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1章 旅立ちと始まり
1-05 上には上が、襲撃者には襲撃が
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「くっ!!不味いな、ここまで来るとは」
「しつこいぞゴルゾッス商会の手の者たちよ!!こんな手を使ってきていいのか!!」
「黙りやがれこんちくしょう!!」
「そっちだって襲撃を掛けた瞬間に、全員に下剤をぶちまけるなんてひでぇだろうがぁぁぁ!!」
‥‥‥外で護衛として雇った冒険者や騎士たちが、襲撃してきた賊共と戦っているようだが、気のせいか話している内容がかなり微妙な言い争いがしなくもない。
というか護衛たちよ、何故それを勝手にぶちまけた。あれは襲撃する盗賊や山賊撃退用に開発している商品だけれども、まだ開発途中で酷い腹痛を起こす程度な上に、揮発性が非常に高くなって味方にまで下手すると影響してしまうという危険物だぞ。
今回はギリギリ賊共の一部が効果を実験する結果になったようだが、それでもまだ相手の数は多い。
そう思いつつ、わたしは馬車の中で守られながら、こっそりと覗き見る。
言い争いつつも剣や斧でぶつかり合っており、結構激しい戦いとなっているだろう。
見た感じでは、こちらの方もそこそこ腕の立つ者をそろえているとはいえ、それでも賊共の方が人数的にも立場的にも優勢のようだ。
「守る戦いの方が、攻めるよりも難しいからな‥‥‥このままではまずいが、動けないか」
荷馬車の方にはまだ開発途中の製品だが、一応使えないことも無いものはそろっている。
けれども、こちらの馬車から移って取りに向かうのはこの状況では厳しい。
「だが、結局死ねば金は身に付かぬし、命あってこその儲け話。ならばここは、覚悟を決めなければか…む?」
この際命を失うよりも残る可能性を信じて覚悟を決めようと思い、馬車の扉に手をかけて飛び出す隙を伺っていた、その時だった。
ふと、賊共のほうに目を移して隙を捜していると、後方の方に何かが見えた。
よく目を凝らすと、近づいてきているようだが‥‥‥あれは魔物か?
「っ!!巨大な蜘蛛で、漆黒の体!!あれはまさか、『ダークネスタラテクト』じゃないか!?」
―――――
『ダークネスタラテクト』
闇夜のような黒い身体を持ち、ある程度の大きさを持った蜘蛛の魔物。
蜘蛛と言えば蜘蛛の巣を張って獲物を捕らえるまで待ち構える様な印象があるが、ダークネスタラテクトの場合は積極的に獲物を狩る習性があり、その糸は罠用よりも狩猟用に使用されている。
糸自体は非常に強度や美しさに優れているので高値で取引されやすいが、タラテクトからすると人間も獲物としてしっかり認識しており、かなり強くもあるので糸の確保は命がけになる。
―――――
そんな大蜘蛛の魔物が近づいてきているという事は、こちらを獲物として認定し、襲い掛かろうとしてるのだろうが。
だとすると非常に不味い。賊共も護衛たちも強そうだが、ダークネスタラテクトに関しては歯が立たないかもしれない。
荷馬車の方に積んである品々も、あくまでも対人間用になっているだけであり、対魔物用の商品に関しては別の奴が違うルートで運んでいるのだ。
このままでは確実に襲われ、敵味方関係なく腹に収められる‥‥‥と、思っていたその時だった。
【シュルルル!!】
「ハクロ糸射出!!襲ってきている人たちの方を狙って縛り上げろ!!」
よく見れば、その蜘蛛の背中に少年が乗っているようだ。
そして信じられないことに、ダークネスタラテクトに指示を出しているようで、タラテクトの方も大人しく指示に従い、賊たちだけを狙って糸を撃ち出してからめとっていく。
「な、なんだなんだ!?」
「でっかい蜘蛛の魔物が、賊共を仕留めて良くだと!?」
「お前ら、状況を把握するよりもまずは賊共を捕らえていけ!!あの蜘蛛と少年が何者か分からないが、今はとりあえず味方だと思って動けえぇぇ!!」
突然の新たな襲撃者に一時混乱するも、ベテランの冒険者がそう叫び、すぐに対応に当たっていく。
そして先ほどまでやや劣勢気味だった戦況はあっという間に逆転し、みるみる間に賊たちは捕らえられていくのであった…‥‥
―――――
「‥‥‥ふぅ、あらかた捕まえたようだけど、なんで何人かの人は腹痛を訴えていたんだろうね?」
【シュル?】
‥‥‥馬車を襲う賊たちを見つけ、手助けをしたのは良かっただろう。
すぐに場は収まり、賊共は全員ハクロの糸で捕縛され転がされていた。腹痛を訴える者がいるのが気になるが、襲う前日とかの飯が悪かったのだろうか?
そう思っていると、その場の勢いで一緒に戦っていた、元々馬車の方にいた人たちが見ていることに気が付いた。
「済まない、助けてもらって。突然のことで驚いたが、捕縛に協力してくれて感謝する」
「いや、こちらとしてはたまたま見つけたから、手助けしようと思っただけですよ。礼を言うなら、先にこの状況を見つけたハクロの方に言ってください」
【シュルルゥ】
「っ…‥‥あの、聞きたいのだがこの蜘蛛の魔物は、なんなのかね。かなりの大蜘蛛で結構ヤバめの魔物だと思うのだが‥‥‥」
ハクロがぐいっと出てくると、びくっと震える人たち。
無理もないだろう。大きな蜘蛛が出てくるのは、そりゃ誰だって驚きたくもなる。
「まぁ、僕自身ハクロが何の魔物なのか分かってないんですけれどね‥‥‥ちょっと前に出会いまして、色々あって仲良くなって、旅の仲間になってくれました。そうだよね、ハクロ」
【シュルシュル】
「「「色々って、何があったんだよ!!」」」
馬車の護衛らしい人達のツッコミが、綺麗にそろう。
「なんというか、ちょっと危険な魔物に襲われまして、協力して討伐しただけですよ」
「この蜘蛛の魔物と一緒に?え、協力して?」
「ええ、お爺ちゃんが昔教えてくれたので何者かはわかったんですけど、ピラニアックモンキーとかいう魔物でして‥‥‥」
「ピラニアックモンキー!?」
「出てきたらそれこそ、かなり危険な魔物じゃないか!?」
「そんなのが出て来るって、まず何をどうしてそうなるんだよ!?」
わかっていることだけを正直に話したら、かなり驚愕されてしまった。
どうもこの人たちも耳にしたことがある魔物だったが、かなり危険な魔物だという認識は間違っていなかったらしい。
「と、とりあえずだが、この場はどう収めれば…‥‥」
「代われ、護衛たちよ。彼とはわたしが話すことにしよう」
「ど、ドラムス様!!」
色々と情報が出たせいか、ちょっとばかり騒いでしまう状況。
その状況を収めるためなのか、馬車の方から誰かが出てきた。
恰幅の良いおじさんというか、大きなたばこを咥えてぷかぷかと煙を出している大きなおじさん。
この人が、今回襲われていた人たちが守っていた相手なのだろうか。
「さて、助けてもらって礼を言おう。わたしはコメツクボ商会の商会長のドラムスだ。この度はあの賊共から守ってくれて感謝する」
「いえ、自然としただけです」
「いや、それでもすぐに人のためを思って動けるのは良い事だろう。少年よ、謙遜することはない。人とはいざ動けねば、何もできないことが多いからな」
はっはっはっと笑うように、大きなお腹を震わせてそう答えるドラムスさん。
人の良さそうな感じがしており、そして同時にそれなりの場数を踏んできたのか油断のない目の色をしていた。
「しかし、色々と話を聞きたいこともある。時間を取っても構わないなら、まずはゆっくりと理解を深めながら話してくれないだろうか?」
「ゆっくりとですか?急ぐ旅路でもないですし良いですよ。あ、そう言えば名乗るを忘れていました。僕はジーク・ルーガスです。こっちはハクロです」
【シュルル】
「そうか、ジークにハクロ‥‥‥ん?ルーガスだと?」
「何か、ひっかかりましたか?」
「むぅ、何処かで聞いた覚えがあるような‥‥‥思い出せぬのなら、別に良いか。では、まずはここで休憩を取り、話し合いの場を設けよう。護衛たちよ、一旦治療および盗賊たちの照合を行ってほしい。ギルドの方から手配書をいくつか貰っているが、賞金首がいないか確認してくれ」
「はっ!」
人助けをしたら、何やら結構権力のありそうな人たちだったらしい。
とりあえず今は、せっかくの森から出て初めての人との遭遇なので、話し合うことにするのであった‥‥‥
「しつこいぞゴルゾッス商会の手の者たちよ!!こんな手を使ってきていいのか!!」
「黙りやがれこんちくしょう!!」
「そっちだって襲撃を掛けた瞬間に、全員に下剤をぶちまけるなんてひでぇだろうがぁぁぁ!!」
‥‥‥外で護衛として雇った冒険者や騎士たちが、襲撃してきた賊共と戦っているようだが、気のせいか話している内容がかなり微妙な言い争いがしなくもない。
というか護衛たちよ、何故それを勝手にぶちまけた。あれは襲撃する盗賊や山賊撃退用に開発している商品だけれども、まだ開発途中で酷い腹痛を起こす程度な上に、揮発性が非常に高くなって味方にまで下手すると影響してしまうという危険物だぞ。
今回はギリギリ賊共の一部が効果を実験する結果になったようだが、それでもまだ相手の数は多い。
そう思いつつ、わたしは馬車の中で守られながら、こっそりと覗き見る。
言い争いつつも剣や斧でぶつかり合っており、結構激しい戦いとなっているだろう。
見た感じでは、こちらの方もそこそこ腕の立つ者をそろえているとはいえ、それでも賊共の方が人数的にも立場的にも優勢のようだ。
「守る戦いの方が、攻めるよりも難しいからな‥‥‥このままではまずいが、動けないか」
荷馬車の方にはまだ開発途中の製品だが、一応使えないことも無いものはそろっている。
けれども、こちらの馬車から移って取りに向かうのはこの状況では厳しい。
「だが、結局死ねば金は身に付かぬし、命あってこその儲け話。ならばここは、覚悟を決めなければか…む?」
この際命を失うよりも残る可能性を信じて覚悟を決めようと思い、馬車の扉に手をかけて飛び出す隙を伺っていた、その時だった。
ふと、賊共のほうに目を移して隙を捜していると、後方の方に何かが見えた。
よく目を凝らすと、近づいてきているようだが‥‥‥あれは魔物か?
「っ!!巨大な蜘蛛で、漆黒の体!!あれはまさか、『ダークネスタラテクト』じゃないか!?」
―――――
『ダークネスタラテクト』
闇夜のような黒い身体を持ち、ある程度の大きさを持った蜘蛛の魔物。
蜘蛛と言えば蜘蛛の巣を張って獲物を捕らえるまで待ち構える様な印象があるが、ダークネスタラテクトの場合は積極的に獲物を狩る習性があり、その糸は罠用よりも狩猟用に使用されている。
糸自体は非常に強度や美しさに優れているので高値で取引されやすいが、タラテクトからすると人間も獲物としてしっかり認識しており、かなり強くもあるので糸の確保は命がけになる。
―――――
そんな大蜘蛛の魔物が近づいてきているという事は、こちらを獲物として認定し、襲い掛かろうとしてるのだろうが。
だとすると非常に不味い。賊共も護衛たちも強そうだが、ダークネスタラテクトに関しては歯が立たないかもしれない。
荷馬車の方に積んである品々も、あくまでも対人間用になっているだけであり、対魔物用の商品に関しては別の奴が違うルートで運んでいるのだ。
このままでは確実に襲われ、敵味方関係なく腹に収められる‥‥‥と、思っていたその時だった。
【シュルルル!!】
「ハクロ糸射出!!襲ってきている人たちの方を狙って縛り上げろ!!」
よく見れば、その蜘蛛の背中に少年が乗っているようだ。
そして信じられないことに、ダークネスタラテクトに指示を出しているようで、タラテクトの方も大人しく指示に従い、賊たちだけを狙って糸を撃ち出してからめとっていく。
「な、なんだなんだ!?」
「でっかい蜘蛛の魔物が、賊共を仕留めて良くだと!?」
「お前ら、状況を把握するよりもまずは賊共を捕らえていけ!!あの蜘蛛と少年が何者か分からないが、今はとりあえず味方だと思って動けえぇぇ!!」
突然の新たな襲撃者に一時混乱するも、ベテランの冒険者がそう叫び、すぐに対応に当たっていく。
そして先ほどまでやや劣勢気味だった戦況はあっという間に逆転し、みるみる間に賊たちは捕らえられていくのであった…‥‥
―――――
「‥‥‥ふぅ、あらかた捕まえたようだけど、なんで何人かの人は腹痛を訴えていたんだろうね?」
【シュル?】
‥‥‥馬車を襲う賊たちを見つけ、手助けをしたのは良かっただろう。
すぐに場は収まり、賊共は全員ハクロの糸で捕縛され転がされていた。腹痛を訴える者がいるのが気になるが、襲う前日とかの飯が悪かったのだろうか?
そう思っていると、その場の勢いで一緒に戦っていた、元々馬車の方にいた人たちが見ていることに気が付いた。
「済まない、助けてもらって。突然のことで驚いたが、捕縛に協力してくれて感謝する」
「いや、こちらとしてはたまたま見つけたから、手助けしようと思っただけですよ。礼を言うなら、先にこの状況を見つけたハクロの方に言ってください」
【シュルルゥ】
「っ…‥‥あの、聞きたいのだがこの蜘蛛の魔物は、なんなのかね。かなりの大蜘蛛で結構ヤバめの魔物だと思うのだが‥‥‥」
ハクロがぐいっと出てくると、びくっと震える人たち。
無理もないだろう。大きな蜘蛛が出てくるのは、そりゃ誰だって驚きたくもなる。
「まぁ、僕自身ハクロが何の魔物なのか分かってないんですけれどね‥‥‥ちょっと前に出会いまして、色々あって仲良くなって、旅の仲間になってくれました。そうだよね、ハクロ」
【シュルシュル】
「「「色々って、何があったんだよ!!」」」
馬車の護衛らしい人達のツッコミが、綺麗にそろう。
「なんというか、ちょっと危険な魔物に襲われまして、協力して討伐しただけですよ」
「この蜘蛛の魔物と一緒に?え、協力して?」
「ええ、お爺ちゃんが昔教えてくれたので何者かはわかったんですけど、ピラニアックモンキーとかいう魔物でして‥‥‥」
「ピラニアックモンキー!?」
「出てきたらそれこそ、かなり危険な魔物じゃないか!?」
「そんなのが出て来るって、まず何をどうしてそうなるんだよ!?」
わかっていることだけを正直に話したら、かなり驚愕されてしまった。
どうもこの人たちも耳にしたことがある魔物だったが、かなり危険な魔物だという認識は間違っていなかったらしい。
「と、とりあえずだが、この場はどう収めれば…‥‥」
「代われ、護衛たちよ。彼とはわたしが話すことにしよう」
「ど、ドラムス様!!」
色々と情報が出たせいか、ちょっとばかり騒いでしまう状況。
その状況を収めるためなのか、馬車の方から誰かが出てきた。
恰幅の良いおじさんというか、大きなたばこを咥えてぷかぷかと煙を出している大きなおじさん。
この人が、今回襲われていた人たちが守っていた相手なのだろうか。
「さて、助けてもらって礼を言おう。わたしはコメツクボ商会の商会長のドラムスだ。この度はあの賊共から守ってくれて感謝する」
「いえ、自然としただけです」
「いや、それでもすぐに人のためを思って動けるのは良い事だろう。少年よ、謙遜することはない。人とはいざ動けねば、何もできないことが多いからな」
はっはっはっと笑うように、大きなお腹を震わせてそう答えるドラムスさん。
人の良さそうな感じがしており、そして同時にそれなりの場数を踏んできたのか油断のない目の色をしていた。
「しかし、色々と話を聞きたいこともある。時間を取っても構わないなら、まずはゆっくりと理解を深めながら話してくれないだろうか?」
「ゆっくりとですか?急ぐ旅路でもないですし良いですよ。あ、そう言えば名乗るを忘れていました。僕はジーク・ルーガスです。こっちはハクロです」
【シュルル】
「そうか、ジークにハクロ‥‥‥ん?ルーガスだと?」
「何か、ひっかかりましたか?」
「むぅ、何処かで聞いた覚えがあるような‥‥‥思い出せぬのなら、別に良いか。では、まずはここで休憩を取り、話し合いの場を設けよう。護衛たちよ、一旦治療および盗賊たちの照合を行ってほしい。ギルドの方から手配書をいくつか貰っているが、賞金首がいないか確認してくれ」
「はっ!」
人助けをしたら、何やら結構権力のありそうな人たちだったらしい。
とりあえず今は、せっかくの森から出て初めての人との遭遇なので、話し合うことにするのであった‥‥‥
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