Another world currency

haya

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恋貨亭

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 宿から荷物を取りに行き、人通りの少ない路地へと向かう。


「【悪魔の借入】《デビルローン!!》」


  デビちゃんを呼び出す魔法を唱えると黒い靄が出てきて形を形成していく。
 いつも通り眠たそうタレ目をした可愛い悪魔が出てくる。まぁ精霊なんだけどね。


「ヨォ! オマエから呼び出すなんて珍しいナ。」


 俺がデビちゃんに用件を伝えようとするが、後ろにいた二人に阻まれる。


「「可愛いーーー!!」」


 二人は俺を乱暴に退けてデビちゃんに抱きつく。最近、二人からの扱いが雑なんじゃないかと少し傷つく。


「コラ! オマエラ抱きつくナ! 鬱陶しいゾ!」


 小さな体で無理やり剥がそうと頑張るが、テンションの上がった女子達には敵わない。


「ご主人様、この子は何ですか?」

「二人は初めてだな。精霊のデビちゃんだ。時々助けて貰ってる。」

「ふふ、そうですか。初めましてデビちゃんさん! リエルです。宜しくお願いしますね。」

「キナだよ。宜しくねデビデビー!」

「エェイ! 分かったから離セ!」


 話が進まなそうなので二人を離してデビちゃんを助ける。


「アイツらヤバいナ・・・目が怖かったゼ・・・ソレデ? 何の用ダ?」

「あぁそうそう! ちょっとお金を貸して欲しいんだ。 白金貨で15枚で良いんだ。」


 デビちゃんに頼むとデビちゃんは大きく溜め息を吐く。


「モウカ・・・この間、最初の借金が支払い終わったばっかりジャナイカ。貸すけど返済には気を付けロヨ。」


 文句を言いながらもデビちゃんは貸してくれた。『計画』を知ってるからこそ返済のアテがあるのを分かっているからだ。じゃなければ大金なんかを貸したりしないしな。


「いつもありがとうデビちゃん。デビちゃん?」


 財布に入金されたのを確認してデビちゃんにお礼をしようとしたらリエルの方を見ていた。


「? 私の顔がどうかしましたか?」


 ずっと見つめているデビちゃんを不思議に思いながらリエルが尋ねる。何となくだけどデビちゃんの目は少し悲しそうだ。


「スマナイナ・・・」

「えっ!? 何がですか? 何か謝ってもらうような事をデビちゃんさんにされましたか?」

「ソレハ・・・アッ! そうそう!馬鹿なご主人でスマナイナって事サ。」


 デビちゃんは理由を取ってつけたかのように返事をする。何も俺をディスりながらじゃなくても良いのに・・・


「いえいえ、いつも大事にしてくれてるので助かってます。」

「ソウカ・・・ソレは良かったナ・・・」


 笑顔で話すリエルとは対照にデビちゃんの表情は少し曇って見えた。


「(そういえば前もリエル達の方を見てたけど、何かあるのかな? と言ってもデビちゃんが素直に答える訳ないか・・・話してくれるのを待つかね。)」


 いつの日かの楽しみに取って置こうと思い、俺達はバーツさんが待っているのでデビちゃんと別れた。


 バーツさんに代金を支払い、建物の鍵を受け取る。
 まだ日も高いので調理器具やテーブルクロス等の必要な物を買いに行った。


「あ! そうだ二人の新しい服を買いに行かないとだな。」


 うっかり忘れるところで危なかった。
 二人は新しい服を買って貰えるのが分かって嬉しそうだ。やはり女性だから冒険者が着る用な服ではなく、可愛い服を着飾りたいのだろう。甲斐性が無いからガマンさせてしまっているが・・・


 服飾店に行き、オーダーメイドの服を頼む。オーダーメイドだけにメイド服だ。
 二人は採寸してもらうので店の奥に向かった。
 羊皮紙を二枚出し、自分が書いた服を見せる。お世辞にも上手とは言えないので店員さんが直してくれた。
 一枚は二人が着る用のデザインで、もう一枚は俺が着る用だ。
 この世界では服は大量生産などが出来ないから新品は値段がする。
 ましてや俺の考えてた服は作るのが手間みたいで一着の値段が金貨15枚もしてしまった。
 出来上がるのが3日後になったので後日受け取るとして服飾店を後にした。


 必要な物を買い揃えて俺達の店に戻り料理の試作を作る。
 料理が出来るまでの間、二人には開業の準備に入ってもらった。


「それで、どういった物を作るんですか?」


 リエルが買ってきたばかりの食器を出しながら話し掛けてきた。


「ん? あぁ、ほら。こっちの世界のご飯は味気無いのが多いからな。俺の世界の料理なら勝負できるんじゃないかと思ってな。前に二人とも美味しいと言ってたしな。」


 そう、この世界のご飯はあまり美味しくなかった。正確には美味しく無い訳ではないのだが、日本みたいに調味料が充実している訳では無いし、大雑把な味付けの物が多かった。
 それなら元の世界での料理なら十分商売になると思っての飲食店に決めたからだ。


 買ってきた材料で作った試作が出来たので二人に試食してもらう。メニューは長い独り暮らしで良く作ったやつだ。


「ちょっと二人とも試作が出来たから食べてみてくれ。」

「わー! 美味しそう!」

「そうですね。見た感じ肉料理みたいですけど・・・」

「あぁ、これはハンバーグと言って、俺の世界の有名な料理だ。使ってるのはオークとミノタウルスの合挽き肉だけどな。野菜も添え付けで少し入ってるがガマンして食べろよ。ほら冷めない内にどうぞ。」


 フォークとナイフを二人に渡すと我慢できなかったのか、急いで食べ始める。


「美味しい! こんな美味しいの食べた事ないよ!」

「それに上に掛かっているソースが芳醇な香りもして美味しいですね。」

デミグラスソースも気に入ってくれたようだ。
 二人からの評判は上々だったし、これならいけるかもな。


「それは良かった。他にも試食を作るから感想を頼む。」


 それからも俺の世界の料理を作り二人に食べてもらう。
 二人ともダイエットしないとと嘆いていたが知らないフリをする。


「さて、さっき食べてもらったメニューだが材料費は銀貨1枚くらいなんだけど価格は銀貨4枚くらいでいく。」

「えっ!それはちょっと高いのでは?」

リエルが驚くのも無理はない。銀貨4枚といったら普通の家庭なら3日分くらいの食費だ。
 材料費が1000円で売値は4000円というボッタクリだ。



「まぁそうだな。コンセプトはたまには珍しくて美味しい物を食べようだからな。そもそもこの街は金持ちが多いし、高級住宅街の近くでもあるから何とかなるだろう。」


 正直、全然お客さんが入らなかったらまた考えればいいしね。

「ご主人様がそう言うのでしたら・・・そういえば店の名前は何にするか決めたんですか?」

「特に考えていなかったな・・・恋金術士の開く店だから『恋貨亭』なんてどうだ? おい・・・ そのネーミングセンス無いなみたいな顔は止めてくれ・・・」

 二人とも微妙な顔をして作り笑顔だ。


「う、うん・・・良いんじゃないかな・・・」

「そ、そうね・・・ご主人様らしくて良いと思いますよ・・・」

「はぁ・・・まぁいいや。 そんじゃ、開店に向けて頑張りますかね。」
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