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第10章 偶然で幸運な巡り合せ
No,112 笑って?ナッキー♪
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【これは大学3年のお話】
ナッキーの話のつづき──
父親はナッキーが2歳になる前に亡くなったので、全く記憶にないと言うことだった。
当時新聞にも載った大きな事故の巻き添えを食ったそうで、それだけに保障もしっかりとなされ、母子三人、何とか暮らしてこれたとのこと。
自分を抱く父の写真を見てもピント来なくて、幼い頃はよその子が父親と遊ぶ様子を羨ましく思い、同性愛の自覚の前に、まず大人の男性に対する強い憧れを抱いていたとのこと。
初恋が小学校の男性教諭だった事は前にも聞いていたけれど、それ以降、胸がキュンとなるのはいつも優しげな大人の男性に対してだったと、ナッキーは言う。
母は事故の保障に頼らず、しっかりとした職業に就いて自分達兄弟を育ててくれたと感謝している。
こうして東京で大学生をやっていられるのも母親のお陰だから、せめて生活の足しにバイトぐらいは頑張らなくちゃと思っているとのこと。
あれれ、バイト代=宝塚のチケット代の僕とはえらい違いだ。申し訳ない……。
上京して直ぐに雑誌の文通欄を利用した。
そうして知り合った人に、二丁目のあの店 blue night を教えてもらった。実はナッキーも、二丁目ではあの店しか知らないらしい。
そしてナッキーは、その文通欄で知り合った人の話をしたがらないし、さらに blue night に一人で通っていた頃の話もしたがらない。
上京して4月──僕達が初めて会ったのが7月。その数ヵ月間に何があったのかを、僕は未だに知らない。
でも僕は、そんな事を無理に話させようとは思わない。話したがらないとうことは、当然それなりの理由があるはずだ。
ナッキーは語った。
「オレ、大人の人に幻想を抱いていたんだと思う。もっと大きくて温かくて、優しく包み込んでくれるようなイメージを勝手に想い込んでいたんだと思う。でも、知り合った人達はみんな、そんな感じじゃなかった」
「そうだね、それはそうだよ。ナッキーは父親のような愛を期待したのかも知れないけど、そもそも父親は息子に性愛は抱かないよね」
「そうなんだ。何だか思っていた感じと随分違って、大人の人達に幻滅していたところに理久が現れた。だからね、理久に想定外のドキドキを感じさせられてね、
オレ……理久を※.:*:・'°」
「て言うか、ナッキーさっきから(オレ)になってるよね。本来は自分のこと(オレ)って言ってた?」
「あれ、そうか?オレ、(オレ)って言ってた?あ、ホントだ。同じ鷹岡だからかなぁ?」
「そうだよね!俺も本来は(俺)。鷹岡では(僕)なんて子供か、それか余程かしこまった時にしか言わないよ」
「そうだね、東京来て(僕)なんてかしこまってた。……って、
理久にまたはぐらかされちゃった。オレは理久を.:*:・'°」
「え?なにが?」
「もういいよ」
何だか時を忘れて話しまくってるうち、暗くなってた。
もちろん、メインのクラシックの話も沢山したし、俺達の距離はすごく縮まった。
電話番号も交換した。
その日は外で一緒に夕食を楽しんで、ナッキーを駅まで送って行った。
※──────────※
俺達はそこから、掛け替えのない「友達付き合い」が始まったのだ。
ナッキーの事を誤解してたなって、初めて思った。
すぐ赤くなるのは怒っているんじゃなくて、恥ずかしがりやなのかも知れない。
口を尖らすのもそう。
目をそらすのもそう。
そう気が付いたら、ナッキーの全てが可愛くなった。
(ナッキーが大人好みでなければな~)
とにかくナッキーは恥ずかしがりや。
はにかんでる姿も可愛いけれど、もっと笑って?ナッキー♪
【鷹岡市は架空の地名です】
ナッキーの話のつづき──
父親はナッキーが2歳になる前に亡くなったので、全く記憶にないと言うことだった。
当時新聞にも載った大きな事故の巻き添えを食ったそうで、それだけに保障もしっかりとなされ、母子三人、何とか暮らしてこれたとのこと。
自分を抱く父の写真を見てもピント来なくて、幼い頃はよその子が父親と遊ぶ様子を羨ましく思い、同性愛の自覚の前に、まず大人の男性に対する強い憧れを抱いていたとのこと。
初恋が小学校の男性教諭だった事は前にも聞いていたけれど、それ以降、胸がキュンとなるのはいつも優しげな大人の男性に対してだったと、ナッキーは言う。
母は事故の保障に頼らず、しっかりとした職業に就いて自分達兄弟を育ててくれたと感謝している。
こうして東京で大学生をやっていられるのも母親のお陰だから、せめて生活の足しにバイトぐらいは頑張らなくちゃと思っているとのこと。
あれれ、バイト代=宝塚のチケット代の僕とはえらい違いだ。申し訳ない……。
上京して直ぐに雑誌の文通欄を利用した。
そうして知り合った人に、二丁目のあの店 blue night を教えてもらった。実はナッキーも、二丁目ではあの店しか知らないらしい。
そしてナッキーは、その文通欄で知り合った人の話をしたがらないし、さらに blue night に一人で通っていた頃の話もしたがらない。
上京して4月──僕達が初めて会ったのが7月。その数ヵ月間に何があったのかを、僕は未だに知らない。
でも僕は、そんな事を無理に話させようとは思わない。話したがらないとうことは、当然それなりの理由があるはずだ。
ナッキーは語った。
「オレ、大人の人に幻想を抱いていたんだと思う。もっと大きくて温かくて、優しく包み込んでくれるようなイメージを勝手に想い込んでいたんだと思う。でも、知り合った人達はみんな、そんな感じじゃなかった」
「そうだね、それはそうだよ。ナッキーは父親のような愛を期待したのかも知れないけど、そもそも父親は息子に性愛は抱かないよね」
「そうなんだ。何だか思っていた感じと随分違って、大人の人達に幻滅していたところに理久が現れた。だからね、理久に想定外のドキドキを感じさせられてね、
オレ……理久を※.:*:・'°」
「て言うか、ナッキーさっきから(オレ)になってるよね。本来は自分のこと(オレ)って言ってた?」
「あれ、そうか?オレ、(オレ)って言ってた?あ、ホントだ。同じ鷹岡だからかなぁ?」
「そうだよね!俺も本来は(俺)。鷹岡では(僕)なんて子供か、それか余程かしこまった時にしか言わないよ」
「そうだね、東京来て(僕)なんてかしこまってた。……って、
理久にまたはぐらかされちゃった。オレは理久を.:*:・'°」
「え?なにが?」
「もういいよ」
何だか時を忘れて話しまくってるうち、暗くなってた。
もちろん、メインのクラシックの話も沢山したし、俺達の距離はすごく縮まった。
電話番号も交換した。
その日は外で一緒に夕食を楽しんで、ナッキーを駅まで送って行った。
※──────────※
俺達はそこから、掛け替えのない「友達付き合い」が始まったのだ。
ナッキーの事を誤解してたなって、初めて思った。
すぐ赤くなるのは怒っているんじゃなくて、恥ずかしがりやなのかも知れない。
口を尖らすのもそう。
目をそらすのもそう。
そう気が付いたら、ナッキーの全てが可愛くなった。
(ナッキーが大人好みでなければな~)
とにかくナッキーは恥ずかしがりや。
はにかんでる姿も可愛いけれど、もっと笑って?ナッキー♪
【鷹岡市は架空の地名です】
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