ダークナイト・ヴァンパイア ~宵闇の王子~

哀楽

文字の大きさ
29 / 38
第四章:逃避

第五話:再会

しおりを挟む
「ローガン、痛い・・・・・・っ」
「こんなの、いつも団長にされてる事に比べれば優しいもんだろ」
 ローガンの手が、俺の服に伸びた。
 掛け合わせの部分を引きちぎり、俺の腹に手を沿わす。
「おい・・・・・・っ」
「団長がお前に触れるたび、俺すごく嫉妬してた。俺も、同じようにしたい」
 じらすように脇腹を撫で、ローガンはにやりと笑う。
 くすぐったいのと気持ち悪さで、俺は顔を横に背けた。
 昔、発情期を迎えたエルヴィスに一度だけ押し倒され、同じようなことをされた。
 あの時も恐怖と悪寒しかしなかったが、今よりも優しかった。我に返ったエルヴィスはその場で土下座し、自分で首をはねようとしたほどだ。
 ああ、エルヴィス・・・・・・お前に会いたい。
「エルヴィス従兄さ・・・・・・っ」
「へえ? あいつの助け、待ってるんだ」
 ローガンの声が冷たい。
 腹を撫でている手が、俺の皮膚に爪を立てる。
 突き刺すような痛みに、俺は思わずうめいた。
 ローガンは嬉しそうに顔をほころばせ、俺のズボンを膝まで降ろした。
「なにすーー!」
「俺の前で二度と"あいつ"の名前が出せないようにしてやるよ」
 体が馬鹿みたいに震える。
 うつろな目をして笑っているのは、本当にあのローガンなのだろうか。
 こいつはこんな奴じゃない。もっと優しくて、馬鹿で、信頼できる奴なのにーー。
「ロ、ローガン」
「団長にも、ヴァンパイアにも渡さない。お前は俺のだ」
 ローガンの手が下着に掛かった瞬間、けたたましい警報が鳴り響いた。
 本部が建設されて初めて鳴るーー侵入者を知らせる警報だ。
《総員、戦闘準備! 本部二階にヴァンパイア二体が出現! 繰り返す、戦闘準備ーー!》
 アナウンスの声に、ローガンは驚いて天井を見上げた。
「ヴァンパイアが・・・・・・!?」
 チャンスだ。
 俺はローガンを蹴ってはね飛ばすと、出口へ走った。
 逃げなくては。
 どこでもいい。
 本部の外へーー。
 だが、扉にたどり着く直前、俺の体が後ろへ引っ張られた。
 必死に逃げようとしていたため忘れてたがーー俺の首には、チェーンがつながれている。
 床に寝ころんだまま、ローガンがチェーンを握っていた。
「どこ行くんだよ、ライアン」
 再びチェーンを強く引かれ、俺の体が後ろへ傾く。
 床に倒れた際頭を打ち、軽くめまいがした。
 意識は飛ばなかったが、いっそ飛んでくれた方が幸せだったかもしれない。
 倒れた俺に覆い被さり、ローガンがほくそ笑んでいる。
「逃がさねえよ。団長に食われる前に、俺がお前を食ってやる」
 ローガンの長い舌が、俺の体を舐め回す。
 執拗に胸ばかり責められ、俺の体が小刻みに震え始めた。
「う、ん・・・・・・っ」
「声殺してんじゃねえよ」
「・・・・・・っ」
 絶対、声を出してなるものか。
 心の伴っていない行為に、屈したくはない。
 口の中に血の味がしようと、強く唇をかみ続ける。
 ふと、ローガンの腰に携帯されている短剣が目に入った。
 あれを、なんとかして奪えばーー。
「何考えてんの?」
「ぐ・・・・・・っ」
「逃げようなんて、考えない方がいいよ。今のお前じゃ、俺にすら勝てねえもん」
 その通りだ。
 今の俺には何もできない。
 ひ弱で、逃げ腰の臆病者。
 だけど、何もしないままこいつらの思い通りになるのは許せない。
 俺は唇を掻むのをやめ、ローガンの首筋に思い切り噛みついた。
「う、あああああっ」
 ローガンが悲鳴を上げて俺から離れる。
 彼の体がのけぞっている間に、俺は素早く短剣を奪い、ローガンから離れた。
 お互い息が荒い。
 これからどうする?
「ローガン、俺の首の鎖を解け!」
「馬鹿か。そんな子供じみた脅しで、俺が解くわけないだろ」
「・・・・・・じゃあ」
「!?」
 俺は短剣を、自分の喉に添えた。
「解いてくれないなら、今ここで自分の首を切る!」
「そ、そんな事できるわけーー!」
「お前等の言いなりになるぐらいなら、俺は死ぬ!」
 短剣を持つ手が震える。
 本当は切るつもりはない。
 でも、こうでもしないと俺が本気だと言うことが伝わらない。
「・・・・・・っ」
 俺は、意を決してナイフを持つ手に力を込めた。
 ーーその時、部屋唯一の窓が爆発するように割れ、巨大な蝙蝠が侵入してきた。
 いや、蝙蝠じゃない。
 月を背に、皮膜の張った翼を室内で広げるのは、俺が会いたくてたまらなかった人ーー。
「ーーようやく見つけたぞ、輪が愛しい兎」
「・・・・・・エルヴィス!」
 美しい従兄が広げる腕の中に、俺は迷うことなく飛び込んだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―

たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。 以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。 ​「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」 トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。 ​しかし、千秋はまだ知らない。 レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

目立たないでと言われても

みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」 ****** 山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって…… 25話で本編完結+番外編4話

処理中です...