お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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幼少期

精霊に慈悲は無い

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 最初の一撃で、ひっくり返るアルベルトに追い打ちをかけるように足を振り上げた。
「ストーンウォール」
 土の壁を作ろうとするが、地の精霊達が可愛い声で『圧し潰せ~』と土の壁はアルベルトの首から下の身体を覆い動きを封じている。
 地面に生首が生えたみたいだ。
 そこにいた誰もがブフッと噴き出す。
「ふふふっ……アルベルト様、だ…だ大丈夫ですか?」
 肩を震わせながら、顔面から鼻血を吹き出し首だけ出ている状態のアルベルトに安否を確認してみる。
「大丈夫なわけあるか! いきなり蹴るのは反則だ!!」
「別に体術を使ってはいけないというルールはありせんよ。試合のルールの確認を怠ったアルベルト様が悪いのですよ。土の壁を作るつもりが、埋まって自滅って…ふはっ…くくっ……降参しま、すか…?」
 笑いを必死に堪えながら確認すると、怪鳥の如く喚いている。
「う、うるさい!! さっさと俺をここから出せ!」
「いや、勝負中ですよ。出すのは構いませんが、試合放棄で私の不戦勝になりますよ」
「このへらず口めっ! ウォーターボール!!」
 巨大な水の玉がアルベルトの頭上に出来上がる。
 これは退避しないと、私まで濡れネズミになってしまう。
 水の精霊達が、「水攻めだ~」と人の魔力を遠慮なく吸って直系1mの球体をアルベルトにぶつけている。
 水球は、ズジャーッと地面を抉っていた。
 地面は、水でデロデロになっている。
 勿論、アルベルトも全身泥まみれだ。
 地の精霊が水の精霊に「折角捕まえたのに」と猛抗議し、水の精霊は素知らぬ顔をしソッポを向いている。
「殿下、大丈夫ですか? 生きてますか?」
 声を掛けてみるが、気を失っているのかピクリとも動かない。
「うーん、これは殿下の気絶ということで私の勝ちですかね?」
 チラッと審判を務めているキースを見ると頷いている。
「勝者リリアン様」
 勝敗も決したし、伸びているアルベルトを回収して女装させようと思っていたら、ファーセリアが文句を言って来た。
「愛し子、これでは全然つまらぬ。我の出番がないではないか」
「殿下が、火魔法を使わず気絶したので私に文句を言われても困りますよ。前の決闘の時、水系統の魔法しか使ってませんでしたわ。もしかすると、火魔法の素質は皆無なのかもしれませんわね」
 決闘していた時に使った魔法は、ウォーターボールとアイスショットの二つだけ。
 威力もフレイムガードで溶けてしまうくらい貧弱でお粗末だった。
 適性外の魔法でも発動は可能だ。
 しかし、威力は格段に落ちる。
 最悪、魔力だけ消費して不発ということもある。
 アルベルトの適性魔法については、既に調べられているだろうが、その情報は父ならば握っているだろう。
「折角、あの愚王と同じように炙ってやろうと思ったのに非常につまらぬ」
「こればかりは仕方がないのでは?」
 個人的にアルベルトがファイアボールを使ってくれれば、全身炙られるわけで髪も縮れ毛になってしまうだろう。
 そうなったら、綺麗に剃髪して大笑い出来るのにとは思わなくもない。
「……何も出来んのは癪に障る。よし、突こう」
 そう言うや否や、ファーセリアはアルベルトの身体を突いた。
 私の忠告通り、服に隠れる場所を狙って突いている。
 最初は意識が無かったアルベルトも、突かれる痛みを感じ次第にうめき声を上げるようになった。
「ファーセリア、そろそろ良いんじゃないかしら?」
「我は、まだやり足りないぞ」
「いや、流石に血が出始めてるから勘弁してあげて。どうせやるなら、起きていた時の方が面白いでしょう」
 気絶している人間を甚振ったところで、肉体にしかダメージを与えられない。
 やはり、心身ともに疲弊するような精神を抉り削り取りに行く勢いで甚振らないと無意味だ。
 それを懇切丁寧に力説すると、ファーセリアも納得したのか大人しく引いてくれた。
「キース、それを風呂にぶち込んでから治癒師にヒールをかけて貰って」
「お嬢様、良いんですか? 傷のことを聞かれますよ?」
「良いのよ。野鳥が、群がって突いたと言えば問題ないわ。だって、この家で鳥なんて飼ってないもの」
 居るのは、鳥に擬態したファーセリアだけ。
 精霊だし、虚偽の申告をしたわけではない。
「納得されるでしょうか?」
「してもしなくても、ファーセリアに突かれる運命は変わらないわ。さあ、その汚いのを風呂にぶち込んできて頂戴。ヒールで回復したら、ユリアが選んだドレスを着て土下座で謝罪行脚をして貰う事になってるから。くれぐれも逃がさないでね。レイモンドが着付をしてくれるから、私は自室に戻るので準備が出来たら呼んで頂戴」
 アルベルトの恥辱をたっぷり写真に収めてやる。
 フフフと笑みを浮かべスキップしながら部屋へと戻った。
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