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春が近づき、何かも近づく
#225 失いしものを戻す機会デス
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SIDEミスティア
「…‥‥ある意味、なんとかやっているような関係ですわね」
ハルディアの森、シアンたちの家の花壇の場所にて、そこに咲き誇っている花々を見学しながらふとミスティアはそうつぶやいた。
城での大掃除による避難でここに来たが、まだそう長く経ってもいないというのに、驚かされることが多い。
「フ?」
【シャゲ?】
「ええ、何でもないですわよ、フィーアと‥‥‥えっと、ドーラさん」
ミスティアのつぶやきに対して、何かあったのかと気になったらしいフィーアとドーラ。
このドーラという植物モンスターは、どうやらここの居候兼この花壇や向こうに見える畑の管理人でもあるそうだが…‥‥‥どう考えてもただものではないような気しかない。
というか、うねうね動く植物モンスターのようだが、その種族が不明な時点で怪しさ満点である。
植物のモンスターで有名としては、マンドラゴラ、アルラウネ、ドリアード、人面樹、トレント‥‥‥人型に近いものもあれば、植物そのものというものも多い。
この目の前に入るドーラという者の場合は、植物そのものという方があっているようだが、そのどれにも当てはまらない。
「それでも、ここで過ごしているところを見ると、そう危険でもなさそうですが…‥‥」
それでもここは、魔王とされるシアンの家。
ここの住人というだけで、とんでもない者にしか思えなかった。
何にしても、ここで過ごしてミスティアはふと思う。
城で忙しく過ごしている時が多かったが、この場所だと仕事が無い。
何しろ、家事仕事などはワゼたちがあっという間にやってしまうし、書類関係もここにはない。
シアンたちを見れば魔法の鍛錬をしていたりなど好きな事を過ごしているようなのだが…‥‥
「あれ?わたくしはどうしましょうか?」
‥‥‥仕事に忙しい毎日だったせいか、余暇の過ごし方が今一つわからない。
こたつとかにもぐってだらだらしたい思いもあるが、だらけすぎると王女としての何かもなくしそう。
「フー!」
ふと気が付くと、せっかく新しいボディとやらを手に入れたのに、いつもの小さな容姿で、ミスティアに花を持ってきて見せるフィーア。
「あら?わたくしに持ってきてくれたのね」
「フ!」
その言葉にこくりとうなづく動作は可愛らしく、思わず撫でるミスティア。
気持ちよさそうにフィーアが動くが、これでゴーレムの一種だからというのが信じられない。
「いえ、そもそもあのワゼさん自体が色々おかしいのですがね‥‥‥」
王女という職業柄、様々な場所へ視察する中で、ゴーレムを取り扱う者たちを見る事がある。
ただ、それらの場合は自然発生したものだったり、誰かが作ったとしてもごつごつとした土木工事用で、大型のものが多く、ワゼのようなものは見ない。
魔王もそうだが、ワゼのようなものを作った人も、できれば国の視点で言えばなんとか友好的にしたいのだが‥‥‥そこの部分だけは不明なのだ。
「ねぇ、フィーア。貴女にもわからないのかしら?」
「フー‥フ」
「そう、無理なのね」
ワゼに生み出されたこのフィーアでも流石に知らないようで、誰が彼女を生み出したのか不明。
シアンたちにも、さりげなく夕食の席などで尋ねてみたところ、どうもワゼはシアンが拾って来たものらしい。
川を箱詰めの状態で流れてきたようだが‥‥‥その上流の方に、彼女を川に捨てた?もしくは流した人がいるのではないかと推測できたが、今までその人物を捜すようなことはしていないようである。
というのも、不思議なことに探すような気が起きないそうだ。
「何かの妨害がかかっているような気がしますわね‥‥‥」
何にしても、この魔王の住まう場所はまだ謎があるようだ。
まぁ、気になりはすれどもミスティア自身も同じように探す気が起きない。
いや、そもそも妨害というよりも…‥‥本能的な予感というべきなのだろうか?
考えて見れば、メイドメイドメイドと言っているようなワゼだが、アレがまともなメイドに思えるのであれば、いくらか感覚がマヒしているように想える。
普通の家事とかであればいいが、フィーアの生みの親というべきか、盗賊たちも薙ぎ払い、政治的に裏からも操るようなそぶりを見せ、魔王の側に居つつきちんと害になるものか何者か選別し、益になるように動く。
正直言って、あれをメイドと言う言葉で片づけられない。
とすれば、そんなメイドを作った人物はまともではない可能性が高く、どう考えてもろくなことにならないというか、非常に面倒ごとになりうる。
気になりはすれども深く踏み込めば帰ってこれないような、深淵を感じ、思わず寒気を覚えるのであった‥‥‥
―――――――――――――――――――――――
SIDEポチ
‥‥‥本日は、外へ出かける予定もなく、ポチは巣にて家族と過ごしていた。
子フェンリルたちもだいぶ大きくなってきており、巣立ちまであと数カ月、いや、それ以上かからない可能性もある。
とはいえ、まだまだ甘えたいざかり‥‥‥
【というはずなのだが…‥‥自分よりも、アレに甘えるとはどういうことなのだろうか‥‥】
「ファ、ポチよりアッチが良いと思うファファファ」
【‥‥‥腹立つなぁ】
ポチの言葉に対して、本日巣に訪れた一人、シスターズのフンフの回答に、ポチはムカッとしつつも反論できず、何よりも実力差があるので無理だと判断した。
というか、姿がワゼに近い彼女なので、若干トラウマがよみがえりそうというもあったりする。
そして彼らの前の方に入るのは、子フェンリルたちと戯れるドーラ。
‥‥‥現在、ドーラはシアンたちの家の花壇にて、ミスティア王女とフィーアのところにいるはずなのだが、どういう訳かここにも存在している。
どうやら分体とかそういう類のものを覚えたらしく、あそこに入るのはドーラの分身のようなものらしい。
「ファ、そんなことより、一応ファ連絡ファ」
【そのファいちいち入ると聞きづらいのだが…‥‥】
「無理フア」
なにはともあれ、今回どうも知らせるようなことがあるようで、フンフが向かわされたらしい。
ひとまずは話を聞くと、ポチは思いっきり嫌そうな顔になった。
【うわぁ‥‥‥非常に面倒事というべきか?いや、人間どもに威厳を知らしめることができるが‥‥そういう輩は来て欲しくは無いのだがなぁ】
はぁぁあっと溜息を吐きつつも、この森のフェンリルとしては動かざるを得ない事態。
片付けやすいが、そういう輩が来るのはできれば遠慮してほしいのである。
【何を言っているんだい?こういうのは地涌的に動いたほうが楽だろう?】
ポチの言葉が聞こえたのか、子フェンリルたちと戯れていたロイヤルがそう声をかける。
【だってな、愚か者が仕向けてくる刺客とか、どう考えても面倒だろう】
【まぁ、わかると言えばわかるが…‥‥先に話が来たからこそ、対応もやりやすいだろう?】
「そうファ。シスターズで迎撃、可能ファ。でも、この森の元々の住民がやったファ、威圧はあるファ」
シスターズでも一応簡単に迎撃はできるし、陰ながら殲滅もできる。
だがしかし、それではインパクトも薄く、懲りずにまた来る可能性がある。
ならばこそ、神獣フェンリルそのものが動けば、それこそ相当な威圧にできると判断したのだ。
「ついでに、良い訓練にもなるファ」
【それは否定しないな】
子フェンリルたちを見ながら、ポチはそう答える。
‥‥‥神獣というのは、強大な力を持つ(ポチは微妙)。
そして人というのは力を求めることが多く、中にはろくでもない手段で力を持つ者たちを手中に収めようとするのだ。
神獣もその例外でもなく、狙う輩たちがおり、どうにか自衛する手段も必要だ。
それこそ、ただの獣相手よりも手ごわい時がある人間相手もあり、どうにかその経験を積む機会が欲しい所だ。
【子どもたちで撃退させることもかのうだが‥‥‥あの子たちはまだ手加減の仕方も微妙だからな。仕方がない、教えるために動くとするか】
そう言いながら、ポチは防衛と子供たちの教育のために動くことにした。
うまいこと行けば、人間たちに対して畏怖の感情を持たせることができる父親としての姿を見せられるだろうし、そう大したことでもない。
失墜している威厳を、今こそ取り返す時。
そう考えると気合いが入り、やる気が出て来たのであった。
「…‥‥ある意味、なんとかやっているような関係ですわね」
ハルディアの森、シアンたちの家の花壇の場所にて、そこに咲き誇っている花々を見学しながらふとミスティアはそうつぶやいた。
城での大掃除による避難でここに来たが、まだそう長く経ってもいないというのに、驚かされることが多い。
「フ?」
【シャゲ?】
「ええ、何でもないですわよ、フィーアと‥‥‥えっと、ドーラさん」
ミスティアのつぶやきに対して、何かあったのかと気になったらしいフィーアとドーラ。
このドーラという植物モンスターは、どうやらここの居候兼この花壇や向こうに見える畑の管理人でもあるそうだが…‥‥‥どう考えてもただものではないような気しかない。
というか、うねうね動く植物モンスターのようだが、その種族が不明な時点で怪しさ満点である。
植物のモンスターで有名としては、マンドラゴラ、アルラウネ、ドリアード、人面樹、トレント‥‥‥人型に近いものもあれば、植物そのものというものも多い。
この目の前に入るドーラという者の場合は、植物そのものという方があっているようだが、そのどれにも当てはまらない。
「それでも、ここで過ごしているところを見ると、そう危険でもなさそうですが…‥‥」
それでもここは、魔王とされるシアンの家。
ここの住人というだけで、とんでもない者にしか思えなかった。
何にしても、ここで過ごしてミスティアはふと思う。
城で忙しく過ごしている時が多かったが、この場所だと仕事が無い。
何しろ、家事仕事などはワゼたちがあっという間にやってしまうし、書類関係もここにはない。
シアンたちを見れば魔法の鍛錬をしていたりなど好きな事を過ごしているようなのだが…‥‥
「あれ?わたくしはどうしましょうか?」
‥‥‥仕事に忙しい毎日だったせいか、余暇の過ごし方が今一つわからない。
こたつとかにもぐってだらだらしたい思いもあるが、だらけすぎると王女としての何かもなくしそう。
「フー!」
ふと気が付くと、せっかく新しいボディとやらを手に入れたのに、いつもの小さな容姿で、ミスティアに花を持ってきて見せるフィーア。
「あら?わたくしに持ってきてくれたのね」
「フ!」
その言葉にこくりとうなづく動作は可愛らしく、思わず撫でるミスティア。
気持ちよさそうにフィーアが動くが、これでゴーレムの一種だからというのが信じられない。
「いえ、そもそもあのワゼさん自体が色々おかしいのですがね‥‥‥」
王女という職業柄、様々な場所へ視察する中で、ゴーレムを取り扱う者たちを見る事がある。
ただ、それらの場合は自然発生したものだったり、誰かが作ったとしてもごつごつとした土木工事用で、大型のものが多く、ワゼのようなものは見ない。
魔王もそうだが、ワゼのようなものを作った人も、できれば国の視点で言えばなんとか友好的にしたいのだが‥‥‥そこの部分だけは不明なのだ。
「ねぇ、フィーア。貴女にもわからないのかしら?」
「フー‥フ」
「そう、無理なのね」
ワゼに生み出されたこのフィーアでも流石に知らないようで、誰が彼女を生み出したのか不明。
シアンたちにも、さりげなく夕食の席などで尋ねてみたところ、どうもワゼはシアンが拾って来たものらしい。
川を箱詰めの状態で流れてきたようだが‥‥‥その上流の方に、彼女を川に捨てた?もしくは流した人がいるのではないかと推測できたが、今までその人物を捜すようなことはしていないようである。
というのも、不思議なことに探すような気が起きないそうだ。
「何かの妨害がかかっているような気がしますわね‥‥‥」
何にしても、この魔王の住まう場所はまだ謎があるようだ。
まぁ、気になりはすれどもミスティア自身も同じように探す気が起きない。
いや、そもそも妨害というよりも…‥‥本能的な予感というべきなのだろうか?
考えて見れば、メイドメイドメイドと言っているようなワゼだが、アレがまともなメイドに思えるのであれば、いくらか感覚がマヒしているように想える。
普通の家事とかであればいいが、フィーアの生みの親というべきか、盗賊たちも薙ぎ払い、政治的に裏からも操るようなそぶりを見せ、魔王の側に居つつきちんと害になるものか何者か選別し、益になるように動く。
正直言って、あれをメイドと言う言葉で片づけられない。
とすれば、そんなメイドを作った人物はまともではない可能性が高く、どう考えてもろくなことにならないというか、非常に面倒ごとになりうる。
気になりはすれども深く踏み込めば帰ってこれないような、深淵を感じ、思わず寒気を覚えるのであった‥‥‥
―――――――――――――――――――――――
SIDEポチ
‥‥‥本日は、外へ出かける予定もなく、ポチは巣にて家族と過ごしていた。
子フェンリルたちもだいぶ大きくなってきており、巣立ちまであと数カ月、いや、それ以上かからない可能性もある。
とはいえ、まだまだ甘えたいざかり‥‥‥
【というはずなのだが…‥‥自分よりも、アレに甘えるとはどういうことなのだろうか‥‥】
「ファ、ポチよりアッチが良いと思うファファファ」
【‥‥‥腹立つなぁ】
ポチの言葉に対して、本日巣に訪れた一人、シスターズのフンフの回答に、ポチはムカッとしつつも反論できず、何よりも実力差があるので無理だと判断した。
というか、姿がワゼに近い彼女なので、若干トラウマがよみがえりそうというもあったりする。
そして彼らの前の方に入るのは、子フェンリルたちと戯れるドーラ。
‥‥‥現在、ドーラはシアンたちの家の花壇にて、ミスティア王女とフィーアのところにいるはずなのだが、どういう訳かここにも存在している。
どうやら分体とかそういう類のものを覚えたらしく、あそこに入るのはドーラの分身のようなものらしい。
「ファ、そんなことより、一応ファ連絡ファ」
【そのファいちいち入ると聞きづらいのだが…‥‥】
「無理フア」
なにはともあれ、今回どうも知らせるようなことがあるようで、フンフが向かわされたらしい。
ひとまずは話を聞くと、ポチは思いっきり嫌そうな顔になった。
【うわぁ‥‥‥非常に面倒事というべきか?いや、人間どもに威厳を知らしめることができるが‥‥そういう輩は来て欲しくは無いのだがなぁ】
はぁぁあっと溜息を吐きつつも、この森のフェンリルとしては動かざるを得ない事態。
片付けやすいが、そういう輩が来るのはできれば遠慮してほしいのである。
【何を言っているんだい?こういうのは地涌的に動いたほうが楽だろう?】
ポチの言葉が聞こえたのか、子フェンリルたちと戯れていたロイヤルがそう声をかける。
【だってな、愚か者が仕向けてくる刺客とか、どう考えても面倒だろう】
【まぁ、わかると言えばわかるが…‥‥先に話が来たからこそ、対応もやりやすいだろう?】
「そうファ。シスターズで迎撃、可能ファ。でも、この森の元々の住民がやったファ、威圧はあるファ」
シスターズでも一応簡単に迎撃はできるし、陰ながら殲滅もできる。
だがしかし、それではインパクトも薄く、懲りずにまた来る可能性がある。
ならばこそ、神獣フェンリルそのものが動けば、それこそ相当な威圧にできると判断したのだ。
「ついでに、良い訓練にもなるファ」
【それは否定しないな】
子フェンリルたちを見ながら、ポチはそう答える。
‥‥‥神獣というのは、強大な力を持つ(ポチは微妙)。
そして人というのは力を求めることが多く、中にはろくでもない手段で力を持つ者たちを手中に収めようとするのだ。
神獣もその例外でもなく、狙う輩たちがおり、どうにか自衛する手段も必要だ。
それこそ、ただの獣相手よりも手ごわい時がある人間相手もあり、どうにかその経験を積む機会が欲しい所だ。
【子どもたちで撃退させることもかのうだが‥‥‥あの子たちはまだ手加減の仕方も微妙だからな。仕方がない、教えるために動くとするか】
そう言いながら、ポチは防衛と子供たちの教育のために動くことにした。
うまいこと行けば、人間たちに対して畏怖の感情を持たせることができる父親としての姿を見せられるだろうし、そう大したことでもない。
失墜している威厳を、今こそ取り返す時。
そう考えると気合いが入り、やる気が出て来たのであった。
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