お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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幼少期

ガス抜きは必要なので誘い受けしてみました

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 領地に戻って一ヶ月が過ぎた。
 仕事と王妃教育にアルベルトの勉強に付きっ切りになって、天使たちとのイチャイチャパラダイス計画は破綻している。
 アルベルトは相変わらず傲慢で怠惰だが、興味を持つと自発的に勉強にのめり込むタイプだった。
 せめて初等部で習う部分は覚えて帰って貰いたいので、ゲームや漫画本で勉強させた。
 映写機があれば学習の幅も職種も増えるのだが、いかせん技術がないのが辛いところではある。
 魔法の授業は、実技一切なしの講義だったこともあり相当鬱憤が溜まっていると護衛から報告が上がり、本日は久々に訓練場を使っての訓練をすることにした。
 この一ヶ月、我が家の従業員達に対し数々の暴言が積もりに積もっている。
 キッチリ回収させて頂きます。
「アルベルト様、本日は訓練場にて魔法の訓練をしようと思いますが如何なさいますか?」
「やっとか。毎日、神言しんごんの書き取りばかりさせられて飽き飽きしていたところだ。勿論、異論はない」
「では、汚れても良い恰好で訓練場へ向かって下さいませ。わたくしも着替えて参ります」
 私は、それだけ言い残し自室に戻った。
 相変わらずベッドの上で本を読んでいるファーセリアに声を掛ける。
「ファーセリア、これから馬鹿王子と魔法の訓練をするんだけど来る?」
 ピクッと身体を揺らし、ファーセリアは本 ら顔を上げた。
「アレを燃やして良い口実が出来るのは愉快なことだな」
「馬鹿が火魔法を使えばの話だからね」
「分かっておるわ。しかし、魔法を使わせないようにしていただろう。何故、急に魔法の訓練をすると言い出したのだ?」
 ファーセリアの言葉に、私はニヤァと笑う。
「この一ヶ月で吐かれた暴言の数々に対する報復と、実力の差を見せつけるためよ」
 攻撃魔法はコントロールが難しいので使えないが、生活魔法や防御系の魔法なら問題はない。
「お前のその笑みは、良からぬことを考えている時に出ているから気を付けた方が良いぞ」
 ファーセリアの指摘に、私は慌てて顔を触りいつもの能面に戻す。
 乗馬用の服に着替え、靴もパンプスから乗馬靴に替える。
 これで鞭があれば、アルベルトを馬に見立てて鞭を振るうのだが出来ないのが残念だ。
「ファーセリア、アルベルトが何を言っても喋らないで。話す鳥なんて知ったら、上から目線で寄こせと言ってくるわ」
「その時は燃やせば良かろう」
「貴方が良くても、国はアルベルトに金を注ぎ込んでいるのよ。それを返すまで死なれたら困るわ。お金が勿体ないじゃない。後、魔法ではなく物理攻撃の方が気持ち的に気分は晴れるわよ」
 教育的指導の一環としてアルベルトの顔を引っ叩いている経験から、小言や魔法よりも殴った方が心が軽くなる度合いが違う。
 アルベルトというストレス源が、最低十年は付きまとうことになる。
 あの時、決闘を受けた私の判断は間違ってなかったと信じている。
「愛し子が言うのであれば、一度気が済むまで突いてみよう」
 ファーセリアは、先に行くと窓から羽ばたき訓練場に行ってしまった。
 アルベルトと顔を合わせるのは、人間の私だけでなく精霊もイラッと来るものがあるのだろうか。
 私は自分の恰好を最終確認してから、自室を後にした。


 ユリアを伴って訓練場に着くと、先についていたアルベルトが仁王立ちで待っていた。
「遅い! 俺を待たせるな、ノロマめ」
「女性の支度は大変と毎回申し上げるのも疲れましたわ。訓練の後に身を持って実感して下されば、世の女性達がいかに大変かご理解出来るでしょう。ユリア、わたくしの部屋から一番動き辛いドレスを用意して頂戴。着付はレイモンドに任せなさい」
「畏まりました。お嬢様、失礼します」
 ユリアは、恭しく頭を下げて颯爽と訓練場を後にした。
 これで訓練後は、アルベルトの女装が確定した。
 写真をガンガン取って、強請るネタにしてやる。
「殿下、魔法の勉強を始めましょう」
 アルベルトに向き直って言うと、
「俺が勝てば、街に行かせろ」
「宜しくてよ。わたくしが勝ったら、暴言を吐いた者達に謝罪行脚をして下さいませ。勿論、土下座でお願いしますわ」
 笑みを浮かべながら土下座の謝罪行脚をして貰うと告げると怖気づいたのか後退りしている。
「勝つ自信がないなら、賭け事はお止めになった方が宜しくてよ」
「俺が負けるわけない!」
「一回負けてますのに、凄い自信ですわね。大いに結構。わたくし、魔力コントロールが不十分なので攻撃魔法は使いませんわ」
「万が一使ったら、その時はお前の負けだからな」
「殿下ではあるまいし、そんな姑息な手は使いません」
 決闘事件のことを持ちだすと、顔を真っ赤にして地団太を踏んでいる。
「キース、試合開始の合図をお願い」
「分かりました。では、始め!」
 アルベルトの口が動く前に、間合いを詰めて顔面を蹴り飛ばした。
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