伯爵令嬢ですが、電話交換手をやってます。目標はバリキャリなのに、溺愛されちゃいました

yukiwa

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第六章 辺境伯夫人は兼業です

43.かわいいと思ったのは間違いでした *

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 その夜、ただで済むはずはなく。
 明日も出勤しなければならないアンバーに、ユーインは良い笑顔で言った。

「俺の心を試したんだ。対価を支払う覚悟は当然あるのだろう?」

 寝室に入った途端、アンバーは横抱きにさらわれる。
 さすが辺境伯というべきか、力強い両腕はアンバーごときの抵抗を難なくねじ伏せてしまう。
 あえなく寝台に横たえられ、がしりと抱きしめられる。

「アンバー、俺は君の我儘をきいた。それなら俺の勝手も許してもらう。拒むことは許さない。今夜からは毎晩、俺の好きにさせてもらう」

 強引で強硬な言葉と裏腹に、ユーインの腕は震えている。
 薄い青の瞳はまるで母犬から離される子犬のように、不安げに揺れていた。

 いじらしくて愛おしくて、アンバーの胸はきゅうっと絞り上げられる。
 好きで置いていくわけじゃない。
 けどユーインにしてみれば、置いて行かれることに変わりはない。
 不安で不安で仕方ないというのなら、せめてユーインの好きにさせてあげたいと思う。
 震える腕にそっと手をかける。

「私もそうしてほしい」

 それが始まりの合図だった。

 火のように熱い吐息が、アンバーの首筋に触れる。
 直後、ちりりと小さな痛みが走る。
 首筋から鎖骨の上、二の腕の内側、それに柔らかに隆起した胸。
 小さく焼け付くような痛みが次々に移る。
 その軌跡に赤い花が咲いた。

 どくどくと速い、ユーインの心臓の音。
 荒い息が肌をかすめる度、アンバーの背にぞくりと快感が走る。
 ユーインは、まるで何かを怖れてでもいるようだ。

 ちゅぷりと音をたてて、ユーインの唇が胸の頂を吸い上げる。
 優しくはない。
 柔らかなふくらみを撫で掴みながら、貪るように吸いついた。
 
(かわいい……)

 胸がきゅんと高鳴って、少し乱れた赤毛に指を伸ばす。
 瞬間、ぐいと強い力がアンバーの手首を引き寄せた。

「気に入らないな」

 切れ長の目を細めて、ユーインは皮肉げに口にする。

「随分と余裕があるようだ」

 掴んだ手首の内側に、ユーインは唇を落とす。
 薄い青の瞳はしっかりアンバーを捕らえたまま、見せつけるようにゆっくりと。
 薄い唇からのぞく赤い舌が、動脈の上をぬらりと舐め上げる。
 ずくんと、アンバーの身体の芯が疼いた。

 ふ……と、鼻先だけでユーインは笑う。
 手首から肘までを長い指でそっとなぞりあげ、その後を唇と舌が追う。
 そしてその先、柔らかな二の腕の内側、脇、そして胸のふくらみを通って、最後はその頂まで。
 ゆるゆるじわじわと、アンバーを追い詰めてゆく。

「ん……」

 開いた唇から、たまらず声がこぼれた。
 じれったくて足りなくて、もっと強く、もっと欲しいと望んだ。

「どうして欲しい?」

 掠れたテノールが耳元で。
 それだけできゅんと下腹が痺れる。

「君が望まなければこのままだ。俺は何もしない」
「意地悪……だわ」

 涙がこみ上げる。
 さっきまであんなにいじらしくかわいらしかったのに。
 どうしてこんなに酷いことをするのだろう。
 恨みがましい思いで見上げると、薄い青の瞳に抑えきれないユーインの雄が見え隠れしていた。

「言え、アンバー。どうして欲しい?」

 冷たくさえ聞こえる低い声に、アンバーは抵抗をあきらめる。

「そのままもっと。身体中を愛してほしい。挿れてほしくてたまらなくなるまで」

 恥じる余裕をアンバーは手放した。
 
「お望みのままに……」

 ユーインが満足げににやりと笑う。
 同時にするりと身体を滑らせて、アンバーの両脚を高々と掲げてしまう。

「よく見ておくことだ。最愛の妻の望みに応える、夫の健気な姿をな」

 健気とは程遠い、挑発的な笑みと声。
 見せつけるようにぬらぬらと、赤い舌をゆっくりとユーインは動かした。
 足の付け根、快感を得るためだけの器官を、じわじわゆるゆるとユーインは追い詰める。
 羞恥はとうに、どこかへ飛ばしていた。
 だんだんに高くなる快感の波に、アンバーの声は抑えようもない。

「あっ……」

 ちろちろと尖端を舐めさすり、飽かずいつまでも続ける動きに、アンバーの波はどんどん極まってゆく。
 弾ける。
 頂点が見えた瞬間、ためらわずアンバーはメスの本能に従った。

「ユーイン、もう、クるから……」

 弓なりに身体を逸らして、アンバーは果てた。

「まだ……だ、アンバー。もっと俺は見たい。君が果てる様、その美しい君を目にすることができるのは俺だけだ」

 イったばかりの尖端を、ユーインの舌がぬらりと舐める。

「少しだけ待って……。今は敏感になってるから」

 アンバーの心からの哀願にも、ユーインの舌は動きを止めてくれない。
 二度目の快感はすぐに来る。
 最初のより浅くて尖った快感が。
 びくびくとアンバーが身体を震わせると、ようやくユーインの舌は動きを止めてくれた。

「俺に言いたいことがあるだろう? 奥様?」

 誘う言葉に、アンバーは素直に頷いた。

「挿れて……。はやく……」

 恥とかてらいとか、体裁を作ろう余裕はとうにない。
 きゅうきゅうひくひくと疼く下腹を、一刻も早く埋めてほしかった。

「よく言った」

 ずしんと、最奥を穿たれる。
 途端、アンバーの身体は悦んで、もっともっとと欲をかく。

「ユーイン、もっと……。もっとよ」
「言われずとも……」

 リミッターを外したらしいユーインが、アンバーの両脚を抱え上げて急速に動く。
 ずちゅずちゅといやらしい水音。
 パンパンと乾いた肌のぶつかる音。
 雨のように降りしきるユーインの汗を浴びながら、アンバーはすぐそこに頂上がくると予感する。

「アンバー、君は俺のものだ。この先ずっと、永遠に俺のものだ」

 弾ける瞬間に響く声。
 すがるように切ないユーインの声。
 夢かうつつか、そのはざまで、アンバーはそれを確かに聞いた。
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