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秋の訪れで章
135話
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ガンッ! ゴンッ! ドゴゥッ!!
「ふむふむ、以前の戦闘よりは格段にやるアルな!」
「そちらこそ、模擬戦とはいえまだまだこんなものじゃなかっただろ!」
魔法や腕力がぶつかり合う中、ミュルとルースは互いの力を確認していた。
現在、護身術とやらの授業であったはずなのだが‥‥‥‥いつの間にか本格的な実戦形式の模擬戦地合いに切り替わっており、互に勝負しているのである。
「おいおい、あいつらとんでもなさすぎるのだが‥‥‥」
「ああ、ミュル先生もすごいけど、やっぱり黄金の魔導書使いの野郎も実力が桁違いだな」
「というか、これでまだまだ本気じゃないんだよな…‥‥やべぇ、次元が違い過ぎる」
周囲の生徒たちが何やら話しているが、特にルースたちにとって気にする必要性はない。
「にしても、あの洞窟内での戦闘以来だけど強いのは十分理解できる!」
「それはこちらのセリフでアル!これでも喰らうアル!」
「なんのっ!『アイアンスマッシュ』!」
模擬戦用なのでトゲトゲがない硬めの木製の金棒、いや棍棒を振り下ろすミュルに対して、ルースは魔法で防ぐ。
土と火で精錬し、水で一気に作り上げ、闇で無理やり結合させて強度を高めた鉄の拳とぶつかり合い、周囲の大気が震える。
「うわぁ、若干ルース君恨みを入れているわね」
「仕方がないだろうな。一度殺しに来た相手だし、ルースにも思うところがあるだろう。ここで一気にその恨みつらみを晴らそうとどこかで考えてしまっているかもしれないな」
戦闘の様子を見て、エルゼがルースの動きにちょっとした恨みの感情らしきものを見てつぶやき、レリアも同意しつつ推測を述べた。
「あたしだったら、模擬戦にかこつけて溺死させたいところだけど…‥‥さすがにダメよね」
「ああ、そうだろうな。私ならば灼熱で焼き払いたいが…‥‥相手が教師の立場で本気で反省しているようであれば手出しができない」
「でも、この間図書室で見つけた『呪い100全』という本の中にあった『丑の刻参り』をするぐらいならいいかしら?」
「ふむ、私もそれに参加したいな」
同時に、彼女達にもまだまだミュルを信用し切れない気持ちがあるようで、恐ろしい事を話していたが‥‥‥今のルースたちには気にすることもなかった。
いや、ミュルは底知れぬ悪寒を感じたが…‥‥。
「にしても、そろそろ他の生徒たちへの指導時間が無くなってしまうし、ここで終わらせるのでアル!」
棍棒を掲げ、ミュルが大地を叩きつけた。
その瞬間、そこから衝撃波が地面を伝わってルースへ向かってくる。
「終わるのはそっちだ!『アースインパクト』!」
負けじとルースは魔法を発動させ、水によって柔らかくした地面に風で空気を送り込み、火で加熱させてえ膨張させ、指向性をつけて伝わってくる衝撃波と正面衝突させる。
ドッゴガアァァァァァァアン!!
衝撃波と衝撃波のぶつかり合いにより、中心の地面が爆発四散したのであった‥‥‥‥
「で、なーんで模擬戦だったはずなのに、こんなこーとをしちゃったのかーな?」
「えっと、その、互いに熱くなり過ぎまして」
「わざとではないアル。模擬戦とはいえ、手を抜かないようにしちゃったのでアル」
「ほーほー、勝負ごーとに熱くなーっていたのでというこーとでいいのよね?」
「「…‥‥はい」」
模擬戦終了後、ルースとミュルは学園長室に呼び出しを受け、正座させられていた。
……模擬戦だったのだが、あの中心部分で爆発後、大穴がその場に空いてしまったのだ。
それも一晩で直る様な穴ではなく、底が見えないレベルのものが‥‥‥。
どうもぶつかり合った衝撃波同士が逃げ場を無くし、戦闘で脆くなった地面に潜り込むしかなく、かなり下の部分まで吹き飛ばしてしまったらしい。
その場にあった土はどこへ行ったのかというかは、こちらは衝撃のすさまじさゆえに消滅してしまったというのが、他の教師陣たちの見解だそうだ。
ゆえに、その穴の分土を補充しなければいけないのだが…‥‥残念なことに、この修復は直ぐにできるものではない。
魔法で埋め立てできそうだが、そう万能ではない。きちんと固めたり、基礎を作ったりなどの作業も必要になるのだ。
ゆえに、その工事費用の見積もりも出て‥‥‥‥珍しくバルション学園長が、笑顔の状態でこめかみに青筋を浮かべているのであった。
にこやかだけど、その背後に般若を超える恐怖の顔が浮かんでいるように見えるのは気のせいだろうか?
「ミュル」
「は、はい」
「貴女、今月の給与60%カット決定」
「ふぐわぁっ!?」
いつもの楽天的な話し方ではなく、冷酷な言葉で告げられた給料カットに、ミュルが血反吐を吐くかのようにショックを受けた。
「続いてルース」
「‥‥‥はい」
「そっちーはね、今日の放課後の訓練は少々工事関係で話し合わーなくーちゃいーけなくてできないの。あったーらあーの世を100回は見せーるレベールなんだけーど残念よね?」
「い、いえ、けっこうです。残念ではないです」
「そう?」
というか、仮にもこの学園の教師が暗に生徒を死に欠けさせる宣言をさらっと言うのもどうかとは思うが…‥‥ここで下手に動くのは良くないとルースは判断し、学園長の次の言葉を待った。
「ならそーね、修復作業は技術がいーるから無理そうだーけど…‥‥その修復が終わるまーでの間に、明日一日かーけて模擬戦用の舞台を敷地内に作れなーいかしら?」
「え?」
「ガッチガチに基礎を固め、私が全力を出しーても壊れーないようーなものを頼むわね。できーたら耐久性をテストしーて、壊れたらやり直しね」
「…‥‥あの、学園長。いくらなんでも俺は素人だし、そう簡単には」
「出来なければ留年決定」
「やらせていただきます!!」
ちょっと無理そうなことだと思い、ルースが述べようとしたが、学園長が続けて出した最終兵器のような言葉にルースは慌ててその判断に従うことにした。
留年って、学生にとっては避けたいことなのにいとも簡単に使うとは…‥‥。
とにもかくにも、どうもめんどくさそうな工事を行わなければいけないと思うと、ルースは気が重くなったのであった。
「つーいでーにミュル、貴女も手伝ってーあーげなさい」
「…‥‥手伝わなければどうなるアル?」
「給料98.5%カットね」
「それってほぼ全額カットに近いでアル!!しかもなんでそんな小数点付きのカットになるでアルか!?」
……なんにせよ、ミュルも手伝うことに決定したようである。
「ふむふむ、以前の戦闘よりは格段にやるアルな!」
「そちらこそ、模擬戦とはいえまだまだこんなものじゃなかっただろ!」
魔法や腕力がぶつかり合う中、ミュルとルースは互いの力を確認していた。
現在、護身術とやらの授業であったはずなのだが‥‥‥‥いつの間にか本格的な実戦形式の模擬戦地合いに切り替わっており、互に勝負しているのである。
「おいおい、あいつらとんでもなさすぎるのだが‥‥‥」
「ああ、ミュル先生もすごいけど、やっぱり黄金の魔導書使いの野郎も実力が桁違いだな」
「というか、これでまだまだ本気じゃないんだよな…‥‥やべぇ、次元が違い過ぎる」
周囲の生徒たちが何やら話しているが、特にルースたちにとって気にする必要性はない。
「にしても、あの洞窟内での戦闘以来だけど強いのは十分理解できる!」
「それはこちらのセリフでアル!これでも喰らうアル!」
「なんのっ!『アイアンスマッシュ』!」
模擬戦用なのでトゲトゲがない硬めの木製の金棒、いや棍棒を振り下ろすミュルに対して、ルースは魔法で防ぐ。
土と火で精錬し、水で一気に作り上げ、闇で無理やり結合させて強度を高めた鉄の拳とぶつかり合い、周囲の大気が震える。
「うわぁ、若干ルース君恨みを入れているわね」
「仕方がないだろうな。一度殺しに来た相手だし、ルースにも思うところがあるだろう。ここで一気にその恨みつらみを晴らそうとどこかで考えてしまっているかもしれないな」
戦闘の様子を見て、エルゼがルースの動きにちょっとした恨みの感情らしきものを見てつぶやき、レリアも同意しつつ推測を述べた。
「あたしだったら、模擬戦にかこつけて溺死させたいところだけど…‥‥さすがにダメよね」
「ああ、そうだろうな。私ならば灼熱で焼き払いたいが…‥‥相手が教師の立場で本気で反省しているようであれば手出しができない」
「でも、この間図書室で見つけた『呪い100全』という本の中にあった『丑の刻参り』をするぐらいならいいかしら?」
「ふむ、私もそれに参加したいな」
同時に、彼女達にもまだまだミュルを信用し切れない気持ちがあるようで、恐ろしい事を話していたが‥‥‥今のルースたちには気にすることもなかった。
いや、ミュルは底知れぬ悪寒を感じたが…‥‥。
「にしても、そろそろ他の生徒たちへの指導時間が無くなってしまうし、ここで終わらせるのでアル!」
棍棒を掲げ、ミュルが大地を叩きつけた。
その瞬間、そこから衝撃波が地面を伝わってルースへ向かってくる。
「終わるのはそっちだ!『アースインパクト』!」
負けじとルースは魔法を発動させ、水によって柔らかくした地面に風で空気を送り込み、火で加熱させてえ膨張させ、指向性をつけて伝わってくる衝撃波と正面衝突させる。
ドッゴガアァァァァァァアン!!
衝撃波と衝撃波のぶつかり合いにより、中心の地面が爆発四散したのであった‥‥‥‥
「で、なーんで模擬戦だったはずなのに、こんなこーとをしちゃったのかーな?」
「えっと、その、互いに熱くなり過ぎまして」
「わざとではないアル。模擬戦とはいえ、手を抜かないようにしちゃったのでアル」
「ほーほー、勝負ごーとに熱くなーっていたのでというこーとでいいのよね?」
「「…‥‥はい」」
模擬戦終了後、ルースとミュルは学園長室に呼び出しを受け、正座させられていた。
……模擬戦だったのだが、あの中心部分で爆発後、大穴がその場に空いてしまったのだ。
それも一晩で直る様な穴ではなく、底が見えないレベルのものが‥‥‥。
どうもぶつかり合った衝撃波同士が逃げ場を無くし、戦闘で脆くなった地面に潜り込むしかなく、かなり下の部分まで吹き飛ばしてしまったらしい。
その場にあった土はどこへ行ったのかというかは、こちらは衝撃のすさまじさゆえに消滅してしまったというのが、他の教師陣たちの見解だそうだ。
ゆえに、その穴の分土を補充しなければいけないのだが…‥‥残念なことに、この修復は直ぐにできるものではない。
魔法で埋め立てできそうだが、そう万能ではない。きちんと固めたり、基礎を作ったりなどの作業も必要になるのだ。
ゆえに、その工事費用の見積もりも出て‥‥‥‥珍しくバルション学園長が、笑顔の状態でこめかみに青筋を浮かべているのであった。
にこやかだけど、その背後に般若を超える恐怖の顔が浮かんでいるように見えるのは気のせいだろうか?
「ミュル」
「は、はい」
「貴女、今月の給与60%カット決定」
「ふぐわぁっ!?」
いつもの楽天的な話し方ではなく、冷酷な言葉で告げられた給料カットに、ミュルが血反吐を吐くかのようにショックを受けた。
「続いてルース」
「‥‥‥はい」
「そっちーはね、今日の放課後の訓練は少々工事関係で話し合わーなくーちゃいーけなくてできないの。あったーらあーの世を100回は見せーるレベールなんだけーど残念よね?」
「い、いえ、けっこうです。残念ではないです」
「そう?」
というか、仮にもこの学園の教師が暗に生徒を死に欠けさせる宣言をさらっと言うのもどうかとは思うが…‥‥ここで下手に動くのは良くないとルースは判断し、学園長の次の言葉を待った。
「ならそーね、修復作業は技術がいーるから無理そうだーけど…‥‥その修復が終わるまーでの間に、明日一日かーけて模擬戦用の舞台を敷地内に作れなーいかしら?」
「え?」
「ガッチガチに基礎を固め、私が全力を出しーても壊れーないようーなものを頼むわね。できーたら耐久性をテストしーて、壊れたらやり直しね」
「…‥‥あの、学園長。いくらなんでも俺は素人だし、そう簡単には」
「出来なければ留年決定」
「やらせていただきます!!」
ちょっと無理そうなことだと思い、ルースが述べようとしたが、学園長が続けて出した最終兵器のような言葉にルースは慌ててその判断に従うことにした。
留年って、学生にとっては避けたいことなのにいとも簡単に使うとは…‥‥。
とにもかくにも、どうもめんどくさそうな工事を行わなければいけないと思うと、ルースは気が重くなったのであった。
「つーいでーにミュル、貴女も手伝ってーあーげなさい」
「…‥‥手伝わなければどうなるアル?」
「給料98.5%カットね」
「それってほぼ全額カットに近いでアル!!しかもなんでそんな小数点付きのカットになるでアルか!?」
……なんにせよ、ミュルも手伝うことに決定したようである。
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