お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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幼少期

アンジェリカの企み

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 私は、アンジェリカ・フォン・グランツリッヒ。
 イーサント国の正室である。
 夫であるイグナーツは、物凄くクズで馬鹿である。
 寵姫であるマリアンヌは、金食い虫のゲス女だ。
 その二人の間に生まれた子がアルベルトなのだが、これまた両親の血を引いて顔だけの傲慢なアホに育った。
 私の人生は、七歳の婚約から色々とケチがついて回った。
 昔から女遊びの酷い馬鹿が、学生時代に尻軽女に引っかかり一時は私と婚約破棄して正室にと妄言を宣った過去がある。
 イグナーツの両親は、非常に真面目で尊敬できる方々だった。
 しかし、子育てには完全に失敗した模様で馬鹿の代わりに治世が出来る者を探し見初められたのが私である。
 顔だけは良いので、一目惚れしましたとも。
 それすら黒歴史の一ページを刻んでいる。
 甘言に流される馬鹿達の周りには、それを利用しようとする蛆虫が集ってくる。
 それを一掃するには、私には発言力が弱かった。
 どうしても、後継者を生んだマリアンヌの方に分があったのだ。
 イグナーツとマリアンヌの性格をしっかり受け継いだアルベルトを矯正するのは無理と悟り、アングロサクソン家が動き出すのを戦々恐々と見守っていた。
 アングロサクソン家は、王家に次ぐ爵位を持ち王位継承権を有している。
 王家が道を誤った時に、粛清し王位を継ぐ者と王妃教育の時に習っていた。
 このまま行けば、確実に私自身も断罪されるだろう。
 イグナーツの尻を叩き、マリアンヌの浪費を徹底的に抑え、アルベルトには厳しい教師を付けたのだが全部裏目に出て頭を抱えていた時だった。
 アングロサクソン家の娘が、大精霊と契約をしたと報告が上がった。
 精霊と契約しただけでも聖女に相応しいのだが、それが大精霊ともなると上げ鴆据え膳での対応をしなければならないのだが、イグナーツは何を考えたのかアルベルトの嫁にすると言い出した。
 これには、アングロサクソン当主の顔が渋いものになった。
 誰だって可愛い娘を無能な男のもとに送りたくはないだろう。
 私も国内のパワーバランスを考えた上で、それは止した方が良いと進言したが無視をされた。
 アルベルトの婚約も本来なら、三賢者・イグナーツ・私の意見が一致した女性を指名する。
 協議もせず思い付きで命令を出してしまった以上は、前例が出来た。
 前例が出来てしまえば、イグナーツはこの先思い付きで勝手に命令を出し国を食いつぶすだろう。
 イグナーツはマリアンヌとイチャ付くことしか頭になく、イグナーツが本来するべき仕事も私がやり、決済が必要な書類にサインだけするという形が出来上がってしまった。
 逃亡したいと何度思ったことだろう。
 逃げたところで帰る場所は無い。
 王宮ですら信の置ける者は限られており、心が疲弊していくのが分かる。
 気が狂いそうになる毎日に終止符を打ったのは、他でもないリリアンだった。
 私が手配した腹心であるエミルを王妃教育の師として使わせたら、リリアンから貴重な物が送り届けられるようになった。
 化粧品から趣向品と幅広い。
 最初は何を考えているのかエミルに注意して見張るように頼んでいたが、彼女もアルベルトに対し早々に見切りをつけており、世継ぎを産めと遠回しに催促してきた。
 リリアン経由で届く贈り物は、全て私のみに渡すという徹底的な態度を取った。
 イグナーツやアルベルトが何を言っても、彼女は王妃以外に渡す気はないと突っぱねたのだ。
 たった六歳の子供が、先を読んで行動する様に私は彼女こそ王座に相応しいのではないかと思った。
 リリアンの助力もあり、イグナーツの心が私へと傾いてきているのも実感している。
 その結果、懐妊に至った。
 男の子であればリリアンの婚約者にすれば良いし、娘であるならばリリアンを補佐として臣下に下って貰うのも悪くはない。
 彼女自身、アルベルトとの婚約を望んでいないのだ。
 彼女を手放すのは惜しいが、アルベルトにくれてやるのは勿体ない。
「……まずは、この子をどこへ出しても良いように徹底的に教育を施さねばならないわねぇ」
 膨らんだ腹をさすりながら、私は薄く笑みを浮かべていた。
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