ヒロインちゃんがんばる!

名無色

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ここに来ると決めた理由

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やっぱりあの野犬……らしき生き物近くにいてもらった方が気持ちの面で楽だったなぁ。

でも野犬は懐かせると困るのは私だ。
お世話をするつもりのない生き物は助けても互いに苦しむだけ。

………まあ野犬と決まったわけではないんだけど。

ただ捜索救助犬かもと考えたが、そもそもこの世界で災害救助犬がいるかどうか知らない。

捜索救助犬というものを知ったのは前の私で、フィリアでそういうの聞いたことがなかった。

そもそもこの世界には便利な魔法があるし。
魔法で捜すにしても、その行方不明者の居場所や魔法を発動させる位置や方向の調整が正確でないとできないため、かなり難しいが不可能ではないらしいし……。

「………いやでも学校に野犬ってないか……、でも森があるし……。」

入学式で説明される内容はシリカ先生が話してくれたが、考え事をしていたせいもあって半分近く聞き逃した。

もしかするとその中に、学内に野犬が出るので注意!とかあったのかもしれない……。

でも本当に野犬とか出るなら看板設置してほしい。
多分私みたいに聞き逃した人少しはいるだろうし、その、話していたらの場合だけど。

「………………飽きた。」

また少しずつ足が痛くなってきたし、それに立っていてなにも出来なくて飽きる。

この森がもっと虫とかいると必死に逃げるかもしれない。枝を折って、とりあえず走って、とか。

でもこの森、不自然なくらいに生き物がいない。
いやあの野犬っぽいやつはいたけど、それ以外は蟻一匹すら見てないんだよね。

それなのによく生態系ぶっ壊れないな……ちょっとした箱庭みたいに感じる。

……この学校、どこからどこまでが学校なんだろ。
魔法で転移してきたから出入り口がどんな風なのかもわからないし、生徒は皆学内に用意された寮で暮らし、長期休暇の時以外は基本的に家に帰ることは許されない。

休日に外に出掛けることは出来るらしいけど……まずフロロフィアってどこにあるんだっけ。

距離が遠いから転移魔法陣を使えと手紙に書かれていたからよく考えずに来ちゃったし、家族も「遠くでも無理はしないでね。」みたいに遠くということは話だが、詳細がわからない。

生徒が全員貴族と考えると王都かその近隣……だろうか。

それだと物価が高いかもしれない……ただでさえ学業に必要な分は全部支援されないと通えないくらいだ。

まあそれくらいしてくれないと通うつもりはなかったけど。
ここが乙女ゲームの世界だろうがなんだろうが、そんな全員目上の人ばかりの場所に誰が進んで通うのか。

私も“私”の記憶がなくても元々その件については不服な点が多い。
リルに見られなかったら、中身を見る前に気付かなかったことにして捨てていたと思う。それか燃やした。

自分がフロロフィア魔法学校に通えると分かっていたわけではない。
ただ家族を除いた私の周りにいた人達は、事あるごとに貴方ならフロロフィア魔法学校でもやっていけると、それを最大級の褒め言葉と思っているのかというレベルで言ってきたからだ。

そこでキツく言い返したらフロロフィアを馬鹿にしてるとかに勝手にされると困る。
そう考えて、そんな事ないですよとか私なんてまだまだでと返していた。

言い方が悪かったのだろうが、それでいつの間にか私が全員見下しているとか調子に乗ってるとか言われることになるから、言葉って、会話って難しい。

ただその言葉に、というかその話を信じた人達の反応に結構ショックを受けた。
私が周りと同じように失敗すると、みんながざまあみろと馬鹿にしたのだ。

人よりも不器用で、唯一誇れるのはこの無駄な、宝の持ち腐れな魔力の量だけ。
自分の事を可愛いと言い始めたのは、その誇れるところを増やそうとした結果なので、実際この世界から見るとこの容姿がどこまで整っているのか、分からないし。

私が通うことにしたのは、そういう地元から離れたかったこと。
それと手紙に書かれた国一の魔法の使い手に……ではなく、その魔力の高さだと制御できないと身近な人物が危険に晒されると脅されたからだ。

地元の人たちの事なんてどうにでもならと思うくらい愛着はないが、無関係の人を巻き込みたくないし、家族のことを傷つけたくないと決めたことが一番大きい。

「…………このまま。」

口から出かけた言葉を飲み込む。
まだ初日だ、今からこんな調子では先が思いやられる。

「………よし!せっかく通わせて貰えるんだから、楽しまなくちゃ!」

「あ、いた。」

「きゃ!?な、なんか出た!?!?」

驚いた時にきゃっと叫べるの強いなと思いながらびっくりして声の聞こえた方向を向こうとして、真後ろだから見れないと気付く。

「待って、動かないでください。
………絡まった髪をほどきますので、そのまま前を向いていてください。」

「あ、え、あ、はい!えっと……お手数おかけします……。」

誰かよく分からないけど優しそうないい声にホッとする。
いた、ということは捜してくれていたと考えてまず間違いはなさそうだし、フロロフィアには想像していたよりも優しい人が多いのかもしれない。

私の知らない声、誰かが私が居ないことに気付いて、捜そうと誰かに知らせてくれたのだろう。

…………これならなんとかやっていけそうかも。

とりあえず、髪を解いてくれている人が甘いもの苦手じゃなければ、あとでリルお手製の形は歪だけど美味しいあのクッキーを渡そうと心に決めた。

もちろん、迷惑をかけた人にもちゃんと後でお礼はするけれど。
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