50 / 76
とある妖精の話 その5
しおりを挟む
……本日、王女の容体が回復した連絡を受けた、診断をした高名な医者が来るらしいと、ディアはそう耳にした。
王女の身体になり、ひと月が経過したが、ようやくその医師と出会えるのだ。
そう、王女を診断し、特殊な翅をもつ妖精を煎じさせて呑むようにと言った医師が。
妖精を利用した治療方法があるのか、王女の身体になってしまった日から、日夜ある稽古の合間にディアは調べて見たが、そのような方法はどこにもなかった。
精々、ドラゴンの鱗、人魚の肉程度であり、妖精を材料にした薬などもなかったのだ。
ならば、なぜそのような診断が出来たのか。
そう不思議に思いつつ、その医師のいる部屋へディアは案内され、中に入った。
「おお、これはこれは王女様、無事に回復されて何よりでございますなぁ」
中に入ると、そこにいたのは王女の父である国王と、例の医師と思われる人物。
印象としては、どこにでもいるような平凡そうな男であるが‥‥どことなく、ディアは嫌なものを感じた。
例えるのであれば、かつて捕らえられた際にオークションで競りをしていた欲深き人間のような、そんなものを。
とは言え、感じただけでは話にもならないので、表情を変えずに、国王の側に彼女は着席した。
「娘よ、この方がお前を診断し、病の改善方法を診断してくださった医師、ボラインだ」
「そうですか、初めまして……で良いでしょうか、ボラインさん」
「ええ、ええ。かまいませんよ王女様。何しろ、顔合わせをしたのは、貴女様が意識を失っていたその時でございましたからなぁ」
なんとなくへっぴり腰のような気がするが‥‥‥胡散臭い気配をディアは感じた。
何かこう、腹に一物持っているかのような、悪しき気配を。
警戒しつつ、今回の病についての話に彼らは入った。
「‥‥‥今回、王女様の治療には要請を煎じたものを飲ませるように言っていましたが、見せてもらった記録では、大量の妖精を煎じた鍋を飲ませていますね。回復するのは間違いなかったのでしょうけれども、なぜこのような事を?」
「ふむ、特殊な妖精がどれなのかよくわからずに、全て投下してみるのが良いと思った、と作った者はいっておるぞ」
「なるほど、まぁ、その中に特殊な翅を持った妖精がいれば、効果としてさほど変わりませんからなぁ」
「‥‥‥あの、ボラインさん、一つ良いでしょうか?」
「ん?どうなされましたかな?」
「私の病気って、妖精を煎じて飲ませることで回復するもの……と、診断なさったのですよね?」
「そうでございます」
「ですが、少々気になって医学書などを読んでみたのですが、そのような治療方法はなかったと思われますが‥‥‥」
思い切って、単刀直入にディアはそう問いかけた。
その質問に対して、医師ボラインはちょっと考え込むようなそぶりを見せ‥‥‥すぐに返答した。
「ええ、確かに通常は無いでしょう。本などに記されているのは研究されている内容が多いですが、症例が少ないとそう出ませんからね」
数多くの症例があるのならばまだしも、少ないのであれば伝え聞くようなレベルのものや、経験から得たものしか治療法がない。
そう返答をされたが…‥‥ディアは納得できなかった。
それからしばらくは、現在の状態や調子、その他支障がないかなどの細かい質問をされ、時間が経過した。
「おや、もうこんな時間ですか」
気が付けば、日が沈み始めているようで、暗くなってきたようだ。
「おおぅ、そうですか。でしたらボライン殿、今晩は我が王城に宿泊するか?」
「ならば、言葉に甘えさせてもらいましょう」
国王がそのことに気が付き、ボラインにそう問いかける。
その問いかけに、ボラインは快く承諾したようだが‥‥‥‥ディアは見逃さなかった。
ほんの一瞬だけ、その人の良さそうな笑みの中に、何か邪悪なものがあったことを。
反対しようと思ったが、ここで言おうにも国王が止めてしまう可能性がある。
せっかく来た恩人を、さっさと還すような真似はいけないだの言いそうであり、反対する理由を出せないのだ。
だが、それでも警戒するに越したことはない。
もし、嫌な予感が当たっているのであれば……‥‥
そう心に思いつつ、ディアは、この医師が来る前にようやく得たとあるものを懐にあるか確認し、警戒を怠らないようにするのであった‥‥‥‥
王女の身体になり、ひと月が経過したが、ようやくその医師と出会えるのだ。
そう、王女を診断し、特殊な翅をもつ妖精を煎じさせて呑むようにと言った医師が。
妖精を利用した治療方法があるのか、王女の身体になってしまった日から、日夜ある稽古の合間にディアは調べて見たが、そのような方法はどこにもなかった。
精々、ドラゴンの鱗、人魚の肉程度であり、妖精を材料にした薬などもなかったのだ。
ならば、なぜそのような診断が出来たのか。
そう不思議に思いつつ、その医師のいる部屋へディアは案内され、中に入った。
「おお、これはこれは王女様、無事に回復されて何よりでございますなぁ」
中に入ると、そこにいたのは王女の父である国王と、例の医師と思われる人物。
印象としては、どこにでもいるような平凡そうな男であるが‥‥どことなく、ディアは嫌なものを感じた。
例えるのであれば、かつて捕らえられた際にオークションで競りをしていた欲深き人間のような、そんなものを。
とは言え、感じただけでは話にもならないので、表情を変えずに、国王の側に彼女は着席した。
「娘よ、この方がお前を診断し、病の改善方法を診断してくださった医師、ボラインだ」
「そうですか、初めまして……で良いでしょうか、ボラインさん」
「ええ、ええ。かまいませんよ王女様。何しろ、顔合わせをしたのは、貴女様が意識を失っていたその時でございましたからなぁ」
なんとなくへっぴり腰のような気がするが‥‥‥胡散臭い気配をディアは感じた。
何かこう、腹に一物持っているかのような、悪しき気配を。
警戒しつつ、今回の病についての話に彼らは入った。
「‥‥‥今回、王女様の治療には要請を煎じたものを飲ませるように言っていましたが、見せてもらった記録では、大量の妖精を煎じた鍋を飲ませていますね。回復するのは間違いなかったのでしょうけれども、なぜこのような事を?」
「ふむ、特殊な妖精がどれなのかよくわからずに、全て投下してみるのが良いと思った、と作った者はいっておるぞ」
「なるほど、まぁ、その中に特殊な翅を持った妖精がいれば、効果としてさほど変わりませんからなぁ」
「‥‥‥あの、ボラインさん、一つ良いでしょうか?」
「ん?どうなされましたかな?」
「私の病気って、妖精を煎じて飲ませることで回復するもの……と、診断なさったのですよね?」
「そうでございます」
「ですが、少々気になって医学書などを読んでみたのですが、そのような治療方法はなかったと思われますが‥‥‥」
思い切って、単刀直入にディアはそう問いかけた。
その質問に対して、医師ボラインはちょっと考え込むようなそぶりを見せ‥‥‥すぐに返答した。
「ええ、確かに通常は無いでしょう。本などに記されているのは研究されている内容が多いですが、症例が少ないとそう出ませんからね」
数多くの症例があるのならばまだしも、少ないのであれば伝え聞くようなレベルのものや、経験から得たものしか治療法がない。
そう返答をされたが…‥‥ディアは納得できなかった。
それからしばらくは、現在の状態や調子、その他支障がないかなどの細かい質問をされ、時間が経過した。
「おや、もうこんな時間ですか」
気が付けば、日が沈み始めているようで、暗くなってきたようだ。
「おおぅ、そうですか。でしたらボライン殿、今晩は我が王城に宿泊するか?」
「ならば、言葉に甘えさせてもらいましょう」
国王がそのことに気が付き、ボラインにそう問いかける。
その問いかけに、ボラインは快く承諾したようだが‥‥‥‥ディアは見逃さなかった。
ほんの一瞬だけ、その人の良さそうな笑みの中に、何か邪悪なものがあったことを。
反対しようと思ったが、ここで言おうにも国王が止めてしまう可能性がある。
せっかく来た恩人を、さっさと還すような真似はいけないだの言いそうであり、反対する理由を出せないのだ。
だが、それでも警戒するに越したことはない。
もし、嫌な予感が当たっているのであれば……‥‥
そう心に思いつつ、ディアは、この医師が来る前にようやく得たとあるものを懐にあるか確認し、警戒を怠らないようにするのであった‥‥‥‥
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
462
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる