ヒロインちゃんがんばる!

名無色

文字の大きさ
30 / 37

彼女の行く場所は(悪役令嬢視点)

しおりを挟む
図書室に先生の姿はなく、代わりにジュリアスが魔法薬学が得意な友人と何かを話し合っていた。

その友人も攻略対象の一人だから大丈夫だろうと、すぐにフィリアが居なくなったことを伝え、彼女の行きそうな場所をメモした紙を渡した。

彼は怪訝そうな顔をしながらも分かったと言い、そのまま友人を連れて図書室から出て行った。

その姿を見送ったから、軽く息を吐く。

「ふぅ……これならきっとすぐ見つかるわよね。」

まさかここでもう一人の攻略に会うなんて……。

柳緑色の髪を一つに結い上げた青緑の綺麗な色をしたタレ目が特徴的な、穏やかな雰囲気の青年。
名前はテナ・メデル。メデル伯爵家の次男で、体の弱い兄の代わりに爵位を継ぐと噂される将来有望な青年だ。

メデル家は代々回復魔法が得意な者が多く、その力で何度も王族を救ってきた。

ただ回復魔法を使える兄は病弱で起き上がるのにもやっとで、彼は貴族にしては珍しく魔力の量が少ないため魔法は中級までしか使えない。

そのことが原因で、兄弟揃って役立たずと両親からの愛情を与えられずに育った。
自分に魔力があれば、そう考えた彼は幼い頃から魔法薬について学ぶようになる。

魔法薬学を選んだのは、回復魔法ではどうにもならない兄を少しでも楽にしてあげられるものがあればという理由が大きく、あとは魔力が少ないから魔法を学んでも仕方ないと判断したからだ。

元々素質があったのか、彼はぐんぐんと成長していき、魔法では下から数えるほどの順位だが魔法薬学では学内二位ととても優秀だ。

……まあ私が一位をキープするようになってからちょっと嫌われてるみたいなのよね。

こっちは二位だと王太子の婚約者としての自覚が云々とお叱りの手紙が来るから、いつも徹夜で頑張ってのことだから恨まないで欲しい。

顔に出すわけじゃないから、ある意味一番厄介な相手だと思う。

ルートだと結構ストレスが溜まっていた彼に優しく声をかけ、癒してあげるという感じのイベントが多かった。

定番の膝枕イベントも確か彼のルートだけだった。
そこで寛ぎながら色々と話してくれ、それをフィリアが持ち前の明るさで悩みを吹っ飛ばしてくれる、だったはず。

………記憶が曖昧だわ。一度覚えていることを書き出すべきね。

「っと……そうだ今はフィリアのこと。」

もう一枚、シリカ先生に渡すはずだったメモを確認する。

ゲームでフィリアがらよく立ち寄った場所を書き出し、あとはフィリアが立ち寄らない場所も書いてある。

立ち寄る場所には主に攻略対象と遭遇する、図書室や実験室などで、立ち寄らない場所には転移魔法陣のある部屋や校内にある実習に使われる森とかを。

彼女は家族に頑張る、迷惑をかけないと思っていて、心が迷いそうな転移魔法陣には近づかないのだ。
それに彼女は転移魔法陣については詳しく学ぼうとしなかった。他に勉強したいことがあると言っていたが、もしかするとそれも心の迷いになると考えたのかだろうか。

あとは森、彼女が森に入るのは実習の時だけで、最初の実習でトラブルが発生してみんなから逸れてしまうというイベントの時だ。

森の中は葉が生い茂っていることもあり昼間でも薄暗く、夕方になると足元が見えなくなるほどで、外から見ても怪しげな雰囲気の漂う森だ、彼女は一人で森には入らないだろう。

「探すのなら……そうね、やっぱり食堂……かしら。」

彼女のことだから既にお菓子を貰いに行っているかもしれない。
甘いものが好きなフィリアは、よく食堂でお菓子を貰って持ち歩いていた。

そのお菓子を攻略対象と分け合って食べたりするイベントもいくつかある。わざわざスチルも用意されていて、お菓子がすごくリアルに描いてあるくらいに気合の入っていたイベントだ。

………夢鍵作ってる時にお菓子でも食べていたのだろうか。それとも甘味に飢えていたのだろうか。

「………とりあえずは食堂で、あとは……。」

この学校、人一人探すの大変だからそろそろ対策を考えるべき。
そんなことを考えながら図書室から出て、食堂のある方向へと歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

悪役令嬢に転生したので、みんなのために自分から破滅することにした

やんやんつけバー
恋愛
悪役令嬢に転生したと気づいた瞬間、私は一秒で全ての選択肢を計算した。正攻法でも、逃げ道でも、誰かが傷つく。だから自分から破滅してやろう──。その覚悟は正しかったはずなのに、なぜか私の行動が人を救い始める。好き勝手に生きているつもりが、誰かの英雄になってしまう。これは、破滅を目指した悪役令嬢の、意図せぬ奮闘記。

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

何やってんのヒロイン

ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。 自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。 始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・ それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。 そんな中とうとうヒロインが入学する年に。 ・・・え、ヒロイン何してくれてんの? ※本編・番外編完結。小話待ち。

処理中です...