71 / 181
幼少期
馬鹿王子の使い道を発見しました
しおりを挟む
ユリア経由でレイモンドからアルベルトの支度が整ったと聞いたので、チェキもどきを持参してスキップしながら客室の扉を開けたら、超絶美少女がいた!
「は? え? ええ!? あ、アルベルト様?」
「貴様が、俺にじょ……こんな格好をさせるようにコイツに言いつけたんだろう」
女装とは言いたくなかったのか、アルベルトが言葉を変えて抗議してきたが、全く頭に入らない。
群青色の髪に、白のレースがふんだんに使われたドレスは私よりも似合っていた。
髪もショートヘアなのに、綺麗の編み込まれ白薔薇の髪飾りをしている。
「これは予想外ですわ。殿下、とてもお似合いでしてよ。わたくしが、着るよりも似合うって腹が立ちますわね」
自分の容姿については世間一般から見て『美人』ではある。
ただし、頭にキツイが付くが。
一方、今のアルベルトはニッコリと笑みを浮かべていれば正統派美少女に見える。
やだ……私の婚約者にこんな利用価値があったなんて素敵。
今まで能無し馬鹿王子と思っていたけど、これは一種の才能だ。
「…気持ち悪いぞ、お前」
アルベルトの声に、頭が女装アルベルトの使い道を高速回転で考えていたのを一旦止めた。
「殿下、これなら誰にもバレることなく気兼ねなく街で買い物出来ますわ!」
街というワードに、アルベルトがピクッと眉を動かした。
「この恰好で街に行けと言うのか!?」
「はい。よく考えて下さいませ。護衛が付いているとはいえ、殿下が街に繰り出すことは前例がありません。勿論、高位の貴族は家に商人を呼んで買い物をします。殿下も、その経験はあるのではありませんか?」
私の問いに、アルベルトは確かにと頷いている。
「品を見るだけでも結構待たされていた。特に母の買い物に付き合わされるのが、一番苦痛だった」
「女性の買い物は長いと言いますからね。殿下は、この国の王子として顔が国民に知れ渡っています。しかし、女性の姿であれば誰も気づきません。このわたくしですら、一目見て殿下とは思わなかったのです。これは、素晴らしい特技ですわ」
世の女性は、あれこれ悩んで買う人が多い。
私は、サッと入ってパッと買うので余程値段が高いものでない限り即決してしまう。
「こんな特技があっても何の役にも立たない。屈辱だ」
「常に色んな角度から見れるようにと申したでしょう。では、視点を変えましょう。殿下が城下へ行きたいと主張しても、許可は下りないでしょう。例え、私と同伴だとしても。何故なら王子の姿絵が出回っており、国民に顔がバレてます。しかし、女装すれば別人になれます。殿下が望むなら、私同伴の女装付きという制限はありますが王都に戻っても定期的に城下へお忍びで出歩ける許可を取りつけますわ」
「それは、そうだが……」
女装することで得られるメリットを熱くプレゼンすると、アルベルトも段々その気になって行ったのか気持ちが傾いてきている。
デメリットは、敢えて伝えないでおく。
言ったら絶対うんと頷かないしね。
ここに居る間に街での楽しさを覚え込ませれば、王都に戻ってからも街へ行きたくなるに違いない。
アルベルトの女装は強請るネタにも出来るし、何より創作意欲が湧いてくる。
「殿下の女装はビジネスになりますわ。お金、稼げましてよ。写真1枚で銀貨3枚。街で買い物するにしても、お金がなくては買い物できません。買い物したいと言えば、城に商人を呼んで長い時間待たされ、下手すれば満足いく品が手に入らないかもしれない。そんな無駄な時間を過ごすか、女装して写真撮らせてお金を得て街で好きな物を買うかどちらが良いと思いますか?」
私の揺さぶりにアルベルトは暫く唸っていたが、最後は陥落した。
「本当に女装して写真1枚撮らせれば銀貨3枚払うんだな?」
「勿論ですわ。誓約魔法を使いましょうか?」
「それなら文句はない」
神言で書かれた誓約書は、私に有利な情報しか書かれていない。
『銀貨3枚支払う』の部分だけは、敢えてアングロサクソン語にしておいた。
そうしないと、アルベルトもサインしようとはしないだろう。
「ここにサインと血判をお願いします」
「分かった」
アルベルトは、理解せずに私が用意した誓約書にサインと血判を押した。
これでお前の人生は、マルッと私が頂いた。
使い道のない馬鹿だと思っていたが、金になると分かれば話は別だ。
こんなところで、使い道を見出せるとは人生何があるか分からない。
「殿下、約束通り『まずは』この場に居る皆に今まで横柄な態度や理不尽なことをして困らせたことを土下座して下さいませ。今日、撮った写真も後日街に降りる際にお支払い致しますわ」
顔を真っ赤にしているが、その姿で睨んでも怖くない。
寧ろ、アレな人から見ると一種のご褒美になってしまっている。
アルベルトに土下座の仕方を教えて、口上を復唱させた。
「わたしの癇癪を皆様に当たり散らして申し訳ございませんでした。はい復唱」
「……わたしの癇癪を皆様に当たり散らして申し訳ございませんでした」
怒りに震えながら謝罪するアルベルトの土下座姿をチェキもどきに収める。
横・正面・背後の角度で撮ったものをユリアに渡し、金庫に保管するように指示を出す。
「さあさあ殿下、次に行きますわよ」
アルベルトの手を掴み、延々と土下座行脚をさせた。
パンプスで靴ずれを起こして痛いと訴えて来ても、
「わたくしの時も同じことをなさったじゃありませんか。わたくし、泣き言一つ言いませんでしたわ。それなのに殿下は、仰るんですの?」
と煽れば黙った。
夕飯前に土下座行脚は終わったが、寝るまで女装を止めさせる気はなく、夕食は女装のままで席について貰った。
母は顔に手を当てていたが、祖父は物凄く良い笑顔でサムズアップしていた。
「は? え? ええ!? あ、アルベルト様?」
「貴様が、俺にじょ……こんな格好をさせるようにコイツに言いつけたんだろう」
女装とは言いたくなかったのか、アルベルトが言葉を変えて抗議してきたが、全く頭に入らない。
群青色の髪に、白のレースがふんだんに使われたドレスは私よりも似合っていた。
髪もショートヘアなのに、綺麗の編み込まれ白薔薇の髪飾りをしている。
「これは予想外ですわ。殿下、とてもお似合いでしてよ。わたくしが、着るよりも似合うって腹が立ちますわね」
自分の容姿については世間一般から見て『美人』ではある。
ただし、頭にキツイが付くが。
一方、今のアルベルトはニッコリと笑みを浮かべていれば正統派美少女に見える。
やだ……私の婚約者にこんな利用価値があったなんて素敵。
今まで能無し馬鹿王子と思っていたけど、これは一種の才能だ。
「…気持ち悪いぞ、お前」
アルベルトの声に、頭が女装アルベルトの使い道を高速回転で考えていたのを一旦止めた。
「殿下、これなら誰にもバレることなく気兼ねなく街で買い物出来ますわ!」
街というワードに、アルベルトがピクッと眉を動かした。
「この恰好で街に行けと言うのか!?」
「はい。よく考えて下さいませ。護衛が付いているとはいえ、殿下が街に繰り出すことは前例がありません。勿論、高位の貴族は家に商人を呼んで買い物をします。殿下も、その経験はあるのではありませんか?」
私の問いに、アルベルトは確かにと頷いている。
「品を見るだけでも結構待たされていた。特に母の買い物に付き合わされるのが、一番苦痛だった」
「女性の買い物は長いと言いますからね。殿下は、この国の王子として顔が国民に知れ渡っています。しかし、女性の姿であれば誰も気づきません。このわたくしですら、一目見て殿下とは思わなかったのです。これは、素晴らしい特技ですわ」
世の女性は、あれこれ悩んで買う人が多い。
私は、サッと入ってパッと買うので余程値段が高いものでない限り即決してしまう。
「こんな特技があっても何の役にも立たない。屈辱だ」
「常に色んな角度から見れるようにと申したでしょう。では、視点を変えましょう。殿下が城下へ行きたいと主張しても、許可は下りないでしょう。例え、私と同伴だとしても。何故なら王子の姿絵が出回っており、国民に顔がバレてます。しかし、女装すれば別人になれます。殿下が望むなら、私同伴の女装付きという制限はありますが王都に戻っても定期的に城下へお忍びで出歩ける許可を取りつけますわ」
「それは、そうだが……」
女装することで得られるメリットを熱くプレゼンすると、アルベルトも段々その気になって行ったのか気持ちが傾いてきている。
デメリットは、敢えて伝えないでおく。
言ったら絶対うんと頷かないしね。
ここに居る間に街での楽しさを覚え込ませれば、王都に戻ってからも街へ行きたくなるに違いない。
アルベルトの女装は強請るネタにも出来るし、何より創作意欲が湧いてくる。
「殿下の女装はビジネスになりますわ。お金、稼げましてよ。写真1枚で銀貨3枚。街で買い物するにしても、お金がなくては買い物できません。買い物したいと言えば、城に商人を呼んで長い時間待たされ、下手すれば満足いく品が手に入らないかもしれない。そんな無駄な時間を過ごすか、女装して写真撮らせてお金を得て街で好きな物を買うかどちらが良いと思いますか?」
私の揺さぶりにアルベルトは暫く唸っていたが、最後は陥落した。
「本当に女装して写真1枚撮らせれば銀貨3枚払うんだな?」
「勿論ですわ。誓約魔法を使いましょうか?」
「それなら文句はない」
神言で書かれた誓約書は、私に有利な情報しか書かれていない。
『銀貨3枚支払う』の部分だけは、敢えてアングロサクソン語にしておいた。
そうしないと、アルベルトもサインしようとはしないだろう。
「ここにサインと血判をお願いします」
「分かった」
アルベルトは、理解せずに私が用意した誓約書にサインと血判を押した。
これでお前の人生は、マルッと私が頂いた。
使い道のない馬鹿だと思っていたが、金になると分かれば話は別だ。
こんなところで、使い道を見出せるとは人生何があるか分からない。
「殿下、約束通り『まずは』この場に居る皆に今まで横柄な態度や理不尽なことをして困らせたことを土下座して下さいませ。今日、撮った写真も後日街に降りる際にお支払い致しますわ」
顔を真っ赤にしているが、その姿で睨んでも怖くない。
寧ろ、アレな人から見ると一種のご褒美になってしまっている。
アルベルトに土下座の仕方を教えて、口上を復唱させた。
「わたしの癇癪を皆様に当たり散らして申し訳ございませんでした。はい復唱」
「……わたしの癇癪を皆様に当たり散らして申し訳ございませんでした」
怒りに震えながら謝罪するアルベルトの土下座姿をチェキもどきに収める。
横・正面・背後の角度で撮ったものをユリアに渡し、金庫に保管するように指示を出す。
「さあさあ殿下、次に行きますわよ」
アルベルトの手を掴み、延々と土下座行脚をさせた。
パンプスで靴ずれを起こして痛いと訴えて来ても、
「わたくしの時も同じことをなさったじゃありませんか。わたくし、泣き言一つ言いませんでしたわ。それなのに殿下は、仰るんですの?」
と煽れば黙った。
夕飯前に土下座行脚は終わったが、寝るまで女装を止めさせる気はなく、夕食は女装のままで席について貰った。
母は顔に手を当てていたが、祖父は物凄く良い笑顔でサムズアップしていた。
1
あなたにおすすめの小説
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
【完結】お飾りではなかった王妃の実力
鏑木 うりこ
恋愛
王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。
「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」
しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。
完結致しました(2022/06/28完結表記)
GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。
★お礼★
たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます!
中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!
断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。
パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。
将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。
平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。
根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。
その突然の失踪に、大騒ぎ。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる