128 / 283
第12章体育会は羨望の的だけど
No,127 えっ?理久は王子様?
しおりを挟む
【これは大学4年のお話】
浩一が両手で俺の腕を掴んだ。
「理久さん、自分と付き合ってください。理久さんが好きです。初めて見た時から」
「え?あ、あの……」
あまりの直球に俺の心臓がキュンと収縮した事は確かだった。
「初めて見た時の、あの王子様のような理久さんの姿に自分、完全に一目惚れなんです!」
──って、え…?
あ!ここの開店パーティ!
宝塚雪組の終演後に直で駆け付けて来たんだっけ!
そうか!あの男役もどきのキチガイ・ヅカスーツ姿か!
「理久さん、自分の周りには、あんな風に胸に薔薇の花を飾って似合う人なんて誰もいません!」
──って、は、恥ずかし!そりゃ普通いねぇだろうが!
終演後、顔馴染みのおば様が
「理久ちゃん似合うからこれあげる」って、小さな薔薇の造花をひとつ胸にさしてくれたっけ。
「ああ、あれには訳があるんだ!それに王子さまって、え?歌舞伎町のホストの間違いじゃなくて?」
俺は真っ赤になっていたと思う。
「理久さん、あ、あの……理久さんの部屋に連れて行ってもらえませんか?」
急展開だ!
「え?今、会ったばかりだよね?」
「ここじゃ人の目があって話しにくいし、もう直ぐ理久さんの仲間達も来ますよね?」
それはそうだ。
特に約束をしている訳ではないけれど、週末には何となく顔見知りが集まってわいわいやってる。多分ナッキーもやって来る。
(そうだな。断るにしてもちゃんと話して誠意を見せないと、今後この店にも顔を出しにくくなってしまう)
俺はケンちゃんに目配せして、浩一と共に店を出た。
店を一歩出ると空気が変わる。確かに話しやすい雰囲気にはなる。俺は極めて常識的なつもりのひと言を言った。
「どこかそのへんの喫茶店で話そうか?」
「え?理久さんの部屋に連れて行ってくれるんじゃないんですか?」
(え?!やっぱまだそこを押してくるか?!)
「あのね~いくら何でも今さっき
会ったばかりで部屋に連れ込むな
んて、俺はそう言う軽い事は…」
「自分、今夜は行き場がないんです!」
って「はぁ?!」と俺は目を丸くした。
事情はこうだ。
俺は当時、大学の運動部と言うものがよく分からなかったんだけど、浩一の大学のラグビー部は基本的には合宿所生活が強制らしく、例に漏れず浩一も入寮している。
1年の時は盆正月以外の外泊は容易に認められなかったけれど、2年生になり、ようやく月に何回か週末の外泊が許されるようになった。
明日は希少な休日で、今夜は外泊の許可を取っている。だから「フラッシュ」にも来れた。
浩一に取っては月に数回しかない、チャンスの夜だったと言う訳だ。
(なるほど、躍起にもなるかも)
いくらがっしりの強面でも、年下の子を路上で始発待ちさせる訳には行かない。
(部屋に入れても俺がしっかりしていればいい事だし)
と思ってしまった。
「いいよ。じゃ、俺んちに行こう」
俺のそのひと言を聞いて初めて浩一が笑顔をもらした。
まだ宵の口だったけど、二丁目は週末で賑わっている。俺達二人が並んで歩くとざわざわと多くの視線を感じた。
明らかに原因は浩一だ。
一緒に歩いてる俺は、羨望の眼差しなのか嫉妬の眼差しなのか、とにかくジロジロ見られてる。
(こいつ目立ち過ぎ!)
俺達はどんな風に見えるのだろう?
いかにもモテ筋の体育会系の猛者と、色白で細身のキャラ違いな二人。
(似合わないよな……)
それとも、明らかに年上に見える逞しい浩一がリードして、年下に見えるナヨッと生っ白い俺を引き連れているように見えるのかな?
(こりゃ、知った人に見られたら噂になっちゃうな)
──と思ったら案の定だったけれど、それはまた別の話し。
浩一が両手で俺の腕を掴んだ。
「理久さん、自分と付き合ってください。理久さんが好きです。初めて見た時から」
「え?あ、あの……」
あまりの直球に俺の心臓がキュンと収縮した事は確かだった。
「初めて見た時の、あの王子様のような理久さんの姿に自分、完全に一目惚れなんです!」
──って、え…?
あ!ここの開店パーティ!
宝塚雪組の終演後に直で駆け付けて来たんだっけ!
そうか!あの男役もどきのキチガイ・ヅカスーツ姿か!
「理久さん、自分の周りには、あんな風に胸に薔薇の花を飾って似合う人なんて誰もいません!」
──って、は、恥ずかし!そりゃ普通いねぇだろうが!
終演後、顔馴染みのおば様が
「理久ちゃん似合うからこれあげる」って、小さな薔薇の造花をひとつ胸にさしてくれたっけ。
「ああ、あれには訳があるんだ!それに王子さまって、え?歌舞伎町のホストの間違いじゃなくて?」
俺は真っ赤になっていたと思う。
「理久さん、あ、あの……理久さんの部屋に連れて行ってもらえませんか?」
急展開だ!
「え?今、会ったばかりだよね?」
「ここじゃ人の目があって話しにくいし、もう直ぐ理久さんの仲間達も来ますよね?」
それはそうだ。
特に約束をしている訳ではないけれど、週末には何となく顔見知りが集まってわいわいやってる。多分ナッキーもやって来る。
(そうだな。断るにしてもちゃんと話して誠意を見せないと、今後この店にも顔を出しにくくなってしまう)
俺はケンちゃんに目配せして、浩一と共に店を出た。
店を一歩出ると空気が変わる。確かに話しやすい雰囲気にはなる。俺は極めて常識的なつもりのひと言を言った。
「どこかそのへんの喫茶店で話そうか?」
「え?理久さんの部屋に連れて行ってくれるんじゃないんですか?」
(え?!やっぱまだそこを押してくるか?!)
「あのね~いくら何でも今さっき
会ったばかりで部屋に連れ込むな
んて、俺はそう言う軽い事は…」
「自分、今夜は行き場がないんです!」
って「はぁ?!」と俺は目を丸くした。
事情はこうだ。
俺は当時、大学の運動部と言うものがよく分からなかったんだけど、浩一の大学のラグビー部は基本的には合宿所生活が強制らしく、例に漏れず浩一も入寮している。
1年の時は盆正月以外の外泊は容易に認められなかったけれど、2年生になり、ようやく月に何回か週末の外泊が許されるようになった。
明日は希少な休日で、今夜は外泊の許可を取っている。だから「フラッシュ」にも来れた。
浩一に取っては月に数回しかない、チャンスの夜だったと言う訳だ。
(なるほど、躍起にもなるかも)
いくらがっしりの強面でも、年下の子を路上で始発待ちさせる訳には行かない。
(部屋に入れても俺がしっかりしていればいい事だし)
と思ってしまった。
「いいよ。じゃ、俺んちに行こう」
俺のそのひと言を聞いて初めて浩一が笑顔をもらした。
まだ宵の口だったけど、二丁目は週末で賑わっている。俺達二人が並んで歩くとざわざわと多くの視線を感じた。
明らかに原因は浩一だ。
一緒に歩いてる俺は、羨望の眼差しなのか嫉妬の眼差しなのか、とにかくジロジロ見られてる。
(こいつ目立ち過ぎ!)
俺達はどんな風に見えるのだろう?
いかにもモテ筋の体育会系の猛者と、色白で細身のキャラ違いな二人。
(似合わないよな……)
それとも、明らかに年上に見える逞しい浩一がリードして、年下に見えるナヨッと生っ白い俺を引き連れているように見えるのかな?
(こりゃ、知った人に見られたら噂になっちゃうな)
──と思ったら案の定だったけれど、それはまた別の話し。
応援ありがとうございます!
31
お気に入りに追加
30
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる