ヒロインちゃんがんばる!

名無色

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野犬……?

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木々の隙間をすり抜け吹き付ける風に思わず肩を揺らすと、頭皮が引っ張られ反射的に痛いと言葉が出る。

体感ではもう何時間も経っているように感じるが、この暗い森の中でやることなくただ立ち尽くしている分実際には時間は経っていないのだろうと溜め息をこぼす。

寒さが予想していたよりも感じのないのは、この特殊なと説明されたフロロフィアの制服のお陰だろうか。

「うう……足の裏が痛い……なんでブーツにしちゃったんだろ……。」

足元を見下ろしてもぼんやりとしか目には映らないが、靴は膝下丈の編み上げタイプのロングブーツで、幸いと言っていいのかヒールは高くないのでその点は大丈夫だが、新しい靴ということと靴底の硬さにじわじわと痛みが広がっている。

………にしてもやっぱりスカートの長さ膝下くらいでよかったと思う。寒い。

それに足が出ているからか多分怪我をしている。
紙で切ったようなあの鋭いチクチクズキズキとした痛みが所々に感じる。

「足……出したのって怪我させるため……?」

そんなわけないかと笑い飛ばしたかったが、あの昼間の何もないところで躓いた回数が多すぎたこと、この丈では転んだ時に膝をつくと怪我をしやすそう。

乙女ゲームで割と……というほどでもないが結構足を痛めるヒロインと、それを治療したり傷を抉ったりする攻略対象のイベントはある。

たまに、怪我をしたら舐めたら云々と言って攻略対象が足を舐めて、それに対してヒロインが汚いからって返すやりとり。

最近は舌に雑菌があるから舐めるなとか言われてるからか、一世代くらい前の機種でよく見かけた。

このネタは乙女ゲームだけではなく結構定番だが、最近はどちらかといえば舐められる側の人がいやお前口には雑菌どんなにいると思ってるんだよ、みたいな返しをするのが増えたと思う。

……雑菌雑菌言いまくる乙女ゲームあったらそれはそれで色々とやばそうだ、探せば一つくらいそういうヒロインいそうだが、キスシーンでもそれが頭をよぎりそうだな。

まあこの世界は魔法があるし、あるとしても舐めるというより魔法とかでどうにかするパターンだろう。

治療してくれた人が実はすごい方だった!とかその治療方法昔どこかで……。とか、この暖かい光……なぜか懐かしい…。とか

たまに魔法はそんな万能なものじゃないとか魔法に頼りすぎるとダメとかで薬を使ったり………。

「クゥ~……。」

「え!?な、なに!?!?」

すぐ近くから犬の悲しい時のような鳴き声が聞こえ、驚いて後ろに下がって枝にぶつかり、後ろからミシミシという音が響いて固まる。

「クゥ~……?」
「まってとりあえず止まって!!??」
「ワン!」

あ、やっぱり犬?え、野犬??

枝を折って逃げるべきか、でもこれ以上音を鳴らすと危険ではないだろうか、あと野犬って見つけた時走ったら追いかけてくるって言わなかったっけ。

どうしようかと考えていると足に何かがぶつかる。
何か、ではなくて多分野犬らしき生き物だろう。

胴体はブーツにしか当たらなかったが、尻尾……と思われる部分が膝を撫でていった。

……もふもふだった。しかも暖かい。

軽くしか当たっていないが毛並みが良さそうな感触だったなと考えていると、足元からまたワン!と鳴き声が聞こえる。

「あー………そうだ。」

毛並みがいい、それに人に慣れている。
この犬……は誰かの飼い犬か、捜索救助犬で、私を探しに来てくれたのかも。

その可能性は薄いだろうとは思いつつ、その犬のいるであろう方向に向かって優しく声をかける。

「あのね、私今動けないの。だから誰でもいいからここまで連れてきてくれない……かな?」

お願い!と手を合わせて頼むと、ワン!と大きく鳴いた後、草のガサガサという音が聞こえたかと思うと遠くへと離れていく。

行ってくれた……のだろうか。

あまり期待はできないだろうが、まあ少しは安心できた。

それに何故だか分からないが先ほどぶつかられた後から足の痛みがなくなっている。
もふもふと触れ合ったことで心に余裕ができたからかもしれない。

これならまだ立っていられそうだと、音の去っていった方向を向きながら気合を入れた。
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