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ver.1.0 ~始まりの音色~

ver.1.1-24話 見せぬけれども、感じ取り

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【シャゲシャゲ、シャゲェ】
【ガウガーウ?ガウガウ】

…‥‥ハウスシステムによって構築されている、ハウス内。
 ログアウトしている今、ハルのアバターはその寝室内で横たわっているのだが、ハウスの部屋の一つにあるテイムモンスター用の牧場内では、リンとマリーが話し合っていた。
 人に近い容姿を獲得したが、その寝床はベッドよりも柔らかいクッションの方が楽だという事でそこに腰をかけ合いつつ、感じ取っていたとあること・・・・・に対しての議論を交わす。

【ガウ、ガウガーウ、ガウ】
【シャゲェ、シャゲシャゲェ?】
【ガウガウ】
【シャゲッ】

 どのような会話がなされているのかは、その鳴き声だけではわからないだろう。進化したとはいえ、あくまでも容姿が近くなっているだけであり、中身まではそっくり人間の声帯が作られているわけではない。
 それでも、鳴き声が違えどもモンスター同士としての言語の統一はされており、意志疎通に問題はないようである。

【シャゲシャゲ、シャー】
【ガウ、ガウガウ】

 ついでに言えば、身振り手振りな動作も交えて説明を自分達でも分かりやすくしているので、ある程度訳そうと思えばできそうな光景であり、話し合っている様子は微笑ましくもあるのだが、結論が出ないという回答が出ていると、理解できる人はいるだろう。
 話し合いつつ、良い回答が得られず、腕を組んで考え込む二体。何にしても、この回答に関してはハルがログインしてきて実際に確認するまでは何もできないとも結論付け、答えの出ない議論は一旦そこで区切られるのであった。

【シャゲ、シャゲシャゲー?】
【ガウ?ガウガー!】

 ついでに別の案を出して、それに賛成し合って、そろって寝床を飛び出したのも言うまでもない。









‥‥‥そしてハルがログアウトしている丁度その頃。大樹の森ではプレイヤー間の間でも放浪期間中の間はのじゃロリと呼ばれていたエルフの少女のレティアは、長でもある自身の父親に問いかけていた。

「‥‥‥のぅ父上、まだまだ舞が必要なのは分かるのじゃけれども、質問して良いかのぅ?」
「何だ?何時になったら終わるとか言う話はできないぞ」
「いや、そうではなくて…‥‥ロティの姿を見ないのじゃが、どうしているのじゃ?」

 自分がいつになったらこの状態から解放されて、再び野に降りることができるのかというのも気になっているのだが、その前に彼女の妹が姿を見せないことに不自然な想いを抱いていた。
 
「ロティなら、扇の新調のためにドワーフの村に行っているはずだ。ただ、どうやら懇意にしていた鍛冶師の家で何かがあったらしく、もう少しかかると連絡があったな」
「ふむ、ドワーフのほうにのぅ‥‥しかし、あの妹が自ら行くたちか?大抵は素材に注文内容を添えておけば、直ぐに得られるはずなのじゃがな」
「自分の手で、確かめたいとか言っていたらしいが、たまにはそう言うのも良いだろう。自分に合う道具というのは、やはり自身の目で見なければ分からないからな」

 娘の一人旅に多少の不安は覚えているが、これも成長しているからだと納得しながらそう口にする長。だがしかし、レティアはそうは思えなかった。
 というのも、容姿の逆転はあれども、これでも立派な姉という立場に立つ彼女は、妹がどの様な人物であるのかをしっかり理解しており、普段であればどのような行動をするのか、ある程度の予測は付く。
 だがしかし、そんな行動はその予測から外れており、ならばどういう時にする行動なのかといくつかおもいつくのだが‥‥自身のことは棚に上げるとして、血は争えぬ妹のことだからこそ、ろくでもない事が予想できてしまった。

「わらわの言動は、注意していたはずなのじゃがな。もしかすると、誰にどう与えたというのかを聞いていて、動いたのかのぅ?となると、あやつのやりそうなことは‥‥‥まさか」

 予想がついたのは良いが、その結果は最悪な可能性が非常に大きい。自身にとっても、そのやられる相手にとってもかなりの面倒ごとになるのは間違いない。
 あの妹は普段の言動こそは落ち着いているようであり、多少のパニックなどを引き起こしてやらかすことはあるが反省したように見せる…‥‥演技者でもあるのだ。
 猫かぶり?いや、それはまだ可愛いものだろう。ある程度のあざとさなども計算したうえで、やる演技でもあるからだ。だがしかし、妹の演技というのはそう言うものではなく、自身の混乱ややることすべてを完全に計算し尽くしたうえでやってしまうものなのだ。

 しかも、本当に悪い事を企むような者ではなく、ある程度は相手のためを思ってやるのだが、その手法もまた質が悪い物であり、やったとしてもその毒牙に負傷してしまう者が多いだろう。ある意味、自分の方がはるかにましなのかもしれないと、ちょっとは省みることが出来るレティアでさえも嫌な顔になる。


「父上、出来ればすぐにでも妹を追いかけたいのじゃが。あやつがひっっじょぉぉぉうに、やらかす予感しかしないのじゃが」
「いやいや、流石に無いだろう。あの子がどれだけいい子なのか、お前も分かっているはずだろ?」
「いやまぁ、確かに根は良い子なのじゃが‥‥‥やらかすことがのぅ」

 悪人ではなく純粋な善意も混ぜての計算している行動だからこそ、その真意を読むのは容易くない。その為、父も含めて大半の知り合いはすぐに彼女の本性を感じることができないのだが、それもまた計算された演技でもある。

「のじゃぁ‥‥‥嫌な予感しかないのじゃが‥‥‥」

 ひしひしと強く嫌な予感を抱くも、このままでは動くこともままならない。そうこうしている間にも今すぐにでもやらかされそうである。
 であれば、どうしたものかと考え、父に対して早くここから自由にしてもらうために、自身がより真面目にやるしかないと結論付ける。遅いかもしれないが、それでも今はその方が手っ取り早い。

 休憩をすぐにやめ、舞を踊り始め、レティアは一刻も早く妹のもとへ向かう努力をし始めるのであった…‥‥


「‥‥‥もしも間に合わなかったら、プレイヤーとやらの交流で得た強力脱毛剤とやらを、父上のシャンプーに混ぜるのじゃ」
「おおぅ!?なんか今、すごい悪寒がしたぞ!?」
 
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