私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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5章 復讐は我にあり

5-81 やり過ぎという言葉は、青薔薇姫が語源らしい

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‥‥‥全身が痛い。

 体全体が動かない感覚があり、目を覚まして状況を把握した。

「全身、ガッチガチに固定されているな」
「仕方がない事デス。無理やり重力に逆らって動き過ぎたせいで、筋繊維断裂、骨にひび、そのほかいくつかの血管や神経が千切れかけなど、酷い状態でしたからネ。ここ、帝都の特別病室にて当分安静となりマス」

 これでもかというほど包帯でぐるぐる巻きにされており、ミノムシ状態な自分の体。

 そしてその状況を説明してくれるのは、横に立っていたゼナであったが‥‥‥心なしか、疲れたような表情になっていた。

「どうしたゼナ、あの後何があった」
「何があったというか、振り回されまくったというか‥‥‥ええ、ご主人様が知らなくて大丈夫なことですので、今はゆっくり静養してくだサイ」

 はぁぁぁっと、普段の彼女から見ないような物凄く疲れた溜息を吐いており、相当精神的な方で疲れたような姿を見せる。

 あの吹っ飛んだあと、何があったのか…‥‥聞くのが怖い。

 それにもう一方で、気になるものとすれば…‥‥

「ルルシアの方も横に寝ているようだけど、彼女も怪我をしたのか?」
「重傷ではないのですガ‥‥‥精神的に、やられましたネ」

 横にもう一個ベッドが用意されていたのだが、そこに寝ていたのはルルシアである。

 しかし、こちらもこちらで何とか動く目で見れば、ゼナ同様にひどく疲れたような顔で眠っているようだった。

 本当に、何があったのか‥‥‥あの大空にぶっとんだあとの記憶がない。

「まぁ、詳しい話は後にして良いでしょうカ。まとめるのに時間がかかってしまいマス」
「ああ、ならそれでもいいよ。何があったのか分からないが、すっごい疲れているようだしな‥‥‥」

 メイド魔剣として動く彼女が、ここまで疲労を見せるの珍しいだろう。

 何があったのか気になるのだが、急いで聞くようなこともないだろうと判断し、今はこれ以上の深入りを避けておく。

「とりあえず今は、身体を治すほうに専念するべきだろうしな‥‥‥あーあ、せっかく夏季休暇が来るというのに、全部ベッドの上で寝ること二なりそうだ」

 色々とやらかしたせいもあるので、自業自得と言えなくもない。

 けれども、この大怪我ぶりを見るとそうすぐには治ることはないだろうと思えるのだ。

「あ、そこは大丈夫デス。先ほど確認しましたが、ご主人様の自己治癒能力はご主人様が把握している以上に高まっているようですからネ。2日もすれば全快すると思われますので、休暇予定を潰すことはないでしょウ」
「そうかそうか‥‥‥え?そうなの?」
「ハイ。偶然というか、山での修行がかなりの修行となったようデス。全身の能力が向上しており、力だけでなく治癒能力も倍増しているようですからネ。ほんの1時間前のほうがより悲惨だったのデス」
「本当にどういう状態だったんだよ!?」

 さらっとすぐに治る発言をされて嬉しいような、人を止めているような治癒力に嘆きたくなるような気持が複雑に絡み合う。

 でも、よく考えたらとっくの前にドラゴンが混じっているからなぁ…‥‥人外への道はもう辿っていたようなものなのかもしれない。

「それとご主人様、記憶に障害が無ければいいのですガ、覚えてますかネ?ご主人様の遺伝子とほぼ同じだった火炎竜の少女」
「ん?‥‥‥あー、そういえばどうなった?見かけないけど狂竜戦士の時のように、失われたのだろうか?」

 あの火炎竜と仮名をした少女の出身に関して、大体の予想は出来ている。

 似たようなことを引き起こした組織が前にもあったが、おそらくそこ出身のものだろう。

 そして、そこからできた者が最後にどうなっていったのかは覚えており‥‥‥ここにいないとなると、既に処分されてしまったのかもしれない。

「それがデスネ、彼女に関してはある話が、」
バァァァァァァァン!!
「アアアアア♪」
「ある‥‥‥という前に、やってきましたネ」
「へ?」

‥‥‥特別病室のドアが吹っ飛んだかと思えば、そこにいたのはあの極重山で争った、火炎竜の少女の姿があった。

 素っ裸という訳ではなく、女の子らしい普通の服装になっているのだが、その顔は笑顔である。

「アアア?アアアア!」
「ハイ。無事にお使い出来たようですネ」
「アア!!」
「‥‥‥あの、ゼナ、なんでその子がいるの?」
「‥‥‥実はですね」


 かくかくしかじかと話を聞かせてもらうと、どうやらあの吹っ飛んだあと、彼女もいっしょに富んでしまったが俺よりも負荷が少ない状態で倒れていたせいか、そんなに重症でもなかったらしい。

 そして治癒能力も同等ぐらいですぐに回復したようで、また暴れるのかと思って拘束していたそうなのだが、何やら様子がおかしかったらしい。

 それで、色々と調べてみた結果、害がだいぶ失われたそうなのだ。

「どこの誰が製造したのかはすでに確認しましたが、色々と出来が酷い部分がありましたからネ。その部分を治療した結果、ある程度の理性が宿せたようデス。残念ながら声帯部分は学習しないと言葉が出ないようですが‥‥‥」
「アア♪」
「その上、肉体年齢に見合わない精神年齢のようで‥‥‥結果として、その力のありように関して悪用されないように教育を施すことになり、その責任をある人に負わされまシタ」
「ある人って、誰?」
「…‥‥それは言えまセン。言ったら私、ちょっと困ることになりマス」

 ものすっごい言いたそうだけど言ったらそれはそれで何か面倒なことになるような顔もしながら、ゼナは説明する。

 要約すると襲撃してきた時の火炎竜の少女はほぼ本能的というか魔獣に近い思考で動いていた部分があるようなのだが、適切な治療と改良を施した結果、むやみやたらに襲うような生物から脱したようだ。

 そしてついでに知性もそこそこ宿ったようで、子供と大差ないぐらいのものになっているらしい。

「とはいえ、油断できませんからネ。ご主人様の遺伝子を利用しつつ、扱いやすいようになのかつなぐためなのか魔獣の遺伝子なども混ぜられているようで、以前の狂竜戦士と比べるとシンプルで扱いやすくなっているのですガ、きちんと自己管理させられるように育てなければいけないでしょウ」
「‥‥‥処分とかは、無しになったってことで良いのか」
「そうですネ。国に報告したところ危険性からその案も出てましたが‥‥‥ご主人様にお聞きしますが、神話に出るようなレベルの生物が、死刑になると言われて大人しく従うと思いマスカ?」
「全然、思わないね」

 むしろ、命を奪われることが分かるのであれば、盛大に大暴れをするのが目に見えているだろう。

 戦闘後すぐの状態であればまだその選択はできたかもしれないが、回復した今はその事も難しく、妥協案として監視付きの状態で生かすことに決定したそうだ。

 というのも、いざという時になればかなり強大な力になるのは分かっており、万が一の事態に備えて手段を増やしておこうという事で無事に彼女は生かされる方針になった様だ。

「その代わり、監視役に私が押し付けられましたけれどネ。ご主人様自身が同じドラゴンとして監視役にすべしだという話も合ったのですガ、こちらはこちらで‥‥‥ええ、本当にとある方がすぐに話しを付けて、色々と面倒事などもぶっ飛ばして働きかけ、現在の状態に妥協に至ったのデス」

 認めたくないような、助かったけれども結局変わらないような、そんな事を思い浮かべているような複雑な表情になるゼナ。

 何があったのか本当に気になるが、彼女の様子から察するに相当大変な目に遭ったのだろう。

 これ以上話を聞いていると、彼女の精神面の方から倒れる可能性も否定できず、その話しも区切らせてもらう。

 そして結果として特に話題も無くなり、大人しく全快するまで待つことにするのであった‥‥‥


「アーアーアー」
「はいはい、今度はこちらの報告書の配送をお願いしマス」
「ア!」

「…‥‥監視じゃなくて、つかいっぱしりにしてないかな?」
「仕方がないのデス。こっちはこっちで、まともな作業を覚えさせようとすれば‥‥‥うう、ご主人様が本当に、常識を持っているドラゴンでよかったのデス‥‥‥」

…‥‥泣くほどなのか。何があったのか不明だけど、彼女は彼女でメンタルを色々とやられていないだろうか。

 メイド魔剣だけど、長期休暇を取らせた方が良いのかと、真剣に悩まされもするのであった…‥‥

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