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春が近づき、何かも近づく

#228 表に出ずともデス

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SIDEミスティア

‥‥‥魔王とされるシアンとその家族たちの家に居候して数日が経過した。

 まだ大掃除中らしく、王城の方からたいした連絡も来ない。

 しいて言うのであれば、不在中に貯まるであろう仕事が不安であったが、こちらの方も処理がなされているらしく、大して動かないのだが‥‥‥

「余暇との過ごし方‥‥‥こういうのも良いですわね」
「まぁ、普通にボードゲームとかもやれるからな。っと、そろったし、あがるね」
【シアン、たった2回目で全部終わったのですか…‥‥】
「あ、こっちもなにょ」
「ジョーカーは誰が持っているのでしょうカ」

 本日、シアンたちは魔法屋という仕事を休業するらしく、せっかくなので皆で遊ぶ日にしようと言って、まずはババ抜きというものを行うそうなので、ミスティアも参戦してみた。

 まぁ、戦績としては最下位にならないだけましであろう。というか、最下位の座を奪えない様な状態とでもいうべきか…‥‥‥

「んー‥‥‥わたくしもあがりですわね」
「こちらも、完了デス」
【あれぇぇぇぇ!?また私が負けました!?】

 これで5回目なのだが、連続最下位はハクロの手に渡った。

 同じ女性として見てもかなりの美女だし、一見すれば色々と抜けているところは無さそうだが‥‥‥どうも彼女、この手のゲームに非常に弱いようだ。

 その他にもチェスやリバーシと言った類のものをして見たが、どれもこれもハクロの戦績は悪い方だ。


 ミスティアの独断的なものとしては、この手のゲームにはシアン、ワゼの二人は強く、ロールもそこそこと言った感じである。

 ついでに言うなれば、途中からさらに庭の方からやってきたドーラと言う植物も交えて見たが、こちらも案外強かった。

 何にしても、あまり体を動かさない遊びばかりという事もなく、昼過ぎからは動かす方へ変えた。

 テニスという遊びのようで、タッグで組んで行う物をすることにしたが‥‥‥


【ふふふ、この手の遊びならば、私の方が機動力がありますからね!!楽に勝利をつかんで魅せますよ!!】

 ぐっとこぶしを握り、やる気を見せるハクロ。

 確かに、アラクネというのは機動力もあるし、タッグを組むコチラとしては心強いであろう。

 だがしかし、相手が悪い場合もあった。


「それそれっと、結構便利だよねこの衣」
「そんなのありですの!?」
【ひやぁぁぁあ!?】

 上には上がいるというように、シアンとワゼのペアが強すぎた。

 シアンの方は、何やら魔力で出来た衣というものが、腕のように変形してボールを自由自在に打ち返し、ワゼに至っては腕を飛ばして捉えるというなど、人間には不可能な動きが多かった。

‥‥‥ある意味人外レベル。いや、この場にいる面子を考えると魔王とアラクネとメイドゴーレム‥…

(あれ、人間わたくしだけ?)

 その事実にミスティアは気が付き、人外魔境へ迷い込んだとことを、今更ながら実感するのであった‥‥‥


―――――――――――――――
SIDE???

‥‥‥シアンたちが楽しく過ごしている一方で、密かに動き出す者たちもいた。

 王城で大掃除も大詰めに入り、徐々に消されていく中で、カビのごとくしつこく根を張っている愚か者達。

 何処からか証拠も続々と提出され、駆逐される様子に戦々恐々死つつも、諦めが悪かった。

 だが、この状況でどうすることもできない。

 暗殺者などを仕向けたくとも財産が凍結されたり、斡旋してくるはずの裏ギルドからお断りされたり、ならばこそ傭兵やそのくずれ、噂の盗賊団などにも手を伸ばし、頼って見たがどれもこれも大失敗するうえに、余計に己の首を絞めていく結果になった。

 ああ、もはや滅亡しかないのかと嘆く者もいたが、それでも今ある自分たちのぐふふな腐った生活から追い出されたくない者たちは足掻きに足掻き続け…‥‥それを見つけてしまう。

 それは、普通であれば彼らの手許にも渡らないのだが、運命というか、何の因果で巡りに廻ったのか、そのもの‥‥‥何重にも封印が施されたとある封印物が彼らの手許へ渡り、その利用価値を見出してしまう。

「おお、これがあれば逃れられるかもしれぬ!!」
「いや、むしろ利用して王城を攻め落とし、我々の国にしてしまえば良いのではないだろうか?」
「そうだそうだ、その方がいい。我らを切り捨てる国なんぞ、もはやいらん!!」

 その利用価値を見て彼らは栄える未来を想像し、手を付けていく。

 先人たちが何重にもつけていた封印を解くすべを残り少ない財をかけて見つけ出し、解呪していく。

 一つ、また一つと封が解かれ、徐々に見えてくる。

‥‥‥だが、彼らのその行為は、自らの滅亡を早めるだけであった。

 何故、封印されたものであるのか、その理由を彼らは理解していない。

 いや、自分たちにとって都合のいい部分しか見聞きせぬ彼らには、その都合の悪い部分は無かったことにしたのだろう。


 そして、全部が開封された時に、その封印物は息吹を上げた。

 その場で理想を描いていた、愚物共を消し去って‥‥‥
 
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