これ番外編なんです!私小説「僕のこの恋は何色?」本編に書けなかった削除部分特集

歴野理久♂

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80年代の宝塚チケット争奪戦事情

第8章からの削除部分①

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 現在はネットで販売されている宝塚の公演チケットですが、僕が夢中になっていた80年代当時は、まだアナログな方法で販売されていました。
 僕は「第8章 ヅカ友タッチと長い夜」の中で、そのアナログなチケット入手方法について、あまりの懐かしさからついつい、その詳細を書き散らかし過ぎてしまいました(書いていて楽しく夢中でした)

(あれ?こんなマニアな昔話を誰が喜ぶんだ?)と、はたと気付き(これは同年代のオールド・ファンにしかウケないぞ!)と思い直して、本文ではこのチケット入手方法の説明部分を大幅にカットしました。

 そしてこの項目は、そのカットした「余分な書き込み部分」を捨てきれず、あえて保管の意味で載せたのです。
 はっきり言って、興味のない方には面白くも何ともない項目と言えましょう。
 また、物語の本筋でもありませんので、この項目を読まなくても全く支障はありません。

 ただ、書き連ねた本人にとっては懐かしくも楽しい思い出を描いた部分なので、ここに備忘録として保管します。

 重ねますが、興味の無い方には全くつまらないお話ですのでご注意下さい。


※──────────※


【これは80年代のお話】

 まず基本アイテムとして「宝塚友の会」と言う公式ファン・クラブがあり、そこを押さえるのは基本中の基本だ。
 確かに「一般前売り」の前に「友の会先行前売り」が設定され有利ではあるが、会員一人に対する枚数制限があり、コアなファンには全く枚数が足りない。

 そこで結局、いかに「一般前売り」で有利に動けるかが大きなポイントとなってくる。
 そのシステムは幾多の変遷を経て現在のネット販売に至ったが、当時は極めてアナログだった。
(でも、そのアナログが楽しかったなぁ~)

 まず一公演に対し「一般前売り」の開始日が「○月○日(日)10時より」と発表される。
 もちろん当時はアナログだから、東宝劇場内に設置された「前売り会場(地下フロア)」にて、チケットは販売される。  
 もちろん手渡しだ。そして日曜日であるのが必須だった。

 そうすると、その10時を目指して長蛇の列が出来てしまう。
 それを防ぐために「前日の10時より整理券の配布」と発表になる。つまりそれは土曜日の事だ。
 そうすれば当然、その「整理券の配布」を目指して長蛇の列が出来る。

 が、それは「前売り」に比べれば単なる「配布」だから、長蛇の列は遥かに短時間で解散させる事が出来る訳だ。

 で、僕は十分システムは理解していたから、ちょっと頑張って前夜、金曜日の21時過ぎに劇場正面に赴いた。行列どころか人だかりも出来ていない。
 僕は訳知り顔で、劇場正面のシャッターの前に立つ数人の女性に声を掛けた。

「済みません。7月公演の列びなんですが」
「はい、私達が1番の○○会です。お名前とおおよその人数をお願いします」
「はい、歴野理久です。一人です」
「個人の方ですね?」
「はい」
「歴野さんは78番となります」
と、こうなる。

 実はどの公演の列びでも、各組トップ・スターのファン・クラブが「1番」と決まっているのだ。
 なぜなら彼等は本当に1年365日24時間、ずっと列び続けているのだ。

 そんな(ばかな)事が出来るのか?と多くの人が驚くだろう。
 ところが彼等はそれをやってのけていた。

 当時、東宝劇場の地下街には
「宝塚歌劇センター」と言うグッズ販売店が存在していた。
 その入口横に1年365日、常に折り畳み椅子に座る数人がいる。店が閉まる夜間にもだ。
 宝塚4組のファン・クラブ共同体の、それは「列び」なのだ。
(当時はまだ宙組が無く、4組だった)

 ちなみに僕は「あまり無理してもしんどいし、だけどちょっとは頑張りたいし」と、その加減で前夜金曜日の21時過ぎから列び始めた順番が「78番」だったが(え?それなら結構いいんじゃない?)なんて思ったら大間違い!
 なんせ、1番の「○○会」だけで何百人いるか分からないのだ!

 ちなみに僕より前の順番の、例えば10番の人や20番の人がいつ?どのくらい前から列んでいるのかは定かではない。
(当時そこまで調べなかった)

 そして案内はこう続く。
「システムはご存知ですか?
ここに実際に列ぶ必要はありません。近隣にご迷惑ですから。
ただし今後、一時間ごとに点呼を取ります。もし点呼に答えられなければ、その時点での最後尾に順番が落とされます。
次の点呼は22時です。よろしいですか?」と説明される。

 実際に列ばなくて良いのは助かる。トイレや飲食もできるし、天候の悪い時は尚さら助かる。
 が、やはり一時間ごとの点呼とは楽ではない。
 ちなみに僕は、その時間では一旦帰宅するのは到底無理。喫茶店などを利用しても、一時間ごとに支払いするのでは小遣いがもたない。
 実際、駅のベンチで本を読んだり、駅が閉まるれば結局劇場周辺のどこかに居場所を見付けて時間潰しするしかない。

 男一匹、深夜の日比谷なんて恐くはなかった(恐くはないけど、だんだん寂しくなってきた)

 で、22時。初めての点呼だ。
 劇場正面にぞろぞろと、どこからともなく人が集まって来る。なんとやはり男性もいる。僕だけではなかった(なぜか年配の男性が多かったけれど)

「22時の点呼を取りま~す!私が1番の○○会です。2番、△△会さん!」
「はい!」
「3番、◇◇会さん!」
「はい!」
 と、しばらく団体名が続き、やがて個人名へ……そして、
「78番、歴野理久さん!」
「はい!」
 と、これで点呼終了。僕の後ろに順番待ちが数人増えていた。
(さあここからの一時間が長いぞ。どこで何して潰そうか…)

そして23時、日比谷の街は一気に寂しくなってきた。
 さらに0時と点呼は続き(これはなんだか、思ったよりもずっと辛いぞ~!)とだんだん恐れをなしてきた。

 もう、次の点呼までどこで何をして時間を潰せばいいのか分からない。この日比谷の真夜中に、一人ぼっちはさすがに辛くなってきた。
 新宿や渋谷と違って、日比谷は案外、夜間は淋しい。

そして午前1時の点呼。
「78番、歴野理久さん」
「はい」と答えてそこに留まる。もはやこの人だかりがなんとなく嬉しい。
 僕は自分の点呼が終わってからも、その場を離れがたくなっていた。

「105番、入江達也さん」
「はい」
(え?!男?!)
 反射的に振り返ると、そこにはいつも気になっていた、あの男の子が立っていた。
(今しかない!)と思った。もうその時の僕には恥も外聞も無かった。

「おはようございます~。
あの~一緒に列びませんか~?」
 と懇願するように言い寄った。


───と、タッチに初めて声掛けしたエピソードは第8章で書き上げている。
 ここから先は、興味が有ったら本文でどうぞ。


 で、ここから先は2時、3時、4時、5時と、タッチと協力して点呼を済ませた。

 そして6時の点呼。
 劇場の前にはかなりの人だかりが出来ている。明らかに5時と違ってる。
 仕切り人もメガホンを使用する。
「6時の点呼の方はこちらに集まって下さ~い!
この点呼の終了後、1番の○○会は直ぐに列び始めま~す!
次の7時の点呼は行列の最後尾にて行いますので、お間違えのないように願いま~す!
では点呼を行いま~す!
私が1番の○○会で~す!」
 と、そこから毎度の点呼が始まる。


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