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喫茶店で
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休日、翔と朝から出かけた。
母は昨日の夜から仲の良い人たちと温泉旅行に行っており、翔が少し前に引いたくじで空港の中を回るツアーを当ててその日が今日だから。
ツアーにはまだ時間があるので、朝ご飯として近くのパン屋に寄った。
「翔、何にする?お昼出るまで何も食べられないから。」
「あのパンにする。チョコレートのやつ。たまごパンもおいしそう!」
「じゃ、二つ買おう。俺はクルミとサンドイッチにしよう。」
そこそこお客がいてゆっくり回っている余裕はないけど、一方通行なので歩くのに窮屈ではなく、悩まない翔の性格もあってさっさと会計した。
そして、イートインスペースに移動したところで声がかかった。
「浅野さん?」
「え?」
急に名前を呼ばれて瑞穂は振り向くと、先日会った優希の母が座っていた。よく見ると、晴哉と優希もいてちょうど食べ始めたところのようだった。
「おはようございます。」
「おはようございます。朝早くに知り合いと会うなんて初めてです。」
「俺もです。Syo!Stop here!(翔!そこで待って!)」
翔がどこかに行こうとしたので声をかけるとエヘッと笑った。年齢が上がるにつれて一人行動したがるようになり、心配が増えた。急に大きな声を出したせいで相手を驚かせてしまい、瑞穂は平謝りをしながら翔と彼らから離れた。
「翔、食べていいよ。」
「ありがとう!」
瑞穂は彼の分を彼の前に用意すると彼はすぐに手を伸ばして食べ始めた。甘いパンを先に食べるのは食べたいものを先に食べるのが彼の性格だからだ。
「浅野さんの息子さんですか?」
「はい、そうです。翔といいます。」
いつの間にか隣の席に移動していた晴哉たちはすでに食べ終わり飲み物だけを持ってきた。こんな状況になることを望んでいないのだが、優希の母が率先して話しかけてくるので相手にしないわけにもいかなかった。彼女は翔の方をじっと見ていて、晴哉の子だと気づかれないか瑞穂は気が気でなかった。
「可愛いですね!浅野さんによく似ていますね。」
「よく言われます。母にも言われました。」
「奥さんは今日はいないんですか?」
「奥さんは亡くなっていますから。」
瑞穂が言うと優希の母は目を下げて謝った。
「すみません。」
「いえいえ、構いません。この子が生まれてからは二人ですから、あまり思い出すこともないんです。」
「そうですか。翔君の髪や目の色は奥さんからなんですか?」
「そうですね。」
色のことまで聞いてくる優希の母に緊張が走ったが、時折、彼女の視線が晴哉の方を向いて、その度に彼女が笑ったような気がした。だから、瑞穂の危惧だったかと思い、このまま何事もなく翔が食べ終わるのを願いながらも瑞穂はパンを食べた。
仲が良さそうな家族が隣にいても、翔は何事もなく、瑞穂にニコニコしながら小さい口でパンを食べていた。その様子がとても可愛く瑞穂まで笑顔になってしまう。翔がもう一人の親のことを聞いて来たことは一度もなかったが、内心、どう思っているのか、我慢していないか、時折瑞穂は心配になった。
「ごちそうさま。」
「お腹いっぱいになった?」
「うん!おひるまではおなかすかないよ!」
翔は膨らんだお腹をさすってみせた。
「じゃ、行こうか。今から行くとちょうどいい。」
瑞穂は立ち上がって晴哉たちに軽く会釈した。
「それじゃ、俺たちはこれで。」
「今日何かあるんですか?」
優希の母がここでも食いついてきた。
「これから少し遠出なので。」
「そうなんですか?どちらまで行かれるんですか?」
「理子!!」
さすがに鬱陶しいと思っていたら、晴哉が彼女を窘めた。それに反省したのかは知らないが黙ってしまい、その間に瑞穂と翔はパン屋を出た。
最近、よく会う組み合わせに瑞穂は嫌な予感がしてならなかった。
母は昨日の夜から仲の良い人たちと温泉旅行に行っており、翔が少し前に引いたくじで空港の中を回るツアーを当ててその日が今日だから。
ツアーにはまだ時間があるので、朝ご飯として近くのパン屋に寄った。
「翔、何にする?お昼出るまで何も食べられないから。」
「あのパンにする。チョコレートのやつ。たまごパンもおいしそう!」
「じゃ、二つ買おう。俺はクルミとサンドイッチにしよう。」
そこそこお客がいてゆっくり回っている余裕はないけど、一方通行なので歩くのに窮屈ではなく、悩まない翔の性格もあってさっさと会計した。
そして、イートインスペースに移動したところで声がかかった。
「浅野さん?」
「え?」
急に名前を呼ばれて瑞穂は振り向くと、先日会った優希の母が座っていた。よく見ると、晴哉と優希もいてちょうど食べ始めたところのようだった。
「おはようございます。」
「おはようございます。朝早くに知り合いと会うなんて初めてです。」
「俺もです。Syo!Stop here!(翔!そこで待って!)」
翔がどこかに行こうとしたので声をかけるとエヘッと笑った。年齢が上がるにつれて一人行動したがるようになり、心配が増えた。急に大きな声を出したせいで相手を驚かせてしまい、瑞穂は平謝りをしながら翔と彼らから離れた。
「翔、食べていいよ。」
「ありがとう!」
瑞穂は彼の分を彼の前に用意すると彼はすぐに手を伸ばして食べ始めた。甘いパンを先に食べるのは食べたいものを先に食べるのが彼の性格だからだ。
「浅野さんの息子さんですか?」
「はい、そうです。翔といいます。」
いつの間にか隣の席に移動していた晴哉たちはすでに食べ終わり飲み物だけを持ってきた。こんな状況になることを望んでいないのだが、優希の母が率先して話しかけてくるので相手にしないわけにもいかなかった。彼女は翔の方をじっと見ていて、晴哉の子だと気づかれないか瑞穂は気が気でなかった。
「可愛いですね!浅野さんによく似ていますね。」
「よく言われます。母にも言われました。」
「奥さんは今日はいないんですか?」
「奥さんは亡くなっていますから。」
瑞穂が言うと優希の母は目を下げて謝った。
「すみません。」
「いえいえ、構いません。この子が生まれてからは二人ですから、あまり思い出すこともないんです。」
「そうですか。翔君の髪や目の色は奥さんからなんですか?」
「そうですね。」
色のことまで聞いてくる優希の母に緊張が走ったが、時折、彼女の視線が晴哉の方を向いて、その度に彼女が笑ったような気がした。だから、瑞穂の危惧だったかと思い、このまま何事もなく翔が食べ終わるのを願いながらも瑞穂はパンを食べた。
仲が良さそうな家族が隣にいても、翔は何事もなく、瑞穂にニコニコしながら小さい口でパンを食べていた。その様子がとても可愛く瑞穂まで笑顔になってしまう。翔がもう一人の親のことを聞いて来たことは一度もなかったが、内心、どう思っているのか、我慢していないか、時折瑞穂は心配になった。
「ごちそうさま。」
「お腹いっぱいになった?」
「うん!おひるまではおなかすかないよ!」
翔は膨らんだお腹をさすってみせた。
「じゃ、行こうか。今から行くとちょうどいい。」
瑞穂は立ち上がって晴哉たちに軽く会釈した。
「それじゃ、俺たちはこれで。」
「今日何かあるんですか?」
優希の母がここでも食いついてきた。
「これから少し遠出なので。」
「そうなんですか?どちらまで行かれるんですか?」
「理子!!」
さすがに鬱陶しいと思っていたら、晴哉が彼女を窘めた。それに反省したのかは知らないが黙ってしまい、その間に瑞穂と翔はパン屋を出た。
最近、よく会う組み合わせに瑞穂は嫌な予感がしてならなかった。
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