憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

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154 不安とは忘れたいもので

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‥‥‥学園祭からある程度日数も経過し、そろそろ丸投げしたゼネの妹たち問題が解決した頃合いだと思い、生徒会の場で王子たちに問いかけたディーたち。

 だが、その内容は思いのほか予想外であった。

「へ?ゼネの妹たちが何も行動を起こさずに、問題なく出国した?」
「ああ、そのようだ」
「王城の方で、頭を抱えていたらしいんだけどねぇ…‥‥」


 王子たちの話によれば、あの放棄した妹たちに関しては王城の方で色々と議論になったらしい。

 何しろ友好国の神聖国トップとは言え、やらかした内容が色々とあり、頭を非常に悩ませたらしい。

 けれども、目覚めた後の彼女達の様子は、俺たちが見ていた様子とは異なっていた。
 
 憑き物が落ちたというか、何と言うか…‥‥それこそ本当に、聖女じゃないかと言えるぐらい、雰囲気が変わっていたそうである。

「‥‥‥妹の事じゃし、精神的ショックを与えたとはいえ、そんなにあっさり下がったというのはなんか怖いのぅ」
「でも、本当に直ぐに出て行ったんだよ」

 精神的ショックを与えすぎて、一周回って人間やめた部分が別方向に曲がって、聖人にでもなったのだろうか?

 とにもかくにも、今回のその騒動でいろいろやらかしたことに関しての必要な書類や国が提示した条件などもあっさりと受諾し、スムーズに手続きを経て、出国したのだとか。

「‥‥‥ゼネにあれだけ執着していたのに、引き下がるのが早すぎるような」
「脅威が去ってくれたと考えればめでたいのかもしれぬが‥‥‥‥何かこう、底知れぬ恐怖が出てきたような気がするのじゃが」

 あのトラウマレベルの騒動を経験した身としては、こうもあっさり引き下がっていくのは妙な感じにしか思えない。

 というか、人間やめるほどの狂愛を見せ付けるほどの奴らが諦めるとか、改心するとか考えられないのである。

「何かが原因で、変わった可能性もありますネ」
「その何かと言えば…‥‥アレか?」
「…‥‥」

 ノインの言葉で考え、ゼネの方をちらりと見れば、彼女はさっと顔をそらした。

…‥‥一応、緊急事態の打開策とかそういう感じで収めて、ちょっと気まずさを失くしたが‥‥‥この話題を出すと目をそらすのはまだ心のどこかで思うところがあるらしい。

 あと一瞬、他の面子の目が厳しくなった気がしたけど、気にしない方が良いのかもしれない。


「何にしても、もうすでに出国して、国へ帰っているはずだよ」
「ああ、それで思い出した。父上から伝言もあった」
「国王陛下から?」
「『今度は押し付けられずに押し返すか、絶対に巻き添えにしてやる』と」

 なんというか、スイマセン。

 城伯という立場を手に入れても元は平民だし、押し付けられた苦労が物凄く見えてしまいます。



 とにもかくにも、この件に関してはお咎めは無し。

 むしろ、都市内部で暴れられるよりもまだマシだったので良いという判断のようだ。

「ついでに都市中の薬屋の売り上げも増えて、景気に貢献している部分も良いそうだ」
「それはそれで問題あるような」
「精々、臣下に禿が増えるだけだし今さら感はあるけどね」

 この国それでいいのか?というか、増えるだけってことは他にもいるのか?

 気になったので尋ねると、どうも国王陛下の職業「遊び人」でたまに色々とやらかすこともあり、元から臣下の負担はそれなりにあったようだ。

…‥‥本当に大丈夫か、この国。諜報として仕える将来を考えると不安しかないような。








「‥‥‥結局何もなしで良いっぽいけど、ちょっと不安にはなったなぁ」
「国の状態としては、現状他国よりは良い方らしいですけれどネ」
「心労がちょっと多いだけのようですわね」

 生徒会の場も終わり、本日の議題は終了。

 寮の自室へ戻り、室内で他の皆と話し合いながらも、ちょっと話に出ていたことで思ったことがあった。

「にしても、ふと思ったんだが、人って狂愛だけで人を辞めることができるのだろうか?」
「うーん、それはどうなんじゃろうなぁ。儂じゃって一応元人間じゃし、何かをきっかけに変貌することは可能性としてはありえなくもないのじゃが‥‥‥」

 あのゼネの妹及びその他の、狂愛の怪物変貌騒動。

 人が愛を拗らせればあそこまでヤヴァイことになるのかという疑問があるのだ。

 あれもある意味モンスターに当てはまるというか、正しくモンスター化け物というべきか‥‥‥愛って怖い。

「可能性としては、無いわけでもないですネ。人間がモンスターへ変貌する事例って探せばそれなりにあるようデス」
「そうなのか?」
「ええ、ゼネのように死後にアンデッドになる例が最たるものデス」


…‥‥ノインいわく、人間が人間でなくなる例というものは、探せばあるそうだ。

 詳しく話すためにという事で、図書室から毎度おなじみのモンスター図鑑などをその場に出し、彼女が説明し始める。

「アンデッドは主に死体がモンスターになったものが多く、きっかけとしては怨念や心残りが強すぎたりして動き出したり、はたまたは別のモンスターの影響で生まれる者もいるのデス。で、その死体には当然人も入りますので、例として一番上げやすいのデス」
「へぇ‥‥‥あ、でもそれって死体限定じゃ?」
「いえ、そのきっかけに想いもあるので、その想いで変貌を遂げてしまう例が…‥‥そうですネ、こちらのモンスターが挙げられるでしょウ」
「『フランケンシュタイン』、『キングボールマン』、『人面魚』、『ハンドマン』‥‥‥意外に多くないか?」

――――――――――――――――――
『フランケンシュタイン』
人造的に作られたモンスターの一種。ゴーレムの仲間に近い。
事例として、大量の人間の肉片をつなぎ合わせ最強の人間を作ろうと、狂った錬金術師が作成に挑み、誕生してしまったモンスターである。
ただし、全部が違う肉片ばかりなのでうまく制御できず、錬金術師もろとも周囲を破壊し、動き回る怪物となり果てた。最終的には多くの犠牲を出しつつも鎮圧され、きちんと全てばらしたうえで埋葬されたそうである。狂気じみた欲望から生まれたとも言われており、二度と作ってはならない存在。

『キングボールマン』
太り過ぎた者が極稀に行きついてしまう最悪のモンスター。
怠惰な生活を求め、肥え太るだけ太った者が生まれ変わってしまった存在。
ゴロゴロと巨大な肉塊と化して動き回り、自身の食の欲望から変貌しているらしく、食べ続けるためだけに口だけが存在し、周囲をむさぼり喰って荒らしていく。
なお、本当に極稀にしか発生せず、その段階に行くまでに大抵死亡する。

『人面魚』
通常発生する純粋な人面魚もいるが、、本当に極稀に、人間でそうなってしまう者がいた事例が存在する。
ずっとカナヅチでありつつも、泳ぎたい思いを抱き続け、ある日突然、魚になっていたのである。
本人としてはこれで泳げると周囲の者たちが驚愕している合間に意気揚々と水辺に向かい、そのまま姿を消したらしい。
なぜ、姿がそう変貌したのかは定かではないが、強い泳ぎたい思いが何故か人面魚に行きついたのではないかと言われている。


『ハンドマン』
本当に手だけが宙に浮かんでいるモンスター。
元々は手を色々な欲望で扱っていた人がなり果てるらしいが、記録は少ない。
解剖した結果、圧縮された人間の塊があったともされるが、詳細不明。原因は犯罪に使いまくりたい欲望が手に集まってしまったとも言われている。
――――――――――――――――――

「…‥‥他3つはまだ良いとして、人面魚の人だけ何か違うような」
「明らかに本人にとっては良い事だったようでござるよね」

 何にしても、人の想いとか欲望が人を変えてしまう事例は探せばそれなりにあるらしい。

「まぁ、それでも本当に極稀らしいですけれどネ。しょっちゅう起こっていたら、今頃人間という種族自体がすべてなくなりますからネ」
「そりゃそうだろうなぁ‥‥‥でも、こういう事例を見ると、あの狂愛の怪物もなんか納得いくような」

 むしろ、ここにある例よりもさらにやばい欲望とか想いを搭載していただろうし、なってもおかしくなかったのかもしれない。

 そう考えるとどれだけゼネの事を持っていたのかが分かるが…‥‥想像したくないな。人間やめるレベルの狂愛って、本当にどう拗らせれば行きついてしまうのだろうか。

「ん?あれ‥‥‥そう言えばでござるが‥」
「どうした、ルビー?」
「いや、このモンスターたちは他にも例があるようでござるけれども、『フランケンシュタイン』の説明部分で、ふと気が付いたのでござる」

 図鑑の説明を見ながら、ルビーが何かに気が付いたようで、口に出す。

「このモンスターって人造的に、他者の肉片をつなぎ合わせて作られた類でござろう?」
「まぁ、そう書いてあるしな」
「似たような事例、拙者たちも見ておらぬか?」
「何がですの?」
「似たようなものですカ?‥‥‥ア」

 っと、考え込む中で、ふとノインがルビーの言葉で何かに気が付いたようだ。

「‥‥ご主人様、もしかして、私たちはそれに近いものを確かに見ているかもしれまセン」
「近いもの?」
「今まで遭遇してきたというべきか、巻き込まれたというべきか…‥‥怪物、作っている組織ありましたヨネ?」
「…‥‥フェイスマスクか!」

…‥‥今まで巻き添えになったというか、遭遇しまくった、仮面の組織フェイスマスクお手製の怪物たち。

 考えて見れば、あれもこれも色々と混ざったような怪物ではあったが、考えて見ればこのフランケンシュタインに近いものを作っているように考えてもおかしくはないだろう。

 悪臭を放つあれは偶然の産物で除くとして、その他の怪物たちを考えると、確かに色々混ざっている時点で、酷似していると考えても納得する。

「そう考えると、その組織の目的はフランケンシュタインの製造なのか?」
「にしては、ずいぶん失敗作が多いような気もしますが…‥‥ああ、けれども失敗作だからこそ野に放つって言うのもありますわね。処分する手間が省けますもの」
「周囲へ被害があっても、基本的に地下に潜伏しているようでござるしな。地上で何があっても知らんぷりできるのでござろう」

 とはいえ、ここまで推測しても、作る意味が分からない。

 事例で制御不能な怪物とも出ているようだし、意義が見つからないのだが…‥‥

「のぅ、ダーリン。もしかするともう一つの説明の方かもしれないでありんすよ」
「というと?」
「多くの犠牲を出して鎮圧…‥‥要するに、国の戦力なども投下してどうにかなったともいえるでありんす。それはいいかえれば、それだけ凶悪最強な怪物でありんすし…‥‥これが戦力となったら、どう思うのでありんすか?」
「…‥‥うわぁ」

 リザのその言葉に、俺たちは容易に想像がついた。

 考えて見れば、とんでもない怪物である。

 そんな物が、仮にどうにか制御できたとすれば‥‥‥最悪の兵士が出来上がる可能性がある。

 そう思うと、組織の目的はそれを利用した何かに近いか、あるいはそれを何処かに売り渡して巨万の富を得るなど、様々な可能性が出てきて、製造を試みる意義が理解できた。

「考えれば考えるほど、本当に危険すぎるだろ」
「出来れば早く、潰れて欲しいですが…‥‥最悪のケースも想定できマス」
「言わなくても分かりますわね。制御できずに見事に自爆し、周囲を巻き添えにすることですわね」

…‥‥狂愛の怪物から、まさかここまで嫌な想像をさせられる話になるとは、流石に俺も思わなかった。

 とにもかくにも、さっさとなくなってほしい組織ではあるが…‥‥周囲に巻き添えさせないで欲しい。









…‥‥ディーたちが嫌な想像を考え、空気が重くなっているその頃。


 都市のとある宿屋の一室では、まさにその想像が一部実現していた。

「…‥‥なぁ、あれって良いのだろうか」
「使ったはいいが‥‥‥なぜ全部、無能な上司に当たるのだろうか」

 仮面の者たちがひそひそと口にしながらも、目の前の惨状に冷や汗を垂らす。

 目的があって使った新製品を、先にちょっと見ようと思った矢先にうっかりミスをしてしまい‥‥‥あろうことか、無能な上司にそれが直撃したのである。

「ま、まぁ、処分が出来たし良いと思えば良いだろう」
「そ、そうだな!そうだよな!!」

 軽く無能な上司が犠牲になりつつも、残っていた説明書を手に取る。

「えっと…‥‥ふむ、もしも適合しなかった場合は、従順に従うことなく、暴れまわる怪物となります、か‥‥‥あれ?これ不味いのでは?」
「もともと適合しようがしなかろうが、処分できればいい話しだが…‥‥上司の場合、どっちに転んでも最悪そうだよな」

 互に顔を見合わせ、変貌途中の上司を見て、アイコンタクトだけですぐに結論を彼らは出す。

「よし、逃げよう」
「ああ、早く逃げよう」


 面倒事は、他者へ押しつけよう。

 早く決断しなければ自分たちに被害が及ぶ可能性十分に見えており、彼らはその場から逃亡した。

 良い可能性もまだあったが、彼らはそれが絶対に無いと思い直ぐにその場を離れる。

…‥‥そして数日後、宿屋に人がいなくなった。

 それを不審に思った衛兵たちが動こうとする中、不気味そうな噂が広まり、興味を持って無断でそこに入り込んだ貴族が、それを見つけ出すのであった…‥‥‥
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