っておい

シロ

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三、調査は進行して・・・いない!?

3ー21、知識も比例して増えていく。

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「今帰った」
「ずいぶん早かったな」
「父上、おかえりなさいでござる」
「うむ、元気そうで何より」
など、微笑ましい挨拶が嘘のように思い雰囲気が漂う会議室兼居間に集合し、テーブルを囲む面々。つい先程、当番である雲長とタイラが皿を洗い終わり、孟起がテーブルを拭き終わった後、雲長が持ってきた資料に全員が眼を通し始めた。
「つまり、子龍の死亡はスピリチアでも認められたと」
「ああ、死神にも再度確認してもらったが、あの時死亡はしていると」
『だが、スピリチアにはいないそうだ。何でも試練をクリアして現世に留まる許可を得たらしい』
今回玄劉は電話で会議に参加することになった。どうしても参加すると言ってきかなかったのだが、相方のデザイナーと宝石細工師からこのままでは間に合わないと引き止められ、妥協策として声だけで参加する形となった。今も話しながらセカセカと手を動かしているはずだ。
「成程、それなら納得だ」
輪廻転生の場であるスピリチアで停滞の許可が出たのなら生霊と判断してもおかしくはない。死神や鬼族と同じ魂だけの存在と思えばいいのかとタイラは考えた。
『ただ、あの火事で身体は完全に燃失し、骨だけになっている。なお、暇な少年少女達に墓を尋ねてもらったところ、墓あらしの形跡はなかったそうだ』
「行なわれたのが一ヶ月前だったら消えていてもおかしくないでござるな」
「おい、いいのか」
「かまわん、玄劉は子龍の存在をすでに知っていた。考えてみれば、兄者の妹君の嫁いだ家の子なのだから当たり前であったな」
「こっちの取り越し苦労だったってわけか」
『雲長、孟起、どうかしたのか』
「いや、なんでもないでござるよ、兄者」
「こっちの話だ。気にするな」
『お前達も仲良くなったか。いい傾向だ』
「そうでござるか?」
タイラには見えていた。雲長と孟起の間に無言の火花が絶えず飛び散っているのが。
「でも、もしそうなら、拙者が会った子龍さんは何でござるか?とても精密で擬体とは思えなかったでござるよ。もし、何かの擬体や九十九神ならば食事は厳禁のはずでござるし」
「細胞を培養して作り出したクローン体に魂が憑依したとも考えられる。スタートウならそれくらいの技術があってもおかしくないかもしれぬな」
さすがにそれらの情報は得られなかったようだ。ただ、試練を終えた子龍がスタートウに向かったことだけは協力してくれた死神がこっそり教えてくれたそうだ。
「・・・・・・兄者には黙っていたが、スタートウで耳に入った話で気になったことがあるので調べてみた。確か、孟起とタイラが外国の拠点を、儂と兄者が国内の拠点を潰していた。スタートウおよび他組織の協力はなし。沈黙させた数は・・・・・・」
「俺たちがアメリカ、イラン、中国、の三ヶ所」
「儂らが日本の五つ、計八箇所のはずだ」
「日本は隠しやすいからな」
法律にグレーゾーンが多いため、隠す方もそれだけ隠しやすくなる。魔族が関わっているのなら尚更だ。
「だが、報告書に記されていた一ヶ月間にてスタートウで沈黙が確認された組織数は今日のも合わせて十七箇所。もちろんスタートウ者によって沈黙したものや犯人がハッキリしているもの、今回の事件に明らかに関係ないものは外してある。残り九箇所を潰したのはおそらく」
「子龍と小龍、そしてサードでござるか?」
『だが、彼らの仕業だとしても奇妙なのが、四日前に壊滅した三箇所ことだな。場所は日本で一箇所、アメリカで一箇所、インドで一箇所。報告書が正しければ二十四時間でかなり離れた三箇所を壊滅させている。もちろん、我々ではない。だが、予め場所が特定できたとしても、とても一日で行なえぬ事ではないか?』
「飛んだのではないのでござるか?マッハで飛べば何とかなりそうでござるが?」
『昔の仲間が各国の防衛庁にいてな。彼らに電話して確認してもらったが、最短ルート上のレーザーにも飛行物体の反応はなかったそうだ』
玄劉はいったい莫大な知り合いを何時作ったのだろうか。
「瞬間移動にしては距離がありすぎるだろ。あれは距離に比例して消費魔力も上がるからな。一メートル飛ぶにもおよそ中級攻撃魔法と同じくらいの魔力が必要だ。ほぼ地球一周。実行するなら神レベルの魔力が必要だぞ。飛行魔法もそうだ。スピードが上がればさらに倍加する。その増加量も半端じゃない。消費を抑えるなら低空飛行すればいいが、そうしたらレーザーに発見されているはずだ」
魔法に関しては漢蜀の中で孟起が一番詳しい。玄劉の魔法は特殊だし、雲長とタイラは風魔法しか使えない。使える属性が多い故に必要となる知識も比例して増えていく。自分の得意な属性に特化する魔法使いや魔導師が多いのもそのためだった。
「魔力を別の場所に保管しておいたとは考えられないでござるか?」
「方法がなくもない。しかし、軍事用レーダーにも感知されない飛行術か・・・・・」
『無理だな』
『無理ですよ』
真っ向から玄劉と雲長に否定された。
『カーレントの空にもエターナニルの空にもスタートウの観察衛星が飛んでいることは知っているでしょう』
「知るか!」
孟起が不機嫌なのはいつも見張られていると感じたからだろう。
『カーレントの軍事衛星を欺くことはできても、スタートウの観察衛星STを欺けるとは思えん。あれは魔法察知能力、魔法識別能力など、科学と魔法の生粋を極めた衛星だからな。それにすら感知されずに飛行するのは不可能に近いはずだ。飛行中は可能でも魔法を発動した瞬間に発見される』
スタートウの技術でも感知不能。ひょっとして、子龍のほうが高い技術力を持っているのではとその場にいた全員が考え込んでしまった。


                           続く
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