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寒さ到来面倒事も到来するな

#177 後悔しても遅しなのデス 

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SIDEとある国境近くの秘密研究所

……その研究所は、国境付近にあった。

「‥‥‥結果としては、まずまずの出来か」

 国境付近に設置されてはいるが、そう簡単に外部のものが気が付きにくいように隠蔽された研究所。

 そこに努める研究員はそうつぶやき、今回の実験の結果についてそうつぶやいた。

「やはり、まだ早すぎたのだろうか?完成度が低いせいで、予定されていた殺傷能力が低すぎる」
「だが、広範囲の感染を確認できたし、増殖速度などは合格点であろう」

 実験結果について、他の研究者たちも交え、今後の改善点をどうすべきか話し合い始める。


……彼らが行っていたのは、とある極小モンスターを利用した、散布実験。

 依頼された内容としては、これを利用してある程度の人を減らしつつ、自分たちよりも下の者たちを圧倒的な格差で従えさせる予定があるらしいと聞いていたが…‥‥結果としては、感染力は合格点なものの、肝心の殺傷能力については低いものが出来てしまった。

 そのうえ、増殖時に周囲の熱を奪うせいで急激な冷え込みが発生し、研究所内も薄ら寒くなっていたりしたのである。

「まぁ、ワクチンは作れているし、我々がかかる危険性はないか」
「ああ、どうせ誰が亡くなろうが関係はない。依頼主の出資してきた金で、指定された研究を行わされるとはいえ、面白いものでもあるしな」

 あはははっと笑いつつ、被害の大きさについて彼らは気にも留めていない。

 研究費も一部こっそり流用し、各々が好きな研究をできるのであればそれでいい。

 どのような被害が出ようとも、自分たちに害をなさないようにしつつ、金づるをそれなりに納得させて、さらなる資金提供を受けられるようにできれば満足なのだ。

「にしても、モンスターとかにも広がっているな…‥‥人間のみを標的としたはずだが、どこで間違えた?」
「いや、これはこれで有りだとは思うぞ。除草剤ならぬ除モンスター剤として利用価値はあるだろう」
「だが、モンスターから採れる素材も研究に必要ゆえに、これは少々扱いがな‥‥‥」

 研究結果の各データを見ながら各自は好き勝手に議論しつつ、今回の問題で発覚した問題点を改良しようと動き出す。

 のんびりと、だらだら引き延ばして金づるから研究資金をせびるのもあるが、やり過ぎると離れられてしまうだろうし、ある程度の加減が必要な事を理解しているのだ。

「さてと、改良作業へうつ‥‥ん?」

 ひとまずは議論を終え、各自の作業へ戻り、今回のデータを活かそうとしていた…‥‥その時であった。


 とある職員は、ふとあることに気が付いた。

 窓の外から見える景色は、いつもであれば隠蔽された研究所に誰もが気が付かぬまま素通りしていく景色があるはずだった。

 だがしかし、本日は何か様子が違う。

 人っ子一人見当たらず、それならまだしも、何やら雲行きが怪しいのだ。

「‥‥‥気のせいか?何か嫌な予感がするのだが」
「ん?‥‥‥ふむ、そう言えば、何か寒気が…‥‥」

 その職員の言葉に対して、他の職員たちも何やら空気の異常に気が付き、自然と身が震えはじめる。

 研究していた物が出てしまったのかと思ったが、見る限りそうではない。

 何かこう、本当に言いようの無い恐怖というものが、襲ってきたような気配が周囲に満ち始める。


「何だろうか、すごい足腰ががくがくと震えはじめてきたのだが」
「悪寒が不味いな…‥‥この嫌な気配、どう考えてもろくでもない予感しかしないぞ」
「いや、科学的に考えても予感という物は‥‥‥‥」

 研究に身を捧げ、生きてきた職員たち。

 その言いようの無い恐怖を感じ取ってもなお、図太い神経はその恐怖が何なの気になり、議論し始める。

 だが、その議論は‥‥‥‥すぐに終わってしまった。



 いや、終わらされた・・・・・・のである。


‥‥‥ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

 放物線を描き、何かが空から飛来してくる音が近づいてくる。

 何事かと思い、職員たちは窓の外に目を向けようとして、そこで動きを止めた。


カッ!!
「「「ぎゃあああああああああああああああああああああ!?」」」

 突然、強烈な閃光が発生し、職員たちの目をくらまされる。


 目への強烈な刺激に手で押さえて悶え苦しみ、ある者は倒れて転がり、またある者では机の角などに強打してその痛みに涙を流す。

 何が起きたのか、すぐには理解できない彼ら。

 だが、これだけは言える。

 研究馬鹿たちに対する、周囲を考えずに取り組み過ぎた、その罰が下ったのだと‥‥‥‥。




 そしてすぐ後に、急激に研究所内が凍え始める。

 吐く息が白くなり、手がかじかみ、呼吸するたびに冷気で体が冷たくなっていく。

 暖房を入れようにも動かず、次第にあたりが凍り付き始める。


「ひ、ひぃ!?」
「何だこの冷却現象は!?」
「魔法によるものか!?しかし、これは限定的過ぎるし、この速度は異常だ!!」

 目が回復したが、この現状が入ってくるにつれ混乱が広まっていく。

 逃げようにも扉が凍り付いて開かず、次第に足が動かなくなっていく。

 
「ぎゃあああああああああ!!誰か助けてくれぇぇぇ!!」
「何が、何が起きたんだぁぁぁぁあ!!」
「我々はただ、研究をしていただけだというのにぃぃぃぃ!!」


「‥‥‥その研究が、どうなるのか考えていたことはあるのか?」

 ‥‥‥一人が叫んだ言葉へ向けて、何者かがそう尋ねる言葉が響き渡る。

「どうなるかだと!?」
「それは‥‥‥‥」

 その問いかけに対して、答えようとしたところで彼らは答えに詰まった。

 自分たちは受けた研究をこなしつつ、それをどう使うかは任せ、後はやりたいことだけをやっていく。

 その自分たちの研究がどうなるかなんてことは‥‥‥‥特に考えてもなかったのだ。


「まぁ、その答えは聞かずとも良い。今はただ、今回の件についての制裁を下しに来ただけだ」

 ふと気が付けば、彼らの前に何者かが出現していた。

 黒いコートで覆いつつ、白い仮面をつけた謎の人物。

 その手からは凍り付くような冷気が出されており、魔法によるものだと理解できてもその濃密さに研究者たちは驚愕する。

 そして、ろくな返答もできないまま‥‥‥‥彼らはそれぞれ、華麗なる氷像へと変貌を遂げたのであった。


「‥‥‥さてと、ここはこれで良いとして、書類などから‥‥‥」

 ぼそぼそと、何かが聞こえたような気もするが‥‥‥‥誰一人として、その後の事を知らない。





……数カ月後、どういうわけか自然と解凍され、彼らは命を失っていないことを喜んだ。

 だがしかし、それと同時に顧客たちとの連絡が途絶え、新しい研究に移ろうにもできない事態となり、結局は解散し、ぼそぼそとした極貧生活を送る羽目になったのであった。

 生涯悔いる事になるが、偶然とはいえ、手を出してはいけないような相手へ出してしまったがゆえに起きた悲劇でもあった‥‥‥。
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