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コンビニの怪異 後編
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コンビニのバイトを始めてから3か月くらい経った頃だったと思う。篤は何も起こらない事に飽きはじめていた。
「なーんも起こらなくてつまらん。篤はなんか隠してるみたいだしさ。」
「はぁ?隠してるって何をだよ。」
篤は少し真面目な顔をして、
「これだけは教えてくれ。もしかしてヤバい奴?」
「・・・篤は四六時中女に監視されたらどう思う?」
「それは・・・嫌だしヤバい奴だな。え・・・つまりそういう事?」
「あぁ。頼むから普段通りにしててくれよ?」
バイトを始めてから3か月・・・あの女は1度もコンビニの中に入って来た事はない。女が入ってこれないのか、入ってこないのかは正直分からない。ただ、認知されてしまったらろくでもないことになるだろうという事だけは分かった。
平日の夜は長距離トラックの運転手が駐車場に止めて寝ていたりするが、週末の夜中になるとこのコンビニはヤンキー達のたまり場になる。その日は日付が変わって日曜の午前1時くらいだったと思う。
1台の白いセダンがコンビニの駐車場に車を止めた。車からは3人の派手めな男が降りてきて、喫煙所で煙草を吸い始めていた。
今は外に灰皿なんかを置いているコンビニも少なくなってきてると思うけど、当時はコンビニにはほぼ灰皿は設置されていた。大体は雑誌コーナーの方に置いてあることが多いと思う。俺達がバイトしてたコンビニも雑誌コーナーの方にあった。
「千春。・・・ちょっと外に居る奴見てみろよ。」
篤にそう言われたが出来ればその方向を視たくはなかった。
灰皿が置いてある場所、そこは女が立っている場所だったからだ。変な所で勘が良い篤の事だ、ここで俺が見なかったりするだけで篤にそこに幽霊が居ると教えている様なものだ。
しかたなく女と目線が合わないように視線を少しだけ下に向けながら見ると、先程の男の1人が女に話しかけている。
初めて見たよ。幽霊にナンパしてる奴。傍から見れば誰も居ない窓に向かってニヤニヤしながら話している痛い奴に見える事だろう。
男が話しかけていても女は相変わらず店内をジッと見ている。他の2人はそんな様子を見てケラケラと笑っているのが見えた。
少しするとナンパをしていた男が急にキョロキョロしたかと思うと何かを探す様子で店内に入ろうと歩いてきた。
男の背中にピッタリとくっついた女を連れて・・・。
「「いらっしゃいませ」」
多分俺の顔はこの時、なるべく表情に出さない様にしていたけどかなり引きつってたと思う。
男は店内を歩き周っているようでやはり何かを探している様だった。
「すいませーん。外に居た女の子って何処行ったかわかりますかぁ?」
「???外に居た女の子、ですか?俺はそんな人見てないですけど・・・千春、そんな人居たか?」
「外に女の人は居なかったと思いますけど、どうなされました?」
「あっれー?さっきまで絶対居たのにな・・・」
その後も執拗に聞いてくる男の背中からは女の髪が視える。内心、「早く帰れッ!!」と思っていたが流石にそんなことは言えない。
男は納得した様子はなかったが首をかしげながら仲間たちの方に戻って行った。
「変な奴だったな。・・・どうした?」
「いや・・・そうだな。迷惑な奴だったな。」
「・・・?」
苦々しい顔で俺は言う。あの男・・・店内に女を置いて行きやがった。あの男には悪いけどそのまま女を連れてけよ・・・。
コンビニのバイトは俺にとって楽して金を稼げる天国から、女が店内をうろつきまわる地獄となった。
それからバイト中に店内に客が居ないのに雑誌が落ちたり、店内に来客を告げるチャイムが鳴り響いたりと不思議な事が頻発し、女が視えてない篤も不審に感じ始めていた。
徐々にエスカレートしていく怪異に俺は我慢をしながら働いていたが、俺達に何かしてくるとかそういう直接的な被害は受けていなかったし、何より楽して稼げるバイトだったから辞めるのを躊躇していた。
何よりそのうちどっかに行ってくれるんじゃないかと思っていた。
まあ・・・・女がどっかに行く前に俺達の方が先に辞める事になったんだがな・・・。
たまにあるんだが、夜中なのに客がタイミングを見計らったように集中してコンビニに来る時がある。ただ、1人ではないし、篤もいるから楽々捌けていたんだ。
その日もそんな感じで客が店内に複数居た。俺のレジも3人、篤のレジにも2人くらい並んでたと思う。
1人目の客を捌いて2人目の客の品物を受け取ろうとしたが、レジの前には何も置いていなかった。「あぁタバコか。」そう思い視線を上にあげると、バッチリ目が合ってしまった。
あの女と・・・。
今までは顔をはっきりと見た事はなかったからその時初めて女の顔を見た。一瞬だったけどハッキリ覚えている。
よく怪談とかでは女の髪がボサボサで、生気のない顔とかそんな感じの事を言うのを皆も聞いたことがあるかもしれない。
俺が見た女の顔は何処にでもいる普通の女だった。髪はセミロングで薄いけど化粧なんかもしてたと思う。
ただ・・・俺の目を見てにっこり笑ってた。内心かなり焦ったが平静を装って「次の方どうぞ」と言った。
後ろに並んでた作業着を着たおっちゃんは「え?あぁ・・。」と言って買い物をして帰って行った。ただボーッとしていただけかもしれない。でも、俺にはあのおっちゃんにも女が視えていたんじゃないかと思う。
店内に客が居なくなった後も女はずっと俺のレジの前に立ってた。
その日に篤に事情を話し、2人でバイトを辞める事になる。
その後数年してあのコンビニはまた違うコンビニになっていたが、今ではもう更地だ。
場所が良いのによく潰れる店にはきおつけた方がいいのかもしれない。
「なーんも起こらなくてつまらん。篤はなんか隠してるみたいだしさ。」
「はぁ?隠してるって何をだよ。」
篤は少し真面目な顔をして、
「これだけは教えてくれ。もしかしてヤバい奴?」
「・・・篤は四六時中女に監視されたらどう思う?」
「それは・・・嫌だしヤバい奴だな。え・・・つまりそういう事?」
「あぁ。頼むから普段通りにしててくれよ?」
バイトを始めてから3か月・・・あの女は1度もコンビニの中に入って来た事はない。女が入ってこれないのか、入ってこないのかは正直分からない。ただ、認知されてしまったらろくでもないことになるだろうという事だけは分かった。
平日の夜は長距離トラックの運転手が駐車場に止めて寝ていたりするが、週末の夜中になるとこのコンビニはヤンキー達のたまり場になる。その日は日付が変わって日曜の午前1時くらいだったと思う。
1台の白いセダンがコンビニの駐車場に車を止めた。車からは3人の派手めな男が降りてきて、喫煙所で煙草を吸い始めていた。
今は外に灰皿なんかを置いているコンビニも少なくなってきてると思うけど、当時はコンビニにはほぼ灰皿は設置されていた。大体は雑誌コーナーの方に置いてあることが多いと思う。俺達がバイトしてたコンビニも雑誌コーナーの方にあった。
「千春。・・・ちょっと外に居る奴見てみろよ。」
篤にそう言われたが出来ればその方向を視たくはなかった。
灰皿が置いてある場所、そこは女が立っている場所だったからだ。変な所で勘が良い篤の事だ、ここで俺が見なかったりするだけで篤にそこに幽霊が居ると教えている様なものだ。
しかたなく女と目線が合わないように視線を少しだけ下に向けながら見ると、先程の男の1人が女に話しかけている。
初めて見たよ。幽霊にナンパしてる奴。傍から見れば誰も居ない窓に向かってニヤニヤしながら話している痛い奴に見える事だろう。
男が話しかけていても女は相変わらず店内をジッと見ている。他の2人はそんな様子を見てケラケラと笑っているのが見えた。
少しするとナンパをしていた男が急にキョロキョロしたかと思うと何かを探す様子で店内に入ろうと歩いてきた。
男の背中にピッタリとくっついた女を連れて・・・。
「「いらっしゃいませ」」
多分俺の顔はこの時、なるべく表情に出さない様にしていたけどかなり引きつってたと思う。
男は店内を歩き周っているようでやはり何かを探している様だった。
「すいませーん。外に居た女の子って何処行ったかわかりますかぁ?」
「???外に居た女の子、ですか?俺はそんな人見てないですけど・・・千春、そんな人居たか?」
「外に女の人は居なかったと思いますけど、どうなされました?」
「あっれー?さっきまで絶対居たのにな・・・」
その後も執拗に聞いてくる男の背中からは女の髪が視える。内心、「早く帰れッ!!」と思っていたが流石にそんなことは言えない。
男は納得した様子はなかったが首をかしげながら仲間たちの方に戻って行った。
「変な奴だったな。・・・どうした?」
「いや・・・そうだな。迷惑な奴だったな。」
「・・・?」
苦々しい顔で俺は言う。あの男・・・店内に女を置いて行きやがった。あの男には悪いけどそのまま女を連れてけよ・・・。
コンビニのバイトは俺にとって楽して金を稼げる天国から、女が店内をうろつきまわる地獄となった。
それからバイト中に店内に客が居ないのに雑誌が落ちたり、店内に来客を告げるチャイムが鳴り響いたりと不思議な事が頻発し、女が視えてない篤も不審に感じ始めていた。
徐々にエスカレートしていく怪異に俺は我慢をしながら働いていたが、俺達に何かしてくるとかそういう直接的な被害は受けていなかったし、何より楽して稼げるバイトだったから辞めるのを躊躇していた。
何よりそのうちどっかに行ってくれるんじゃないかと思っていた。
まあ・・・・女がどっかに行く前に俺達の方が先に辞める事になったんだがな・・・。
たまにあるんだが、夜中なのに客がタイミングを見計らったように集中してコンビニに来る時がある。ただ、1人ではないし、篤もいるから楽々捌けていたんだ。
その日もそんな感じで客が店内に複数居た。俺のレジも3人、篤のレジにも2人くらい並んでたと思う。
1人目の客を捌いて2人目の客の品物を受け取ろうとしたが、レジの前には何も置いていなかった。「あぁタバコか。」そう思い視線を上にあげると、バッチリ目が合ってしまった。
あの女と・・・。
今までは顔をはっきりと見た事はなかったからその時初めて女の顔を見た。一瞬だったけどハッキリ覚えている。
よく怪談とかでは女の髪がボサボサで、生気のない顔とかそんな感じの事を言うのを皆も聞いたことがあるかもしれない。
俺が見た女の顔は何処にでもいる普通の女だった。髪はセミロングで薄いけど化粧なんかもしてたと思う。
ただ・・・俺の目を見てにっこり笑ってた。内心かなり焦ったが平静を装って「次の方どうぞ」と言った。
後ろに並んでた作業着を着たおっちゃんは「え?あぁ・・。」と言って買い物をして帰って行った。ただボーッとしていただけかもしれない。でも、俺にはあのおっちゃんにも女が視えていたんじゃないかと思う。
店内に客が居なくなった後も女はずっと俺のレジの前に立ってた。
その日に篤に事情を話し、2人でバイトを辞める事になる。
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