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第四部
こどものひみつ
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⚠︎閲覧自己責任・胸糞表現注意
「もうそろそろ、かすかの十五歳の誕生日だね。ふふ……かすか。ーー今年のプレゼントは喜んでくれるかなあ?」
ゆきは、私のお腹をネグリジェ越しから撫でる。私の部屋に来たゆきは、ベッドの上に座る私を優しく微笑み返した。私のお腹は日に日に大きくなって行く。身重という、体の中で私生活は徐々にし辛くなって行った。
「ーー男の子かな? 女の子かな?」
ゆきは至極楽しそうに、歌うように私のお腹の中にいる子へ話し掛ける。
私が解任するまで、ゆきは、注射器で精液を私の体内に入れた。毎晩、毎晩。
私はもう、全てを諦めていて、暴れる事はしなかった。ひたすらにゆきの命令を受け入れるしか出来なかったのである。
瓶に入った精液を私に見せるなり、ゆきはこう笑顔で言ったのだ。
「ーーかすかの精液だよ」
♡
また別の日である昼下がり。私は、ネグリジェ姿のまま、窓際に立って窓の外を見ていた。鬱屈とした気持ちは青空を見ていると幾分か気持ちが晴れたからである。
今日は、かすかの誕生日だった。正直、お祝いをしたかった。かすかには過去、あんな酷い事をされたけれど。ゆきから事情を聞いた私は、かすかの事が憎めなかった。私は、かすかの事が好きなのかは分からない。不器用だけど、本当は思い遣りがあって、優しい人なのだという事は知っていた。あの日、雷で怖がって震えている私を受け入れてくれて、添い寝をしてくれた夜、手を繋いでくれた時の記憶は印象に残り続けていたからである。
「?」
ドタバタと乱雑な足音がした。近付いて来る足音。勢い良く部屋の扉が開かれて驚いて振り返る。ノックも無しに突如、乱入して来た人間は。ーーかすかだった。
かすかは、呼吸を乱しながら、私の顔とお腹を見るなり、目をぎゅっと瞑り、痛ましそうな表情をする。かすかは、ゆきから全ての事情を聞いたのだと思った。
「ご、めんなさい……。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさいっ……!」
かすかは、床に手を付いて祈るように土下座をして謝る。かすかは何も悪い事をしていないのに。ーー何故、謝るのか? と思う。私は、かすかに歩み寄るとかすかの肩に手を置いた。
かすかは、下げた頭を上げて私の顔を伺う。私はかすかを静かに抱き締めた。おずおずとかすかも私を抱き締め返してくれた。かすかの心音が聞こえて来る。一定のリズムが私の心を落ち着かせた。
数ヶ月後、私は無事、出産した。とても元気な女の子だった。出産に立ち合わせたかすかは、この子を「ひより」と名付けた。ひよりは、かすかと私から引き離され、使用人宿舎で育てられる事となる。表向きはゆきの友人のジャムの養子となった。
それっきり、私はひよりとは会っていない。ひよりの事が気掛かりだったけれど、きっと使用人頭のちとみさんがひよりを守ってくれるだろうと思った。優しい子に育ってくれればいいなと思う。母親だけど、私は何も出来ない。ーーだから、祈るしか手段は残されていなかった。
ひよりを抱き寄せて、哺乳瓶でミルクをあげるかすかの姿が忘れられなかった。凄く凄く寂しそうで痛ましそうな顔をしてたかすか。私は、かすかの事を抱き締めたかった。だけど、疲弊した体はそれが出来なくて。ひよりを抱っこしたかすかが退室する後ろ姿だけが鮮明に私の頭に残り続けていた。
ーーひよりに会いたい。
切実にそう思う。だけど、その願いは無情にも訪れる事はなかった。
「もうそろそろ、かすかの十五歳の誕生日だね。ふふ……かすか。ーー今年のプレゼントは喜んでくれるかなあ?」
ゆきは、私のお腹をネグリジェ越しから撫でる。私の部屋に来たゆきは、ベッドの上に座る私を優しく微笑み返した。私のお腹は日に日に大きくなって行く。身重という、体の中で私生活は徐々にし辛くなって行った。
「ーー男の子かな? 女の子かな?」
ゆきは至極楽しそうに、歌うように私のお腹の中にいる子へ話し掛ける。
私が解任するまで、ゆきは、注射器で精液を私の体内に入れた。毎晩、毎晩。
私はもう、全てを諦めていて、暴れる事はしなかった。ひたすらにゆきの命令を受け入れるしか出来なかったのである。
瓶に入った精液を私に見せるなり、ゆきはこう笑顔で言ったのだ。
「ーーかすかの精液だよ」
♡
また別の日である昼下がり。私は、ネグリジェ姿のまま、窓際に立って窓の外を見ていた。鬱屈とした気持ちは青空を見ていると幾分か気持ちが晴れたからである。
今日は、かすかの誕生日だった。正直、お祝いをしたかった。かすかには過去、あんな酷い事をされたけれど。ゆきから事情を聞いた私は、かすかの事が憎めなかった。私は、かすかの事が好きなのかは分からない。不器用だけど、本当は思い遣りがあって、優しい人なのだという事は知っていた。あの日、雷で怖がって震えている私を受け入れてくれて、添い寝をしてくれた夜、手を繋いでくれた時の記憶は印象に残り続けていたからである。
「?」
ドタバタと乱雑な足音がした。近付いて来る足音。勢い良く部屋の扉が開かれて驚いて振り返る。ノックも無しに突如、乱入して来た人間は。ーーかすかだった。
かすかは、呼吸を乱しながら、私の顔とお腹を見るなり、目をぎゅっと瞑り、痛ましそうな表情をする。かすかは、ゆきから全ての事情を聞いたのだと思った。
「ご、めんなさい……。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさいっ……!」
かすかは、床に手を付いて祈るように土下座をして謝る。かすかは何も悪い事をしていないのに。ーー何故、謝るのか? と思う。私は、かすかに歩み寄るとかすかの肩に手を置いた。
かすかは、下げた頭を上げて私の顔を伺う。私はかすかを静かに抱き締めた。おずおずとかすかも私を抱き締め返してくれた。かすかの心音が聞こえて来る。一定のリズムが私の心を落ち着かせた。
数ヶ月後、私は無事、出産した。とても元気な女の子だった。出産に立ち合わせたかすかは、この子を「ひより」と名付けた。ひよりは、かすかと私から引き離され、使用人宿舎で育てられる事となる。表向きはゆきの友人のジャムの養子となった。
それっきり、私はひよりとは会っていない。ひよりの事が気掛かりだったけれど、きっと使用人頭のちとみさんがひよりを守ってくれるだろうと思った。優しい子に育ってくれればいいなと思う。母親だけど、私は何も出来ない。ーーだから、祈るしか手段は残されていなかった。
ひよりを抱き寄せて、哺乳瓶でミルクをあげるかすかの姿が忘れられなかった。凄く凄く寂しそうで痛ましそうな顔をしてたかすか。私は、かすかの事を抱き締めたかった。だけど、疲弊した体はそれが出来なくて。ひよりを抱っこしたかすかが退室する後ろ姿だけが鮮明に私の頭に残り続けていた。
ーーひよりに会いたい。
切実にそう思う。だけど、その願いは無情にも訪れる事はなかった。
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