財閥のご令嬢の専属執事なんだが、その家系が異能者軍団な件について

水無月彩椰

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学園都市と高等学校

~学園都市・タレントゥム~

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「家主の権限を俺に譲渡する......か」

俺はベッドに寝転びつつ、呟いた。
レースのカーテンから月明かりが差し込み、俺の顔を仄かに照らす。

ご主人様は海外転勤に行くと言うので、その間は俺が家主という事になったのだが―権限を全て......か。

「考えててもあれだしなぁ」

ケ・セラ・セラなるようになる、だ。
自分で言っておいてなんだが、我ながら楽観的。
まぁ―それはまたその時に考えよう。

そう決意し、俺はベッドに潜り込んだ。






―不思議な事に、今日はいつもより早く目が覚めた。
昨日の話を聞いたためか。それとも新たな学園生活への僅かな期待か。

まぁ、どちらでも構わない。
そう思い、俺はリビングの扉を開ける。
 
「おはようございます、2人とも」

「……あ。志津二さん、おはようございます。ご主人様から聞きましたよ。この館の事は頼みます」

椅子に腰掛けてコーヒーを飲んでいたコック長がニコリと笑いながら言った。

「えぇ。それにしても―あなたの食事が食べられなくなると思うと......寂しいですね」

「ははっ。嬉しい事を言ってくれますね、志津二さん」

俺の答えに、コック長は嬉しそうに笑う。


「......志津二さん。お嬢様を起こさなくて良いのですか?」

「お嬢様なら、もう自分で起きれると思いますよ。昨日の朝に叱っときましたからね」

「へー。志津二さんも怒るんだぁ」

執事さん。
何ですかその目は。

「私だって人間です。喜怒哀楽くらいあります」

「じゃあ、それ以外の感情は無いって事ですか?」

「ガバメントで眉間撃たれたいですか?」

呟きつつ、俺は左脇の下―ショルダーホルスターに手を掛けた。

......何だこのやりとり。
チラッと時計を見ると、6時10分。そろそろかな。
あ、来た。

「おはよ......」

「「「おはようございます、お嬢様」」」

寝ぼけ眼を擦るお嬢様に、3人がかりで朝のご挨拶。これにはお嬢様もビックリで、

「え、何!?ビックリしたぁ」

「おはようございます。やっと1人で起きられるようになりましたね?嬉しい限りです。......私の仕事が減りましたよ」

「私情混じってない?」

「気の所為です」

何てトークを交わしつつ、お嬢様はソファーに。
俺は椅子に腰掛ける。
そして、お嬢様はちゃきっ。優雅に足を組んで。

「志津二、執事辞めるってさ」

「何ですかその、『俺、勇者辞めます』みたいなノリは」

「ホントじゃん。しかもお父様......私を差し置いて志津二を家主にするとか―ありえない!」

落ち着いて。
さり気なく掌に焔弾出さないで。

「私としては、立場上は家主として―家事を全てこなす方針で行こうかと」

「志津二さん良かったですね。執事から家主にレベルが上がりましたよ!」

えい、えい、おー。
......じゃなくて。執事さん本当に何やってるの?

「と言うワケで。執事ではなくなりましたが、仕事内容は変わりません。最早、執事と言うより専業主夫です」

「お嬢様の、ですか?」

「断じて否。それにまだ結婚出来る年齢ではありませんしね」

「私は出来るけどねー。許可さえ下りれば」

 現行民法は婚姻適齢を男性18歳以上、女性16歳以上と規定。さらに未成年者の場合は親の同意が必要となる。国際的には男女同一が一般的だが、日本では女性の方が心身の発達が早いなどの理由で低く設定されているとか。

「仲がいいですね、お2人とも。羨ましい限りです。では―私は朝食を作ってきますので」

笑みを浮かべながら、コック長が席を立つ。

「えぇ。お願いします」





「「「「いただきます」」」

ご主人様も起きて、皆で食卓を囲む。
これもあと数回。家族との時間は大切にしたいね。

朝食のメニューはご飯に鮭。味噌汁にキュウリの浅漬け。ザ・和食。

「珍しいじゃないか。コック長が和食とは」

ご飯を1くち口に入れながら、ご主人様が言った。

「和の心、忘れるべからず。ですよ」

「うむ、良い心構えだ」

そんなコック長に、ご主人様も気に入った様子。
和洋中出来る人はすごいなぁ。

そんな事を思いつつ、鮭を1口、ぱくり。 
ご飯を続けざまに、ぱくり。

「うん、おいしいですねー」

「ありがとうございます」





「「「ごちそうさまでした」」」

食事が終わったら、食器を厨房に運ぶ。
そして、

「お嬢様。学校の準備しなきゃですよ」

「はーい」

そう。学校の準備があるのだ。

リビングから出て、それぞれの部屋に行く。 
まずは手さげカバンに各教科の本を入れて......後は、制服だ。

執事服から高校の制服に着替え、身なりを整える。
白のワイシャツの襟元には、赤いネクタイ。
上着はネクタイと同系色で、派手さを醸し出している。他の高校とは違う、という事をアピールしているらしいが。

制服の内側にショルダーホルスターを装着し、ガバメントを挿入する。首には懐中時計を掛けて。

......え、普通の高校じゃありえない?
大丈夫なんですよ、それが。ご主人様に聞いたところ、異能に関与する物・またはそれに近しい物はOKなんです。俺の場合、銃は護身用なので。

「志津二ー、準備出来た?」

「えぇ。終わりました」

銃をホルスターにしまった直後、お嬢様が扉をノックしてきた。 そして、ガチャッ。部屋に入ってくる。制服を見に纏い、手さげカバンを持ってきていた。

「何分くらいに行くの?」

「んー。そうですねぇ......本来ならば8時に行くんですが、今日は職員の方々に挨拶をしなければならないので―少し早めに行きますよ」

「30分?」

「はい。って、早く起きすぎましたね。あと40分も残ってますよ」

壁掛け時計を見ると、現在が7時50分。8時30分までかなりの時間がある。

「でも準備は出来たんでしょ?どーせなら早く行こうよ」

うーん、とやや思案して。
よし。

「ですね、もう行きましょうか」





学園都市・タレントゥムは長さ800m×3kmの人工埋立地で、レインボーブリッジに繋がるように立地している。鷹宮家から放射線状に広がっていて、それぞれ地区区分されており―それぞれにあった用途があるのだ。

まずは鷹宮家と高等学校の周辺、第1区。
異能育成・研究機関が集う第2区。
商業・工業施設が集まる第3区。
最先端技術研究施設が存在する第4区。
一般人が暮らす第5区。
高等学校の寮が点々と立ち並ぶ、第6区に分類される。 

これら全てが鷹宮家の敷地であり、多大なる権力を表している。元々は滑走路の建設予定地だったのだが、急遽工事が中止されたために鷹宮家が買収して開拓したらしい。......そうだとしたら、大分大きい空港を造るつもりだったんだな。

異能者と一般人が行き交う学園都市だが、異能者の存在が出回る事はなく、ここ数十年と平穏な地域である。

そして、鷹宮家から高等学校までの時間は徒歩10分。車なら1分とかからない。まさに鷹宮家のための高等学校である。

「あ、あれでしょ?」

お嬢様が縁石の上を歩きながら指を指す。
その先は―モダンな雰囲気の建物。
そう、それこそが......特別国立高等学校。異能者育成組織である。

~Prease to the next time!
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