを着こなしていた。窓から差し込む月光が髪を照らし、光をまとう従兄は本当に美しかった。
「体は大丈夫か?」
「うん。あとで記憶を引き継ぐために、父さんの血を飲めるし」
「飲み干してやれ」
王に従順な従兄にしては珍しく、父に対する皮肉をこぼした。
俺はそれが意外でーー嬉しくて、今日初めて微笑んだ。
「行こう、従兄さん」
「では、お手をどうぞ、殿下」
わざとらしく、恭しく手を差し出す従兄。
俺は静かに手を重ね、部屋から出た。
中庭に面した部屋にいたため、眷属達の歓声がすでに聞こえる。
先に退位演説を行っている父の声も、よく聞こえた。
長く引きずる羽織の裾をイザークに持ってもらい、俺とエルヴィスも中庭に出た。
すると、今まで以上の歓声が響きわたり、俺たちを包み込んだ。
壇上にいる父の元へ歩み寄り、俺とエルヴィスも眷属達に手を振った。
「今日は、新しい我らが王の誕生する日だ。古き王は去り、新たな王をはじめとするーー諸君らの時代がくるのである!」
拳を点へ高く突き上げ、父が声高らかに言った。
中庭を埋め尽くす眷属達も、同じように拳を突き上げ、雄叫びを上げる。
俺はエルヴィスに手を引かれて前へ出ると、見上げてくる眷属達に向かって微笑んだ。
「私はまだ幼く、未熟な王族です。しかし、誰もが幸せに暮らせる世界を必ず作り上げると、ここに誓います。そのためにも、皆の力を貸してください」
拍手、声援ーー俺を賛美する声が中庭を埋め尽くす。
父は兵士から王冠を受け取ると、俺の横に立った。
この王冠をかぶった時、俺は真に王となる。
「では、王位を王子へ譲ろう」
俺は少し身を屈めた。
その時、背中の毛が逆立つような咆哮が轟いた。
同時に、城の一部が爆発する。
白煙が舞い上がり、その煙を突き抜けて、何かが飛び出した。
「なんだ・・・・・・!?」
白煙が邪魔で影しか見えないが、四足歩行の生き物が、こちらへ向かってきている。
集まっていた眷属達をなぎ倒し、時に噛みついて投げ飛ばす。
そうして近寄ってきた生き物は、四足歩行から、じょじょに二足歩行へと変わっていった。
「あれは・・・・・・」
「殿下、お下がりください」
イザークが俺を後ろへ追いやるが、俺の意識は謎の乱入者にのみ注がれていた。
白煙をまとい、ゆっくり歩いてくる屈強な体。
凛とした表情。
間違いない。あれはーー!
「マース・・・・・・!」
紛れもない、マースだ。
体に傷は一つもない。
投獄される以前の、美しい姿の彼がいた。
だが、目だけは空色ではなく、赤紫色に変化していた。
まるで、ヴァンパイアと人狼が混ざったように、赤と青が溶け合っていた。
「マース、生きていたんだな!」
嬉しくて駆け寄ろうとしたが、エルヴィスが後ろ手に俺を制止した。
「待て、王子。あいつは何かおかしい」
「おかしいってーー」
その瞬間、俺とエルヴィスの横を鋭い風が通りすぎた。
風を追って振り返ると、
「ーーち、父上・・・・・・?」
父は、両目を大きく見開いていた。
その喉にはマースが食らいついていて、牙が根本まで突き刺さっている。
俺たちの胴体視力は眷属たちよりも上のはずなのに、マースの動きが全く見えなかった。
護衛兵は呆然と立ち尽くし、目の前の光景を飲み込めていない。
エルヴィスが誰よりも先に駆けだし、マースに剣を振り上げた。
だが、剣はマースの首に触れる直前で制止していた。
それは従兄が斬撃を止めたからではない。
ヴァンパイア最強と謳われるエルヴィスの剣を、マースは人差し指と親指で剣腹をつまみ、止めていたのだ。
「なーー!」
動揺するエルヴィスを見下ろし、マースは口角をつり上げる。
剣腹を摘んだまま、空いていた左手をエルヴィスに突き出した。
「ぐ・・・・・・っ」
鋭く伸びた爪がエルヴィスの胸を貫いた。
マースが勢いよく手を引き抜くと、従兄の胸から血が吹き出す。
「がはーーっ」
「従兄さん!」
崩れ落ちる従兄。
マースは父を噛んだまま高く跳躍し、離れた場所に着地する。
もがく父を地面に何度も叩きつけ、血を吸い続けていた。
頭を割られた父は、糸の切れた人形のように動かない。
マースは父の体が干上がるまで血を吸い、最後に頭を叩き潰した。
「王陛下・・・・・・!」
エルヴィスが呻く。
俺が呆然と見つめる中、父の体はただの血だまりとなり、蒸発していった。永眠以外で、初めて王族が死んだ。
「ウオオオアアアアア!」
マースは、空を大きく仰ぎ、大声で雄叫びを上げる。
我に返った護衛兵たちは怒号を上げ、一斉にマースへ襲いかかった。
護衛兵たちは果敢に武器を振るうが、マースの腕が無造作に一閃されただけで、首が次々とはね飛ばされる。
返り血で真っ赤に濡れたマースは、俺を見つめると、優しく笑った。
「殿下、再びお会いできましたね」
そう言って笑う様子は、記憶にあるマースのままなのに、彼の体から沸き上がる得体の知れない何かに、俺はおののいた。
「マース、貴様・・・・・・!」
負傷した胸を押さえながら、従兄が立ち上がる。
再び剣を構えたが、立っているのがやっとの状態だった。
「貴様、死んだのではなかったのか!」
「一度死にましたよ。ですが、陛下と殿下のどちらかの血が、私を生き返らせてくれたのです。きっと、殿下でしょうね」
己の手を見つめ、マースは目を閉じる。
その隙を狙い、エルヴィスが剣を突き出した。
寸分の狂いもなく、心臓に向けて。
だが、俺はとっさに走り出し、両腕を広げてマースの前に飛び出した。
「やめて、従兄さん!」
「!?」
エルヴィスは慌てて剣の軌道を反らし、動きを止める。
切っ先は俺の頬をかすめた。
「王子、なぜマースをかばった!? そいつは王を殺し、私を刺したーー正真正銘の反逆者だぞ!」
「だ、だって・・・・・・」
俺自身、この数分で繰り広げられた惨劇を見ていたから、マースの所行が許されないことなのは理解している。
本来であれば討伐するべき対象なのにーー。
「・・・・・・俺にはできない。だってマースはーー!」
直後、俺の首筋に激痛が走った。
何かが突き刺さり、血管を破る。
「な、に・・・・・・?」
ゆっくり振り返ると、マースが俺の首を噛んでいた。
俺の血を貪っていた。
最近血を摂取していなかった俺の体から、残り少ない血がどんどん失われていく。
「王子!」
エルヴィスが俺を助けようと、マースに飛びかかる。
マースは俺を抱きしめると、軽やかに後ろへ飛びすさった。
「や、あ・・・・・・」
全身の血が失われそうになったとき、マースの牙が抜けた。
体が言うことをきかず、手足がだらりと垂れ下がる。
顔を上げようとしても、自力で上げられなかった。
「マ・・・・・・ス、なんで・・・・・・」
「お許しください、殿下。あなたを守るためなんです」
そう言って、俺の体を優しく地面へ横たえる。
霞む視界にマースの顔が映り、俺は必死に右手を持ち上げた。
彼がこれから何をしようとしているのか分からないが、嫌な予感が胸を締める。
「やめろ・・・・・・頼むから」
「ご安心下さい。あなたと二人で暮らせる世界を作って差し上げますから」
マースの体から殺気が立ち上る。
周囲に群がる護衛兵に、まるで餌を見るような恍惚とした眼差しを向けた。
「ははははは! 死にさらせえええ!」
ほぼ同時に、マースと護衛兵たちは駆けだした。
銀製の武器が体に刺さろうと、マースは倒れない。
傷つけられた分だけ、兵士を葬っていく。
「マース・・・・・・」
お願いだ。これ以上兵士を殺さないで。
お前が傷つくところも見たくない。
俺が願ったのは、こんな惨状の中で高笑いするお前の姿じゃない。
「はははは! 死ね、死ね死ね死ね! 俺を苦しめたヴァンパイアどもは、この世からいなくなれ!」
兵士が死ぬ。
共闘するエルヴィスも傷が増えていく。血を失いすぎたせいで、先ほど受けた胸の傷はほとんど回復していない。 このままでは従兄の身も危ない。
マース、頼むから止まってくれ。正気を取り戻してくれ。
ーーこれ以上、俺の大切な物を殺さないでくれ。
「ぐ・・・・・・っ」
止めなくては。あの子のためにも、ヴァンパイアのためにも。
なのに・・・・・・どうして俺の足は動いてくれない?
地面に座り込んだまま、マースが引き起こす惨劇を見ていることしかできない?
血が少ないなんて、大した問題ではないのに。
ーー分かり切っている。この光景を目にしても、俺はマースに武器を向ける覚悟ができないのだ。
「殿下、ご無事ですか!?」
土を強く握りしめて葛藤しているところへ、イザークが駆け寄ってきた。
「イザーク・・・・・・」
「急ぎこの場を離れましょう。どこか安全な場所へお連れします」
俺を抱き上げ、その場を離れようとする。
俺は激しく首を横に振り、イザークにしがみついた。
「殿下?」
「マースを止めなくては・・・・・・」
立ちふさがる兵士の体を引き裂き、はらわたを踏みつぶしーー。マースの駆け抜けた後に残るのは、肉片だけ。
誰も止めることができず、銀狼は咆哮を上げる。
鼓膜を破らんばかりの声量だ。
それに応えるように、遠くから狼の遠吠えが聞こえてきた。
近い。
耳を澄ませば、大勢が押し寄せる足音も聞こえる。
マースが出てきた場所から、捕らえられていた人狼も這い出てきて、戴冠式を見物しに来ていたヴァンパイアを襲った。
「イザーク、降ろしてくれ。マースを止める・・・・・・!」
「そのようなお体で何をおっしゃいますか! 陛下が亡くなられた今、あなたまで死なせるわけにはいきません!」
そうだ、父さん・・・・・・。
和解もしないまま死んでしまった。
記憶も引き継げなかった。
俺はどうすればいい? 不完全なまま、王となるのか?
「父上・・・・・・」
「とにかく、移動しましょう。それから対策をーー」
口早にそう話していたイザークだが、突然息をのんだ。
俺を抱く腕から震えが伝わってくる。
重い瞼を上げると、俺たちの前にマースが立ちふさがっていた。
片手に内蔵らしきものを握り、にたりと笑った。
「俺の殿下をどこに連れて行くおつもりですか、イザークさん」
「殿下、失礼!」
イザークは俺の体を後方に投げ、剣をひるがえす。
彼も俺の側近を努めるほどだから、戦闘力は折り紙付きだ。
だが、イザークの剣が空を裂くより早く、マースの腕が横なぎに振るわれる。
そのたった一動作で、イザークの胴体が袈裟がけに斬られた。
「あ・・・・・・っ」
イザークの体が傾斜する。
俺のすぐ側に、倒れ込む。
骨が見えるほど深い傷を負わされ、イザークは呆然と目を見開いていた。
「イザーク!」
俺は必死にもがき、イザークの側へ這い寄る。
同じように、マースも俺に歩み寄った。
無様に地面を這いずる俺の側にしゃがみ込み、微笑した。
「殿下、もう少しですからお待ち下さい。ここが片づけば、広い外の世界へお連れできるんです」
「俺はそんなの望んでない! ただお前や従兄さん達と、一緒にいたかっただけだ・・・・・・!」
「・・・・・・ああ、なるほど。エルヴィス殿下ですか」
マースの目が、ギロリと横を向いた。
彼が睨む先には、侵入してきた人狼を相手に奮闘しているエルヴィスの姿がある。
「私がエルヴィス殿下を殺せば、殿下の憂いはなくなると言うことですね?」
「違う、そうじゃない!」
「ご安心下さい。ここにいるヴァンパイアを全て排除しますから」
マースは地面を蹴った。
姿が掻き消えるほど素早く地面を疾走し、エルヴィスを襲う。ヴァンパイア最強であるはずの従兄を翻弄し、剣を弾き飛ばす。
そして、塞がりつつあった従兄の胸を、マースは再度貫いた。
「従兄さん!」
マースが腕を振るうと、エルヴィスの体は地面に放り出される。
狂気に満ちた笑みを浮かべ、マースは俺を見据えた。
「殿下、私たち二人が幸せに暮らせる世界を作りましょう。ヴァンパイアどもを駆逐し、あなたと笑って暮らせる世界を!」
マースはエルヴィスを踏みつける。
従兄の口から血が吐き出される。
やめろ。
やめろ。やめろ。
やめろやめろやめろ!
「ーーやめろおおお!」
俺の体から膨大な炎がわき上がり、中庭を包み込んだ。
地面を這うように広がり、城に火の手が燃え移る。
夜空が血のように赤く色づいた。
俺は立ち上がる。
体が軽い。
貧血で揺れていた頭も、嘘のように冴えている。
手近に転がっていた剣を拾うと、俺は一歩踏み出した。
軽く踏み出したつもりだったが、一瞬でマースの眼前に移動していた。
驚愕するマースを体当たりで弾き飛ばす。
周辺にいる人狼には炎をしかけ、蹴散らした。
「王子、お前能力を・・・・・・!」
「従兄さん、立って。イザークをお願いします」
「早く力を押さえろ! そんな弱った体で全力を出したら、死ぬぞ!」
従兄は俺の足首をつかみ、必死の形相でそう言った。
「早く力をーー!」
「マースの目的は俺です。俺が奴らを引きつけるから、従兄さんはイザークを連れて逃げて」
「お前一人で相手にできる数じゃない!」
「今の兄さんよりは戦えるよ。それに、マースのことは俺が片を付けなきゃ」
祖父の代から始まった実験の被害者であるマース達。
彼らのためにも、止めなくては。
「お願い従兄さん、逃げて。もう、誰も死なせたくない」
俺が強く見据えると、エルヴィスは言葉を飲み込み、立ち上がった。
「・・・・・・馬鹿野郎」
エルヴィスは唇を噛み、翼を広げてイザークの元まで滑しけた。
彼に人狼たちが近づかないよう炎で牽制していると、エルヴィスに抱えられながら、イザークが叫んでいた。
「嫌です、殿下! 殿下あああああ!」
少し、泣きそうになった。
この敵の群を前にして、俺はどのくらい持つだろう。
まるで走馬燈のように、今日までの思い出が脳裏を通り過ぎていく。
それを振り払うようにイザークの方を振り返り、俺は微笑んだ。
「ーー生きろ、イザーク」
炎が通路のように天へ伸びていく。
エルヴィスは高く舞い上がり、残ったのはイザークの悲しい絶叫だけ。
遠くへ消えていく二人を見つめていると、瓦礫の中からマースが立ち上がった。
「殿下・・・・・・なぜです。なぜあいつらを・・・・・・!」
「なあマース。覚えてるか? 俺たちが最初に出会った時のこと」
あの時も、周囲は火に包まれていた。
片腕で抱き上げられるほど、マースは小さかったっけ。
「あれはきっと、今日という火を予言していたんだ。お前に出会ったことが、始まりだったんだよ」
「ええ。私たちが幸せになるための世界の幕開けだったんですね」
「いいや。ーー二人で死ぬ事だ」
俺は剣を構え、優しさなど見る影もなくなったマースの元へ駆けだした。
父やエルヴィスを圧倒したマースを相手に、どこまで戦えるか分からない。だが、今戦うべきは俺だ。
正確に心臓を狙い、剣を突き出す。
だが、マースの顔を見たとたん、戦意が揺れた。
俺の剣は心臓を外れ、マースの左肩に突き刺さる。
互いを見つめ合い、俺は柄(つか)から手を離した。
マースの体に腕を回し、そっと抱きしめる。
炎がとぐろを巻き、俺たちを包み込んだ。
俺の体が、ところどころ塵のようにほころび始めている。
「一緒に逝こう、マース」
このまま炎に焼かれ、一緒に果てよう。
それが俺にできる、お前へのつぐないだ。
俺は、腕の中でおとなしく目を閉じているマースを抱き寄せ、目を閉じたーー。
「ーーああ、そうだった」
ふと瞼を上げ、俺はつぶやく。
長い長い夢から現実に戻ってきた。
埋もれていた記憶は幻のようだったが、三百年前たしかに経験したことだ。
すべて真実。
「思い出した・・・・・・俺は・・・・・・」
灯りの乏しい部屋で、天井を見上げた。
「俺は、あの時マースと・・・・・・」
「そうです」
「!」
得体の知れない部屋の暗がりから、団長ーーマースが進み出た。
「思い出してしまわれたのですね、殿下」
そう言い、マースは俺に手を伸ばした。
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