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いざ、魔法屋へ……

#27 事態は何処かで起きているのデス

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SIDE都市アルバス:「冒険者」ギルド

……この世界には、魔法屋が所属する魔法ギルド以外にも、冒険者たちが所属する冒険者ギルドと言うものが存在していた。

 魔法屋が人々の生活の細かなところを手助けする職業であるならば、冒険者は戦闘に出て安全を確保するための職業と言ってもいいだろう。


 そして、この都市アルバスにも魔法屋ギルドに近いところに、冒険者ギルドが設立されていたのだが…‥‥。



「閑古鳥が鳴くとは、まさにこの事なのだろうか……」
「暇ねぇ、依頼を出す人もいなければ、依頼を受ける冒険者の数も少ないものね」


 都市アルバス冒険者ギルドの受付場では、受付嬢たちやその他ギルド職員たちは全員暇になっていた。

 何しろ、冒険者のやる事はモンスター討伐が主なのであるのだが、ここ数日は討伐依頼も出ておらず、魔法屋に所属している者たちは魔法ギルドの方へ向かい、現在閑古鳥が無いでいたのである。

 いや、平和と言う証でもあるので、そう嘆く事態ではないのだが…‥‥いかんせん、これでは仕事することもない状況なので、ギルドにとっては職員たちが給料泥棒のようにしか思えなかった。


「でも、なんでこうも閑古鳥が鳴くのかしらね?数日前までは、それなりにいたと思うのだけれども…‥」
「そう言えばそうね。ここまでひどくはなかったはずよねぇ…‥‥」
「何にせよ、暇だけど出勤しているだけで、給料がもらえる状態なのだから文句はないけどなぁ」
「「「確かにそうだよねぇ」」」


 その言葉に、暇を持て余す冒険者ギルド職員一同は、同意して頷くのであった。

 この状況はある意味異常な状態ではあるが、忙しくもないので特に文句はないのである。

 むしろ、楽ができるのでありがたかったりするのだが…‥‥それは職員たちだけであり、ここの冒険者ギルドのギルド長、ゲルハードからしてみれば、むしろ苦しい状況にあった。

「ぐぅっ…‥‥ここ数日間の依頼受注率が連続0%だと…‥‥!?」


 受付からの報告書類を見て、ギルド長ゲルハードはテカテカに輝く自慢の頭を磨きながら、うめくようにつぶやいた。



「まずい、まずいぞ…‥‥このままでは、ここの給与が非常に不味いことに…‥‥」

……冒険者ギルドは、冒険者が所属するギルド。

 その主な収入源は、冒険者たちへの依頼の仲介料や、依頼の最中に得たモンスターの素材の売買などがあり、一部は国への税金として納めるが、それでも冒険者たちの業績がよければよいほど、その分の収入をギルドは確保できるのである。

 そして、職員たちへの給料に渡しつつも、ある程度避ければギルド長自身への給料へ上乗せできたのだ。



 まぁ、通常ならば不正なく、きちんとまんべんなく公平にしているのだが…‥‥冒険者ギルドではむしろ珍しい事なのだが、このギルド長ゲルハードは自分への給与を甘くしており、少々バレないように横領もしていたのだ。

 だがしかし、この数日間の間で依頼が受注されず、収益を得られないのは非常に不味い事でもあった。

 

 ギルドでの収入源は冒険者たちによるものが多いので、その収入が来なければ結果としてギルドの金庫は空っぽになってしまう。

 そうなれば、当然給与も払えなくなり、めどが立つまで休業という事にもなりうるのだが……なぜそうなったのかと言う原因を突き止めるために、ある場所に存在するとされるギルドの本部から、調査員が派遣されてくるのだ。


 しかもその調査員、ギルド本部で徹底的に鍛え上げており、どうも絶対に不正を許さない厳しい者たちの集まりだとされており、万が一休業からの派遣がなされてきたとすれば、ゲルハードの不正が明るみとなって、暗い未来しかないのが予想できてしまったのである。

 いや、本来ならばそんな不正をするような人がトップになる事はないのだが、流石にギルドも前部を見切れないのか、たまにそういう人がいて、ゲルハードがその該当者になったのである。


 何にせよ、このままの状態が続けば非常に暗い未来しかないのは確実である。

 いや、むしろギルドの収入をごまかして、休業になるような事を防げれば良いのだが、流石に長持ちはしない。

 冒険者たちが依頼を受注してくれないからと言って、ごまかす方方法もあったのだが…‥‥まぁ、何と言うかここまで不正を積み重ね、その贅沢になれてしまったゲルハードの頭ではそのような事は思いつくはずもなかった。

 と言うかそもそも、なぜこんな人がギルド長になれたのかと言う問題があるのだが…‥‥そこは、彼の冒険者時代の腕がそれなりに良くて、評価もそれなりに高かったという理由があった。

 だが、ギルド長になって横領などに手を付けてしまい、腐れるところまで腐ったというべきであろう…‥‥
 



 とりあえず、まだ数日程度なら良いのだが、これ以上この状況が続くのも望ましくはない。

 そのため、ゲルハードは急いで原因究明に乗り出すことに決めたのであった。




―――――――――――――――――――――――――
SIDE都市アルバス:魔法ギルド


……冒険者ギルドが閑古鳥に鳴かれている一方で、魔法ギルドの方は賑わいを見せていた。

 というのも、数日前に新たに魔法屋に就いた新人、いや、むしろその使い魔のおかげと言うのがあった。



「では、畑の土壌改善の依頼を受注し、達成したという訳でこちらの報酬が渡されます」
「はい……っと、あれ?何か依頼時の予定報酬量よりも多くないでしょうか?」
【え?……あ、確かに。依頼だと銀貨10枚なのに、20枚になってますよ】
「ああ、それはですね。土壌改善の腕前が良かったのと、単純にその畑から得た野菜を売っていた八百屋からの色付けです」
「ああ、そういう事デスネ。なるほど、納得いきまシタ」

 受付にて、ある魔法屋が依頼の達成報酬を受け取っていた光景を、魔法ギルド内の者たちは見ていた。


「ま、大目にもらえたのは良いか。よし、せっかくだしついでに何か買い物して帰るか。ワゼ、ハクロ、適当な店へ向かうぞ」
「了解デス」
【わかりました!】

 その魔法屋の言葉に、彼についているメイドと使い魔は返答した。


 そして彼らがギルドから出ていくのを見て、皆が頷き合い、数名の魔法屋が動き出した。


『……あー、あー。通信系の魔法のテスト、テストなり。こちらメーデルワン、対象たちが買い物しに向かったことを報告します』
『こちら、プーデルワン、了解。昨日届いた映写機と呼ばれる魔道具のテストを行うのにちょうど良い。せっかくなので、絵師も派遣してもらいたいが、対応可能なのはどこだろうか?』
『こちら、ヌーッメルワン、了解。魔法屋の中でも、絵を描くのがうまい奴が対応してくれるそうだ。その様子を細かに伝えてほしい。もしくは目で見ておきたいので向かいたいと言うが、どうだろうか?』
『了解、それでいいと思われる。ただし、害意などを持つのはアウトだと、先日判明しているので、そのあたりの確認を求む』


 魔法の中には、ある程度の距離感をつなぐ魔法などがあり、彼らはそれを使用して連絡を取り合っていた。

 そして、その対象となっていたのは……シアンでもなくワゼでもなく、ハクロであった。



……数日前、ハクロがシアンの使い魔として登録された時、いや、その姿を見たときから、彼らは結束を結び、ある事を計画した。

 その計画とは、「目の保養を大事にしつつ記録に残す」というものである。

 ワゼも綺麗な事は綺麗なのだが、目立つ方としてハクロが注目を浴び、物凄い目の保養になるので、この都市に訪れる限り記録をできるだけ取って、後々楽しみたいという想いで、彼らは結束したのだ。


 なお、その美貌に酔わされて、手に入れたいと思う輩もいたのだが、いかんせん彼女はシアンの使い魔として登録されている。

 そのため、無理やり奪おうとしたり、脅迫して己のものにしようと企む者たちがいたのだが…‥‥害意ある彼らは、近づく前に何者かによって急に襲撃を受け、全滅したのだ。

 現場には何も残っていなかったが、ある者は男としての尊厳を失ったり、ある者は全身の毛が無くなったり、またある者はおかしなポーズで硬直させられていたりなどと、様々な悲惨な状態になっていたのである。

 特に一番悲惨だったのは、絶対に記憶から消したいような恥ずかしい記録が、どういう訳かバレてしまい、そのすべてが書かれたビラをまかれた奴であろうか?

 そしてまたある者は、権力者とのつながりがあったので、そのつながりを利用してと考えていたのだが……その矢先に、その権力者が急に不正を暴かれて、連座的にその者も捕えられてしまったのであった。



 ゆえに、その事が立て続けに起きたという事ならば、彼らに迂闊に手出しをしてはいけないという暗黙の了解が生まれ、ならばせめて遠くからの観察や記録を試みた結果、どうやら害意がなければいいようだったので、なんとか今の状態にこぎつけたのであった。


 また、できるだけ彼らがこの都市にいてくれるように結束した者たちは手を回し、実は急激にこの都市での治安が向上していたりもするなどの、思わぬ副作用が出ていたのだった。


 そしてまた、ある者はあるアラクネの群れが前に討伐依頼に出ていたことがあった情報を得て、ハクロはその群れとは違うし、彼女は無害で美しいと冒険者内で噂して、害を無くすようにしていたのだが……その噂のせいで、冒険者たちが一目は見てみようと思って、ギルドから出てしまったというのもあった。


 何にせよ、彼らに害をなしてはならぬという暗黙の了解の下、その集団は少しづつ規模を増やし、2週間もすればある程度の大所帯となったので、一大組織として立ち上がることになるのだが…‥‥それはまだ、今のシアンたちが知る事もないのであった。


「あれ?ハクロ、どうしたの?」
【あ、いえ、何でもないですよ】
「…‥‥ご主人様、彼女はその髪飾りを見てまシタ。欲しいと推測できマス」
【ちょっとワゼさん!?何を言って……】
「ああ、なんだそういう事か。恥ずかしがることもないのに…‥‥よし、せっかくだからこれを買ってあげるよ」
【ええ!?でもちょっと勿体ないですよ】
「普段自己主張をあまりしないというか、欲を持っていないハクロが欲しいと思ったんでしょ?だったら、僕があげないとなんか甲斐性が無いように思えちゃうからね……」
【あ、なんかすいません……。でも、ありがとうございますね、シアン】



『ぶっふぉいぅ!?』
『おおう!!美女の照れている笑みがあぁぁぁぁ、ぶっしゅわぁぁぁあl!!』
『メーデルワン、プーデルワン!?何があった!?』
『こちら、代理の者ですが、ただ今こちらでは数人が鼻から大量出血を起こしました』
『こちらも同様です。しかも、絵師の奴が逝きました…‥‥ああ、記録も血まみれに』
『直撃してしまったのか!?急いで撤退せよ!!あの顔を記録できなかったことがあれば、直ちにその気絶したやつらには、「ドキッ!絶対に遭遇したくない気持ち悪い生き物たちベスト100」の本を読ませるんだ!』
『『了解』』

・・・・・この日、約数名が気絶から目が覚めた後、絶叫を上げたのは言うまでもなかった。



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