31 / 37
野犬……?
しおりを挟む
木々の隙間をすり抜け吹き付ける風に思わず肩を揺らすと、頭皮が引っ張られ反射的に痛いと言葉が出る。
体感ではもう何時間も経っているように感じるが、この暗い森の中でやることなくただ立ち尽くしている分実際には時間は経っていないのだろうと溜め息をこぼす。
寒さが予想していたよりも感じのないのは、この特殊なと説明されたフロロフィアの制服のお陰だろうか。
「うう……足の裏が痛い……なんでブーツにしちゃったんだろ……。」
足元を見下ろしてもぼんやりとしか目には映らないが、靴は膝下丈の編み上げタイプのロングブーツで、幸いと言っていいのかヒールは高くないのでその点は大丈夫だが、新しい靴ということと靴底の硬さにじわじわと痛みが広がっている。
………にしてもやっぱりスカートの長さ膝下くらいでよかったと思う。寒い。
それに足が出ているからか多分怪我をしている。
紙で切ったようなあの鋭いチクチクズキズキとした痛みが所々に感じる。
「足……出したのって怪我させるため……?」
そんなわけないかと笑い飛ばしたかったが、あの昼間の何もないところで躓いた回数が多すぎたこと、この丈では転んだ時に膝をつくと怪我をしやすそう。
乙女ゲームで割と……というほどでもないが結構足を痛めるヒロインと、それを治療したり傷を抉ったりする攻略対象のイベントはある。
たまに、怪我をしたら舐めたら云々と言って攻略対象が足を舐めて、それに対してヒロインが汚いからって返すやりとり。
最近は舌に雑菌があるから舐めるなとか言われてるからか、一世代くらい前の機種でよく見かけた。
このネタは乙女ゲームだけではなく結構定番だが、最近はどちらかといえば舐められる側の人がいやお前口には雑菌どんなにいると思ってるんだよ、みたいな返しをするのが増えたと思う。
……雑菌雑菌言いまくる乙女ゲームあったらそれはそれで色々とやばそうだ、探せば一つくらいそういうヒロインいそうだが、キスシーンでもそれが頭をよぎりそうだな。
まあこの世界は魔法があるし、あるとしても舐めるというより魔法とかでどうにかするパターンだろう。
治療してくれた人が実はすごい方だった!とかその治療方法昔どこかで……。とか、この暖かい光……なぜか懐かしい…。とか
たまに魔法はそんな万能なものじゃないとか魔法に頼りすぎるとダメとかで薬を使ったり………。
「クゥ~……。」
「え!?な、なに!?!?」
すぐ近くから犬の悲しい時のような鳴き声が聞こえ、驚いて後ろに下がって枝にぶつかり、後ろからミシミシという音が響いて固まる。
「クゥ~……?」
「まってとりあえず止まって!!??」
「ワン!」
あ、やっぱり犬?え、野犬??
枝を折って逃げるべきか、でもこれ以上音を鳴らすと危険ではないだろうか、あと野犬って見つけた時走ったら追いかけてくるって言わなかったっけ。
どうしようかと考えていると足に何かがぶつかる。
何か、ではなくて多分野犬らしき生き物だろう。
胴体はブーツにしか当たらなかったが、尻尾……と思われる部分が膝を撫でていった。
……もふもふだった。しかも暖かい。
軽くしか当たっていないが毛並みが良さそうな感触だったなと考えていると、足元からまたワン!と鳴き声が聞こえる。
「あー………そうだ。」
毛並みがいい、それに人に慣れている。
この犬……は誰かの飼い犬か、捜索救助犬で、私を探しに来てくれたのかも。
その可能性は薄いだろうとは思いつつ、その犬のいるであろう方向に向かって優しく声をかける。
「あのね、私今動けないの。だから誰でもいいからここまで連れてきてくれない……かな?」
お願い!と手を合わせて頼むと、ワン!と大きく鳴いた後、草のガサガサという音が聞こえたかと思うと遠くへと離れていく。
行ってくれた……のだろうか。
あまり期待はできないだろうが、まあ少しは安心できた。
それに何故だか分からないが先ほどぶつかられた後から足の痛みがなくなっている。
もふもふと触れ合ったことで心に余裕ができたからかもしれない。
これならまだ立っていられそうだと、音の去っていった方向を向きながら気合を入れた。
体感ではもう何時間も経っているように感じるが、この暗い森の中でやることなくただ立ち尽くしている分実際には時間は経っていないのだろうと溜め息をこぼす。
寒さが予想していたよりも感じのないのは、この特殊なと説明されたフロロフィアの制服のお陰だろうか。
「うう……足の裏が痛い……なんでブーツにしちゃったんだろ……。」
足元を見下ろしてもぼんやりとしか目には映らないが、靴は膝下丈の編み上げタイプのロングブーツで、幸いと言っていいのかヒールは高くないのでその点は大丈夫だが、新しい靴ということと靴底の硬さにじわじわと痛みが広がっている。
………にしてもやっぱりスカートの長さ膝下くらいでよかったと思う。寒い。
それに足が出ているからか多分怪我をしている。
紙で切ったようなあの鋭いチクチクズキズキとした痛みが所々に感じる。
「足……出したのって怪我させるため……?」
そんなわけないかと笑い飛ばしたかったが、あの昼間の何もないところで躓いた回数が多すぎたこと、この丈では転んだ時に膝をつくと怪我をしやすそう。
乙女ゲームで割と……というほどでもないが結構足を痛めるヒロインと、それを治療したり傷を抉ったりする攻略対象のイベントはある。
たまに、怪我をしたら舐めたら云々と言って攻略対象が足を舐めて、それに対してヒロインが汚いからって返すやりとり。
最近は舌に雑菌があるから舐めるなとか言われてるからか、一世代くらい前の機種でよく見かけた。
このネタは乙女ゲームだけではなく結構定番だが、最近はどちらかといえば舐められる側の人がいやお前口には雑菌どんなにいると思ってるんだよ、みたいな返しをするのが増えたと思う。
……雑菌雑菌言いまくる乙女ゲームあったらそれはそれで色々とやばそうだ、探せば一つくらいそういうヒロインいそうだが、キスシーンでもそれが頭をよぎりそうだな。
まあこの世界は魔法があるし、あるとしても舐めるというより魔法とかでどうにかするパターンだろう。
治療してくれた人が実はすごい方だった!とかその治療方法昔どこかで……。とか、この暖かい光……なぜか懐かしい…。とか
たまに魔法はそんな万能なものじゃないとか魔法に頼りすぎるとダメとかで薬を使ったり………。
「クゥ~……。」
「え!?な、なに!?!?」
すぐ近くから犬の悲しい時のような鳴き声が聞こえ、驚いて後ろに下がって枝にぶつかり、後ろからミシミシという音が響いて固まる。
「クゥ~……?」
「まってとりあえず止まって!!??」
「ワン!」
あ、やっぱり犬?え、野犬??
枝を折って逃げるべきか、でもこれ以上音を鳴らすと危険ではないだろうか、あと野犬って見つけた時走ったら追いかけてくるって言わなかったっけ。
どうしようかと考えていると足に何かがぶつかる。
何か、ではなくて多分野犬らしき生き物だろう。
胴体はブーツにしか当たらなかったが、尻尾……と思われる部分が膝を撫でていった。
……もふもふだった。しかも暖かい。
軽くしか当たっていないが毛並みが良さそうな感触だったなと考えていると、足元からまたワン!と鳴き声が聞こえる。
「あー………そうだ。」
毛並みがいい、それに人に慣れている。
この犬……は誰かの飼い犬か、捜索救助犬で、私を探しに来てくれたのかも。
その可能性は薄いだろうとは思いつつ、その犬のいるであろう方向に向かって優しく声をかける。
「あのね、私今動けないの。だから誰でもいいからここまで連れてきてくれない……かな?」
お願い!と手を合わせて頼むと、ワン!と大きく鳴いた後、草のガサガサという音が聞こえたかと思うと遠くへと離れていく。
行ってくれた……のだろうか。
あまり期待はできないだろうが、まあ少しは安心できた。
それに何故だか分からないが先ほどぶつかられた後から足の痛みがなくなっている。
もふもふと触れ合ったことで心に余裕ができたからかもしれない。
これならまだ立っていられそうだと、音の去っていった方向を向きながら気合を入れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる