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良からぬ企みは、なぜこうも生み出されるのか
#340 ある意味あったのにデス
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SIDEシアン
…‥‥ディングルア王国、王城内。
その来賓室の場にて、僕等は説明を受けていた。
「‥‥‥つまり、今回の襲撃者たちはそちらの者だったか」
「ああ、残念ながらね‥‥黒幕は、兄だったようだ」
「それに、研究馬鹿共が引っかかってしまったのもあったな…‥」
うなだれて、そう説明してくれているのは、この国の王太子と錬金術師長。
夜中の襲撃者たちを尋問し、引き渡し、また尋問して得られた情報によれば、今回の騒動の元凶は、この国の元第1王子のゲルバーガーというやつだったらしい。
元、と付くのは、今は王籍が抜かれており、辺境の領主として働いているはずだったのだとか。
もともとは、この目の前の王太子は第2王子であり、どちらも素晴らしい才能を持ち、どっちが王太子になってもおかしくは無かったらしい。
その中でも、衰退しかけていた錬金術の分野に対して、第1王子が目を付け、徐々に技術の復興、新構築などをして、次期王太子に決まりかけていたそうだ。
だがしかし、そんなある日にとある事件が起きてしまった。
何と、様々な功績を持っていた第1王子が、奴隷売買、いや、正確に言えば人身売買に深くかかわっていたのだとか。
城に召し上げて使用人にする程度とか、それであればまだ何とかよかったらしいのだが‥‥‥‥その王子、ゲルバーガーがやらかしたのは、購入した人間をを利用した人体実験を行っていたのだ。
医療・科学の発展には、臨床実験などを行う必要性はあり、錬金術も例にもれず行うことがある。
それは通常の手段であれば、そういう類の専門機関が存在し、そちらに依頼して行えるのだが、その手間が惜しかったのか、はたまたはその機関での規約違反となるレベルの物を行いたかったのか‥‥‥どっちにしても強制的に行い、材料扱いしていたうえに、身寄りのない孤児の再利用だとか言う理由で人身売買などを行い、実験材料兼研究資金源にしていたようなのである。
錬金術の発展のために、仕方がない事と片付けていたらしいが、明かに倫理から外れ過ぎた実験も行っており、露見した時には既に大勢の犠牲者が出ていた後だった。
王族がこれでは醜聞もひどく、発展のためにとは言え、倫理を無視しすぎている行為には処罰を下すしかない。
ゆえに、王籍を剥奪し、一旦王族とは関係なくしたのである。
とはいえ、その才能も惜しく、そのような行為さえしなければまともな類。
家族としての情もあり、二度とそのような事をしないのであればという条件の元、なんとか辺境の領地の貴族領主として残っていたはずだったが…‥
「‥‥‥そのような事をした兄には、再犯する可能性があって、一応監視の目ぐらいは付いていたんだ。辺境は目が届きにくくもあり、かと言って王城に近い場所でも兄を担ぎあげてしまうような輩がいる可能性があったので、そのような事しかできなかった」
「だがな…‥‥彼はその優れた才能を悪用して、ここの錬金術師たちの内、さらにやばい研究馬鹿の中でも過激派の部類を引き入れてしまったようだ」
いつのまにか監視の目は元第1王子のものとなってしまい、気が付かないうちに錬金術師たちのその過激派の類が掌握されていた。
そしてどうやら、何かの道具を精製して返り咲く計画を練っていたようだが…‥‥
「その計画のために、僕らが襲われたってことか‥‥‥」
「同じ王族として、あえて心を鬼にして言わせてもらいますが、流石にそれは甘いですわ。そのせいで、子どもたちの方へ、メイドの方にも、害をなされかけましたもの。そもそも、そんな違法すぎるというか、倫理を外れた人がまともになる可能性がありますの?」
ミスティアの言葉が、もっともな正論である。
王族という立場は、国を担う立場でもあり、自身を犠牲にしなければいけない立場でもある。
好き勝手したら国が荒れ、そういう面倒ごとの類は切り捨てなければいけない時もあるのだ。
家族の情、その才能の惜しさなどもあったのだろうが…‥‥流石にこれは、アウトだろう。
「現在行方不明らしいが、見つけ次第こちらで手を下す。家族に手を出されかけたし、そちらに任せていては、また甘い対応になりそうだからね」
‥‥‥ここは他国であり、王太子側の方が本来処分を下すだろう。
本来こちらが出せる者でもないが‥‥‥こういう時に、魔王という立場が役に立つ。
何しろ、王配ゆえに本来は国の権力も持たないけれども、無駄に力はあるからね。
うん、というか直接ぶちっとしてやりたいからなぁ‥‥‥監視も役に立っていない、ただの辺境送り処分をした前例を見れば信用できなくなるからね・
元王子とか言うが、そいつがやらかしたのは下手すれば戦争になりかねない事実。
その事を相手側も深く受け止めているようで、何も言わない。
っと、空気が重苦しくなっていた、その時であった。
ズゥゥン!!
「「「「!!」」」」
突然、大きな音と共に、地面が揺れだす。
まるで、巨大な何かが歩むかのように、一歩、また一歩大地を踏みしめるかのような、大きな揺れ。
「何事だ!」
「ご主人様、元凶がどうやら自ら姿を現したようデス」
問いかければ、そばにいたワゼがそう口にし、僕等は急いで王城から出て外を見る。
そこから広がるのは、城下街ではあるのだが‥‥‥その街並みの向こう側に、それは存在していた。
いくつもの金属光を放つぶっとい足を持ち、バランスの悪そうな大量の腕搭載。
頭の部分はガラス張りにでもしているのか透明であり、その中には何やら赤く輝く物体と、設置されている席に座っているらしい人物の姿が目に取れた。
‥‥‥何と言うか、あれだな。巨大ロボットとでも言えば良いのか、百足の足に、巨人の胴体、電球の頭と言った方がまだわかりやすい何かだな、アレ。
「あ、あの席にいるのは…‥‥ゲルバーガー!?」
この距離でもなんとか認識できそうな人物を見て、王太子がそう叫ぶ。
『ふはははははははははは!!そうだ、良く分かったな愚弟よぉぉぉぉぉ!!』
集音器でもつけているのか、この距離でも聞こえたらしい声に対して、バカでかい拡声器でも使っているのか、ゲルバーガーとか言うやつの声が響き渡った。
『色々と、こちらの企みを知ったようだがもうすでに遅い!!こちらはこれをついに手に入れたからなぁ!!』
うぃぃんっ巨大ロボの手が動き、指をさすのは操縦席と思われる部分の真横で光る、赤く輝く物体。
「あれは‥‥‥生成パターンⅢで形成された、賢者の石のようデス」
『ほぅ、そこのメイドは知っているのか、この素晴らしき力を!!』
ワゼのつぶやきに対して、ゲルバーガーは何やら嬉しそうな声を上げる。
『そうともそうともそうともそうとも!!この石は我が同胞たちを糧にして生まれた、賢者の石!!万能のエネルギー源となり、力ともなり、この巨大征服兵器「ンドゥルゥプァー」を動かすために、必要なものであったのだ!!』
「滅茶苦茶言いにくい、ネーミングセンスの欠片もない名前じゃん!!」
他にも突っ込むべき点があったかもしれないが、僕は思わずそう叫んでしまった。
頭の悪そうな見た目の兵器というか、名前のネーミングセンスの無さとか…‥‥襲撃に関しての怒りよりもまず、そのツッコミどころ満載なそれに対してツッコミを入れてしまった。
『仕方がないだろう!!だってこの兵器、起動キーをそれにしてしまったからな!!どうせ動かせまいと思って、適当に名付けたのだからな!!』
あ、適当に名付けたのかあれ。というか、起動出来たら名前を変えれば良いような…‥‥
『何にしてもだ!!この巨大征服兵器ンドゥ、ガッブ!!…‥‥んん、「ムーラッシュ」は我が野望を叶えるための代物!!錬金術の衰退をものともせず、人民共を力と恐怖で支配し、世界を手中に収めることができる、夢の希望兵器!!その第一歩として、まずは王太子の座を取り返しに、いや、国王そのものを潰し、我が国をここに改めて建国して王になる事に決めたのである!!』
「なんだって!?何を考えているんだ兄さん!!」
「充分立派な反逆罪です!!」
思いっきり舌を噛んだのか、兵器の名称を速攻で変えて宣言するゲルバーガーに対して、王太子と錬金術師長はそう叫ぶ。
「なるほど…‥‥つまり、その賢者の石の作成とやらに、まずは私たちを狙ったという訳ですカ」
『そのとおりだ!!』
「でも、今こうして動かして‥‥‥いえ、先ほど述べられた、同胞たちを糧にする手段があったのであれば、手を出す必要性は無かったのでは?」
『…‥‥気が付くのが遅かっただけだ。失敗し、どうにか探る中でこの答えにたどり着いたのだかだかだか、らな!!』
「ん?」
ふと、今のワゼとのやり取りの中で、何やらゲルバーガーの様子がおかしくなってきたことに気が付く。
みれば、赤く輝いている賢者の石とやらが、先ほどに比べて奴に近づいているような‥‥‥
『だがだがだが!!それそれでも!!我が野望を叶える手段として利用できできできデキデキデキ!!』
「‥‥‥ワゼ、なーんか、相手おかしくなってない?壊れた録音機みたいになっているような」
「それもそうでしょウ。この距離で解析しましたが、あれ粗悪品ですネ。賢者の石になっているようですが‥‥‥どうも一部錬成を失敗しているのか、自己判断して取り込んでいるようデス」
「何を?」
「精神デス」
『何を、何を、何を、何をごちゃごちゃと…‥‥ぐべっ‥‥?』
賢者の石とやらの輝きが強くなっていた、次の瞬間、それは起きてしまった。
透明な球体のような操縦室ゆえに、丸見えな内部のその惨状が、はっきりと見えてしまった。
近づいていた、賢者の石の一部が伸び、ゲルバーガーの胸を貫いたその場面を。
そして、返しのような物が先端に発生し、そのままひっこめると同時に体をさらに引き寄せ、賢者の石の中へ取り込んだ、その瞬間を。
ごきごきぼきぼきぃ!!
「‥‥‥うわぁ、絶対に子供たちに見せられない、グロテスクな光景になった」
「今、室内の方入れてよかったですネ」
「に、兄さんが‥‥‥喰われた?」
「賢者の石が、人を喰らった…?」
各々の感想を口に漏らす中、賢者の石が急速に膨らみ、操縦席一杯にぎちぎちとなり、その下の方から伸ばしていき、巨大兵器ムーラッシュとやらに完全に接続される。
そして表面に、血管のような模様を構築していき、光が模様を辿って全身に回る。
『ゴゲギギガババ…‥‥ゲッザヤァァァァァ!!』
目玉のような物と口のような物が生成され、大きな咆哮をあげる賢者の石。
「‥‥‥ふむ、よっぽど最悪なものを使用したようデス。あれ、一生命体となって完全暴走状態デス」
「つまり、簡単にいうと?」
「新しい化け物としての命を成しまシタ。しかし、材料が粗悪品だったせいか、色々足りないことを自覚しており‥‥‥取り込もうとしてマス。具体的には、使用された材料はおそらく人間の体そのものであり、補充のために、捕食行動を開始するでしょウ」
「「「‥‥‥はあああああああああああああああああああああああああああああ!?」」」
怒るべき相手が喰われ、生まれてしまったでっかい化け物、仮称ムーラッシュ。
観光も兼ねてきたはずなのに、なぜこんな面倒ごとに巻き込まれてしまうんだと、思わず頭を抱えたくなってしまうのであった‥‥‥‥
…‥‥ディングルア王国、王城内。
その来賓室の場にて、僕等は説明を受けていた。
「‥‥‥つまり、今回の襲撃者たちはそちらの者だったか」
「ああ、残念ながらね‥‥黒幕は、兄だったようだ」
「それに、研究馬鹿共が引っかかってしまったのもあったな…‥」
うなだれて、そう説明してくれているのは、この国の王太子と錬金術師長。
夜中の襲撃者たちを尋問し、引き渡し、また尋問して得られた情報によれば、今回の騒動の元凶は、この国の元第1王子のゲルバーガーというやつだったらしい。
元、と付くのは、今は王籍が抜かれており、辺境の領主として働いているはずだったのだとか。
もともとは、この目の前の王太子は第2王子であり、どちらも素晴らしい才能を持ち、どっちが王太子になってもおかしくは無かったらしい。
その中でも、衰退しかけていた錬金術の分野に対して、第1王子が目を付け、徐々に技術の復興、新構築などをして、次期王太子に決まりかけていたそうだ。
だがしかし、そんなある日にとある事件が起きてしまった。
何と、様々な功績を持っていた第1王子が、奴隷売買、いや、正確に言えば人身売買に深くかかわっていたのだとか。
城に召し上げて使用人にする程度とか、それであればまだ何とかよかったらしいのだが‥‥‥‥その王子、ゲルバーガーがやらかしたのは、購入した人間をを利用した人体実験を行っていたのだ。
医療・科学の発展には、臨床実験などを行う必要性はあり、錬金術も例にもれず行うことがある。
それは通常の手段であれば、そういう類の専門機関が存在し、そちらに依頼して行えるのだが、その手間が惜しかったのか、はたまたはその機関での規約違反となるレベルの物を行いたかったのか‥‥‥どっちにしても強制的に行い、材料扱いしていたうえに、身寄りのない孤児の再利用だとか言う理由で人身売買などを行い、実験材料兼研究資金源にしていたようなのである。
錬金術の発展のために、仕方がない事と片付けていたらしいが、明かに倫理から外れ過ぎた実験も行っており、露見した時には既に大勢の犠牲者が出ていた後だった。
王族がこれでは醜聞もひどく、発展のためにとは言え、倫理を無視しすぎている行為には処罰を下すしかない。
ゆえに、王籍を剥奪し、一旦王族とは関係なくしたのである。
とはいえ、その才能も惜しく、そのような行為さえしなければまともな類。
家族としての情もあり、二度とそのような事をしないのであればという条件の元、なんとか辺境の領地の貴族領主として残っていたはずだったが…‥
「‥‥‥そのような事をした兄には、再犯する可能性があって、一応監視の目ぐらいは付いていたんだ。辺境は目が届きにくくもあり、かと言って王城に近い場所でも兄を担ぎあげてしまうような輩がいる可能性があったので、そのような事しかできなかった」
「だがな…‥‥彼はその優れた才能を悪用して、ここの錬金術師たちの内、さらにやばい研究馬鹿の中でも過激派の部類を引き入れてしまったようだ」
いつのまにか監視の目は元第1王子のものとなってしまい、気が付かないうちに錬金術師たちのその過激派の類が掌握されていた。
そしてどうやら、何かの道具を精製して返り咲く計画を練っていたようだが…‥‥
「その計画のために、僕らが襲われたってことか‥‥‥」
「同じ王族として、あえて心を鬼にして言わせてもらいますが、流石にそれは甘いですわ。そのせいで、子どもたちの方へ、メイドの方にも、害をなされかけましたもの。そもそも、そんな違法すぎるというか、倫理を外れた人がまともになる可能性がありますの?」
ミスティアの言葉が、もっともな正論である。
王族という立場は、国を担う立場でもあり、自身を犠牲にしなければいけない立場でもある。
好き勝手したら国が荒れ、そういう面倒ごとの類は切り捨てなければいけない時もあるのだ。
家族の情、その才能の惜しさなどもあったのだろうが…‥‥流石にこれは、アウトだろう。
「現在行方不明らしいが、見つけ次第こちらで手を下す。家族に手を出されかけたし、そちらに任せていては、また甘い対応になりそうだからね」
‥‥‥ここは他国であり、王太子側の方が本来処分を下すだろう。
本来こちらが出せる者でもないが‥‥‥こういう時に、魔王という立場が役に立つ。
何しろ、王配ゆえに本来は国の権力も持たないけれども、無駄に力はあるからね。
うん、というか直接ぶちっとしてやりたいからなぁ‥‥‥監視も役に立っていない、ただの辺境送り処分をした前例を見れば信用できなくなるからね・
元王子とか言うが、そいつがやらかしたのは下手すれば戦争になりかねない事実。
その事を相手側も深く受け止めているようで、何も言わない。
っと、空気が重苦しくなっていた、その時であった。
ズゥゥン!!
「「「「!!」」」」
突然、大きな音と共に、地面が揺れだす。
まるで、巨大な何かが歩むかのように、一歩、また一歩大地を踏みしめるかのような、大きな揺れ。
「何事だ!」
「ご主人様、元凶がどうやら自ら姿を現したようデス」
問いかければ、そばにいたワゼがそう口にし、僕等は急いで王城から出て外を見る。
そこから広がるのは、城下街ではあるのだが‥‥‥その街並みの向こう側に、それは存在していた。
いくつもの金属光を放つぶっとい足を持ち、バランスの悪そうな大量の腕搭載。
頭の部分はガラス張りにでもしているのか透明であり、その中には何やら赤く輝く物体と、設置されている席に座っているらしい人物の姿が目に取れた。
‥‥‥何と言うか、あれだな。巨大ロボットとでも言えば良いのか、百足の足に、巨人の胴体、電球の頭と言った方がまだわかりやすい何かだな、アレ。
「あ、あの席にいるのは…‥‥ゲルバーガー!?」
この距離でもなんとか認識できそうな人物を見て、王太子がそう叫ぶ。
『ふはははははははははは!!そうだ、良く分かったな愚弟よぉぉぉぉぉ!!』
集音器でもつけているのか、この距離でも聞こえたらしい声に対して、バカでかい拡声器でも使っているのか、ゲルバーガーとか言うやつの声が響き渡った。
『色々と、こちらの企みを知ったようだがもうすでに遅い!!こちらはこれをついに手に入れたからなぁ!!』
うぃぃんっ巨大ロボの手が動き、指をさすのは操縦席と思われる部分の真横で光る、赤く輝く物体。
「あれは‥‥‥生成パターンⅢで形成された、賢者の石のようデス」
『ほぅ、そこのメイドは知っているのか、この素晴らしき力を!!』
ワゼのつぶやきに対して、ゲルバーガーは何やら嬉しそうな声を上げる。
『そうともそうともそうともそうとも!!この石は我が同胞たちを糧にして生まれた、賢者の石!!万能のエネルギー源となり、力ともなり、この巨大征服兵器「ンドゥルゥプァー」を動かすために、必要なものであったのだ!!』
「滅茶苦茶言いにくい、ネーミングセンスの欠片もない名前じゃん!!」
他にも突っ込むべき点があったかもしれないが、僕は思わずそう叫んでしまった。
頭の悪そうな見た目の兵器というか、名前のネーミングセンスの無さとか…‥‥襲撃に関しての怒りよりもまず、そのツッコミどころ満載なそれに対してツッコミを入れてしまった。
『仕方がないだろう!!だってこの兵器、起動キーをそれにしてしまったからな!!どうせ動かせまいと思って、適当に名付けたのだからな!!』
あ、適当に名付けたのかあれ。というか、起動出来たら名前を変えれば良いような…‥‥
『何にしてもだ!!この巨大征服兵器ンドゥ、ガッブ!!…‥‥んん、「ムーラッシュ」は我が野望を叶えるための代物!!錬金術の衰退をものともせず、人民共を力と恐怖で支配し、世界を手中に収めることができる、夢の希望兵器!!その第一歩として、まずは王太子の座を取り返しに、いや、国王そのものを潰し、我が国をここに改めて建国して王になる事に決めたのである!!』
「なんだって!?何を考えているんだ兄さん!!」
「充分立派な反逆罪です!!」
思いっきり舌を噛んだのか、兵器の名称を速攻で変えて宣言するゲルバーガーに対して、王太子と錬金術師長はそう叫ぶ。
「なるほど…‥‥つまり、その賢者の石の作成とやらに、まずは私たちを狙ったという訳ですカ」
『そのとおりだ!!』
「でも、今こうして動かして‥‥‥いえ、先ほど述べられた、同胞たちを糧にする手段があったのであれば、手を出す必要性は無かったのでは?」
『…‥‥気が付くのが遅かっただけだ。失敗し、どうにか探る中でこの答えにたどり着いたのだかだかだか、らな!!』
「ん?」
ふと、今のワゼとのやり取りの中で、何やらゲルバーガーの様子がおかしくなってきたことに気が付く。
みれば、赤く輝いている賢者の石とやらが、先ほどに比べて奴に近づいているような‥‥‥
『だがだがだが!!それそれでも!!我が野望を叶える手段として利用できできできデキデキデキ!!』
「‥‥‥ワゼ、なーんか、相手おかしくなってない?壊れた録音機みたいになっているような」
「それもそうでしょウ。この距離で解析しましたが、あれ粗悪品ですネ。賢者の石になっているようですが‥‥‥どうも一部錬成を失敗しているのか、自己判断して取り込んでいるようデス」
「何を?」
「精神デス」
『何を、何を、何を、何をごちゃごちゃと…‥‥ぐべっ‥‥?』
賢者の石とやらの輝きが強くなっていた、次の瞬間、それは起きてしまった。
透明な球体のような操縦室ゆえに、丸見えな内部のその惨状が、はっきりと見えてしまった。
近づいていた、賢者の石の一部が伸び、ゲルバーガーの胸を貫いたその場面を。
そして、返しのような物が先端に発生し、そのままひっこめると同時に体をさらに引き寄せ、賢者の石の中へ取り込んだ、その瞬間を。
ごきごきぼきぼきぃ!!
「‥‥‥うわぁ、絶対に子供たちに見せられない、グロテスクな光景になった」
「今、室内の方入れてよかったですネ」
「に、兄さんが‥‥‥喰われた?」
「賢者の石が、人を喰らった…?」
各々の感想を口に漏らす中、賢者の石が急速に膨らみ、操縦席一杯にぎちぎちとなり、その下の方から伸ばしていき、巨大兵器ムーラッシュとやらに完全に接続される。
そして表面に、血管のような模様を構築していき、光が模様を辿って全身に回る。
『ゴゲギギガババ…‥‥ゲッザヤァァァァァ!!』
目玉のような物と口のような物が生成され、大きな咆哮をあげる賢者の石。
「‥‥‥ふむ、よっぽど最悪なものを使用したようデス。あれ、一生命体となって完全暴走状態デス」
「つまり、簡単にいうと?」
「新しい化け物としての命を成しまシタ。しかし、材料が粗悪品だったせいか、色々足りないことを自覚しており‥‥‥取り込もうとしてマス。具体的には、使用された材料はおそらく人間の体そのものであり、補充のために、捕食行動を開始するでしょウ」
「「「‥‥‥はあああああああああああああああああああああああああああああ!?」」」
怒るべき相手が喰われ、生まれてしまったでっかい化け物、仮称ムーラッシュ。
観光も兼ねてきたはずなのに、なぜこんな面倒ごとに巻き込まれてしまうんだと、思わず頭を抱えたくなってしまうのであった‥‥‥‥
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