白露の蜘蛛はあなたを愛しましょう ~転生者以上にチート過ぎませんか~ (仮)

志位斗 茂家波

文字の大きさ
31 / 59
出会いましょう、新しい世界と共に

二十八話 白き加護

しおりを挟む
…穏やか寝息に切り替わり、皇女様の解呪と加護の施しは終了した。
 これで後は、目覚めるまで待つだけであり、後は大人たちのほうで色々とやってもらうだけである。

 具体的には目覚めてもらった後に、聖女様へのお礼などに関してや帰国方法、その他もろもろやるべきことが多いようだが…これ以上、関わる意味もない。

【というか、私としてはせっかく覚えた加護の方法を早く旦那様へやりたいですからね。さっさと場を切り上げたほうが得策です】
「あっさりしているなぁ…」

 聖女様が与えた加護はさておき、ハクロが与えた加護のほうがどれほどのものなのかまだわかっていないから、確認してからのほうが良いのだが…どうやら授けた時点の力の強さから、相当なものを与えたというのはわかるらしい。

 聖女様曰く「本当に次期聖女目指してもらえないかしら」と言っていたが、ハクロはそんなことに興味はないようだ。
 聖女様に望まれるほどの力があるのに、ちょっともったいないような気もするが…まぁ、彼女のやりたいようにすればいいだけの話。そんなホイホイ他人に与えるようなこともないので、心配する意味もないだろう。

 聖女クラスの加護が与えられる人間の大量製造…良いことのような、間違った方向へ向かったら恐ろしいことになりそうな、何とも言えない光景が広がりそうである。



 それはともかくとして、さっさと教会から離れて寮の自室へ戻り、さっそくハクロが覚えたての加護の授け方を試し始めた。

【ふふふ…聖女様の力の流れはばっちりと学びましたからね!!間違いなく、旦那様にとって悪くないものができる自信が大いにあります!!】

 はぁぁぁっと気合を入れ、全身に力を込めて集中すること…数分後。


ぶしゅううううううううううう!!
【ふ、ふへぇ…ち、力が…入りません…】
「一瞬、またすごく輝いたけど…なんか、すぐに消えたね?」

 聖女様と力を合わせていた時のように輝いていたが、それはわずかな間。
 意気揚々と加護を与える気満々だったはずだが、ほんの数秒ほどで光が収まり、ハクロはダウンしてしまった。

「あ、もしかして一日に何度も加護を与えられないか、もしくはハクロは聖女じゃないから、すぐにできないってことじゃないかな…?」
【…そうかもしれません…ううっ、力が入らないですよ…】

 考えたら、聖女が加護を与える人間って耳にしない気がする。
 容易く加護を与えることが出来たら、聖女様による加護持ち人間が大量に出てきてもおかしくはないし…何かしらの制約がある可能性がある。

 かといって、その内容をよく知ろうにも、そういう情報は機密扱いとかになっていそうだしなぁ…

「そう考えると、すぐに家に帰してくれたのも納得いくな」

 聖女様がハクロにやり方を教えても、そうすぐには人に加護を与えられないことを見越してのことだったのだろうか。
 それに、こんな反動っぽいものがあるとなると、試すのは難しそうだし…なんとなく、良いように手の上で踊らされた気分があるだろう。


「うーん、流石というべきかな。聖女様、やっぱりその名に恥じないだけあってすごい人なのかもしれない…」
【感心しますね…でも私、凄く疲弊して…】

 与えられたらそれはそれでどういうのがあったのか気になるが、ここまでの反動を見ると与えられる側になるのもちょっと怖かったかもしれない。
 もうちょっと詳しく理解して、きちんとした用法用量などもあるのか確認してからやったほうが良いだろう。


 とにもかくにも、加護を与えられはしなかったのだが、今後の扱いには気を付けるべき方法なのだと思い知らされるのであった…













「ー--んっ、ここは…」

 ハクロが凄まじい疲労感で動けなくなっていたそのころ。
 教会の方では、皇女ディアが目を覚ましていた。

「おお、皇女様!!目を覚まされましたか!!」
「あなたは…ガルンドね。ここは、どこかしら?」
「ここは、メラドゥス帝国から離れた国、ガルトニア王国でございます。そしてこの建物は、王都の結界を張る聖女クラウディア様のものです」

 長い間眠っていたが、皇女としての彼女はすぐに周囲の状況を把握する。
 どうやら長いこと呪いにより眠らされていたようだが、対応策として他国の聖女を頼ったようだ。

 かくかくしかじかと事情を聴き、ディアは今、どういうことになっているのか理解することが出来た。


「…そう、なるほどね。それで、私の呪いを聖女様が解呪してくれて…それに加えて、不思議な蜘蛛の魔獣と一緒に、加護を与えてくれたと」
「そういうことです。…ディア様、魔獣からの加護は、大丈夫でしょうか。襲撃にあった我々を助けてくれた上に、聖女様と同等の、いや、それ以上の力を持っていることは確認しているのですが…」


 騎士ガルンドとしては、皇女の身にこれまで以上の守りの力が付いたことは喜ばしいとは思う。
 けれども、今回は蜘蛛の魔獣からの加護も与えられており、それがどれほどの影響があるかがわっからないことに、多少の不安を抱く。

「そうね…うん、長く寝ていたというのに何か身体の調子がいいわ!!」
  
 と、騎士ガルンドの不安はともかく、ディアは自身の体の調子を確認し、眠りにつく前よりも身が軽いことに気が付く。
 呪いにかかる前の自分がどの程度の力があったのかはわかっているのだが、むしろ今の状態はそれ以上に良くなっているだろう。


「うん、良い意味でおかしな程、身が良すぎるわね!!ほら、跳ね起き空中大回転ができるわ!!お爺様のようにとんでもない身のこなしができるかも!!」
「こ、皇女様!?病み上がりなのですから、そこまでやらなくても!?」

 まさかのアクロバティックすぎる動きの連発に、見守っていた室内の騎士たちは度肝を抜かれる。


「凄い、凄すぎるわ!!この身の軽さって、もしかしてその蜘蛛の魔獣のこの加護かしら!!これなら。万が一命を狙う刺客がいても、この身体能力で十分抗えるわね!!」
「アクロバティック過ぎますよ皇女様ぁ!!」
「一年間眠っていましたから、出来ればもう少しおとなしく静養をお願いいたします!!」

 動けなかった日々が長かった反動もあるのか、狭い室内なのに身軽に動きまくる皇女ディア。
 その動きには騎士たちもてんてこまいになるのであった…


しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ありふれた聖女のざまぁ

雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。 異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが… 「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」 「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波
ファンタジー
想いというのは中々厄介なものであろう。 それは人の手には余るものであり、人ならざる者にとってはさらに融通の利かないもの。 それでも、突き進むだけの感情は誰にも止めようがなく… これは、そんな重い想いにいつのまにかつながれていたものの物語である。 ――― 感想・指摘など可能な限り受け付けます。 小説家になろう様でも掲載しております。 興味があれば、ぜひどうぞ!!

失踪していた姉が財産目当てで戻ってきました。それなら私は家を出ます

天宮有
恋愛
 水を聖水に変える魔法道具を、お父様は人々の為に作ろうとしていた。  それには水魔法に長けた私達姉妹の協力が必要なのに、無理だと考えた姉エイダは失踪してしまう。  私サフィラはお父様の夢が叶って欲しいと力になって、魔法道具は完成した。  それから数年後――お父様は亡くなり、私がウォルク家の領主に決まる。   家の繁栄を知ったエイダが婚約者を連れて戻り、家を乗っ取ろうとしていた。  お父様はこうなることを予想し、生前に手続きを済ませている。  私は全てを持ち出すことができて、家を出ることにしていた。

二本のヤツデの求める物

あんど もあ
ファンタジー
夫の父の病が重篤と聞き、領地から王都の伯爵邸にやって来たナタリーと夫と娘のクリスティナ。クリスティナは屋敷の玄関の両脇に植えられた二本の大きなヤツデが気に入ったようだ。 新たな生活を始めようとするナタリーたちだが、次々と不幸が襲いかかり……。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...