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107 動きやすくはしていたり
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‥‥‥深夜、誰もが眠りにつく時間帯。
それでもなお、豪雨は収まっていなかった。
いや、収まる気配すら見せないのだ。何者かが引き起こしたものなのだから。
そしてその雨量は夜間になって、さらに増大し始め…‥‥
ザブゥゥン!!
「ごべっぶぅ!?」
寝ていたはずが、突然水に落ちた感覚で、慌てて俺は目を覚ました。
いまだに外は暗く、まだ真夜中っぽいのだが‥‥‥何やら感覚的に、見たくない事実があるような。
「‥‥‥浸水しているじゃん!!」
体を起こして周囲を見れば、部屋中がびしょびしょに濡れ、床には水がたっぷりと溜まっていた。
この部屋はノインの改造もあり、色々と快適になるようにされているはずだが、水びだしになるようなことはなかったはず。
それなのに、こうも水が大量に浸水してきているってことは‥‥‥
「ご主人様、緊急事態デス。水害、発生いたしまシタ」
「うおっ!?」
いつのまにか背後にいたノインの言葉に、俺は驚愕しつつもその中に聞き過ごせないものがあったことに気が付く。
「水害?」
「ええ、洪水デス」
…‥‥どうやら、雨量が増大しまくったせいで、地面の吸水限界を突破。
そして今、急激に水位が上昇し始め、室内にも水が侵入してきたらしい。
「全員起きろ!!避難するぞ!!」
慌ててこの状況に対応するために、扉を一斉に開けて、寝ている皆を起こし始めるのであった、
「…‥‥これは不味いことになったね。避難訓練の話をしていたところで、時間も経たずにこうなるとは」
「こっちは全員、屋上の方へ避難を終えたことを確認済みだが、豪雨のせいで満足に避難しきれないようだ」
全校生徒を叩き起こしつつ、王子たちもそれぞれ気が付き、生徒会としての立場もあって教師たちも協力し、一時的な避難場所として俺たちはそれぞれの寮の屋上へ避難していた。
豪雨のせいで大雨にうたれるが、緊急時なので許可をもらってカトレアの力で大木を生やしてもらい、その木蔭で何とか雨から守られている状態。
まだ夜中でもあるので、魔法使い学科などが光の魔法を使って周囲を照らしつつ、ルビーが飛び回り、周辺の被災状況を確認している。
「見回ったでござるよー主殿ー!」
「どうだったかー?」
「この周辺一帯どころか、この都市全体が水没しかけている状態でござるよー!」
どうも被災状況、物凄く悪いらしい。
今はまだ夜中なのもあって寝ている人も多かったはずだが、それでも流石に水位の上昇に気が付く人は多く、早い段階でそれぞれ高台などに避難することはできていたらしい。
「とはいえ、陸の孤島状態ってのは良くないな‥‥‥」
人数も多いし、食糧事情なども考慮するとそう長くいることはできない。
洪水だという事は、その他にも色々と混ざっている可能性もあるし、何より今よりもっと水位が上がる可能性だってあるのだ。
「それなんでござるが主殿、この豪雨変でござるよ」
「変?」
「この都市だけに集中して降っているのござるよ」
…‥‥ルビーいわく、周辺を飛び回り、この今いる都市自体が大豪雨に見舞われており、水没しているのは確認できた。
だがしかし、都市より外の方に少し飛んでみると、そこには雨雲も水も一切ない状態だったそうなのだ。
豪雨のせいで視界もさえぎられているせいで、その事は分からなかった。
ただ言えるとすれば、その状況から考えるとどうしても自然のものでは無い事ぐらいだろうか。
「‥‥‥何かがここに、雨を降らせて水害を起こしているのか」
「その可能性がありますネ」
「でも、そんなことって可能なのかしら?}
うーむっと、皆で首をひねって考えてみるも、その原因が良く分からない。
「魔法でも、雨を降らせることってできるっけ?」
「可能と言えば可能じゃが、この規模は無理じゃな」
「人工的に、何かを使ってと言う可能性もあると思うでありんすな」
とにもかくにも、その何かが原因でこの水害が起きている可能性は非常に大きく、そうであるならばその何かさえどうにかしてしまえば、この水害も収まるかもしれない。
「と言っても、そういう大規模なものとかは知らないのだが…‥」
「この規模の水害を起こせるとなると、それこそ国家戦略級の魔道具とかになるぞ」
陸の孤島状態のココでは情報も集めにくいし、何ができるのかが分からない。
「ルビー、あの雨雲の中に入って探るとかはできないのか?」
「既に潜入したでござるが、あの中身には何も入ってなかったでござる」
となると、原因となるモノは地上の方にある事になる。
「‥‥‥雨雲の中心地に元凶がいるとか?」
「移動していないところを見ると、可能性は…‥‥ッ!!」
疑問を口に出す中で、ノインの頭のアホ毛が急にビンっと立った。
「‥‥‥センサーに反応アリ。これは…‥‥」
びびびっとノインの頭のアホ毛がぐるぐると動きつつ、ある方向へ先端が向く。
すると、その方向の水面に、変化が起き始めた。
―――――ゴボッツ、ゴボボボボボボボ
泡立ちはじめ、夜間とはいえ、その薄暗い海面に、更に黒い影が浮かび上がってくる。
気のせいか更に雨が激しく降り注ぎ、雷が鳴り響く。
「‥‥‥まさか」
「そのまさか、のようデス。生体反応確認及び、敵性反応も確認」
全員が身構える中、その存在は一気に水上へ姿を現した。
ザッバァァァァン!!
【ジャァァァァァァァァグ!!】
咆哮と共に、水しぶきを上げ飛び出してきたのは、どう見てもあり得ないような化け物。
海によくいるとされるサメの姿に似てはいるが、目の部分が血走っており、牙は多く、そして特徴的なのは…‥‥
「シンプルだけどキモッ!?」
明らかに釣り合わないかのような、超マッスルな筋肉質の手足が付属していた。
腹の部分からムキムキな筋肉質の人間の足のような物が生え、胴体の横からは左右対称的にムキムキな腕が生えている。
中途半端すぎるコスプレとかをした人間ならまだわかるが、全長15メートルほどで、その大きさも相まってかなりのキモさを表現しまくっていた。
「なんだよあの怪物!!」
「半魚人とか、人面魚よりも合わないだろあれ!!」
出てきた姿に、避難していた人々は口々に叫びつつ、怪物のシンプルなその気持ち悪さにツッコミを入れる。
というか、そもそもあの咆哮自体が聴きなれないような言語形態をしているようで、意味もないようだが、それでも耳障りすぎるような音になっている。
【ジャァァァァァァグ!!】
「ぜ、全員迎撃態勢!!」
姿を現してすぐにまた水中に入ったかと思うと、こちらへ向かって突き進み始めた。
水中にいる敵に対して、こちらがとれる迎撃手段は…‥‥
「ルビー、水を一気に蒸発させる熱量の火を!カトレアは水底に海藻などを生やしまくって水深を浅くするなどして進路妨害!ゼネは死の魔法を用意!」
「「「了解!!」」」
「ノイン、リリス、リザはそれぞれ防御を担当!」
「「了解!」」「グゲ!」
それぞれに指示を出しつつ、素早く対応したが、いかんせん今の状況は戦闘するにしても最悪なようだ。
「マスター、光合成など不十分過ぎて生やせませんわ!」
「豪雨で火の威力が弱まって、十分な火力が出ないでござるよ!!」
「マジか!」
考えてみれば、明かりがあってもまだ真夜中でもあるし、豪雨の状態。
植物も炎も十分な力を発揮できない状態になるのだ。
「儂の方も不味いのぅ。水中の動きが早すぎて、当てにくいのじゃ」
ゼネの方も死の魔法で狙って見るが、どうもその耐性が高くありつつ、なおかつ素早い動きゆえに当てにくい状態のようである。
「リザもリリスもこの手の攻撃手段は無いし…‥‥ノイン、何かいい方法は無いか?」
「対潜用魚雷であれば、数発ほどは装備していマス。補充は現在できませんが、少なくともこれでどうにかなるかと思われマス」
「ならそれを撃て!」
「了解デス」
ガコンっという音と共に、ノインの腕が砲台に変形して、長細い筒のような物が飛び出し、水中に射出された。
そのまま突き進み、あの怪物のあたりへ行ったところで、爆発音が鳴り響いた。
チュドォォォォォォン!!
「よっしゃ命中!」
うまい事直撃できたようで、大きな水柱があがった。
この様子であれば、今の一撃で倒せたはず…‥‥
【ジャァァァァァァグ!!】
「‥‥‥と思ったら、全然効果無いな!?」
「いえ、一部傷が見られますので、多少は効果があったと思われますが‥‥‥威力が低かったようデス」
「その他に魚雷は?」
「無いデス」
どうも今のが全部だったようで、水中の相手に対する攻撃手段が失われてしまった。
そうこうしているうちに、怪物はどんどんこちらへ近づき、再び水上へ姿を現し…‥‥
【ジャァァァァァァァァァァ!!】
「水鉄砲!?」
ざっぱぁぁあんっと勢いよく飛び出したかともうと、その口から膨大な水流を吐き出した。
以前のゲイザーも同様の攻撃を行っていたが、あれとは異なりこちらの方がどう見ても勢いが凄まじい。
「グゲェ!!」
ばっとリリスが飛び出し、蓋を閉じてその水鉄砲を真正面から受けたが、いかんせん防御力はすさまじくても、重量面では相手の方が上だったようだ。
ドババババババババババ!!
「グゲェェェェ!!」
「うわ、リリスーーーー!!」
直撃を防ぎきったのは良いのだが、その水の重みのせいで吹っ飛んでいくリリス。
盾になることができても、空中じゃ流石に踏ん張りが付かなくて押し流されてしまった。
「いや、召喚すればいいか。召喚、リリス!!」
「グゲェ!!」
吹っ飛んだものの、召喚をし直して再びこの場に戻るリリス。
これであれば、いくら吹っ飛ばされようがすぐに戻ることができる。
…‥‥とは言え、攻撃手段がこちらとしてもあまりないからな…‥‥有効打が欲しいところ。
「他の学科の攻撃は!?」
「騎士学科は剣が通らないというか、接近されないと無理なようデス」
「魔法使い学科の遠距離攻撃魔法も良さそうじゃが、光の魔法で周囲を照らして、余裕が無いようじゃな。これ以上光量を減らせば、今度は相手の闇討ちが成功しやすくなってしまうのじゃ」
戦闘開始時点で周囲の灯りはある程度消されて攻撃に転じたようだが、あちらこちらでも相手に有効な攻撃手段は無いらしい。
そもそも陸戦・空中戦ならまだしも、水中の相手には有効打が余り無いようだ。
「どうしたものか…‥‥」
「わっちも弛緩のツボとかは見えるのでありんすが、流石に接近できないでありんす。あの様子だと、近づいた瞬間にあのムキムキボディで引きちぎられるとか殴られるとしか思えないでありんす」
「それはそれで非常に嫌だが…‥‥待てよ?」
そこでふと、リザを見て俺は思いついた。
考えて見れば、相手はムキムキボディを持ちながらも、水中を移動し、こちらへ攻撃を仕掛けてきている。
陸地に挙がっても十分戦えそうなものなのだが、戦いやすさの面を考えるのであれば水中の方が都合が良いのだろう。
‥‥‥で、そう考えるのであれば、相手の得意な水中から引きずり出せれば、まだこちらの攻撃がしやすい陸上で戦闘できるかもしれない。
そして、その引きずりだす手段もある。
「‥‥‥リザ、お前の能力に液体を酒などに変える力があったよな?」
「あるでありんすよ?」
「だったらさ、この洪水自体も雨水から酒に変更できないか?」
「体を触れさせれば、そこから変質可能でありんすが‥‥‥あ、その手があったでありんすね」
ぽんっと手を打ち、俺の案を彼女は理解したらしい。
水中が得意な相手という事は、その分長く水に浸かって飲み込んでいたりもする。
とすれば、全部を酒に変えてしまえば相手は酒漬けとなり、一気に酔っぱらうだろう。
酒で正常な判断もできなくなるだろうし、場合によってはその事を本能的に危機として捉えて、地上戦に持ち込めるかもしれない。
「だからこそ、やってみるんだリザ!」
「わかったでありんす!」
自身の蛇の体を水に浸け、酒に変える作業に入り始めるリリス。
その作業中は、変質させる方に意識を割いており、身を守るには少々心もとない。
だが、その分を俺たちでかばうことができれば、十分に時間は稼げる。
「皆、リザの周辺の水を全部酒に変える作業の防衛にあたってくれ!」
「「「「了解!!」」」」
とにもかくにも、俺たちは『全部を酒にする作戦』を成功させるために、時間稼ぎを始めるのであった…‥‥
それでもなお、豪雨は収まっていなかった。
いや、収まる気配すら見せないのだ。何者かが引き起こしたものなのだから。
そしてその雨量は夜間になって、さらに増大し始め…‥‥
ザブゥゥン!!
「ごべっぶぅ!?」
寝ていたはずが、突然水に落ちた感覚で、慌てて俺は目を覚ました。
いまだに外は暗く、まだ真夜中っぽいのだが‥‥‥何やら感覚的に、見たくない事実があるような。
「‥‥‥浸水しているじゃん!!」
体を起こして周囲を見れば、部屋中がびしょびしょに濡れ、床には水がたっぷりと溜まっていた。
この部屋はノインの改造もあり、色々と快適になるようにされているはずだが、水びだしになるようなことはなかったはず。
それなのに、こうも水が大量に浸水してきているってことは‥‥‥
「ご主人様、緊急事態デス。水害、発生いたしまシタ」
「うおっ!?」
いつのまにか背後にいたノインの言葉に、俺は驚愕しつつもその中に聞き過ごせないものがあったことに気が付く。
「水害?」
「ええ、洪水デス」
…‥‥どうやら、雨量が増大しまくったせいで、地面の吸水限界を突破。
そして今、急激に水位が上昇し始め、室内にも水が侵入してきたらしい。
「全員起きろ!!避難するぞ!!」
慌ててこの状況に対応するために、扉を一斉に開けて、寝ている皆を起こし始めるのであった、
「…‥‥これは不味いことになったね。避難訓練の話をしていたところで、時間も経たずにこうなるとは」
「こっちは全員、屋上の方へ避難を終えたことを確認済みだが、豪雨のせいで満足に避難しきれないようだ」
全校生徒を叩き起こしつつ、王子たちもそれぞれ気が付き、生徒会としての立場もあって教師たちも協力し、一時的な避難場所として俺たちはそれぞれの寮の屋上へ避難していた。
豪雨のせいで大雨にうたれるが、緊急時なので許可をもらってカトレアの力で大木を生やしてもらい、その木蔭で何とか雨から守られている状態。
まだ夜中でもあるので、魔法使い学科などが光の魔法を使って周囲を照らしつつ、ルビーが飛び回り、周辺の被災状況を確認している。
「見回ったでござるよー主殿ー!」
「どうだったかー?」
「この周辺一帯どころか、この都市全体が水没しかけている状態でござるよー!」
どうも被災状況、物凄く悪いらしい。
今はまだ夜中なのもあって寝ている人も多かったはずだが、それでも流石に水位の上昇に気が付く人は多く、早い段階でそれぞれ高台などに避難することはできていたらしい。
「とはいえ、陸の孤島状態ってのは良くないな‥‥‥」
人数も多いし、食糧事情なども考慮するとそう長くいることはできない。
洪水だという事は、その他にも色々と混ざっている可能性もあるし、何より今よりもっと水位が上がる可能性だってあるのだ。
「それなんでござるが主殿、この豪雨変でござるよ」
「変?」
「この都市だけに集中して降っているのござるよ」
…‥‥ルビーいわく、周辺を飛び回り、この今いる都市自体が大豪雨に見舞われており、水没しているのは確認できた。
だがしかし、都市より外の方に少し飛んでみると、そこには雨雲も水も一切ない状態だったそうなのだ。
豪雨のせいで視界もさえぎられているせいで、その事は分からなかった。
ただ言えるとすれば、その状況から考えるとどうしても自然のものでは無い事ぐらいだろうか。
「‥‥‥何かがここに、雨を降らせて水害を起こしているのか」
「その可能性がありますネ」
「でも、そんなことって可能なのかしら?}
うーむっと、皆で首をひねって考えてみるも、その原因が良く分からない。
「魔法でも、雨を降らせることってできるっけ?」
「可能と言えば可能じゃが、この規模は無理じゃな」
「人工的に、何かを使ってと言う可能性もあると思うでありんすな」
とにもかくにも、その何かが原因でこの水害が起きている可能性は非常に大きく、そうであるならばその何かさえどうにかしてしまえば、この水害も収まるかもしれない。
「と言っても、そういう大規模なものとかは知らないのだが…‥」
「この規模の水害を起こせるとなると、それこそ国家戦略級の魔道具とかになるぞ」
陸の孤島状態のココでは情報も集めにくいし、何ができるのかが分からない。
「ルビー、あの雨雲の中に入って探るとかはできないのか?」
「既に潜入したでござるが、あの中身には何も入ってなかったでござる」
となると、原因となるモノは地上の方にある事になる。
「‥‥‥雨雲の中心地に元凶がいるとか?」
「移動していないところを見ると、可能性は…‥‥ッ!!」
疑問を口に出す中で、ノインの頭のアホ毛が急にビンっと立った。
「‥‥‥センサーに反応アリ。これは…‥‥」
びびびっとノインの頭のアホ毛がぐるぐると動きつつ、ある方向へ先端が向く。
すると、その方向の水面に、変化が起き始めた。
―――――ゴボッツ、ゴボボボボボボボ
泡立ちはじめ、夜間とはいえ、その薄暗い海面に、更に黒い影が浮かび上がってくる。
気のせいか更に雨が激しく降り注ぎ、雷が鳴り響く。
「‥‥‥まさか」
「そのまさか、のようデス。生体反応確認及び、敵性反応も確認」
全員が身構える中、その存在は一気に水上へ姿を現した。
ザッバァァァァン!!
【ジャァァァァァァァァグ!!】
咆哮と共に、水しぶきを上げ飛び出してきたのは、どう見てもあり得ないような化け物。
海によくいるとされるサメの姿に似てはいるが、目の部分が血走っており、牙は多く、そして特徴的なのは…‥‥
「シンプルだけどキモッ!?」
明らかに釣り合わないかのような、超マッスルな筋肉質の手足が付属していた。
腹の部分からムキムキな筋肉質の人間の足のような物が生え、胴体の横からは左右対称的にムキムキな腕が生えている。
中途半端すぎるコスプレとかをした人間ならまだわかるが、全長15メートルほどで、その大きさも相まってかなりのキモさを表現しまくっていた。
「なんだよあの怪物!!」
「半魚人とか、人面魚よりも合わないだろあれ!!」
出てきた姿に、避難していた人々は口々に叫びつつ、怪物のシンプルなその気持ち悪さにツッコミを入れる。
というか、そもそもあの咆哮自体が聴きなれないような言語形態をしているようで、意味もないようだが、それでも耳障りすぎるような音になっている。
【ジャァァァァァァグ!!】
「ぜ、全員迎撃態勢!!」
姿を現してすぐにまた水中に入ったかと思うと、こちらへ向かって突き進み始めた。
水中にいる敵に対して、こちらがとれる迎撃手段は…‥‥
「ルビー、水を一気に蒸発させる熱量の火を!カトレアは水底に海藻などを生やしまくって水深を浅くするなどして進路妨害!ゼネは死の魔法を用意!」
「「「了解!!」」」
「ノイン、リリス、リザはそれぞれ防御を担当!」
「「了解!」」「グゲ!」
それぞれに指示を出しつつ、素早く対応したが、いかんせん今の状況は戦闘するにしても最悪なようだ。
「マスター、光合成など不十分過ぎて生やせませんわ!」
「豪雨で火の威力が弱まって、十分な火力が出ないでござるよ!!」
「マジか!」
考えてみれば、明かりがあってもまだ真夜中でもあるし、豪雨の状態。
植物も炎も十分な力を発揮できない状態になるのだ。
「儂の方も不味いのぅ。水中の動きが早すぎて、当てにくいのじゃ」
ゼネの方も死の魔法で狙って見るが、どうもその耐性が高くありつつ、なおかつ素早い動きゆえに当てにくい状態のようである。
「リザもリリスもこの手の攻撃手段は無いし…‥‥ノイン、何かいい方法は無いか?」
「対潜用魚雷であれば、数発ほどは装備していマス。補充は現在できませんが、少なくともこれでどうにかなるかと思われマス」
「ならそれを撃て!」
「了解デス」
ガコンっという音と共に、ノインの腕が砲台に変形して、長細い筒のような物が飛び出し、水中に射出された。
そのまま突き進み、あの怪物のあたりへ行ったところで、爆発音が鳴り響いた。
チュドォォォォォォン!!
「よっしゃ命中!」
うまい事直撃できたようで、大きな水柱があがった。
この様子であれば、今の一撃で倒せたはず…‥‥
【ジャァァァァァァグ!!】
「‥‥‥と思ったら、全然効果無いな!?」
「いえ、一部傷が見られますので、多少は効果があったと思われますが‥‥‥威力が低かったようデス」
「その他に魚雷は?」
「無いデス」
どうも今のが全部だったようで、水中の相手に対する攻撃手段が失われてしまった。
そうこうしているうちに、怪物はどんどんこちらへ近づき、再び水上へ姿を現し…‥‥
【ジャァァァァァァァァァァ!!】
「水鉄砲!?」
ざっぱぁぁあんっと勢いよく飛び出したかともうと、その口から膨大な水流を吐き出した。
以前のゲイザーも同様の攻撃を行っていたが、あれとは異なりこちらの方がどう見ても勢いが凄まじい。
「グゲェ!!」
ばっとリリスが飛び出し、蓋を閉じてその水鉄砲を真正面から受けたが、いかんせん防御力はすさまじくても、重量面では相手の方が上だったようだ。
ドババババババババババ!!
「グゲェェェェ!!」
「うわ、リリスーーーー!!」
直撃を防ぎきったのは良いのだが、その水の重みのせいで吹っ飛んでいくリリス。
盾になることができても、空中じゃ流石に踏ん張りが付かなくて押し流されてしまった。
「いや、召喚すればいいか。召喚、リリス!!」
「グゲェ!!」
吹っ飛んだものの、召喚をし直して再びこの場に戻るリリス。
これであれば、いくら吹っ飛ばされようがすぐに戻ることができる。
…‥‥とは言え、攻撃手段がこちらとしてもあまりないからな…‥‥有効打が欲しいところ。
「他の学科の攻撃は!?」
「騎士学科は剣が通らないというか、接近されないと無理なようデス」
「魔法使い学科の遠距離攻撃魔法も良さそうじゃが、光の魔法で周囲を照らして、余裕が無いようじゃな。これ以上光量を減らせば、今度は相手の闇討ちが成功しやすくなってしまうのじゃ」
戦闘開始時点で周囲の灯りはある程度消されて攻撃に転じたようだが、あちらこちらでも相手に有効な攻撃手段は無いらしい。
そもそも陸戦・空中戦ならまだしも、水中の相手には有効打が余り無いようだ。
「どうしたものか…‥‥」
「わっちも弛緩のツボとかは見えるのでありんすが、流石に接近できないでありんす。あの様子だと、近づいた瞬間にあのムキムキボディで引きちぎられるとか殴られるとしか思えないでありんす」
「それはそれで非常に嫌だが…‥‥待てよ?」
そこでふと、リザを見て俺は思いついた。
考えて見れば、相手はムキムキボディを持ちながらも、水中を移動し、こちらへ攻撃を仕掛けてきている。
陸地に挙がっても十分戦えそうなものなのだが、戦いやすさの面を考えるのであれば水中の方が都合が良いのだろう。
‥‥‥で、そう考えるのであれば、相手の得意な水中から引きずり出せれば、まだこちらの攻撃がしやすい陸上で戦闘できるかもしれない。
そして、その引きずりだす手段もある。
「‥‥‥リザ、お前の能力に液体を酒などに変える力があったよな?」
「あるでありんすよ?」
「だったらさ、この洪水自体も雨水から酒に変更できないか?」
「体を触れさせれば、そこから変質可能でありんすが‥‥‥あ、その手があったでありんすね」
ぽんっと手を打ち、俺の案を彼女は理解したらしい。
水中が得意な相手という事は、その分長く水に浸かって飲み込んでいたりもする。
とすれば、全部を酒に変えてしまえば相手は酒漬けとなり、一気に酔っぱらうだろう。
酒で正常な判断もできなくなるだろうし、場合によってはその事を本能的に危機として捉えて、地上戦に持ち込めるかもしれない。
「だからこそ、やってみるんだリザ!」
「わかったでありんす!」
自身の蛇の体を水に浸け、酒に変える作業に入り始めるリリス。
その作業中は、変質させる方に意識を割いており、身を守るには少々心もとない。
だが、その分を俺たちでかばうことができれば、十分に時間は稼げる。
「皆、リザの周辺の水を全部酒に変える作業の防衛にあたってくれ!」
「「「「了解!!」」」」
とにもかくにも、俺たちは『全部を酒にする作戦』を成功させるために、時間稼ぎを始めるのであった…‥‥
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枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
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