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第11章 パラサイト奇談
No,121 彼にとって僕って何?
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【これは大学3年のお話】
それにしても、岡さんどころか奈保子先輩まで?
──サトシからはそんな女っ気、まるで感じなかった……!
僕たち三人の話し合いは完全に行き詰った。そして僕は「百年の恋も一瞬にしてさめる…」の心境だった。
「とにかく、僕はもう退散させてもらうよ。あとは女同士で良く話し合って下さい」
男の僕が、まさか恋愛を絡めた彼女たちと同列に並んで会話する訳にも行かなくて、もうその場を立ち去ろうとした時、岡さんが僕に追従した。
「歴野先輩、私もこのお話、もういいです。いくら奈保子先輩と言う彼女の存在を知らなかったとは言え、後からちょっかい出したのは私です。もう分かりました。
サトシの事は忘れます。ただ奈保子先輩に申し訳なかったと、そればかりです」
僕も岡さんには共感した。もうサトシの事なんてきれいさっぱり切った方がいい!
「そうか、じゃあ、今後は奈保子先輩お幸せに、と言うことで」
と、僕と岡さんが立ち去ろうとした時、ついに奈保子先輩も本音を吐いた。
「ちょっと待って!実はね、私もサトシとは何にも無いのよ」
と、ため息混じりに打ち明けてくれた。
「え…………?」
「はぁ………?」
「うん…………」
三人揃って絶句状態──。
そこから僕たちはぽつりぽつりと、三人それぞれの辻つま合せが始まった。
ここにその詳細を書くのも面倒だし、読まされる皆様もうんざりだろうから割愛するけど、驚くべきは、サトシの部屋のあれやこれや、ほとんど僕達三人が買い揃えていたと言う珍妙な事実。
そのひとつひとつを隠すでもなく誤魔化すでもなく、堂々と部屋中に広げているのだから、むしろ不自然さは感じなかった。
──そして例の、はっきりとしない不可解な微笑み。今となってはモナリザ以上に謎の笑みだ。
僕達三人はあえてその場で意思確認はしなかったけれど、どう考えてもサトシに上手に転がされていた感は拭えない。
──と言う訳で、僕達はその後、それぞれの判断でサトシから距離を取った。
別に三人で示し合せ、談合した訳ではないけれど、皆それぞれに「もしかして距離を取れば、サトシの方から自分の元へと来てくれるのではないか?」
──と期待していた節もある。
ことさら僕は「サトシが彼女達二人の手も握らなかった…」
との事実を、どうしても自分に都合良く考えてしまうのを否めなかった。
元はと言えば、サトシに同性愛を拒否する確固たる意思が感じられないからこそ、僕はずるずると1年間もサトシに引きずられて来たのだ。
が、結果は正に明らかだった。
僕が音信を絶てば、サトシの方から僕に来ることは無かった。
でも、だからと言ってこの一年間の切なる思いを、本人の本音も知らずに終わらせる事は出来なかった。
これが本当に最後の覚悟で、僕はサトシに対峙した。
「サトシ、この際本当の気持ちを聞かせて欲しい。奈保子先輩と岡さんと、どっちがサトシにとって彼女だったの?」
ここに至っても、女性二人が恋愛沙汰でしのぎを削っているところに、男の僕が同列に並ぶような聞き方は出来なかった。
「え……?別に……」
案の定な返答だ。
だったら僕も、少しは自分の事を聞いてもいいだろうか?
僕は恐る恐る聞いてみた。
「サトシは、僕の事を何だと思ってた?」
僕は、どうせきっと「いい人」とか「優しい先輩」とか、核心を逸らした曖昧な言い方をされるのだろうなと諦めていたのに、ところがその返答は、
「え……?別に……」
──────────だった。
(ああ!もうやめだ!)
「サトシの事は僕の方から切ってやった!」
そう自分に言い聞かせるのが、せめてもの意地だった!!
それにしても、岡さんどころか奈保子先輩まで?
──サトシからはそんな女っ気、まるで感じなかった……!
僕たち三人の話し合いは完全に行き詰った。そして僕は「百年の恋も一瞬にしてさめる…」の心境だった。
「とにかく、僕はもう退散させてもらうよ。あとは女同士で良く話し合って下さい」
男の僕が、まさか恋愛を絡めた彼女たちと同列に並んで会話する訳にも行かなくて、もうその場を立ち去ろうとした時、岡さんが僕に追従した。
「歴野先輩、私もこのお話、もういいです。いくら奈保子先輩と言う彼女の存在を知らなかったとは言え、後からちょっかい出したのは私です。もう分かりました。
サトシの事は忘れます。ただ奈保子先輩に申し訳なかったと、そればかりです」
僕も岡さんには共感した。もうサトシの事なんてきれいさっぱり切った方がいい!
「そうか、じゃあ、今後は奈保子先輩お幸せに、と言うことで」
と、僕と岡さんが立ち去ろうとした時、ついに奈保子先輩も本音を吐いた。
「ちょっと待って!実はね、私もサトシとは何にも無いのよ」
と、ため息混じりに打ち明けてくれた。
「え…………?」
「はぁ………?」
「うん…………」
三人揃って絶句状態──。
そこから僕たちはぽつりぽつりと、三人それぞれの辻つま合せが始まった。
ここにその詳細を書くのも面倒だし、読まされる皆様もうんざりだろうから割愛するけど、驚くべきは、サトシの部屋のあれやこれや、ほとんど僕達三人が買い揃えていたと言う珍妙な事実。
そのひとつひとつを隠すでもなく誤魔化すでもなく、堂々と部屋中に広げているのだから、むしろ不自然さは感じなかった。
──そして例の、はっきりとしない不可解な微笑み。今となってはモナリザ以上に謎の笑みだ。
僕達三人はあえてその場で意思確認はしなかったけれど、どう考えてもサトシに上手に転がされていた感は拭えない。
──と言う訳で、僕達はその後、それぞれの判断でサトシから距離を取った。
別に三人で示し合せ、談合した訳ではないけれど、皆それぞれに「もしかして距離を取れば、サトシの方から自分の元へと来てくれるのではないか?」
──と期待していた節もある。
ことさら僕は「サトシが彼女達二人の手も握らなかった…」
との事実を、どうしても自分に都合良く考えてしまうのを否めなかった。
元はと言えば、サトシに同性愛を拒否する確固たる意思が感じられないからこそ、僕はずるずると1年間もサトシに引きずられて来たのだ。
が、結果は正に明らかだった。
僕が音信を絶てば、サトシの方から僕に来ることは無かった。
でも、だからと言ってこの一年間の切なる思いを、本人の本音も知らずに終わらせる事は出来なかった。
これが本当に最後の覚悟で、僕はサトシに対峙した。
「サトシ、この際本当の気持ちを聞かせて欲しい。奈保子先輩と岡さんと、どっちがサトシにとって彼女だったの?」
ここに至っても、女性二人が恋愛沙汰でしのぎを削っているところに、男の僕が同列に並ぶような聞き方は出来なかった。
「え……?別に……」
案の定な返答だ。
だったら僕も、少しは自分の事を聞いてもいいだろうか?
僕は恐る恐る聞いてみた。
「サトシは、僕の事を何だと思ってた?」
僕は、どうせきっと「いい人」とか「優しい先輩」とか、核心を逸らした曖昧な言い方をされるのだろうなと諦めていたのに、ところがその返答は、
「え……?別に……」
──────────だった。
(ああ!もうやめだ!)
「サトシの事は僕の方から切ってやった!」
そう自分に言い聞かせるのが、せめてもの意地だった!!
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