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コンビニの怪異 前編

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「鳩時計の廃墟・・・懐かしいな。あの後、篤が落ち着くまでコンビニの駐車場に居たもんな。」

「いつまでも居る俺達に、コンビニの店員のお兄さんが温かい缶コーヒー奢ってくれて話も聞いてくれたな・・・。それ以外でもあのコンビニはある意味忘れられないコンビニだもんな。」

「・・・やめろよ。思い出したじゃねぇか。」

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 高校を卒業して地元の大学に進学した俺と篤はお互い一緒の大学に進学していた。車の免許も取った俺達は今まで行くことが出来なかった県外の心霊スポットなんかにも行くようになっていた。

 バイトもしないでそんな事をしてれば金欠になるのは当たり前でそろそろバイトでも探そうかという話を俺達はしていた。

 そんなある日、篤がニヤニヤしながら俺に話しかけてきた。

「千春。面白い・・・良いバイト先が見つかったかもしれん。」

「・・・なんで言い直すんだよ。」

 高校からの付き合いだが俺は察した・・・篤がこんな時は大体ろくでもない事を言ってくるんだろうな。

「まあそこは気にすんなよ。ででーん!」

「チラシ?・・・コンビニの求人かよ。それがどうしたんだ?」

『夜勤限定のシフトに入れる方募集中!!』

 そんな事が書いてあったと思う。時給を見ると確かに他のコンビニより時給が高い。

「千春がもしコンビニを建てる時はどんな場所に建てたい?」

「はぁ?いきなりなんだよ。・・・そりゃ立地が良い場所と客が集まる場所に建てたい。」

「だよな。なんか気付く事ないか?」

 そう言われて求人をよく見てみると、俺達が以前行った鳩時計の廃墟の後に寄ったコンビニだった。

「あれ?あそこのコンビニってこの会社が経営してたか?」

「いんや?今は別のコンビニになってる。」

「いや、あそこって場所もいいし、客だって入ってただろう?それがこの数年で潰れて、しかも別のコンビニになってる?」

「千春もおかしいと思うだろ?って偉そうに言ったけどさ、実はそのコンビニで働いてた先輩に聞いた話なんだけどさ、どうやら色々起こるらしいんだよ。」

「怪奇現象って事?」

「そうそう!詳しくは怖がって教えてくれなかったんだけどさ、ちょっと調べたらこの求人を見つけてなにやらきな臭いと思ってな。」

「御断りします。」

「まだ何も言ってないだろ!?一緒にバイトしようぜ!!」

 まあ、お分かりの通り俺はしつこい篤と一緒にバイトの面接に行くことになったんだが、あっさりその場で合格。しかも篤と一緒のシフトにしてくれる好待遇。

 怪しむ俺に対し、店長は「夜勤は危ないから基本2人で仕事をしてもらってる」と言っていたが、都会ならまだしもこんな田舎のコンビニで夜2人で働いているコンビニなんて見たことない。

「やっぱり少し店長の様子がおかしかったよな?」

「何かを隠してる感じはしたかな。」

「ははっ。まあ、明日から楽しくバイトしようぜ!」




 次の日からバイト先のコンビニで作業などを教わり、何事もなく1週間が過ぎた。

「もっとなんか起こるかなとか期待してたけどなんも起こらないな・・・。」

「俺は何事もない方がいいけどな。時給も良いし、夜中はそこまで客はこないし2人で品出しなんかをやればすぐ終わるからな。」

「そうなんだけどさ・・・俺は刺激が欲しいお年頃なの!」

「勝手に言ってろ。」

「冗談はここまでにして、明日から2人だけじゃん?何か起こるとしたら明日からじゃね?千春はなんか感じたか?」

「・・・いや?」

「その間はなんだよ!なんか見たのか!?」

 興奮気味に聞いてくる篤をなんとか誤魔化してその日は帰宅した。

 俺は初めて幽霊を視た時からずっと思っていた事がある。人には視えないのに俺にだけ視える人。丁度、思春期も重なっていたし俺は頭がおかしくなったんじゃないかと本気で悩んでた時期があった。

 俺自身が元々幽霊否定派だった。過去の自分に幽霊が視えるなんて言ったら鼻で笑われて終わりだ。

 そんな時に出会ったのが篤だった。

 篤は俺の事を馬鹿にせずに目を輝かせて話を聞いてくれた。どれだけ当時の俺が救われた事か・・・感謝してもしきれない。だからこそ篤に危険な事をさせたくはなかったけど、俺が止めても1人で心霊スポットに突撃する事は分かっていたから今まで一緒に付いて行ってた。

 知ってるか?は視えてる事が分かるとしつこく付き纏ってくるんだ。それに、視えてなくてもあちら側の勘違いで付いてくることもある。

 だから篤に言えないし、言わない。

 コンビニでバイト中、ずっと雑誌コーナーのガラス窓から女がコンビニを覗いてるなんて事を・・・。
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