私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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4章 そして悪意の嵐は、吹き始める

4-11 どっちが悪なのか、分からない時も

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【オゲェェェェェ!?無理無理無理無理無理ィィィ!!】
【諦メルナ78号!!奴ガ我々ヲ狩レル魔剣ナラバ所持者ノ生ヲ消、】
ザシュッ!!
【67号ォォォ!?】
【ナンテコッタイ!アイツハ化物カァ!?】
「いえ、私はただのメイド魔剣なだけデス」
【【【タダノメイド魔剣ガ普通イルカァァァァァ!!ソモソモメイドデ魔剣ッテナンダヨ!!】】】

‥‥‥その事に関しては、あのガードマシンたちの叫びに同意しよう。

 目の前で起きている殺戮劇を見ながら、俺は心の中でそう思った。

 無理もないだろう。俺を殺す気満々だった相手に対して、激怒しているゼナがガードマシンたちを狩っているのだから。

 機械魔獣とは言え魔獣は魔獣。魔剣の彼女ならば確実に絶命させられるようだが、そうだとしても素手で貫かれたり切り飛ばされる目に遭いたくはない。あ、今度はどこからともなく取り出された箒で一機がふっ飛ばされたな。


「ふふふふ、ご主人様を散々傷つけていた方々ですので、本来は最低でも消滅なのですが…‥‥生憎、純正の魔獣ではないようですので、少々恐怖を与えることぐらいしかできないのは、残念ですがネ」
【ドコガ少々!?】
【基準ヲシッカリ見直シテコイヨ!?】
「黙ってくだサイ」
ズッバァァン!!
【34号、187号オォォォォォ!?】
【ヒッデェ横暴サダ!!】

 ガシャンガシャっと機械の体のどこからか声を出しつつ、機械魔獣ガードマシンたちは狩られていく。

 笑っているような彼女だが、その声のどこかにぞっとするような怒りを抱えているようで、よっぽど鬱憤が貯まっていたんだろうなと思える。

 

 そして数分もしないうちに、捕縛・殺害のために集まってきていたガードマシンたちはいつの間にか来なくなり、後に残るのは機械の残骸のみの状態になっていた。

「‥‥‥魔獣は普通、命を失ったら全部消えるが、機械部分だけが綺麗に残ったな」
「そのようデス。機械と混ぜ合わせた魔獣のようでしたが、それでも分かれている分はあったようデスネ」

 というか、機械と魔獣を混ぜた存在がこの研究所とやらにこれだけいるって‥‥‥メデゥイアルとか名乗っていた人物、どれだけ作っていたのだろうか。

「っと、まだ足元がふらつくな‥‥‥」
「ご主人様、まだ解毒と肉埋めをしただけですので、無理してはいけまセン」

 ふらっとバランスを崩しそうになると、直ぐにゼナが駆け寄り、そっと体を支えてくれる。

 先ほどまで胸元に穴が開いていたうえに猛毒に侵されていたが、戦闘の最中でゼナが治療してくれたので、一応体力の回復を待てば満足に動けるはずだろう。

‥‥‥あの大量のガードマシンを狩る中で、分身して治療するほど余裕があったもんな。そう考えると、ガードマシンたちに大量のゼナが襲い掛かるような悪夢が無かったことは、彼等にとって幸せだったのかもしれない。さらっと以前よりも増えていた気がしなくもないが、そこは技術が向上したのだろう。

 でも解毒剤をどこからともなく薬箱を出して調合していたのはまだ良いけど、謎肉を穴に直接塗りつけないでほしかった。ふさがったと言えばふさがったけど、うねうねびくびくと蠢く謎の肉は恐怖しかなかったぞ。


 とにもかくにも、追手のガードマシンたちも退けたところで、今はこの状況をどうすべきかが先になる。

 魔獣の大本だとかこれだけのマシンを作るための魔獣をどこから得たのか、制御するにはどうしていたのかなどの謎も多く残されているが、こんなところに長居していたら状況が好転することはない。

「ゼナ、脱出ルートとかは探れるか?」
「今のところ無理ですネ。窓もないですし、狩りつくしていく中でガードマシンたちのデータを抜き取ってみたのですが、この研究所の全体像がつかめまセン。どうもあちこち、自在に動かしているようでして、廊下や部屋その物がかなり動きまくっているようですネ」

 ゼナの分析によれば、廊下を辿って外に向かおうという手段などはまず使えないようだ。
 
 この研究所その物が何かの生き物の中らしく、そこそこの速度で内装が変化しているらしい。

 ならばその生き物の‥‥‥魔獣の一種らしいがその腹を食い破れば外に出られそうなものだが、如何せん肉厚すぎてまともに攻撃しようとも少々厳しいのだとか。

「とは言え、以前の超大型魔獣の時の経験がありますからネ。こんなこともあろうかと、用意しておいたのデス」

 そう言いながら胸元から取り出したのは小さな小瓶。

 ラベルには物凄く禍々しいドクロマークがデザインされており、どう考えてもかなりヤヴァイ危険物であると理解させられる。

「‥‥‥何それ」
「仕入れておいた、『超強力X式溶解液』デス。あまりにも強力すぎるので、この特殊な瓶の中に入れなければいけず‥‥‥ちょっと見たほうが早いデス」

 キュポンッと蓋を開け、たらりとその液体を床に垂らせば‥‥‥

チュ、ジュボォォォォォォォゴォォォォォォォォォォォォォォォ!!

‥‥‥ものすごい勢いで、液体がかかった個所が溶け、一気に下まで貫通したようである。

 そのまま円状にぶちまければ綺麗にどんどん液が床を溶かし、大きな穴を作り上げたのであった。

「これで空っぽですネ。貴重品なので少なかったのですが、それでも十分だったようデス。一応、再生される可能性も考慮して、しっかり溶解後に固定する作用の薬の混ざっているので、ふさがる心配もないのデス」
「一生残る傷ってか…‥‥」

 うん、まぁ、こういう方法で無理やり開けるのは手段として間違ってないかもしれない。

 でもこれ、間違っても人にかけるような真似だけはしないでほしいと、心底思えてしまうのであった。

「これで後は、降りるだけデス」

ズゥゥン!!グラグラグラグラ!!
「っと、なんか凄い揺れ始めたけど!?」

 このまま脱出できるかと思っていると、急に周囲が揺れ動き始めた。

 かなり大きく揺れ動いているというか、何かこう悶えて‥‥‥いや、原因は明白すぎた。

「どう考えても、穴をあけたせいで痛がっているよなこれ!?」
「おかしいデスネ?溶かす対象が何かの生物という事も考えて、気が付かれにくいように痛み止めも配合されているはずですガ…‥‥あ」

 空っぽになった瓶の成分表示を見直し、ゼナが何かに気が付いたように声を漏らした。

「あ、って何だ?」
「コレ、痛み止め配合タイプじゃないやつでシタ。攻撃用に感度倍増の薬品と間違えていたようデス」
「原因がひでぇぇぇぇぇ!!」

 つまり、うっかり間違えたことによって、通常ではありえないほどの痛みがこの研究所を構成する生物に与えられているようで、おそらくすさまじく悶えているのだと考えられる。

 痛み止めが配合されているならまだしも、倍増させるってどんな薬だよ。と言うか、攻撃用っているっている時点で誰かに使用される可能性がかなり高かったのか。


 考えている間にも揺れはどんどん激しくなり、まともに立つことすらできなくなる。

「このままではまずいデスネ、さっさと脱出しましょウ」
「この状態で、まともに降りられるか?」
「私がご主人様を抱えマス」

 いうが早いが、彼女はすぐに動き俺を背中に背負った。

 落ちないように縛られつつ、ひょいっと穴の中に飛び込んでいく。

「良し、きちんと硬化剤の方は配合されてますネ。揺れに合わせて斜めになったりしてますので、滑って降りていきましょウ」
「滑るにしても速いんだけど!?」

 ずざざざあぁぁぁっといきおいよく、俺たちは穴から外へ向けて、滑走し始めるのであった…‥‥


「しかし、ちょっと滑りにくいですし、ここはソードレッグモードを使用しましょウ。ご主人様に装備される方が一番良いですが、私の身体は私で制御できますので、問題ないデス」
「患部を更に痛めつける気かよ!?」

 あのモード、氷上を滑ったりするのには非常に向いているが、足部分が刃である。

 そんなモードでこの肉壁を滑っていく…‥‥いや、削り取っていくか切り刻んでいくか、ひどい傷になる未来しか見えない。

 あのメデゥイアルの研究所だと考えると亡き者にしたほうが良いような気もするが、残酷すぎやしないかなコレ‥‥‥?






 ガリガリガリィッっと軽快に音を立て、痛みに痛みを食わえている者たちがいる丁度その頃、メデゥイアルの方は揺れ動きの対処に追われていた。

「おおっとっと!?研究所が痛がっているけど、彼ら何をしたんだあ!?頑丈さが売りなのに、かなり悲痛な声が聞こえて来るぞ!!」

 声は内部に反響しないが、揺れ動き方から嫌でも伝わってくるすさまじい傷みの訴え。

 ガードマシンでどうにかできると思っていた部分もあったが、どうやらそう簡単にはいかなかったようである。

「うーん、毒で弱らせていたとは言え、考えが甘かったねぇ。まぁ、想定内と言えば想定内で文句もないかなぁ?」

 そう、弱っている状態であっても逃げられる可能性に関しては考えてはいた。

 魔剣を封じ込め、致死量を超えるほどの毒を注ぎ込み、自信のあった魔獣を組み込んだ機械魔獣を仕向けている状況だとしても、それらを乗り越えられる可能性は0ではない。

 何かと様々な状況を考え、想定しておくのが良いと普段からメデゥイアルは考えているのだ。

‥‥‥それならば、フィーが目を覚ます前に色々やれることはやっておけばいいというツッコミが入りそうなものだが、そこは性分ゆえに仕方がない。

 だからこそ、逃げられないように様々な対策を取っていたが…‥‥それでも、逃げてしまうようなことになれば、そこから先をどう対応するべきか考えればいいだけの話である。

「感覚からすると、研究所の第3エリアから直線で下にか‥‥‥‥痛みの具合からして、肉を削るか溶かすかの手段が使用されたなら、軌道はこうなるか」

 カリカリと手元にあったメモに逃走経路を予想して描きつつ、計画を練っていく。

「うん、ならばここはこうして出るだろうしぃ、ちょうどいいかもねぇ。流石に研究所内で暴れられると危険だから、外でやると考えれば都合が良いねぇ!」

 大体の経路の予想が付き、直ぐにメデゥイアルは動き出す。

「さてさて、そうなると誘導して彼らの前にあの子を出さないとねぇ。魔獣の研究の中で、大本から引きずり出す方法を色々と探る中で生まれた、現段階での最強最悪な子!さぁ、彼らを追って向かってちょーだいぃ!!」

 ぽちぃっとボタンを押せば、ガシャンと何処かで何かが作動し、蠢く音が聞こえだす。

 逃げることも考えて、用意は徹底的にしているようなのであった…‥‥


「しかし、この脱出をするとなると、ガードマシンたちが全滅したかもねぇ。んー、また作ればいい話しだけど、面倒だねぇ…‥‥」
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