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料理人
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店をオープンしてから六日目、今日は店の店休日だ。
元の世界では完全週休2日制だったし、飲食店でガッツリ稼ぐつもりは無かったから今日と明日は休みにした。
「ご主人様、今日の予定はどうなさるのですか?」
リエルが朝食後のお茶を持って来ながら話し掛けてくる。
「あぁ。今日は新しく人を雇いに行こうと思う。さすがに3人じゃ店を回しきれないしね。」
忙しくてトイレぐらいしか行けなく、ろくに休憩も取れやしない。
日本にいた時の仕事よりよっぽどブラック企業になりつつある。よって人手不足解消は最優先事項だ。
「確かにそうですね・・・このままではお客様にも迷惑掛けてますし、良い考えだと思います。」
リエルも人を増やす事には大賛成だった。
キナとリエルは文句も言わずに良く働いてくれているので頭が上がらない。俺なら三日で辞表を出しているもんね。
「では募集を掛けるのでしたら冒険者ギルドへ向かうのですか?」
「いや、雇うと言っても普通の人じゃダメだなぁ。今回雇うのは奴隷の人だ。」
「ねぇねぇ、ご主人。なんで奴隷を雇うの? 普通に人を雇えば良いと思うんだけど?」
奴隷を雇う事に少し不満そうにキナが話す。
自分が奴隷だから思うところがあるのだろう。
「奴隷にするのは理由があって、奴隷には『命令』が出来るだろ? キナ達にも悪いけど今回は使わせてもらおうと思っている。」
俺がそう話すとキナは自分で体を抱きしめてモジモジし始めた。
「命令って・・・ご主人も男性だから女性に色々したいのは分かるけど・・・ちゃんと言ってくれれば命令なんかしなくても良いのに・・・」
「おい、何を考えてるか知らんが命令と言っても店のレシピを口外するなって事だぞ?」
店のメニューは俺の世界の料理の一部に過ぎないが、それでも模倣されたら少しは痛手になる。
人を雇えば金で買収される危険があるから奴隷を買うのが一番だと思ったからだ。
「あはは・・・そうなんだ・・・ボクはてっきりゴニョゴニョ・・・」
「はぁ・・・キナが俺の事をどう見ているか良く分かったよ・・・後で一度話そうか・・・」
「でもそれだったら買う奴隷は男の人が良いなぁ。女の人だと心配かも・・・」
「そう言われてもなぁ。今回、俺が欲しいのは【料理】スキルを持った人材なんだよ。基本的に料理人は男性が多いから男性のが可能性が高いかもな。」
キナに理由を説明して納得してもらう。
その後、キナとリエルを連れて三人で街に出掛けた。
「ここが奴隷商か・・・何々、バーツ奴隷商館って書いてあるな。」
バーツ商会の店舗だろうか? だとしたらよっぽど縁があるなぁと思いながら商館の扉を叩いた。
店の中からは男性の店員が出てきたので希望の【料理】スキルを持つ奴隷を頼んだ。
「お待たせしました。こちらの人族男性がご希望の奴隷になります。」
そう言われ店員はみすぼらしいボロを着た中年男性を連れてきた。年は40歳くらいだろうか?衛生環境が良くないのか身体中が薄汚れていて分かり辛かった。
「こちらは人族なので少々お値段が張り金貨400枚になります。宜しいでしょうか?」
店員はステータスを表示する魂鑑石を見せてくる。特に栄養失調気味なところ以外は問題なかったので金貨400枚支払い奴隷を購入した。
ちなみに【料理】スキルは5と高めだった。
「ご主人様、私の名前はウォンズと申します。以後、宜しくお願い致します。」
「ユウジです。宜しくウォンズさん。こっちの二人はキナにリエルです。二人も同じく奴隷ですが仲良くしてあげて下さい。」
「分かりました。ですがユウジ様。私は奴隷ですので敬語はお止め下さると助かります。」
「流石に年上相手は気が引けますが・・・分かった。ウォンズがそう言うならそうするよ。」
ウォンズの申し出を受け入れ俺達は奴隷商を後にし、 ウォンズの仕事道具を買ってから店に戻って行く。
「この道は・・・まさか・・・」
ウォンズは何やら呟きながら考えているが、その顔からは動揺らしきものが窺える。
「さぁ、ここが俺達の店でウォンズに働いてもらう『恋貨亭』だ!」
俺がそう言うとウォンズはいきなり泣きながら崩れ落ちる。
「お、おい!? ウォンズ、どうしたんだ!?」
膝と手を地面に手をつけながら泣いているウォンズに近寄り話し掛ける。
しかし、大声を上げながら泣いているウォンズはこちらの問いに答える事が出来なかった。
キナ達に手伝ってもらいながらウォンズを支え歩かせ、店へと入っていった。
「すいませんユウジ様。お恥ずかしい所をお見せしました。」
リエルに淹れてもらったお茶を飲みながらウォンズはふーっと息をつける。
「それは構わないが、急に泣き出すからビックリしたぞ・・・ 良ければ訳があるなら話してくれないか?」
ウォンズに尋ねると意を決したような顔をして話し始めた。
「分かりました。 実は昔この店は私が経営していました。私には妻と娘がいたので、二人も手伝ってくれてそれなりに繁盛していました。」
ウォンズはお茶を一口飲み、口を潤せて話を続ける。
「そんなある日、バーツ商会の会長が店にやってきました。飲食店を始めたいので立地的にも優れていて繁盛しているこの店を売って欲しいと言いました。勿論、この店は家族の宝であり絆でもあるから売れないと私は断りました。それからです・・・」
神妙な顔をしてウォンズは続ける。
「バーツ商会からの嫌がらせが始まりました。商会の人間を使い料理に虫を入れたりして他の客の前で騒いだり、街で悪評を流していたり、店の壁には落書きしたりなどを。それだけではありません、根回しをして食材の仕入れが出来ないようにしたりなどの嫌がらせが続きました。そして妻は心労で体を壊し、帰らぬ人になりました。その時点で店の維持費や妻の治療費や生活費で少しの借金がありました。私は店を畳もうとしましたが、娘は店だけは家族の絆だから残して欲しいと訴え、自ら身売りをしました。そんな家族の犠牲を払ったにも関わらず私は店を維持する事が出来ませんでした・・・そして借金を払えない私は奴隷になったのです。」
ウォンズは両目に涙を溜めながら悔しそうに両手を強く握り締める。
「私は馬鹿だ! 店なんかまた何処かで始めれば良いのに意地になってしまって! そのせいで全てを失い、無くしてから後悔するだなんて!」
そう言ってウォンズはテーブルに顔を沈めて泣き続ける。
少し休ませようと、キナとリエルに頼み、二階のウォンズ用の部屋に連れていってもらった。
「ふぅ、思ったよりヘビーな話しだったな・・・」
一気に疲れたなぁと思い、俺もリエルに淹れてもらっていたお茶を啜る。
「ご主人様、ウォンズさんを部屋に運んできました。」
リエルとキナが戻ってきた。俺は二人にお疲れ様と声を掛ける。
「おじちゃん、なんか可哀想だったね・・・」
いつも元気なキナも流石にシュンとなっている。自分も家族を失っているから思う所があるのだろう。
俺達にはウォンズが少しでも元気になってくれればと願うしかなかったのだった。
元の世界では完全週休2日制だったし、飲食店でガッツリ稼ぐつもりは無かったから今日と明日は休みにした。
「ご主人様、今日の予定はどうなさるのですか?」
リエルが朝食後のお茶を持って来ながら話し掛けてくる。
「あぁ。今日は新しく人を雇いに行こうと思う。さすがに3人じゃ店を回しきれないしね。」
忙しくてトイレぐらいしか行けなく、ろくに休憩も取れやしない。
日本にいた時の仕事よりよっぽどブラック企業になりつつある。よって人手不足解消は最優先事項だ。
「確かにそうですね・・・このままではお客様にも迷惑掛けてますし、良い考えだと思います。」
リエルも人を増やす事には大賛成だった。
キナとリエルは文句も言わずに良く働いてくれているので頭が上がらない。俺なら三日で辞表を出しているもんね。
「では募集を掛けるのでしたら冒険者ギルドへ向かうのですか?」
「いや、雇うと言っても普通の人じゃダメだなぁ。今回雇うのは奴隷の人だ。」
「ねぇねぇ、ご主人。なんで奴隷を雇うの? 普通に人を雇えば良いと思うんだけど?」
奴隷を雇う事に少し不満そうにキナが話す。
自分が奴隷だから思うところがあるのだろう。
「奴隷にするのは理由があって、奴隷には『命令』が出来るだろ? キナ達にも悪いけど今回は使わせてもらおうと思っている。」
俺がそう話すとキナは自分で体を抱きしめてモジモジし始めた。
「命令って・・・ご主人も男性だから女性に色々したいのは分かるけど・・・ちゃんと言ってくれれば命令なんかしなくても良いのに・・・」
「おい、何を考えてるか知らんが命令と言っても店のレシピを口外するなって事だぞ?」
店のメニューは俺の世界の料理の一部に過ぎないが、それでも模倣されたら少しは痛手になる。
人を雇えば金で買収される危険があるから奴隷を買うのが一番だと思ったからだ。
「あはは・・・そうなんだ・・・ボクはてっきりゴニョゴニョ・・・」
「はぁ・・・キナが俺の事をどう見ているか良く分かったよ・・・後で一度話そうか・・・」
「でもそれだったら買う奴隷は男の人が良いなぁ。女の人だと心配かも・・・」
「そう言われてもなぁ。今回、俺が欲しいのは【料理】スキルを持った人材なんだよ。基本的に料理人は男性が多いから男性のが可能性が高いかもな。」
キナに理由を説明して納得してもらう。
その後、キナとリエルを連れて三人で街に出掛けた。
「ここが奴隷商か・・・何々、バーツ奴隷商館って書いてあるな。」
バーツ商会の店舗だろうか? だとしたらよっぽど縁があるなぁと思いながら商館の扉を叩いた。
店の中からは男性の店員が出てきたので希望の【料理】スキルを持つ奴隷を頼んだ。
「お待たせしました。こちらの人族男性がご希望の奴隷になります。」
そう言われ店員はみすぼらしいボロを着た中年男性を連れてきた。年は40歳くらいだろうか?衛生環境が良くないのか身体中が薄汚れていて分かり辛かった。
「こちらは人族なので少々お値段が張り金貨400枚になります。宜しいでしょうか?」
店員はステータスを表示する魂鑑石を見せてくる。特に栄養失調気味なところ以外は問題なかったので金貨400枚支払い奴隷を購入した。
ちなみに【料理】スキルは5と高めだった。
「ご主人様、私の名前はウォンズと申します。以後、宜しくお願い致します。」
「ユウジです。宜しくウォンズさん。こっちの二人はキナにリエルです。二人も同じく奴隷ですが仲良くしてあげて下さい。」
「分かりました。ですがユウジ様。私は奴隷ですので敬語はお止め下さると助かります。」
「流石に年上相手は気が引けますが・・・分かった。ウォンズがそう言うならそうするよ。」
ウォンズの申し出を受け入れ俺達は奴隷商を後にし、 ウォンズの仕事道具を買ってから店に戻って行く。
「この道は・・・まさか・・・」
ウォンズは何やら呟きながら考えているが、その顔からは動揺らしきものが窺える。
「さぁ、ここが俺達の店でウォンズに働いてもらう『恋貨亭』だ!」
俺がそう言うとウォンズはいきなり泣きながら崩れ落ちる。
「お、おい!? ウォンズ、どうしたんだ!?」
膝と手を地面に手をつけながら泣いているウォンズに近寄り話し掛ける。
しかし、大声を上げながら泣いているウォンズはこちらの問いに答える事が出来なかった。
キナ達に手伝ってもらいながらウォンズを支え歩かせ、店へと入っていった。
「すいませんユウジ様。お恥ずかしい所をお見せしました。」
リエルに淹れてもらったお茶を飲みながらウォンズはふーっと息をつける。
「それは構わないが、急に泣き出すからビックリしたぞ・・・ 良ければ訳があるなら話してくれないか?」
ウォンズに尋ねると意を決したような顔をして話し始めた。
「分かりました。 実は昔この店は私が経営していました。私には妻と娘がいたので、二人も手伝ってくれてそれなりに繁盛していました。」
ウォンズはお茶を一口飲み、口を潤せて話を続ける。
「そんなある日、バーツ商会の会長が店にやってきました。飲食店を始めたいので立地的にも優れていて繁盛しているこの店を売って欲しいと言いました。勿論、この店は家族の宝であり絆でもあるから売れないと私は断りました。それからです・・・」
神妙な顔をしてウォンズは続ける。
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