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第五章:この愛、永遠に
第三話:真昼の初夜
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初夜について、教育係から作法は学んでいたが・・・・・・いざその時になると、勉強した内容など脳内からすっ飛んでしまった。
「だ、抱くって、そんな・・・・・・」
「嫌か?」
「嫌じゃない、けど・・・・・・怖い」
「怖いか・・・・・・」
エルヴィスはため息にもとれる笑みを漏らし、俺から離れた。
「それならやめておこう。お前に無理強いはしたくない」
「や、待って・・・・・・!」
俺は体を起こし、エルヴィスの胸にすがりついた。
そうしないと、彼がこの部屋を出て行ってしまう。
「違うんだ、エルヴィス・・・・・・!」
「俺はお前に怖い思いをさせたくない。ただでさえ、俺が助け出すまであの男に・・・・・・」
マースに無理矢理快楽を与えられ、血を吸われていたことを、彼には話してあった。
怒りを押し殺すように押し黙ったエルヴィスを、俺はただ見上げた。
「エルヴィス・・・・・・」
「お前の最初の相手になってやれなかったのは心残りだが、せめて奴から与えられた不快な感覚を上書きしてやれたらとーー」
「・・・・・・え、ちょっと待って。最初の相手? 俺はマースにその・・・・・・されてないというか・・・・・・」
「なに? だってお前・・・・・・」
「じょ、上半身は触られたけど、他は何も・・・・・・だから、エルヴィスが、本当に最初の相手だよ」
いや、最初の相手は彼以外にいない。
マースに組み敷かれても、そこだけは守り通した。
不安そうに瞳を揺らす兄の頬に手を伸ばし、俺は微笑した。
「確かに怖い気持ちもあるけど、俺はあなたに・・・・・・抱かれたい」
「・・・・・・本当に?」
「うん」
三百年程度じゃない。
彼は俺が幼い頃からーーいや、俺が生まれてくる前から、ずっと「この時」を待っていてくれた。
発情期を迎えようとも、普通であれば屈してしまいそうな衝動に、エルヴィスは幾度となく耐えてきたのだ。
俺はもう、充分待ってもらった。
空いてしまった三百年の時を今、紡ぎたい。
「ここは響くから、場所を移そう」
俺を気遣ってか、エルヴィスは頬を赤く染めながら言った。
確かに、地下は良く音が響く。
キスだけであんなに声が漏れたのだから、繋がったらーー考えるだけで恥ずかしい。
でも、地上はマースの部下が連日かけずり回っている。
今あがるのは危ないのではないだろうか。
「どこに行くの?」
「いいから、おいで」
エルヴィスに手を引かれ、いぶかしみながらも俺はあとをついて行った。
***
地下を出て、エルヴィスに連れてこられたのは、森の奥深くに建てられた洋館だった。
ただし、ただの洋館ではない。地中深く掘り進められた空間に、洋館以外にも多くの建物が建設途中だった。
「エルヴィス、ここは・・・・・・?」
「いつまでも配下達を下水道に住まわせるわけにはいかないからな。数年前から作り始めていたんだ」
確かに、多くのヴァンパイアが建設を続けている。
「全員お前の眷属か?」
「いいや、ここにいるのは俺の眷属達が血分けして、ヴァンパイア化させた者達だ」
血分けを行って人をヴァンパイアへ変えることができるのは、王族ヴァンパイアをのぞけば、王族ヴァンパイアから直接血を分けられた者のみ。
ここにいるヴァンパイアはざっと見ても数十人はいる。
それだけ人間をヴァンパイアに変えたという事だ。
「むやみに人を変えちゃ駄目だ。生態系が崩れる」
「そういう甘いところは相変わらずだな、お前」
責める響きはなく、むしろ優しい声音で言いながら、エルヴィスは俺の頬を撫でた。
「お前は私たちの希望。ここで王国づくりに励む配下達も、みなお前のために働いているようなものだ」
確かに、俺たちが小道を歩いていても、配下達は動かしていた手を止め、笑顔でお辞儀してくれた。
特に、俺には胸に手を当てて忠誠を誓う仕草すらしてくれる。
彼らはきっと、俺が王国を再建し、再び地上をヴァンパイアが支配できる日を夢見ているのだろう。
俺という新国王に、期待を抱いている。
とてつもないプレッシャーだ。
俺なんか、何もできない名だけの王なのにーー。
「さあ、中に入ろう。いつまでも洋館の前に立っているわけにはいかないだろう」
「あーーそうだね」
煉瓦を積み上げて制作された洋館を見上げ。俺は慌てて頷いた。
今は王国の事は考えないようにしよう。
だって、俺は今エルヴィスと結ばれるために、ここに来たのだから。
赤茶色の扉を押し開くと、洋館の内装が視界に広がった。
玄関ロビーは赤い絨毯が敷かれ、正面には二階へ続く螺旋階段があった。
壁の至る所に金の額縁で縁取られた絵画が飾られ、そのうちの一つに、亡き先王ーー俺の父の肖像画もあった。
白は焼失してしまったから、エルヴィスが新しく描かせたのかもしれない。
それらを目で追いながら歩いていると、エルヴィスは一階の奥に俺を導いた。
いくつもの部屋が並ぶ廊下の奥に、一つだけ重厚で煌びやかな扉がある。
ここが、俺たちの部屋なのだと直感した。
エルヴィスは先にその扉を開け、俺を中に促す。
両手を強く握りしめて中に入ると、後ろでエルヴィスが扉を閉める。
中には木製の調度品と、大きなベッドが一つ、鎮座していた。
まだ家具が少なく、とりあえず入り用の物だけを置いた感じがした。
きょろきょろとあたりを見回していると、後ろからエルヴィスが近づいてきて、俺を抱きしめた。
「・・・・・・今なら、まだやめられるぞ」
心配そうに、そう訊ねる従兄。
俺はエルヴィスの方を向き、微笑して見せた。
「ここまで来て、そんな事聞かないで。ーー大丈夫だから」
「ありがとう」
エルヴィスは俺を軽々と抱き上げ、ベッドへ向かう。
倒れ込むようにしてベッドに横たわった俺たちは、向かい合ったままどちらからともなく、キスをした。
「だ、抱くって、そんな・・・・・・」
「嫌か?」
「嫌じゃない、けど・・・・・・怖い」
「怖いか・・・・・・」
エルヴィスはため息にもとれる笑みを漏らし、俺から離れた。
「それならやめておこう。お前に無理強いはしたくない」
「や、待って・・・・・・!」
俺は体を起こし、エルヴィスの胸にすがりついた。
そうしないと、彼がこの部屋を出て行ってしまう。
「違うんだ、エルヴィス・・・・・・!」
「俺はお前に怖い思いをさせたくない。ただでさえ、俺が助け出すまであの男に・・・・・・」
マースに無理矢理快楽を与えられ、血を吸われていたことを、彼には話してあった。
怒りを押し殺すように押し黙ったエルヴィスを、俺はただ見上げた。
「エルヴィス・・・・・・」
「お前の最初の相手になってやれなかったのは心残りだが、せめて奴から与えられた不快な感覚を上書きしてやれたらとーー」
「・・・・・・え、ちょっと待って。最初の相手? 俺はマースにその・・・・・・されてないというか・・・・・・」
「なに? だってお前・・・・・・」
「じょ、上半身は触られたけど、他は何も・・・・・・だから、エルヴィスが、本当に最初の相手だよ」
いや、最初の相手は彼以外にいない。
マースに組み敷かれても、そこだけは守り通した。
不安そうに瞳を揺らす兄の頬に手を伸ばし、俺は微笑した。
「確かに怖い気持ちもあるけど、俺はあなたに・・・・・・抱かれたい」
「・・・・・・本当に?」
「うん」
三百年程度じゃない。
彼は俺が幼い頃からーーいや、俺が生まれてくる前から、ずっと「この時」を待っていてくれた。
発情期を迎えようとも、普通であれば屈してしまいそうな衝動に、エルヴィスは幾度となく耐えてきたのだ。
俺はもう、充分待ってもらった。
空いてしまった三百年の時を今、紡ぎたい。
「ここは響くから、場所を移そう」
俺を気遣ってか、エルヴィスは頬を赤く染めながら言った。
確かに、地下は良く音が響く。
キスだけであんなに声が漏れたのだから、繋がったらーー考えるだけで恥ずかしい。
でも、地上はマースの部下が連日かけずり回っている。
今あがるのは危ないのではないだろうか。
「どこに行くの?」
「いいから、おいで」
エルヴィスに手を引かれ、いぶかしみながらも俺はあとをついて行った。
***
地下を出て、エルヴィスに連れてこられたのは、森の奥深くに建てられた洋館だった。
ただし、ただの洋館ではない。地中深く掘り進められた空間に、洋館以外にも多くの建物が建設途中だった。
「エルヴィス、ここは・・・・・・?」
「いつまでも配下達を下水道に住まわせるわけにはいかないからな。数年前から作り始めていたんだ」
確かに、多くのヴァンパイアが建設を続けている。
「全員お前の眷属か?」
「いいや、ここにいるのは俺の眷属達が血分けして、ヴァンパイア化させた者達だ」
血分けを行って人をヴァンパイアへ変えることができるのは、王族ヴァンパイアをのぞけば、王族ヴァンパイアから直接血を分けられた者のみ。
ここにいるヴァンパイアはざっと見ても数十人はいる。
それだけ人間をヴァンパイアに変えたという事だ。
「むやみに人を変えちゃ駄目だ。生態系が崩れる」
「そういう甘いところは相変わらずだな、お前」
責める響きはなく、むしろ優しい声音で言いながら、エルヴィスは俺の頬を撫でた。
「お前は私たちの希望。ここで王国づくりに励む配下達も、みなお前のために働いているようなものだ」
確かに、俺たちが小道を歩いていても、配下達は動かしていた手を止め、笑顔でお辞儀してくれた。
特に、俺には胸に手を当てて忠誠を誓う仕草すらしてくれる。
彼らはきっと、俺が王国を再建し、再び地上をヴァンパイアが支配できる日を夢見ているのだろう。
俺という新国王に、期待を抱いている。
とてつもないプレッシャーだ。
俺なんか、何もできない名だけの王なのにーー。
「さあ、中に入ろう。いつまでも洋館の前に立っているわけにはいかないだろう」
「あーーそうだね」
煉瓦を積み上げて制作された洋館を見上げ。俺は慌てて頷いた。
今は王国の事は考えないようにしよう。
だって、俺は今エルヴィスと結ばれるために、ここに来たのだから。
赤茶色の扉を押し開くと、洋館の内装が視界に広がった。
玄関ロビーは赤い絨毯が敷かれ、正面には二階へ続く螺旋階段があった。
壁の至る所に金の額縁で縁取られた絵画が飾られ、そのうちの一つに、亡き先王ーー俺の父の肖像画もあった。
白は焼失してしまったから、エルヴィスが新しく描かせたのかもしれない。
それらを目で追いながら歩いていると、エルヴィスは一階の奥に俺を導いた。
いくつもの部屋が並ぶ廊下の奥に、一つだけ重厚で煌びやかな扉がある。
ここが、俺たちの部屋なのだと直感した。
エルヴィスは先にその扉を開け、俺を中に促す。
両手を強く握りしめて中に入ると、後ろでエルヴィスが扉を閉める。
中には木製の調度品と、大きなベッドが一つ、鎮座していた。
まだ家具が少なく、とりあえず入り用の物だけを置いた感じがした。
きょろきょろとあたりを見回していると、後ろからエルヴィスが近づいてきて、俺を抱きしめた。
「・・・・・・今なら、まだやめられるぞ」
心配そうに、そう訊ねる従兄。
俺はエルヴィスの方を向き、微笑して見せた。
「ここまで来て、そんな事聞かないで。ーー大丈夫だから」
「ありがとう」
エルヴィスは俺を軽々と抱き上げ、ベッドへ向かう。
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