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一難去ってもなぜこうも来るのか
#156 微笑ましいのデス
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SIDEシアン
……ひったくりを捕らえたケンタウロスの女性騎士。
それが何と、驚くべきことに、かつてハクロが群れにいた時に出会ったことのある、姉のような存在の人(モンスター)であることが、判明した。
ひとまずは立ち話も何なので、適当な喫茶店に入店し、そこで僕らは話をすることにした。
【ふむ、白チビアラクネは今、ハクロと言う名があるのか】
【ええ、そうですよ。そういう姉さんこそ、今の格好を見る限り騎士として働いているようですが、生活の都合上名前はありますよね?】
【ああ、国からもらった名前がある】
ハクロ言葉に対して、ケンタウロスの女性騎士はそう答える。
基本的に神獣などの例を除けば、モンスターは名前を所持していないそうだ。
「おい」、「お前」、「私」、「わっしゃ」などの言葉で事足りるらしく、名前をも必要とする機会がないだけなのも理由らしい。
とは言え、使い魔になったモンスターなど、人間生活に入り込む際には名前が無いと不便なため、自分でつけるそうである。
【改めて名乗っておこう。私はヴェールヌイ騎士王国の女性騎士団第3小隊所属、団長として今回の親善試合に参加させてもらう事になった『ルル』である】
【ルル姉さんって呼べますね】
【そういう事だ、白チビ】
【何で白チビですか!?私だって今はハクロ言う名があるんですよ!!】
ハクロの言葉に対して、ケンタウロスの…‥‥ルルはうんうんと頷きながら答え、その内容が納得できずハクロはぷんすかと怒ったようにぽかぽかと軽くたたいた。
なんというか、種族は違えど仲のいい姉妹のようで、ほのぼのする光景である。
「えっと、姉妹喧嘩はほどほどにね。あ、そちらが名乗ったのでこちらも名乗らせてもらうけど、僕の名前はシアン。魔法屋をしていて、ハクロの主でもあり、こっちにいるメイドのワゼの主でもあるんだ」
【それに私のつがいでもあるんですよ】
えっへんと誇らしげに胸を張り、僕を手繰り寄せてそうハクロは紹介した。
【ふむ白チビのつがいか……】
まじまじと見るように、ルルが顔を近づけてくる。
【うん、正直なところ、白チビにつがいなんて出来るのかと思っていたが、こうやって再会した日に出来ているとは、世の中分からないものだな。白チビのつがい相手…‥‥シアンと言ったか。こんな超箱入り世間知らず白チビアラクネのつがいになってくれて、ありがとう】
「ああ、お礼を言われても‥‥‥‥ん?超箱入り世間知らず?」
【ん?ああ、というのもだな‥‥‥‥】
そこから僕らは、彼女の話に聞き入った。
どうやら僕らの知らない過去話である…‥‥
―――――――――――――――
SIDEルル
……私は昔、騎士団に入る前は各地で武者修行を行っていた。
ケンタウロスは己の使えるべき主を求めて動き、私も例にもれずその主を求める中で、仕えても恥ずかしくないように実力を磨いていた。
そんなある時、とあるアラクネの群れを護衛として居候させてもらっている中、別のアラクネの群れと出くわした。
アラクネの群れ同士、同種族という事もあり、飲み会などが行われていた中、流石の私は違う種族なので混ざりにくかったのだが…‥‥その相手の群れの数体のアラクネが、とあるアラクネの娘の面倒を、この群れ同士の交流の中で見てほしいと言われ、私は引き受けた。
…その娘というのが、白くて小さな子供アラクネの…‥‥ハクロだった。
最初に抱いた印象としては、他のアラクネとは何かが違うという事であろうか?
残酷、残忍さ、冷徹さなど、敵対すれば寒気を感じさせるような表情を持つアラクネたち。
だけど、その小さなアラクネ……見た目の印象的に白チビといえるようなやつだけは…‥‥なんというか、緩かった。
いや、語彙力が無いのだが…‥‥本当に緩い。基本的に緊張感で張り詰める様なのが通常のアラクネなのに対して、白チビだとすごいフワフワしているというか、のほほんとしたのんびりさを感じさせられたのだ。
色も全体的に白く、明るさを感じさせられるような印象もあったし、どこにアラクネの特徴とも言えるような冷徹さなどを置き忘れてきたのだとツッコミをしたくなった。
【ふみゅっ?おねーしゃんだれ?】
テトテトと、幼い足取りで寄って来て、こっちを見てそう尋ねられた。
【私はあの群れの護衛兼居候させてもらっているケンタウロスだが‥‥‥お前が、あっちの群れの娘なのか】
【うん、そーなの!】
私の問いかけに対して、彼女は元気よく返事をした。
口からピロっと何かをこぼしたが、どうやら花の蜜を飲んでいたらしい。
体にはあちこちの花畑で作ったらしい花の輪だらけだったし、元気いっぱいな白チビだった。
―――――――――――――――
SIDEシアン
「‥‥‥ん?話の内容を聞くと、ハクロって小さかったのか?」
【ああ、そうだ。本当にまだ弱々しい人間の赤子サイズでな、庇護欲をそそられるようなサイズだったな】
今は結構大きくなっているが、ハクロが幼い時は本当に小さかったらしい。
「見たかったなぁ、幼いハクロ。結構可愛かったのかな?」
【あー‥‥うん、そうだな】
っと、何やらルルは言いにくそうな顔になっていた。
【何か私、問題でも起こしましたっけ?】
【何かというか、かなりというか‥‥‥‥】
―――――――――――――――
SIDEルル
……元気いっぱい、花大好き、のんびり白チビという見た目の印象。
けれども、元気が良すぎるというのも考え物過ぎた。
アラクネだから糸を出せるのは当たり前だが、まだ幼い時はその糸の強度もしっかりしていない。
移動する際に出しても、途中でぶちっと切れて落ちる事があるというのに、この白チビはそんなことも気にせずに、子どもだからこその行動力であちこちに糸を利用して動き回ったんだよ。
降りる時に糸を出して途中で切れて落下するわ、上る際に体を前後に動かして、その勢いで上に行こうとして糸が切れてそのままの勢いで吹っ飛んでいくわ、挙句の果てには命知らずなのか寝ている凶暴なモンスターの元へこっそり出向き、遠距離から糸で縛って攻撃して狩りをしようとして逆に狩られかけるわ‥‥‥‥今にして思えば、良く白チビが今日まで生きてこれたなと思うほどの暴れっぷりだった。
群れのアラクネたちも彼女の自由奔放のほほん過ぎる動きにてんてこまいで、一時期行方不明になっていたと思ったら、高い木の上でぐっすり眠っているなど‥‥‥‥心労を一生分かけさせられるほどだったなぁ…‥‥
―――――――――――――――
SIDEシアン
・・・語り終え、遠い目をするルル。
幼き頃のハクロは箱入り娘のように育てられつつも、アクティブすぎる面があったらしい。
どれほどの苦労があったのか、その物凄い溜息などを聞く限り、予想が出来たのであった。
【えっと…‥‥私ってそんなに自由奔放でしたっけ?花の蜜とかを求めて動きはしましたが…‥‥】
【どこの世界に、危ないと分かっているはずの断崖絶壁の側面にある花を求めて、落下して川に流された経験のあるアラクネの子供がいたのかね~?】
【ひみっ!?いたいでふよ姉さん!!ひょほをつままないでー!!】
当時の苦労を思い出したのか、全然理解していないハクロに対して、ルルはその彼女の頬を思いっきり両端からつねり上げる。
あうあうと逃れようのない制裁に対してハクロはなすすべもなく、僕らもそれは流石に自業自得過ぎるだろうと、弁解の余地なしと判断してフォローしないのであった。
……その後も話していたが、その中で僕はふと気が付いた。
彼女の話の中で、ハクロの群れの話の事が出るのは当たり前かもしれないが、今の彼女の群れの事に関しては尋ねてこない。
彼女がここにいる理由としても気にならないわけないと思うが‥‥‥‥もしかすると、わかっているのではないだろうか。
騎士団として働く仕事柄、おそらくモンスターの討伐の話なども聞いており、アラクネの群れが討伐された話もおそらくあるのだろう。
ハクロに再会した時も驚いていたが…‥‥もしかすると、あの驚きの中には彼女が亡くなっている可能性も考えていたのかもしれない。
深く考えすぎかもしれないが、そう考えると結構気を使って話題に出しつつも尋ねない優しさがあるだろう。
微笑ましい姉妹関係のような二人を見ながら、僕はそう思うのであった。
――――――――――――――――――
SIDE???
……微笑ましいような、義理の姉妹のような者たちの再会がある中で、この首都内にはいろいろな人たちが入り込んでいた。
そんな中で、明日の親善試合を楽しみに思う人たちがいる中、良からぬことを企む者たちもいた。
それが引き起こす結果を、自分たちの都合の良いようにしか考えない様な馬鹿もいるのだが…‥‥そう言った者たちは人知れず、バレないように潜入していくのであった‥‥‥‥
……ひったくりを捕らえたケンタウロスの女性騎士。
それが何と、驚くべきことに、かつてハクロが群れにいた時に出会ったことのある、姉のような存在の人(モンスター)であることが、判明した。
ひとまずは立ち話も何なので、適当な喫茶店に入店し、そこで僕らは話をすることにした。
【ふむ、白チビアラクネは今、ハクロと言う名があるのか】
【ええ、そうですよ。そういう姉さんこそ、今の格好を見る限り騎士として働いているようですが、生活の都合上名前はありますよね?】
【ああ、国からもらった名前がある】
ハクロ言葉に対して、ケンタウロスの女性騎士はそう答える。
基本的に神獣などの例を除けば、モンスターは名前を所持していないそうだ。
「おい」、「お前」、「私」、「わっしゃ」などの言葉で事足りるらしく、名前をも必要とする機会がないだけなのも理由らしい。
とは言え、使い魔になったモンスターなど、人間生活に入り込む際には名前が無いと不便なため、自分でつけるそうである。
【改めて名乗っておこう。私はヴェールヌイ騎士王国の女性騎士団第3小隊所属、団長として今回の親善試合に参加させてもらう事になった『ルル』である】
【ルル姉さんって呼べますね】
【そういう事だ、白チビ】
【何で白チビですか!?私だって今はハクロ言う名があるんですよ!!】
ハクロの言葉に対して、ケンタウロスの…‥‥ルルはうんうんと頷きながら答え、その内容が納得できずハクロはぷんすかと怒ったようにぽかぽかと軽くたたいた。
なんというか、種族は違えど仲のいい姉妹のようで、ほのぼのする光景である。
「えっと、姉妹喧嘩はほどほどにね。あ、そちらが名乗ったのでこちらも名乗らせてもらうけど、僕の名前はシアン。魔法屋をしていて、ハクロの主でもあり、こっちにいるメイドのワゼの主でもあるんだ」
【それに私のつがいでもあるんですよ】
えっへんと誇らしげに胸を張り、僕を手繰り寄せてそうハクロは紹介した。
【ふむ白チビのつがいか……】
まじまじと見るように、ルルが顔を近づけてくる。
【うん、正直なところ、白チビにつがいなんて出来るのかと思っていたが、こうやって再会した日に出来ているとは、世の中分からないものだな。白チビのつがい相手…‥‥シアンと言ったか。こんな超箱入り世間知らず白チビアラクネのつがいになってくれて、ありがとう】
「ああ、お礼を言われても‥‥‥‥ん?超箱入り世間知らず?」
【ん?ああ、というのもだな‥‥‥‥】
そこから僕らは、彼女の話に聞き入った。
どうやら僕らの知らない過去話である…‥‥
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SIDEルル
……私は昔、騎士団に入る前は各地で武者修行を行っていた。
ケンタウロスは己の使えるべき主を求めて動き、私も例にもれずその主を求める中で、仕えても恥ずかしくないように実力を磨いていた。
そんなある時、とあるアラクネの群れを護衛として居候させてもらっている中、別のアラクネの群れと出くわした。
アラクネの群れ同士、同種族という事もあり、飲み会などが行われていた中、流石の私は違う種族なので混ざりにくかったのだが…‥‥その相手の群れの数体のアラクネが、とあるアラクネの娘の面倒を、この群れ同士の交流の中で見てほしいと言われ、私は引き受けた。
…その娘というのが、白くて小さな子供アラクネの…‥‥ハクロだった。
最初に抱いた印象としては、他のアラクネとは何かが違うという事であろうか?
残酷、残忍さ、冷徹さなど、敵対すれば寒気を感じさせるような表情を持つアラクネたち。
だけど、その小さなアラクネ……見た目の印象的に白チビといえるようなやつだけは…‥‥なんというか、緩かった。
いや、語彙力が無いのだが…‥‥本当に緩い。基本的に緊張感で張り詰める様なのが通常のアラクネなのに対して、白チビだとすごいフワフワしているというか、のほほんとしたのんびりさを感じさせられたのだ。
色も全体的に白く、明るさを感じさせられるような印象もあったし、どこにアラクネの特徴とも言えるような冷徹さなどを置き忘れてきたのだとツッコミをしたくなった。
【ふみゅっ?おねーしゃんだれ?】
テトテトと、幼い足取りで寄って来て、こっちを見てそう尋ねられた。
【私はあの群れの護衛兼居候させてもらっているケンタウロスだが‥‥‥お前が、あっちの群れの娘なのか】
【うん、そーなの!】
私の問いかけに対して、彼女は元気よく返事をした。
口からピロっと何かをこぼしたが、どうやら花の蜜を飲んでいたらしい。
体にはあちこちの花畑で作ったらしい花の輪だらけだったし、元気いっぱいな白チビだった。
―――――――――――――――
SIDEシアン
「‥‥‥ん?話の内容を聞くと、ハクロって小さかったのか?」
【ああ、そうだ。本当にまだ弱々しい人間の赤子サイズでな、庇護欲をそそられるようなサイズだったな】
今は結構大きくなっているが、ハクロが幼い時は本当に小さかったらしい。
「見たかったなぁ、幼いハクロ。結構可愛かったのかな?」
【あー‥‥うん、そうだな】
っと、何やらルルは言いにくそうな顔になっていた。
【何か私、問題でも起こしましたっけ?】
【何かというか、かなりというか‥‥‥‥】
―――――――――――――――
SIDEルル
……元気いっぱい、花大好き、のんびり白チビという見た目の印象。
けれども、元気が良すぎるというのも考え物過ぎた。
アラクネだから糸を出せるのは当たり前だが、まだ幼い時はその糸の強度もしっかりしていない。
移動する際に出しても、途中でぶちっと切れて落ちる事があるというのに、この白チビはそんなことも気にせずに、子どもだからこその行動力であちこちに糸を利用して動き回ったんだよ。
降りる時に糸を出して途中で切れて落下するわ、上る際に体を前後に動かして、その勢いで上に行こうとして糸が切れてそのままの勢いで吹っ飛んでいくわ、挙句の果てには命知らずなのか寝ている凶暴なモンスターの元へこっそり出向き、遠距離から糸で縛って攻撃して狩りをしようとして逆に狩られかけるわ‥‥‥‥今にして思えば、良く白チビが今日まで生きてこれたなと思うほどの暴れっぷりだった。
群れのアラクネたちも彼女の自由奔放のほほん過ぎる動きにてんてこまいで、一時期行方不明になっていたと思ったら、高い木の上でぐっすり眠っているなど‥‥‥‥心労を一生分かけさせられるほどだったなぁ…‥‥
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SIDEシアン
・・・語り終え、遠い目をするルル。
幼き頃のハクロは箱入り娘のように育てられつつも、アクティブすぎる面があったらしい。
どれほどの苦労があったのか、その物凄い溜息などを聞く限り、予想が出来たのであった。
【えっと…‥‥私ってそんなに自由奔放でしたっけ?花の蜜とかを求めて動きはしましたが…‥‥】
【どこの世界に、危ないと分かっているはずの断崖絶壁の側面にある花を求めて、落下して川に流された経験のあるアラクネの子供がいたのかね~?】
【ひみっ!?いたいでふよ姉さん!!ひょほをつままないでー!!】
当時の苦労を思い出したのか、全然理解していないハクロに対して、ルルはその彼女の頬を思いっきり両端からつねり上げる。
あうあうと逃れようのない制裁に対してハクロはなすすべもなく、僕らもそれは流石に自業自得過ぎるだろうと、弁解の余地なしと判断してフォローしないのであった。
……その後も話していたが、その中で僕はふと気が付いた。
彼女の話の中で、ハクロの群れの話の事が出るのは当たり前かもしれないが、今の彼女の群れの事に関しては尋ねてこない。
彼女がここにいる理由としても気にならないわけないと思うが‥‥‥‥もしかすると、わかっているのではないだろうか。
騎士団として働く仕事柄、おそらくモンスターの討伐の話なども聞いており、アラクネの群れが討伐された話もおそらくあるのだろう。
ハクロに再会した時も驚いていたが…‥‥もしかすると、あの驚きの中には彼女が亡くなっている可能性も考えていたのかもしれない。
深く考えすぎかもしれないが、そう考えると結構気を使って話題に出しつつも尋ねない優しさがあるだろう。
微笑ましい姉妹関係のような二人を見ながら、僕はそう思うのであった。
――――――――――――――――――
SIDE???
……微笑ましいような、義理の姉妹のような者たちの再会がある中で、この首都内にはいろいろな人たちが入り込んでいた。
そんな中で、明日の親善試合を楽しみに思う人たちがいる中、良からぬことを企む者たちもいた。
それが引き起こす結果を、自分たちの都合の良いようにしか考えない様な馬鹿もいるのだが…‥‥そう言った者たちは人知れず、バレないように潜入していくのであった‥‥‥‥
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